Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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金子三勇士
 金子三勇士が、幼いころからあこがれ、夢に見ていたゾルタン・コチシュと共演する。
 このニュースを聞いたときから、今日のコンサートを非常に楽しみにしていた。
 彼は2歳のころにハンガリーの祖母からコチシュの演奏するバルトークの「子供のために」のCDをプレゼントされ、きらびやかな音色とストレートな音楽表現に魅せられてきたという。
 そのコチシュに会うことができたのは、彼が2008年のバルトー国際ピアノコンクールで優勝した後。このときに金子三勇士はピアノを聴いてもらい、自分の気持ちを伝えることができた。
 そして今夜、サントリーホールでコチシュ指揮ハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団と共演し、リストのピアノ協奏曲第1番を演奏した。
 これまで何度も金子三勇士からコチシュにあこがれてきたという話を聞いてきたため、コンチェルトのステージに彼が登場したときから、私はその心の思いが痛いほど理解でき、つい感情移入してしまった。
 リストのピアノ協奏曲第1番は4つの楽章からなるが、切れ目なく演奏されるため、単一楽章の幻想曲のような趣を備えている。金子三勇士は冒頭からエネルギー全開、華やかな巨匠的なピアニズムをもつ第1楽章、8分の12拍子の美しい緩徐楽章、トライアングルが登場する第3楽章、豪放磊落な第4楽章と、各々の特質を生かしながら一気に聴かせた。
 本当は、作品のよさを味わい、演奏を客観的に聴かなくてはならないのに、ソリストの気持ちと一体化してしまい、終始感情が高ぶってしまった。
 終演後、楽屋を訪れると、三勇士は高揚した面持ちでこういった。
「もう最初から涙が出そうで、こらえるのが大変でした。本当にすばらしい機会をいただき、この共演を計画してくださったみなさんに感謝しています」
 若いアーティストは、こういう貴重な経験を積むことにより、大きく演奏が飛躍する。
 今日のコンサートのプログラムに、私はコチシュの原稿を寄せたが、そのなかで、コチシュが学生時代から指揮者を目指していたことを書いた。彼の指揮は、明快で率直で自然体。コチシュはインタビューのなかで、こう語っている。
「私は、作品の様式というものを大切に考えています。作曲家はそれぞれの作品に独自の様式を盛り込んでいます。それを楽譜から読み取り、作曲家特有の意図を見出さなければ、演奏する価値はありません」
 ピアニストでもあるコチシュの、リストの作品を知り尽くした指揮は、三勇士のピアノをしっかり支え、オーケストラを自由にドライブさせていた。このオーケストラの響きは、多くのオーケストラが国際色豊かに近代的な演奏を目指す方向性とは一線を画し、ハンガリー独自の音色をもち、分厚く土着の色合いを感じさせ、聴き手をかの地へといざなう。
 私は東欧諸国は結構あちこち旅をしているが、なぜかハンガリーだけはいったことがない。それでもハンガリー国立フィルの編み出す音楽は、想像力を喚起し、旅心を刺激するに十分だった。
 今日の写真は楽屋での金子三勇士。興奮冷めやらぬ表情で、頭からまだ湯気が出ているような状態に見えた(笑)。

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