Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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ダニール・トリフォノフ
 ダニール・トリフォノフの演奏を初めて聴いたときの衝撃にも似た感情は、いまだ忘れることができない。
 2010年のショパン・コンクールで第3位入賞を果たしたが、順位を忘れさせるほどのクオリティの高い、存在感のあるショパンを披露したのである。
 もっとも印象に残っているのは、その透明感あふれる美音と、各々の作品の真意に近づいていくひたむきな姿勢。
 トリフォノフはスリムな体躯でありながら、芯の強い音を放ち、伝統的なロシア・ピアニズムを体現している。
 それはグネーシン音楽院で師事したタチヤーナ・ゼリクマン、現在クリーブランド・インスティテュートで就いているセルゲイ・ババヤンの教えによるものだろうが、打鍵の深さと美しいレガート、楽器を豊かに鳴らし、歌を表現することが基本となっていて、そこに作曲家の顔をのぞかせ、作品の構造の内部へと入り込んでいく。
 トリフォノフの10月29日の東京オペラシティコンサートホールの演奏は、いまや世界の舞台を飛び回っているトリフォノフの面目躍如たるものだった。シューベルトやブラームスなどの作品が組まれていたが、とりわけ後半に登場したラフマニノフのピアノ・ソナタ第1番が出色で、この作曲家をこよなく愛す心情が全編に息づいていた。ファウスト、グレートヒェン、メフィストフェレスの3人を鮮やかに描き出し、最後のコーダまで一瞬たりとも弛緩することなく、一気に弾き切った。
 その鮮やかなテクニックは、アンコールのシュトラウス(トリフォノフ編):喜歌劇「こうもり」序曲で完全に爆発。10本の指とは思えぬ(?)早業で、会場を沸かせた。まさにエンターテイナーである。
「コンクールはスタート台。その後の活動いかんでその優勝者の人生はいかようにも変わる」とよくいわれる。チャイコフスキー・コンクールの覇者、トリフォノフは、コンクール後もひたすら研鑽を重ね、確実に階段を上っている。
 最近は年間120回もコンサートを行っているというが、そのエネルギーはどこからくるのだろうか。今回はインタビューが延期となり、11月3日に行うことになった。いろんな話が聞けそうだ。
 
 
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