Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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辻井伸行
 辻井伸行の快進撃が続いている。最近はドイツでも毎年のようにコンサートを行い、日本でのコンサートも快調だ。
 今日は、「プレミアム・リサイタル」と題された各地で開催されている全10公演の中日にあたり、紀尾井ホールでリサイタルが行われた。
 プログラムは前半がラヴェルの「ソナチネ」と「夜のガスパール」。後半がショパンの「バラード第4番」とピアノ・ソナタ第3番という重量級の内容である。
 このプログラムの原稿を書いたため、選曲はすでに知っていたのだが、実際の演奏を聴き、大きな成長を遂げた音楽作りに強い感銘を受けた。
 辻井伸行に関してはこのブログでも何度か紹介し、そのつど演奏の変貌を綴ってきたが、今日も非常に説得力のある演奏で、終演後の楽屋を訪ねたときにもついその旨を口にしてしまった。
 とりわけ印象的だったのは、「夜のガスパール」。これはさまざまなピアニストが難曲だといい、しかもフランスのピアノ作品の最高峰に位置するという人が多い。
 辻井伸行は、「水の精(オンディーヌ)」を真珠の粒がころがるような美しくかろやかな音で始め、次第に流麗な響きを駆使して水の精の心情を鮮やかに映し出した。
 次いで「絞首台」は、不気味な表現で弾き進め、変ロ音の鐘の音を淡々と鳴らし続けた。
 最後の超絶技巧を要する「スカルボ」は、地の精であるスカルボが怪しげにころがりまわっている様子を一気に疾走するようなスピードで聴かせ、最後は突然消えてしまうスカルボを減衰する音で視覚的に表現した。
 実は、辻井伸行の次なる新譜のライナーを書く予定になっている。今日、その音源が届き、これからじっくり耳を傾けようと思っている。
 たゆまぬ努力の結果をこうして聴くと、また新たなる彼の進化と深化に触れる思いがする。いつも辻井伸行の音楽を聴くと、勇気を与えられる。「私も頑張らなくちゃ」という気持ちにさせられるのである。
 人間はつい怠け心が顔を出し、楽な方に流れがちだが、辻井伸行は音楽を通して、そんな私の背中を押してくれる稀有な存在なのである。
 今日の写真は、演奏後のリラックスした表情の辻井伸行。彼はトークもユーモアがあり、「今日は台風のため交通事情が心配なので、アンコールは1曲だけにします」と話して会場の笑いを誘い、ラヴェルの「水の戯れ」を演奏した。


 
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