Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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ナタリー・シュトゥッツマン
 最近は、シューベルトの歌曲集「冬の旅」を女性歌手がうたうことがある。以前は考えられなかったことだが、作品のすばらしさを考えれば、当然うたいたくなる人は多い。
 フランスのコントラルト(アルト)の第一人者であるナタリー・シュトゥッツマンも、長年「冬の旅」を研究し、ステージにかけている。
 昨日はトッパンホールで、長年のパートナーであるピアノのインゲル・ゼーデルグレンとともに「冬の旅」を披露した。
 シュトゥッツマンの歌声は艶やかでなめらかなベルベットのようで、光沢があり、多彩な色彩感に富み、それが幾重にも変容していく。
「冬の旅」はひとりの男性の彷徨の物語だが、24曲のなかにはさまざまな苦悩や孤独、痛みや悲しみ、幻影やモノローグ的な表現、内面との葛藤、死の影や苦い覚醒、心理的な崩壊や分裂などが入り混じり、そうしたミュラーの連作詩に曲をつけたシューベルトの深層心理が浮き彫りになる。
 シュトゥッツマンはそれぞれの曲とじっくり対峙し、ひとり芝居のように演技をしながらゆったりとうたい込んでいく。
 冒頭の「おやすみ」から沈鬱な空気が支配し、それが最後の「辻音楽師」まで集中力が途切れることはなく、作品全体を俯瞰した視野の広い「冬の旅」を聴かせた。
 もっとも印象的だったのは、やはり終曲の「辻音楽師」。絶望的な表情を浮かべながら、約80分におよぶ歌曲の世界を、余韻を残しながら静かに締めくくった。
 非常に印象深い歌曲の夕べで、シュトゥッツマンの心身の充実ぶりを感じ取ることができた。
 今日の写真は終演後のサイン会でのシュトゥッツマン。
 明日の26日には、「フランス歌曲の夜」と題したリサイタルがトッパンホールで開かれることになっている。彼女は2013年に同ホールでマーラー、シューマン、ヴォルフなどの歌曲を披露して大絶賛されたが、きっとフランス歌曲のプログラムでも、聴衆を魅了するに違いない。


  
 
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