Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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ワレリー・ゲルギエフ
 いま、10月に来日するワレリー・ゲルギエフ指揮マリインスキー歌劇場管弦楽団のプログラム原稿を書いている。
 ソリストとして参加する、ピアニストのネルソン・フレイレの原稿である。フレイレは私の大好きなピアニスト。今回は録音も行っているブラームスのピアノ協奏曲第2番を演奏する予定だ。
 その原稿を入稿したら、以前ゲルギエフにインタビューしたことを思い出した。オペラの本番前の、超がつく時間のないインタビューで、冷や汗をかいたことを覚えている。
 インタビュー・アーカイヴ第59回は、そのゲルギエフの登場だ。

[ATES 2008年5月号]

世界にロシア魂を! 止まらないマエストロの夢。

「どんなリスクも、いい音楽を生み出すためだったら喜んで背負います。リスクのない人生など考えられないから。これまで数多くの困難に遭遇してきましたが、いつもはるか先にある自分の夢に向かって走り続け、困難を克服し、夢を実現に導いてきました」
 かつてのロシア帝国の首都、サンクトペテルブルクを代表するオペラとバレエの劇場、マリインスキー劇場の芸術監督ワレリー・ゲルギエフは、低音の迫力に満ちた声で語る。彼が劇場を任されたのは1988年、35歳のとき。ロシアがまだ経済的に大変な時期で、演目もロシア作品が中心。予算を必要とする他国の作品を演奏することすらできなかった。オーケストラも歌手もダンサーも、みな意気消沈。そんな彼らに向かい、ゲルギエフは胸の内を明かす。
「資金調達は任せてくれ。みんなは音楽に集中して、練習で成果を出してほしい。困難な時代だからこそ人々は芸術を求めている。必死でいいものを作り出せば、いまに世界がマリインスキー劇場を招いてくれるようになる。そのときにロシア魂を示そうじゃないか」
 ゲルギエフは政府に掛け合って予算を確保し、徐々に演目の幅を広げていく。やがてヨーロッパ各地、アメリカ、日本公演を実現。いまや世界各地のオペラハウス、コンサートホールのなかで、もっとも海外公演の多い劇場となった。
 そして昨年、新コンサートホールをオープンさせ、現在新たなオペラハウスも建設中だ。
「いま、世界的にクラシック離れが加速しています。それを止めるために、若者や子どもたちに年に1回は劇場に足を運んでもらえるような楽しいプログラムを考慮中です。常に時代に合った新しい試みをしていかなければ、伝統的なクラシック音楽は生き残れない。人類の偉大な財産を次世代に受け継ぐため、また新しいリスクを背負います」
 睡眠時間を削り、融資を求めて飛び回るマエストロの姿に、劇場に携わる全員が惜しみない拍手を送る。そして自らの芸術を磨く。サンクトペテルブルクを文化、芸術の発信地にしたいと願うゲルギエフの夢には、プーチン大統領も賛同。近いうちに、古都は大変貌を遂げるに違いない。

 以前、このときの様子をブログに綴ったが、とてつもなくタフなマエストロに、居合わせた全員が脱帽。まさにエネルギーの塊だった。
 今日の写真はその雑誌の一部。写真撮影にも非常に協力的だったが、なにしろ分刻みのスケジュール。すべて終わったときは、全員で床にへたりこみそうになった。いい思い出だけど(笑)。

| インタビュー・アーカイヴ | 23:36 | - | -
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