Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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ロジェ・ムラロ
 昨日は、午後3時からトッパンホールで行われたロジェ・ムラロのリサイタルを聴きにいった。
 ムラロは1959年フランスのリヨン生まれ。オリヴィエ・メシアンに認められ、世界各地でメシアンをはじめ、ラヴェル、リストなどを中心に幅広い活動を展開している。
 この日のプログラムはラヴェルのピアノ作品全曲。2度の休憩をはさみ、ムラロは精力的に演奏を行い、終演は6時半。非常に集中力のある演奏だったため、聴く側はかなり疲労困憊したが、ムラロはまだまだ弾けそうな様子で、明るく手を振ってステージをあとにした。
 実は、「モーストリー・クラシック」の新年号の「1月のお薦めコンサート」に、ロジェ・ムラロのことを書いた。

 
 ロジェ・ムラロは常に聴き手が驚愕するようなプログラムで衝撃に満ちた演奏を行う。今回はラヴェルのピアノ作品全曲演奏(12日トッパンホール)。2004年の日本デビューで披露した作品の再来で、10年を経て成熟したラヴェルを聴かせる。彼の演奏はとてつもないエネルギーを秘め、異次元の世界へと連れ去るもの。ムラロの洒脱で機知に富んだ個性的なラヴェルに酔いしれることができそう。

 記事にはこう綴ったが、まさにその通り。彼のラヴェルはあいまいなところがまったくない。音楽は明晰で説得力に満ち、音はクリアで、ひとつひとつの響きに意味をもたせる。
 からだも大きいが、指も非常に長く、その大きな手が雄弁な音を紡ぎ出していく。ラヴェルのピアノ作品は、主題、リズム、和声進行などが際立ち、微妙な情趣も必要。ウイットとユーモア、エスプリも表現せねばならず、ときにシニカルな表情も顔を出す。
 私はラヴェルの作品が大好きで、ラヴェルの音楽を聴くとさまざまなイマジネーションが湧いてくるが、ムラロのピアノを聴いているうちに、一昨年単行本を書くためにパリのラヴェルの家を訪れたときのことが浮かんできた。
 ムラロは、よく奇才とか異才などと称されるからか、ちょっと変わったタイプに見られがちだ。しかし、ステージに登場したときから、いわゆる気のいい人という感じ。にっこりすると、とてもチャーミングだ。
 ただし、ピアノに向かうと一気にエネルギーが爆発。類まれな集中力を発揮し、ラヴェルの世界へと没入していく。
 ピアノ作品全曲はいずれも洞察力に富んだ、鍛え抜かれた演奏だったが、とりわけ「夜のガスパール」が印象に残った。これはラヴェルの最高傑作といわれる作品。「オンディーヌ」は、水の精の非現実的な響きを妖しげに奏で、哀しいまでの美しさを表現。「絞首台」では、不気味な鐘の音色を執拗なまでの響きで鳴り響かせた。最後の「スカルボ」は、ムラロの真骨頂。疾風怒濤のようなエネルギッシュでドラマティックな演奏のなかに、客観性を備えた第3者的な冷めた目をしのばせ、それがかえって不気味な感覚をもたらした。
 3時間半におよぶ長大なリサイタルの最後は、「ラ・ヴァルス」で締めくくり。いつまでも頭のなかにその主題が居座るような、インパクトの強いワルツを披露した。
 今日の写真は、ロジェ・ムラロの演奏会のチラシ。顔もインパクトが強いよね。NHKテレビが入っていたから、近いうちに放映されると思う。ぜひ、注目を!!

| アーティスト・クローズアップ | 21:28 | - | -
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