Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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ヴィルフリート・ラムザイアー=ゴルバッハ
 先日のウィーン・フィルの取材で、その人間性にいたく惹かれた人がいる。ウィーン・フィルの弦楽器群の修復を一手に引き受けている、ヴィルフリート・ラムザイアー=ゴルバッハさんである。
 彼は前任者のオトマール・ラングさんの後任として、2002年に製作工房を引き継ぎ、複数の職人を抱えて仕事を行っている。
 インタビューでは、いかにも職人らしく謙虚でおだやかな語り口をもって、どんな質問にも誠意を見せて答えてくれ、ウィーン・フィルのメンバーが全幅の信頼を寄せていることがよくわかった。
 ラムザイアー=ゴルバッハさんは、「自分の存在は知ってもらわなくていいんですよ」と何度もいった。「私の修復した楽器で、いい演奏をしてもらえたら、それでいいんです」ともいった。
 仕事が山積みなのに、工房の隅々まで見せてくれ、いろんな説明をしながらあらゆる楽器の詳細までていねいに教えてくれた。
 そんなひとつひとつの態度がとても自然で、自分の仕事に誇りをもっていることがわかり、非常に頼りになる存在だということがひしひしと伝わってきた。
 工房は、ウィーンの楽友協会の一角に位置するため、ホールの奥の廊下からすぐにここにくることができる。それゆえ、ウィーン・フィルのメンバーは、何かあると、すぐに楽器を抱えて工房に飛び込んでくるそうだ。
 こうした修復の達人の存在が、あのすばらしい音楽を生み出すひとつの大きな要素になっているのだろう。でも、ご本人はあくまでも、前には出たがらない。
 彼が楽器をいかに大切に思っているのかは、ヴァイオリンなどを手に取るときの様子でわかった。慈しむように、愛でるように、大切に扱い、その楽器を見る目は、あたかも命が宿ったものに向けるような温かなまなざしだったからだ。
 私は工房を出るとき、胸のなかがとても温かくなっていることに気づいた。ラムザイアー=ゴルバッハさんは、会っただけでそんな気持ちにさせてくれる人だった。
 きっとウィーン・フィルのメンバーも、楽器の修復はもちろん、彼がいつも工房にいてくれるというだけで、安心して演奏に集中できるのではないだろうか。
 今日の写真は、インタビュー後のラムザイアー=ゴルバッハさんのちょっとはにかんだ表情。「本当は、目立ちたくないんだけど…」と、シャイな笑顔を見せている。


 
 
| クラシックを愛す | 22:38 | - | -
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