Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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アンドレア・バッケッティ
 こんなにユニークな人だと思わなかった。もう笑いが止まらないというか、本人はいたって真面目なため、余計におかしい。
 今日は、4月に「イタリア協奏曲 バッケッティ・ブレイズ・バッハ」(ソニー)と題したCDがリリースされたイタリア出身のピアニスト、アンドレア・バッケッティのリサイタルを聴きにトッパンホールに出かけた。
 プログラムは前半がJ.S.バッハのトッカータ ホ短調 BWV914からスタート。次いで「ゴルトベルク変奏曲」をリピートなしで演奏。これだけで、すでにバッケッティの非凡な才能が存分に伝わってきた。
 4月の「音楽の友」の「今月の注目盤」に私はこう記している。
「イタリアからユニークなピアニストが彗星のごとく現れた。中略。かろやかで歌心にあふれ、色彩感豊か。”カンタービレ”というのはこういう演奏を表すことばなのだろう」
 まさにナマで聴くバッケッティのピアノは、輝きに満ちた明るさが特徴で、芯のある音なのだが、実にかろやか。「ゴルトベルク変奏曲」はこれまでさまざまなピアニストの演奏を聴いてきたが、そのだれとも似ていない個性的な演奏で、ぜひリピートをした完全なるバージョンを聴いてみたいと思わせた。
 彼はまるでピアノと遊んでいるような楽しさに満ちた表情で演奏し、バッハを弾き出したら止まらないという感じ。ひらめきと創造性に富み、装飾音がごく自然に入ってくる。
 後半はモーツァルトの「幻想曲」ニ短調 K.397とピアノ・ソナタ第10番 ハ長調 K.330という組み合わせ。耳慣れた作品がまたもや新たな空気をまとって目の前に現れ、どこか夢見心地になった。
 バッケッティは、細身で小柄。黒のシャツに黒のパンツというごくふつうの格好でステージに前かがみで登場。演奏中は首をかなり前に突き出し、顔を動かしながらからだ全体でリズムを取りながら弾く独特のスタイル。
 演奏が終わると、手を合わせておじぎをしながら、ひょこひょことステージをあとにする。
 すべてがユニークで、ピアニストとは思えない。究極は、その声だ。
 アンコールの曲目を語り出した途端、私は腹話術かと思ってしまった(笑)。それほど高く、想像もしていなかった声で、しかも話し方まで上質なコメディアンのよう。いやあ、これほどとは…。まいりましたなあ、おかしくて、笑いをこらえるのに苦労したほどだ。
 ああ、失敗したあ。インタビューを申し込んでおけばよかった。きっとものすごく楽しい話を聞くことができたのに、失敗失敗、すでに遅し。
 アンコールもまた、実に凝っていて、「アンナ・マグダレーナ・バッハの音楽帳」より「ただ愛する神の摂理にまかせて」、プレリュード ハ長調、メヌエット ト長調、フランス組曲第5番を続けて演奏。この音楽帳の手稿譜は1722年と1725年のものがあるが、それらから選曲し、ひとつの有機的な流れを作り出した。
 さらにヴィラ・ロボスの「パンク」を超絶技巧を物ともせずにさらりと弾いたかと思うと、最後にショパンの「黒鍵のエチュード」を披露。このショパンがまたまた目からウロコ。こんな透明感のある雄弁なエチュードは聴いたことがない。もっとショパンを聴きたかった。
 本当に、わくわくするような才能が出現したと思って、うれしくなった。インタビューをすることができなかったから、ぜひ近いうちに再来日を果たしてほしい。アンドレア、待っていますよ〜。
 今日の写真は新譜のジャケット写真と、終演後のサイン会でのバッケッティ。ホント、ユニーク。演奏の高貴な輝きにあふれた味わい深さと、あの頭声発生のような声のギャップがたまらない。う〜ん、ちょっとはまりそう…。





 
| アーティスト・クローズアップ | 23:40 | - | -
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