Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

ブログ

<< 辻井伸行 | main | ストレスとの戦い >>
小林愛実
 ワルシャワではショパン国際ピアノ・コンクールの本選がこれから始まるところだが、日本人で唯一このラウンドに進んだ小林愛実は、14歳のころから知っているピアニストである。
 彼女は当時からYoutubeの演奏映像視聴数がクラシックの分野でダントツ1位を記録し、話題を集めていた。ひたむきに鍵盤に向かい、完全に音楽のなかに没入し、全身全霊を傾けて演奏する姿は一瞬たりとも目が離せなくなるもので、ほとんど目を閉じ、からだ全体を楽器に預けるようにして弾く姿に、みな驚きの表情を隠せなかったものだ。
 1995年生まれの彼女は、さまざまなコンクールの最年少記録を次々に塗り替え、10代でパリ、ニューヨーク、モスクワ、ワルシャワでも演奏し、高い評価を得ていた。そして2010年、愛してやまないバッハ、ベートーヴェン、ショパンの作品でEMIからCDデビューを果たした(2008年6月ニューヨークで録音)。題して「小林愛実 デビュー!」。そのライナーノーツを書き、このころから彼女にインタビューを行い、演奏を聴き、食事をするなど、親しくおつきあいをすることになった。
 この新譜では、特に「ワルトシュタイン」が新鮮な響きで迫ってくる。
「ベートーヴェンのこのソナタはすごく難しいけど、弾くたびに好きになる。一番好きなのは第1楽章。最初の8分音符の刻みからベートーヴェンのすばらしい世界にスッと入っていける感じがします。第3楽章もスピード感あふれ、華やかでフィナーレまで一気に突っ走ることができるので魅了されます。でも、この曲はいつもテンポが速くなってしまい、先生に注意されてばかり(笑)」
 山口県出身の彼女は3歳よりピアノを始め、2007年より桐朋学園大学音楽学部付属「子供のための音楽教室」に特待生として入学。8歳から名教師として知られる二宮裕子に師事している。
「いまは4時半に学校から戻り、夕食をはさんで9時まで先生にレッスンを受けています。私は練習嫌いなのでいつも怒られてばかりいるけど、ステージで弾くのは好きなの。録音もハードだったけど、すごく楽しかった」
 当時、中学生だった彼女はこう語っていた。あっけらかんとした性格で、趣味は「食べることと寝ること」。さらに「背が高くてカッコいい男の人が好き」などといって笑っていたが、いったんピアノに向かうと表情が一変し、集中力に満ちた演奏が展開された。
「目を閉じて弾くのは自分では意識していない。曲のなかに入ってしまうと、どんな顔をして弾いているかわからなくなる。ショパンも大好きで、自分の心が素直に表現できる気がして、もっともっと弾きたくなるの」
 新譜ではショパンのスケルツォ第1番、第2番、ノクターン第20番が収録されているが、マズルカも好きで、さらに今後はバラード第1番に挑戦するといっていた。
「バラード第1番はすごくカッコいい曲なので早く弾きたかったけど、先生にまだ早いといわれ続けてきた。ようやく今年OKが出たの。うれしくて譜読みするのが楽しみ。ステージで演奏する日が待ち遠しい」
 彼女の演奏は聴いていると元気が湧いてきて前向きに物事を対処しようという気持ちになる。演奏からみずみずしいエネルギーが伝わり、自然に内なる活力が湧いてくるのがわかるのである。日本を元気にしてくれる、そんな若き逸材の誕生にクラシック界も活気づくのではないかと思った。
 そんな彼女は、2013年9月からアメリカのカーティス音楽院に留学、さらなる研鑽を積んでいる。そして今年、ショパン国際ピアノ・コンクールに参加しているのである。現在、20歳。コンクールの映像を見ると、大人っぽくなり、演奏も成熟し、深みが増している。
 ぜひ、本選で実力を発揮し、いい結果を残してほしいと願う。
 今日の写真は、デビューCDのジャケット。今夏、ワーナーから再発売されたばかりだ。

| アーティスト・クローズアップ | 21:39 | - | -
CALENDAR
S M T W T F S
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
<< August 2017 >>
CATEGORIES
ARCHIVES
LINKS
PROFILE