Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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木之下晃さん
 音楽写真家の木之下晃さんが、去る1月12日に亡くなり、今日はブルーローズ(サントリー小ホール)で「お別れの会」が催された。
 木之下さんには、単行本の写真をお借りするなど、とてもお世話になった。特に印象に残っているのは、彼の「声」。特有の声質の持ち主で、思ったことははっきり口にし、いろんなことを話してくれた。
 もっとも鮮明に覚えているのは、私が独立したときにいってくれたこと。
「人とつるんじゃいけないよ。アンタのよさが失われるから」
 当時、私は独立したてで、さまざまな問題を抱え、それにどう対処していいか日々悩んでいた。仕事先で会った木之下さんは、いつも私をはげましてくれ、印象に残ることばをかけてくれた。いまでも、そのことばは私の胸の奥にずっと残っていて、守らなげばならないミッションのように思える。
 木之下さんは、こういうことを話すとき、けっしてやさしく話すタイプではなく、ちょっぴりコワモテ。私はいつも木之下さんに特有の声で話しかけられると、背筋がピシッとする気持ちになったものだ。
「お別れの会」の最後に奥さまの登茂枝さんにごあいさつをしたとき、「人とつるむな」といわれたことを話すと、彼女はこういった。
「ごめんなさいね、勝手なことばかりいって。そんなこといったら、あなたが孤独な立場になってしまうかもしれないじゃない。思いついたことをすぐ口にする人だったものだから、気にしないでね」
 いえいえ、私はこの木之下さんのことばをとても大切に胸にしまい、大きな指針を得たと思っているんですよ。
 今日は木之下さんの次女で、ラジオの仕事をされているという貴子さんが司会をし、とても立派に大役をこなしていた。
 会は、小山実稚恵が演奏するショパンの作品で開幕し、関係者のお別れのことばがあり、木之下さんの仕事ぶりを伝える映像が流され、ホールでの会はひとまず幕を閉じた。次いでサントリーホールのロビーで歓談となり、360人という大勢の人々がそれぞれの形で木之下さんの思い出話に花を咲かせた。
 帰り際、紙袋をいただいたが、そのなかにはこの日のために編集したという「音楽写真家 木之下晃 たいせつな出会い」と題された冊子が入っていた。
 ヘルベルト・フォン・カラヤン、レナード・バーンスタイン、小澤征爾、マリア・カラス、ロリン・マゼール、ウラディーミル・ホロヴィッツをはじめとする世界の巨匠たちを撮り続けた木之下さんの写真と文(中日新聞・東京新聞夕刊での連載)が掲載されたものだった。
 木之下さん、すばらしい写真を残してくれてありがとうございます。ひたむきに仕事をされる姿を見て、いつも勇気をもらっていました。
 いまは先に天国に旅だった巨匠たちに再会し、またまた驚異的な集中力を発揮してシャッターを押しているかもしれませんね。
 デジカメの時代になってもフィルムにこだわり、モノクロの写真で自身の美学を貫いた木之下さん。その写真は「音楽が聴こえる」と称されているが、私は「演奏が見える」感じがする。アーティストが演奏している姿が鮮明に浮き上がってくるようで、想像力を喚起されるのである。ずっと写真をながめていると、その奥から音が立ちのぼってきて、演奏姿が見える感覚にとらわれる。
 木之下さんは「自身の作品を後世に残したい」という夢を抱き、木之下晃アーカイヴスを作り上げた。今後は、これがいい形で引き継がれ、より発展していくことを願ってやまない。
 今日の写真は、ブルーローズのステージに飾られた白い花々と、スクリーンに映し出された木之下さんの生き生きと仕事をする姿。
 もう1枚は、「たいせつな出会い」と題された木之下さんの冊子。




 
 
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