Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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ミッシャ・マイスキー
 ミッシャ・マイスキーによるJ.S.バッハの「無伴奏チェロ組曲」は、これまで何度も聴いてきた。
 だが、今日の東京文化会館小ホールでの「プラチナ・シリーズ 巨匠マイスキーの無伴奏」は、特別な演奏だった。
 親密的で響きのよい小ホールに、マイスキーの深々とした肉厚なチェロの音色が朗々と響いていく。第1番、第4番、第5番というプログラムで、いずれも心に染み入る音楽だったが、とりわけ第5番が厳粛で繊細で優美、しかも豊かな歌が全編を彩っていた。
 今回のリサイタルは、東京文化会館の冊子「音脈」と演奏会チラシの原稿を書いたため、早くから公演を知っていて、非常に楽しみにしていた。
 この空間で聴くバッハは、本当に贅沢な音楽だ。いつもはもっと大きなホールゆえ、チェロの音が拡散してしまうことが多い。しかし、このホールでは弓のきしむ音や弦のこすれる音まですべてリアルに聴こえてくる。それゆえ、新たなバッハを発見する、えもいわれぬ喜びに満ちたひとときとなった。
 マイスキーは、この作品に関し、いつもこう語っている。
「年齢を経るごとに、私の演奏は若くなっていく気がします。バッハの無伴奏も、若いころは生真面目で一生懸命に演奏していて、多分に堅い感じでしたが、2度目の録音のころから自由で自然な演奏ができるようになりました。いまはもう、演奏するたびにより大きな自由が得られるようになっています」
 まさに、いずれの作品も装飾音が自由自在に加えられ、テンポも生き生きとした速さを保ち、その奥に演奏する楽しさが見え隠れしている。
 終演後、楽屋を訪ねると、パソコンに入っている子どもの写真をたくさん見せてくれた。
 マイスキーは、いまの奥さまとの間に3人の子どもがいるが、もうすぐ4人目の子どもが生まれる予定だ。
 彼は苦難の人生を経験し、当初はそれが演奏に全面的に反映していたが、いまは幸福な人生を歩んでいる。子どもの写真を満面の笑みをたたえながら見せてくれるその表情を見ながら、私は本当によかったと心から思った。
 マイスキーの本を書いたころは、彼が人生の闇を語るその辛そうな表情に、ここでインタビューをやめようかとも思った。いまのおだやかな表情は、想像ができないほどだった。
 彼はいう。
「私の人生は極端なんですよ。すごくいいか、すごく悪いか。いまはすべてを受け入れ、子どもたちの幸せを願っています」
 今日の写真はにこやかな笑みを見せるマイスキー。彼のタブレットには3人の子どもたちの写真が刻印されている。もうすぐ、ひとり付け加えた写真に変えなくちゃね(笑)。



| 親しき友との語らい | 21:40 | - | -
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