Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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エリーザベト・レオンスカヤ
 日差しが温かくなり、桜の開花情報が報じられるようになると、「東京・春・音楽祭」の季節到来だ。
 11年目を迎えたこの音楽祭は、上野のコンサートホールや美術館、博物館などを会場とし、今年は3月13日から4月12日まで開催されている。
 昨日は東京文化会館小ホールに、エリーザベト・レオンスカヤのリサイタルを聴きにいった。
 これは音楽祭の今年のテーマのひとつである「スヴャトスラフ・リヒテル生誕100年」の「リヒテルに捧ぐ」の演奏会。レオンスカヤはリヒテルとのデュオでも知られ、4月2日には同ホールでリヒテルとともに演奏したボロディン弦楽四重奏団との共演も組まれている。
 実は、昨年末、「ぶらあぼ」の記事のためにレオンスカヤにメール・インタビューを行った。10項目ほど質問を出したが、彼女はひとつひとつ非常に丁寧にことばを尽くして答えてくれ、内容の充実した原稿を書くことができた。
 今回のリサイタルは、日本ではなんと32年ぶりのソロ・リサイタル。得意とするシューベルトのピアノ・ソナタ第19番、第20番、第21番が組まれ、心に深く響く圧倒的な存在感を示すシューベルトが奏でられた。
 とりわけ印象に残ったのは、からだのどこにも力が入っていない自然体の奏法。手首がやわらかく、打鍵は強靭ながらけっして鍵盤をたたかず、楽器全体を大きく鳴らす。ペダリングも絶妙で、小さなホールゆえ、その足の動きまで細部にわたって見ることができた。
 まさに古きよきロシア・ピアニズムを体現する奏法で、レガートの美しさが際立つ。手首の位置、力の入れ方、フレーズの作り方、速いパッセージの扱い、主題のうたわせ方などを注意深く聴いていたら、晩年のリヒテルの奏法を思い出した。やはりデュオを組んでいると、似てくるのだろうか。
 シューベルトのピアノ・ソナタは長い。この日も、かなり長時間にわたる演奏となったが、彼女は即興曲を2曲もアンコールで演奏してくれた。
 その滋味豊かな調べは、ホールの隅々までしっとりとおだやかに浸透していき、私はしばし席を立てないほど深い感銘にとらわれた。
 レオンスカヤはインタビューで、こう答えている。
「ソナタ第21番は、私にとって特別な存在です。第2楽章は、ブリューノ・モンサンジョンによるリヒテルのドキュメンタリー・フィルムの最後で使用されていて、それを観るたびに特別な感情が湧いてきます。このソナタはリヒテルを象徴する大切な作品でもあります」
 さらに、こう続けている。
「第21番は、シューベルトという人間をいつわりなくありのままに表現しているソナタだと思います。私は今回の3曲のソナタに長い年月をかけて向き合ってきました。これまで積んできた経験と修練が演奏に反映されると思っています」
 このことば通り、レオンスカヤのシューベルトは、いつまでも心に残る強い印象をもたらす濃密な演奏だった。
 今日の写真は、「ぶらあぼ」のインタビューページ。ボロディン弦楽四重奏団との演奏に関しては、室内楽にも力を入れていることと、彼らとの共演も長年にわたるため、大切なパートナーとのこと。
「ボロディン弦楽四重奏団の間の取り方と表現力は、常に核心を衝いています」と述べている。4月2日はシューベルト、シューマン、ショスタコーヴィチが演奏される。


 
 
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