Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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アンドラーシュ・シフ
 いつもアンドラーシュ・シフのリサイタルにいくと、アンコールの多さに驚く。
 考え抜かれた盛りだくさんのメイン・プログラムだけでも、もう十分に彼の演奏のクウォリティの高さにどっぷりと浸ることができるのだが、その後、5曲も6曲もアンコールが続く。
 この集中力、体力、気力はどこからくるのだろうか。もちろん演奏することが楽しくてたまらないという感じは伝わってくるのだが、シフの場合、けっして派手なパフォーマンスはしないし、実直でひたむきで、作品の内奥にひたすら肉薄していくピアニズムである。それゆえ、エネルギーがあふれているという感じはまったくないが、アンコールの最後まで演奏の質は変わらない。なんともいえない、不思議な力がみなぎっている。
 今回の来日では、東京公演が3回あり、それぞれまったく異なるプログラムが組まれた。
 今日は、メンデルスゾーンとシューマンという同時代に活躍したふたりの作曲家の作品に焦点を当て、前半はメンデルスゾーンの「厳格な変奏曲 ニ短調」とシューマンのピアノ・ソナタ第1番、後半はメンデルスゾーンの「幻想曲 スコットランド・ソナタ」とシューマンの「交響的練習曲」が演奏された。
 いずれもシフ特有の柔軟性に富んだ美しい響きが全編を覆い、メンデルスゾーンのあふれんばかりのロマンと憧憬、ファンタジーが香り高く奏され、またシューマンでは大曲ふたつを一瞬たりとも弛緩することなく、内なる情熱と感情のはげしさ、独創性などを前面に押し出し、フィナーレまで表情豊かな美音で弾き進めた。
 心の奥に音がひたひたと沁み込んでくる、というのはこういう演奏をいうのだろう。
 シフのピアノは、演奏後、何時間たっても余韻が残る。すばらしい音楽を聴いた、有意義な時間を過ごすことができた、生きていてよかったと思えるのである。
 アンコールのメンデルスゾーン「無言歌集」より「甘い思い出」、「紡ぎ歌」、シューマン「アラベスク」「幻想曲」より第3楽章なども、シフならではのやわらかく情感あふれる美しい音色が満載。だが、淡々としたなかにも凛々しく、一本芯の通った精神性の高い奏法が顔をのぞかせ、それが聴き手の心に強い感動をもたらす。
 今日の公演評は、次号の「モーストリー・クラシック」に書く予定になっている。いま感じている素直な気持ちを綴りたいと思う。
| クラシックを愛す | 23:54 | - | -
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