Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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牛田智大
 牛田智大は、演奏を聴くたびに大きな成長を示し、若芽がぐんぐん空に向かって伸びていくような勢いを見せている。
 今日は、東京オペラシティコンサートホールでリサイタルがあった。
 最近は、モスクワ音楽院ジュニア・カレッジに在籍。ユーリ・スレサレフ(モスクワ音楽院教授)、ウラディミル・オフチニコフ(モスクワ音楽院付属中央音楽学校校長)の各氏に師事し、ロシア作品を学んでいるため、今日のプログラムにもプロコフィエフのピアノ・ソナタ第7番「戦争ソナタ」と、ラフマニノフのピアノ・ソナタ第2番が入っていた。
 身長もだいぶ伸び、すっかり大人っぽくなった牛田智大は、まずモーツァルトのピアノ・ソナタ第11番「トルコ行進曲付」で、変わらぬ清涼で純粋でまっすぐな音楽を披露。ピアノを弾くことが楽しくてたまらない、といった表情も以前とまったく変わらない。
 次いでプロコフィエフが登場。ロシアの先生たちから学んでいるロシア音楽の神髄を遺憾なく発揮した演奏だったが、この作品はやはり肉厚で深遠で暗い情熱がただよう曲想ゆえ、より分厚く野太く強靭なタッチが必要だと思われる。
 ただし、全編を支配するロシア的な抒情、プロコフィエフならではの個性的な旋律美、斬新な和声やリズム、多分にシニカルでクールな表情、均整のとれた構成などを鋭敏な感性でとらえ、ひたむきに表現している様子に、日々のたゆまぬ研鑽と努力を強く感じさせられた。
 後半は、ベートーヴェン/ラフマニノフの劇付随音楽「アテネの廃墟」よりトルコ行進曲、バガテル「エリーゼのために」に次いでピアノ・ソナタ第14番「月光」が演奏された。
 この「月光」が、現在の牛田智大の心情を存分に表している。みずみずしく、淡々と、特有の美音で紡いでいく「月光」は、聴き手の心にゆったりと染み入ってくる演奏で、ベートーヴェンのあふれんばかりのロマンを描き出していた。
 そして最後はラフマニノフ。これは冒頭から強靭なタッチが飛び出し、最後まで一気に聴かせた。一瞬たりとも弛緩することなく、哀愁を帯びた表情、ラフマニノフ特有の情感、ラブソディックな表現など、フィナーレにいくにつれ、熱気を帯びてくる。
 牛田智大は、ラフマニノフが大好きなのだろう。その作品に対する深い共感が熱演につながっているようだ。
 終演後、楽屋で会った彼は、まだラフマニノフの余韻のなかにいるような、紅潮した表情をしていた。
 モスクワ音楽院の先生たちに師事し、ロシア作品のレパートリーを徐々に広げている彼は、ペダルリングも変わってきた。次回の演奏も楽しみだ。
 今日の写真は、演奏が終わってもなお、音楽のなかに身を置いているような牛田智大。もっともっと成長してほしい、もっともっと前に進んでほしいと切に願うのは、デビュー当初からずっと聴き続け、取材を行っている私の欲なのかもしれない。


 
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