Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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マリア・ホセ・シーリ
 昨日は、一日中秒読みのようなスケジュールをこなさなくてはならなかった。
 まず、午前中にヤマハのWEB「音楽ジャーナリスト&ライターの眼」の連載記事を書いた。今週のテーマは、アレクサンドル・タロー。バッハの「ゴルトベルク変奏曲」をリリースしたばかりで、このライナーノーツを書いたため、新譜に触れながら以前のインタビューを交えて記事を作った。
 午後は、新国立劇場に出向き、前日聴いた「トスカ」のヒロイン、マリア・ホセ・シーリにインタビューを行った。
 とてもフランクで温かい人柄。さすがにオペラ歌手だけあって、はなやかさと美しさと存在感があり、どんな質問に対しても、ことばを尽くして話してくれる。
 インタビューが進むうちに、プライヴェートな話題も飛び出し、若くして子どもが生まれたためキャリアを作っていくのが大変だったといった。
 ウルグアイの牧場を所有し、レストランとスーパーを経営している両親のもとに生まれ、ひとりっ子ゆえ、いろんな楽器を習わせてもらったようだ。しかし、ひょんなことから声のよさを認められ、声楽家を目指すことになる。
 その後はオペラ歌手まっしぐら。現在は世界各地のオペラハウスからひっぱりだこの人気ソプラノとなった。
「最初はピアニストになりかたかったの。いまでもピアノを弾きながら歌の練習をしているのよ」
 さまざまな話題がどんどん出て、有意義な時間を過ごすことができた。
 このインタビューは、「日経新聞」、私のHPのリニューアル後のインタビューコンテンツなどに書き分けをしたいと思っている。
 インタビューの最後に、彼女は「ひとつお願いがあるんだけど」といって、しんみりした表情で話し出した。
 ウルグアイの親しい友人のマリオ・ヴィラルバという人が、彼女が東京で「トスカ」をうたうのなら、ぜひ聴きにいきたいといっていたのだが、つい先ごろ急逝してしまったのだという。
「すぐに国に戻るわけにもいかず、とても大きなショックを受けているの。その彼の名前がたまたまマリオでしょう。トスカがマリオ、マリオと呼びかけるところは、胸が張り裂けそうになる。いま、私はこのトスカの舞台をすべて友人のマリオに捧げたいと思って、気持ちを込めてうたっているのよ。どこかで、このことを書いてもらえないかしら」
 私は「すぐにブログに書きます」と約束した。すると、マリアはとてもうれしそうな表情をし、「ありがとう。本当にうれしいわ。マリオに捧げる舞台のことをみんなに知ってほしかったから」
 マリア・ホセ・シーリの歌声は、先日のオペラ初日のときにも書いたが、すばらしく鍛え抜かれた歌唱で、演技も自然、トスカその人になりきっている。
 インタビューのときには「次にうたう役をいま必死で勉強しているの」と、ヴェルディの「アッティラ」のスコアを大事そうに抱えていた。
 楽譜を見せてもらうと、自分のうたうところは歌詞にマーカーで記しが施してあり、他の役柄のところにやオーケストレーションのところにも注意書きがあった。
 このインタビュー後、すぐに彼女はレッスン室にこもって練習するようだった。
 さて、インタビューが終わるとすぐに自宅の近くの仕事部屋にいき、工務店の人たち、マンションの理事長さんとリフォームの打ち合わせを行った。
 この夜は、フランクフルト放送交響楽団のコンサートがあるため、サントリーホールに出かけなくてはならない。
 一度、自宅に戻り、メールをチェックしたり電話を受けたりし、急いでホールに駆け付けた。コロンビア出身の指揮者、アンドレス・オロスコ=エストラーダは非常に躍動感に満ちた音楽作りをする人で、伝統のあるオーケストラに新風を吹き込む演奏を披露した。
 前半はグリンカの歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲から開始。次いでアリス=紗良・オットをソリストに向かえてチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番が登場。彼女のインタビューをプログラムに書いたが、アリスはこのコンチェルトをすでに70回も演奏しているという。
 まさに手の内に入った演奏だったが、初めて共演する指揮者とは、何か新しい方向を目指したいという前向きな気持ちが全編にあふれていた。
 後半はベルリオーズの「幻想交響曲」。私はこの第2楽章の「舞踏会」のワルツが大好きなのだが、オロスコ=エストラーダはウィーンで学んでいるためか、舞踊のリズムが非常に自然で、柔軟性に富んでいた。
 コンサートが終わったのは、もう21時半に近いかったが、ここから親しい音楽事務所のОさん、レコード会社のОさんと一緒に飲み会へと繰り出した。
 女3人で2時間ほどおしゃべりをし、自宅に戻ったら、もう翌日になっていた。
 ああ、ずいぶん長い一日だった。
 今日の写真は、ふだん着のマリア・ホセ・シーリ。彼女は来年4月、新国立劇場の「アンドレア・シェニエ」の舞台に立つ予定になっている。それまで超多忙の身で、各地を飛び回るようだ。オペラ歌手は、タフじゃないと務まらないわね。


 
 
 
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