Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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ラファウ・ブレハッチ
 なんと心に響く演奏だろう。もっと他の曲が聴きたい、アンコールももっと演奏してほしい、ずっとずっとこの会場にすわっていたい。
 そんな思いを抱かせる演奏には、なかなか出会えるものではない。 
 14日の土曜日、東京オペラシティでラファウ・ブレハッチのリサイタルを聴いたが、その演奏のすばらしかったことといったらない。すでに今年は、11月の末までの分で「コンサート・ベストテン」の原稿は締め切られたが、もしも12月の分まで入ったら、ブレハッチは上位に食い込むことまちがいなしだ。
 プログラムは前半がモーツァルトのピアノ・ソナタ第9番、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第7番。ブレハッチはいかにも楽しそうに、躍動感とかろやかさとエレガントな表情を伴ったモーツァルトを奏で、愉悦のときを与えてくれた。
 ベートーヴェンの初期のソナタもロマンにあふれ、作曲家の心境著しい楽想が香り高く紡がれていった。
 後半はオール・ショパン。夜想曲第10番、ポロネーズ第3番「軍隊」と第4番、3つのマズルカ作品63、スケルツォ第3番という構成だ。
 ああ、なんという自然さ。あるべき音がそこにあり、シンプルで柔軟性に富み、リズムやフレージングのひとつひとつがこれ以上考えられないほどのナチュラルな表情をもって奏されていく。
 アンコールもショパンが次々に登場。私の脳裏には、ショパン・コンクールのときのブレハッチが浮かんできた。
 ブレハッチは、演奏を聴くたびに大いなる進化と深化を遂げている。しかも、努力の痕跡は微塵も見せず、快活に前向きな姿勢で、音楽を心から楽しみながら演奏していることが伝わる。
 彼はどこまで成長するのだろうか。ショパン・コンクール優勝から8年、聴くたびに新たな感動が湧き、ピアノを聴く喜びを感じる。
 今日の写真は、終演後のにこやかな表情。私はショパン・コンクールからずっと聴き続けているのに、彼がザルツブルク音楽祭にデビューしたときに聴きにいってインタビューをしたため、その印象が強いようだ。
「やあ、こんにちは。ザルツブルクに聴きにきてくれたんだよね」
 また、こういわれてしまった。まあ、いいんだけどさ。
 いずれにしても、年末にこんなすばらしい演奏に出会え、至福のときを味わうことができ、なんとも心が温かくなった。
 というわけで、あれから毎朝ショパンの「ポロネーズ集」(ユニバーサル)を聴いている。でも、私は彼のベートーヴェンのピアノ・ソナタ第2番の録音もたまらなく好き。天に駆け上がっていくようなこのベートーヴェン、これまで聴いたことがないベートーヴェンだからだ。
 以前、ブレハッチにそのことを伝えたら、すぐに旋律を口ずさみ、「いい曲だよねえ」とにんまり。この笑顔も自然で温かくて、たまんないワ(笑)。
 彼は「自分が自然体でいられること」にこだわる。けっして無理はしない。そして、ピアニストとして、ゆっくり歩んでいきたいという。いまの世の中の速い流れにまどわされたくないからと。そうそう、それが一番の強みだ。
 ブレハッチを聴くと、彼の演奏から生き方を感じ取り、それが自分のなかの時間の流れをリセットすることにつながる。せかせかしたり、いらいらしたり、自分のなかにたまりまくっている嫌な感情が、スーッと洗い流されていくのである。ブレハッチのピアノには、そんな力がある。だから、私はコントロールが効かなくなると、ブレハッチを聴く。
 ラファウ、ありがとう。あなたは、ショパン・コンクールのときから常に私に大きな喜びと癒しと元気を与えてくれる。その人生哲学、いつまでも守り続けてね。


 
 

 
 
| クラシックを愛す | 16:07 | - | -
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