Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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マルティン・シュタットフェルト
 マルティン・シュタットフェルトの記事は何度か書いてきたが、やはり最初にシュトゥットガルトでインタビューをしたときの印象が強いため、その記事を「インタビュー・アーカイヴ」の第62回として再現したい。
 
[音楽の友 2005年11月号]

ドイツ・ピアノ界に誕生した超新星 マルティン・シュタットフェルト

「バッハは極端な面を備えている音楽だと思っている」

 いま、ドイツの若きピアニスト、マルティン・シュタットフェルトのデビューCD「ゴルトベルク変奏曲」が大ヒットを記録、そのウェーブがドイツからヨーロッパ各地へと広がりつつある。
 これはシュタットフェルトが2003年10月に自分でスタジオ録音したものをレコード会社に送り、即座にリリースが決定したもの。以後、バッハの「イタリア協奏曲・シンフォニア」、モーツァルトの「ピアノ協奏曲第20番&第24番」など、次々と録音が行われている。
 今夏は音楽祭への出演が相次ぎ、8月27日と28日にはシュトゥットガルト音楽祭に出演、「21世紀のバッハ」と題したコンサートで「平均律クラヴィーア曲集」を演奏した。
 録音でも感じられたが、彼は作品を完全に自分のものとし、確信をもって弾いている。「ゴルトベルク変奏曲」は、最初は静謐で瞑想的な音の世界が広がるが、次第にジェットコースターのようなスピードを味わうことができる。「平均律」も装飾音から和音、ペダルの活用、オクターヴの使用などに確固たる意志が感じられた。
「ぼくのバッハがジェットコースターのよう? いいねそれ、まさにその通りかも(笑)。ぼくはバッハは極端な面を備えている音楽だと思っているから。静と動、瞑想とエネルギーなど、さまざまな面で非常に異なる要素を秘めている。バッハは卓越した鍵盤奏者だったけど、子どもが練習するための作品を書く面も持ち合わせていた。その二面性に無性に惹かれる」
 
「バッハを弾いていると一種のエクスタシーを感じるんだ」

 シュタットフェルトは2002年ライプツィヒで開催されたバッハ・コンクールにおいて、最年少の22歳でドイツ人初の優勝者となった。
「自分の目指す道が評価されてとても光栄に思った。ぼくは6歳からピアノを始めたけど、7歳のときにはもうピアニストになりたいという気持ちを固めていたんだ。すごく練習が好きな子どもで、もちろん外でも遊んだけど、ピアノの前にすわっているのが一番快適だった」
 コブレンツの近くの小さな村で育つ。父親は獣医で、彼は4人兄妹の長男。時間の制限なしにいつでもピアノが弾ける環境だった。
「6歳のころから《平均律》を少しずつ弾き始めた。もうバッハがたまらなく好きで、愛を感じていた。バッハを弾いていると、一種のエクスタシーを感じるんだ。もちろん音楽に対する愛だよ。危険なヤツだと思わないでね(笑)。バッハ・コンクールのときも、聴衆と愛の交換ができたと感じた。ぼくは音楽を通して自分の考えを聴き手に伝えたい。音楽で対話をしたい。それが愛の交換だと思うんだ」
 おだやかで思慮深い話し方だが、趣味はクルマを飛ばすこと。いまはロシア文学に夢中で、片時も本を離さない。ワインにも目がない。
「バッハの偉大なところは、聴く人それぞれが異なった絵を思い描くことができること。ぼくも深い海にもぐっていくような不思議な感覚を味わう。先日、トーマス・クヴァストホフと共演したんだけど、彼のすばらしいバッハに感動した。やはりバッハは偉大だ!」

 シュトゥットガルトでの演奏は、まさに彼のことば通り、バッハへの愛に満ちていた。音楽祭の会場は宮殿内のホールで、音響と雰囲気がすばらしく、強い印象をもたらした。その翌年、2006年3月9日にはすみだトリフォニーホールで「ゴルトベルク変奏曲」1曲を1日だけ弾くために来日。同年の夏にはザルツブルク音楽祭に出演した。
 このインタビューのあと、彼は愛車を飛ばしてアウトバーンを駆け抜け、自宅へと帰っていった。家ではゆっくりワインをたしなむのだそうだ。
 今日の写真は、その雑誌の一部。長身のスリムな体躯の持ち主で、モデルのよう。先日の来日公演のときも、10年経っているのにその雰囲気はまったく変わっていなかった。ちょっと安心(笑)。

| インタビュー・アーカイヴ | 21:12 | - | -
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