Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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バーミンガム市交響楽団
 一気に天空に駆け上がっていくような、勢いに満ちたアーティストの演奏を聴くと、心が高揚し、からだもカッカと熱くなってくる。
 今日はアンドリス・ネルソンス指揮バーミンガム市交響楽団の演奏を聴きに東京オペラシティコンサートホールに出かけた。
 プログラムはベートーヴェンのバレエ「プロメテウスの創造物」序曲からスタート。もう冒頭から、ネルソンスの流れるような音楽作りが全開。大きなからだをふたつに折るようにしてオーケストラを指揮する姿もなつかしかった。
 実は、ネルソンスは2010年にウィーン・フィルとともに来日し、得意とするドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」を指揮した。
 この「新世界」は、これまで聴いたどの演奏とも異なる新たな世界を作り出していて、ひとつひとつの音かクリアでしかも流麗でエレガント。全編に豊かな「歌」があふれ、ドヴォルザークが作品に託したさまざまな感情が生き生きと写しだされていた。
 この演奏を聴き、ネルソンスの真の実力、大きな可能性、オーケストラから自然な「歌」を導き出す手腕に感嘆したものだ。
 そんなネルソンスが、今日はブラームスで底力を示した。
 前半のメインはエレーヌ・グリモーをソリストに迎えてのブラームスのピアノ協奏曲第1番。彼女はつい先ごろブラームスのピアノ協奏曲第1番と第2番の新譜をリリースしたばかり(ユニバーサル)。その指揮者がネルソンスで、録音での第1番はバイエルン放送交響楽団との共演である。
 グリモーは昔から大のブラームス好き。学生のころ、ブラームスばかり弾いていて、先生に注意されたほどだという。
 CDでもグリモーとネルソンスの呼吸は気持ちのいいほど合っていたが、実際に聴く演奏はまさにブラームスと一体化。深く熱く情感豊かで深遠で、一瞬たりとも耳が離せない緊迫感と集中力に富んだ演奏だった。
 ネルソンスは1978年ラトヴィアのリガ生まれ。2008年にバーミンガム市響の音楽監督に就任し、短期間ですばらしい成果を上げ、いまや世界でもっとも注目される若手指揮者のひとりとなった。
 私が彼の名を初めて耳にしたのは、ピアニストのラファウ・ブレハッチがオランダで彼のタクトでコンチェルトを演奏すると聞いたとき。もうずいぶん前のことで、そのころは「ネルソンス」という名はほとんど知られていなかった。でも、ブレハッチは「すごい指揮者だよ」といっていた。
 そのネルソンスは2014/15年シーズンよりボストン交響楽団の音楽監督に就任することが決まった。
 破竹の勢いでスター指揮者の街道をまっしぐらに進んでいる若きマエストロは、アメリカでも才能を遺憾なく発揮するに違いない。
 今日の後半のプログラムは、ブラームスの交響曲第4番。ロマン主義的な趣向と古典的な形式が見事に融合したこの交響曲を、ネルソンスは精緻な響きと、タペストリーのようなこまやかな音の織物のように構築。オーケストラからもてる最高のものを引き出し、聴き手に幸せをもたらした。
 グリモーも長年聴き続けているが、今夜のブラームスは作品への共感がすばらしかったし、ネルソンスの真摯に音楽と対峙している姿勢もひしひしと伝わり、帰路に着くときもからだがほかほかと温かかった。
 彼らの日本ツアーは始まったばかり。これから24日までコンサートは続く。ぜひ、足を運んでくださいな。聴き慣れた作品が新たな光を放ち、至福のときを過ごすことができますから。
 
| アーティスト・クローズアップ | 23:54 | - | -
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