Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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アレクサンダー・クリッヒェル
 久しぶりに、若手ピアニストで響きが心にぐっとくるピアニストを見つけた。1989年ハンブルク生まれのアレクサンダー・クリッヒェルである。
 ソニー・クラシカルとの専属契約による第1弾として登場したのは、シューマンやシューベルトの歌曲のリスト編で、メンデルスゾーンの「無言歌集」からの選曲も含まれている。
 この録音を聴き、繊細なタッチと豊かにうたう表現に魅せられ、昨日はインタビューでその奏法についていろいろ聞いた。
 クリッヒェルは名教師として知られるウラディミール・クライネフに師事し、彼の最後の弟子となった。恩師からは「ピアノをうたわせる」ことを徹底して学び、その教えがいまの奏法の基礎となっているという。
「本当に最後の弟子なんです。ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番をレッスンしていただいたのが最後で、直後に急逝してしまった。もう大きな衝撃を受け、2カ月ほどピアノがまったく弾けない状態に陥ってしまったほどです」
 だが、そのころソニーから録音の話を持ちかけられ、「クライネフ先生の導きだと感じた」そうで、この時点で立ち直り、再びピアに向かうことができるようになったという。
 今日は王子ホールでリサイタルがあり、モーツァルトが19歳のときに書いたピアノ・ソナタ第6番からスタート。かろやかに、躍動感あふれる響きで、ロココ的な空気を編み出した。
 次いでショパンの「モーツァルトの《ドン・ジョヴァンニ》の『お手をどうぞ』による変奏曲」が登場。主題と変奏を鮮やかに対比させ、また絢爛豪華なピアニズムと素朴な歌のコントラストも見せ、ショパンの名人芸を前面に押し出した。
 前半の最後はシューベルト/リストの「セレナード《白鳥の歌》より」、「魔王《12の歌》より」が演奏され、ここでは超絶技巧が遺憾なく発揮され、「魔王」ではホール全体に鳴り響く強靭な音が印象的だった。この音量は、もう少し大きなホール向きかな(笑)。
 後半はラフマニノフの「楽興の時」全6曲。クリッヒェルはクライネフの後、現在はロンドンの王立音楽大学でドミトリー・アレクセーエフに師事しているが、ロシア人の先生たちから学ぶロシア作品は特別とのことで、このラフマニノフも、楽器の鳴らし方、レガート奏法、ぺダリング、主題のうたわせ方などにその教えが生きていた。
 アンコールは、サポートしてくれた南アメリカの支援者が亡くなり、その人に捧げるために作曲したという「ララバイ」をしみじみと演奏。さらに大好きだという、クララ・ロドリゲスの「エル・ディアブロ・ウェルト」というリズミカルな曲を弾き、リサイタルの幕を閉じた。
 今回のインタビューは、とても内容が濃いものとなった。これもHPのリニューアル後のインタビュー・ページで紹介したいと思う。
 今日の写真は、インタビュー時の“アレックス”。食べても太らない体質だそうで、とてもスリム。ドイツ人にしては珍しく、ビールは好まずワイン党だとか。



 
| アーティスト・クローズアップ | 23:17 | - | -
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