Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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ボロディン弦楽四重奏団withエリーザベト・レオンスカヤ
 レオンスカヤのピアノは先日シューベルトを聴いたばかりだが、今日はボロディン弦楽四重奏団との「リヒテルとともに奏でた音楽家たち」と題したコンサートを東京文化会館小ホールに聴きにいった。
 これは先日と同様に東京・春・音楽祭のコンサートのひとつで、シューベルトの弦楽四重奏曲第12番が初めに演奏された。
 その後はピアノが加わり、シューマンのピアノ五重奏曲変ホ長調作品44が前半の最後、そして後半はショスタコーヴィチのピアノ五重奏曲ト短調作品57が組まれた。
 一番驚いたのは、レオンスカヤの奏法の変化。ソロのシューベルトのときとは打って変わって、1音1音が強靭なタッチで確固たる意思をもち、ひとつの音に魂を賭けているようなピアニズムなのである。
 ボロディン弦楽四重奏団との共演が多い彼女は、彼らの弦の響きをしっかり支え、ときにリードし、4本の弦に語りかけ、叫ぶときもあり、静かにさとすような響きを放つときもある。
 シューマンは情熱的で叙情的で優雅でもあり、ピアノと弦楽器が丁々発止の音の対話を繰り広げる作品。彼らの古典的で伝統的な奏法が作品の幻想的な内容を鮮やかに浮き彫りにし、室内楽作品を聴く醍醐味を味わわせてくれた。
 この夜の白眉は、後半のショスタコーヴィチ。作曲家の真意を存分に理解でき、共感を得ることができるレオンスカヤとボロディン弦楽四重奏団ならではの演奏で、全5楽章からなる大作を一瞬たりとも弛緩することなく、緊迫感と集中力を保ち、高度な技巧と表現で聴かせた。
 バッハ風プレリュード、民謡に根差すフーガ、躍動感あふれるスケルツォ、ゆったりとした間奏曲、自由なロンドと曲が進むうちに、あまりにも内的感情の強いアンサンブルゆえ、ロシアの地へと運ばれていくような感覚にとらわれた。5人はショスタコーヴィチの魂の代弁者となっていたからだ。
 作品が内包する悲劇性、風刺、皮肉、対比、暗い情熱などが、作曲された時代の空気とともに蘇ってきたのである。
 とりわけレオンスカヤのピアノが圧倒的な存在感を放っていた。彼女のような奏法によるピアニストは、近年存在しなくなった。やはりリヒテルの時代を受け継ぎ、そのピアニズムを伝承している人である。
 今日の写真は、終演後のサイン会におけるレオンスカヤとボロディン弦楽四重奏団。





 今回の音楽祭は、生誕100年記念の「リヒテルに捧ぐ」というコンサートが多数組まれている。そして東京文化会館小ホールのスロープのところには、「リヒテルin Japan」 と題した記念写真が飾られ(昆田亨氏撮影)、リヒテル本人によるパステル画や直筆の手紙なども展示されている。



 
 
 
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