Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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クリスティアン・ゲルハーヘル インタビュー
 インタビューというのは、聞き手が思っているような答えがアーティストからなかなか引き出せない場合、瞬時に次なる手を打たなくてはならない。
 今日は、待望のクリスティアン・ゲルハーヘルのインタビューが可能になったため、頭のなかは聞きたいことであふれていた。
 実は、2011年の来日の際、インタビューを申し込んでいたのだが、あのときはマーラーの歌曲をうたったため、「本人がとてもナーバスになっているから、インタビューには応じられない」と、担当者から断りの返事がきた。
 まず、そのことを話し、今回は話を聞くことができてよかったというと、本当にすまなそうな顔をして「申し訳ない。ずっと待っていてくれたんですね。ありがとう」と、誠意あることばが戻ってきた。
 ゲルハーヘルは、どんな質問にもことばを尽くしてじっくりと話してくれるのだが、その内容はすこぶる真面目。自分の個性を前面に出さずに、あくまでも作品に寄り添うことが大切で、作曲家に敬意を表すことがいい歌をうたうことにつながる、という話を延々とする。
 こういう話は、もちろんとても重要な意味合いをもつのだが、原稿に書くと、あまりおもしろい記事にはならない。だからといって、その話を夢中でしている最中に話題を変えることはできない。
 当然のことながら、私は内心焦り、もっとおもしろい話題、ゲルハーヘル自身の個性が感じられる話題へと移れるよう、質問をあれこれ変えていく。
 だが、本人は大真面目ゆえ、「あっ、さっきちょっといい忘れたんだけど」といって、また元の話題に戻ってしまう。
 新譜のマーラーの歌曲の録音に関しても、今回の公演プログラムであるシューマンの歌曲についても、同様の真摯な答えが戻ってくる。
 それはそれで、私はとても興味があるけど、いざ記事にした場合、なかなか苦しいものがある。本人の本音が見えてこないからだ。
 そこで、一気に方向転換して、変声期後のことや子ども時代のことへと飛躍させてみた。
 すると、最初はヴァイオリンやヴィオラを弾いていたけど、ものすごく下手だったこと、友だちに「女の子がいっぱいいるから」と誘われて合唱団に入ったこと、J.S.バッハの音楽は大好きだったけど、オペラは大嫌いだったこと、両親が毎日曜日ラジオでバッハの「カンタータ」を聴いていたため逃げ出したことなど、いろんな面白い話が飛び出してきた。
 こうなると、しめたもの。インタビューはスムーズに進む。私がバリトンが好きだと話すと、奥さまも同様で、「私がテノールだったら、結婚してくれなかったかも」といって、このときばかりはにこやかな笑顔を見せた。
 このインタビューは、次号の「婦人公論」と、ヤマハのWEB「音楽ジャーナリスト&ライターの眼」で何度か連載したいと思っている。
 ゲルハーヘルは、今シーズンのベルリン・フィルのアーティスト・イン・レジデンスを務めることになっているが、これは大きなプロジェクトが8つ予定され、ソロのみならず室内楽も組まれているそうだ。
 彼の話し方はとても知的でていねいで、ときおりものすごくナイーブな目をする。傷つきやすく繊細で、本来は内向的な性格のようだ。
 あのステージでの力強く柔軟性に富んだ、分厚い胸からほとばしるような強靭な歌声とは異なる素顔に、新たな驚きを覚えた。
 でも、握手は目いっぱい力強く、「イタタッ」と思うほど強い握り方だった。
 明日はまた、シューマンを聴きに出かける。あくまでも作品に忠実に、と話していたゲルハーヘルの歌声をまたからだ全体で受け止めたい。
 今日の写真はインタビュー前に撮った1枚。見せたら、「オー・マイ・ゴッド!」といっていた。でも、撮り直しして、といわれなかったから、載せちゃおうっと(笑)。

| 終わりよければ…取材奮闘記 | 20:31 | - | -
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