Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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ピーター・ウィスペルウェイ
 昨日のウィスペルウェイの演奏の余韻に浸っているなか、今日は「インタビュー・アーカイヴ」の第54回として、彼のインタビューを振り返りたい。

 
[音楽の友 2008年4月号]

 2月3日の日曜日、東京は朝から雪が深々と降る寒い日だったが、紀尾井ホールで行われたピーター・ウィスペルウェイのJ.S.バッハの「無伴奏チェロ組曲」全曲演奏会は、冒頭から静かなる熱気に包まれた。
「この作品は力強く、地に足が着いた精神の落ち着きが見られる一方、生の躍動感がみなぎっています。舞曲を深く理解し、遊び心や歌心などさまざまな要素をバランスよく演奏に盛り込んでいかなければなりません。長年弾いていると解釈、表現は変化してきますが、各々の要素をどう混ぜ合わせるか、どんなカクテルを作り上げるかが重要になります」
 ウィスペルウェイは長年フランス製の楽器を使用していたが、数年前イギリスで発見された「奇跡のチェロ」と称されるジョヴァンニ・バティスタ・グァダニーニの1760年のチェロを手に入れた。
「以前はバロック・チェロで演奏し、アンナ・ビルスマ、ウィリアム・プリースに師事して基礎をみっちり学びました。でも、あるときイタリアの楽器を無性に弾きたくなった。その衝動が抑えられず、オークションでグァダニーニを手に入れたわけです。ええ、もちろんものすごく高い買い物でしたよ。同じ週に家も買ったんです。クレイジーでしょ(笑)。あとの支払いも考えずにね。今回はこのモダン・チェロでバッハを弾きました。弦や弓の材質はバロック・チェロと異なりますので、最初は奏法を会得するのに苦労しましたが、基本スタイルは同じです」
 1月31日には録音で高い評価を得ているドヴォルザークのチェロ協奏曲を披露したが、流麗で深々とした演奏は、作曲家の生地ネラホゼヴェスの緑豊かな景観を連想させた。
「このコンチェルトは出だしから気合いを入れ、思い入れたっぷりに演奏する傾向が見られますが、これはシンプルに演奏することが大切だと思います。作曲家は多くのメッセージを作品に込めました。演奏はその語りを雄弁に物語らせなくてはならない。でも、技巧を見せつけたり、表現過多になるのは避けなければ。それは大いなる知性が宿っているからです。高らかに旋律をうたい上げるときにも、ある種の抑制した知性が必要となる。オーケストラとの対話も非常に重要ですね。特に第2楽章はリリシズムがあふれていますから」
 師のビルスマもプリースも、どんな作品を演奏するときも創造的な芸術形態をもつことが大切だと教えてくれた。それを座右の銘としている。
「グァダニーニを手にしてから、すべての作品を一から学び直しています。それが私の好奇心を満たしてくれるからです。そして常に新しい方向、新しい道、新しい自分を探しています。見慣れた楽譜でも何か発見はないか、新鮮な驚きはないか、という目をもって探求しています」
 その好奇心は見知らぬ街の探索にも表れる。ウィスペルウェイはホテルで地図をもらい、新宿から下北沢、飯田橋、千駄ヶ谷と7時間ウォーキング。いろんな発見があったと目を輝かせる。スリムな体型は、きっとこの長時間の散歩の成果かも…。

 昨日のリサイタルでも「奇跡のチェロ」グァダニーニを使用。自然で気品にあふれ、しかも情熱的な響きをたっぷりと聴かせた。
 今日の写真はインタビューの雑誌の一部。彼はシリアスな表情で音楽論を語っているかと思うと、突然とんでもないジョークで笑わせる。昨日はCDのサイン会に多くの人が列を作っていたのだか、ひとりの女性がおそらく演奏に感動したと告げたのだろう。突然、大声で「ワオーッ」と叫び出した。その女性も、まわりの人もあっけにとられてウィスペルウェイを見つめるばかり。
 そう、そうなんですよ。この人はそういうユニークな人なんです。みなさん、ビックリしないでくださいね。感情表現がストレートな人なのです。だから音楽も実に率直で、聴き手の胸にストレートに迫ってきますよね。この感情表現のすばらしさ、ユニークさ、私はすごく気に入っていて、大好きなんですよ。サプライズがあっておもしろいもの(笑)。



| インタビュー・アーカイヴ | 20:08 | - | -
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