Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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マーティン・ヘルムヘン
「ヘルムヘンのピアノに恋をした」のは、何年前のことだろうか。おそらく、2004年の初来日のときだったと思う。
 当時、まだマーティン・ヘルムヘンの名前は、日本ではあまり知られていなかった。だが、ヨーロッパでは知性的でリリカルなピアニズムの持ち主として知られ、海外出張などのときに、よく町で演奏会のポスターを目にしたものだ。
 当時から、私は情感豊かでけっして鍵盤をたたかず、かろやかでありながら思慮深い表現に心が奪われていた。
 彼がトッパンホールでコンサートをするようになったのは、2008年から。以来、トリオなどを含め、3度出演。
 今回は、先日書いたように7月31日にヴァイオリニストの日下紗矢子とのデュオを披露し、8月2日にはリサイタルを行った。
 毎回、ヘルムヘンのプログラムはあるひとつのテーマに基づき、練りに練った曲目が並ぶ。今回は、変奏曲がテーマ。
 まず、シューベルトの親友のひとりといわれる「ヒュッテンブレンナーの主題による13の変奏曲」からスタート。聴き手を「シューベルティアーデ」のサロンへといざなうような親密な空気を生み出した。
 次いでウェーベルンの今日演奏される唯一のピアノ作品が登場。200年以上前の作曲家たちと現代の聴衆との間に位置するウェーベルンが、シューベルトと次なるシューマンの作品をつなぐ役割を果たしている。
 シューマンは幻想曲の様相を呈している「アベック変奏曲」が選ばれ、こうした作品はヘルムヘンの美質が存分に発揮される。主題に基づく変奏が幾重にも変容し、シューマンならではの変奏の妙が濃厚な音色で奏でられた。
 後半は、ベートーヴェンの「ディアベリの主題による33の変奏曲」。これが当日のメインを成す作品で、ベートーヴェン最大の変奏曲であり、変奏技法の集大成ともいうべき1時間近い大作を、ヘルムヘンは一瞬たりとも弛緩することなく、緊迫感と集中力みなぎる演奏で聴かせた。
 この変奏曲は、素朴な主題をさまざまな形に変化させていくベートーヴェンの傑出した才能が堪能できる作品。主題が自由に飛翔し、小宇宙を形成するため、聴き手も天上へと招かれ、音楽に心から酔える。
 私は、またまたヘルムヘンのピアノに深く魅了された。
 彼は来春、クリスティアン・テツラフらとの室内楽の演奏のために日本に戻ってくる予定である。また、詳細が判明したら、すぐに情報を流したいと思う。
 いつも彼のピアノは私の心に深い感銘をもたらし、幸せな気持ちにさせてくれる。次回の室内楽もメンバーが充実しているようで、本当に楽しみだ。
 今日の写真は、終演後のサイン会でのヘルムヘン。大作を弾き終え、汗びっしょりで、額にかかった髪も濡れている。演奏中は暗譜ゆえ、メガネはかけていなかったが、サインをするときはメガネ着用だ。


 
 
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