Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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ジョン・エリオット・ガーディナー
「また次は、こんな話をしたい。ぜひ近いうちに」
 こういわれて最初のインタビューを終えることがあるが、その後なかなかそのアーティストに話を聞く機会に恵まれず、続きのインタビューがかなわないことがある。
 イギリスの指揮者、ジョン・エリオット・ガーディナーもそのひとりだ。
 私は彼の細部までピリピリと神経が行き届いた演奏が好きで、聴きながらこちらも緊張感でいっぱいになるのがたまらない。
 癒されるとか、心がおだやかになるという演奏ではけっしてない。
 完璧主義者であり、神経質な面もあり、とても怖い存在だと思っていたのだが、インタビューでは真摯な答えを戻してくれ、そのインタビューはいまなお心に強く焼き付いている。
 インタビュー・アーカイヴ66回目は、そのマエストロ・ガーディナーの登場だ。

[FM fan 1992年11月9日〜22日号 No.24]

いまではベルリオーズやフォーレも演奏しています

 アーリー・ミュージックの旗頭として知られるガーディナーが、手兵イギリス・バロック管弦楽団を母体とした19世紀用の時代楽器オーケストラ“レボリュショネール・エ・ロマンティック"を結成し、ベートーヴェンの全交響曲を演奏するために来日した。
 ガーディナーの集中力のすごさはディスクからも十分にうかがい知ることができるが、彼はコンサートのとき、楽章の合間に退席する人の小さな靴音が止むまでじっとその人を目で追っていたり、インタビュー中に飲み物を届けにきた人の声が止むまで話を中断したりと、かなり神経を張りつめた様子を見せていた。
 しかし、日本のアップルジュースが気に入り、リハーサルやコンサートの終了後にはミネラルウォーターなど見向きもせず、ひたすらアップルジュースのコップを探すというユーモラスな一面ものぞかせていた。

イタリアには小さいころから憧れていた


――ガーディナーさんがモンテヴェルディ合唱団を作られたのは21歳のときですが、この合唱団にモンテヴェルディの名を冠した特別な理由というのは、レパートリーを中心にすること以外に何かあるのでしょうか。
ガーディナー 私はイギリス生まれで、いうなれば北ヨーロッパの人間です。ヨーロッパでは北に住む人ほど南に惹かれるものなんです。特に私はイタリアには小さいころからずっと憧れていて、15歳で指揮を始めたときからイタリア音楽を指揮することに非常な喜びを感じてきました。
――それはゲーテがイタリアに心動かされる心情と同種類のものですか。
ガーディナー すごく近いでしょうね。芸術家の多くがイタリアに魅せられてきましたから。画家のデューラーもそうでしょう。シュッツもヴェネツィアに勉強に行きましたし…。
 私がモンテヴェルディに惹かれる一番の理由は、彼の音楽が非常にイタリア的であることのほかに、人間界のことに深い造詣があると感じるからです。モンテヴェルディの音楽はそれをことばとして伝えることができるものです。それをぜひ自分の合唱団で実践したかった。もちろん、オーケストラも含めてという意味ですが…。
 私がオリジナル楽器の指揮を始めたころは、まだそれらの楽器を十分に演奏できる人がいませんでした。でも、ここ10年くらいで演奏者のテクニックがぐんとアップし、時代もそういう方向に向いてきて、一種のブームが起きた形になったのです。
 いつの時代にも新しいことに挑戦するのは難しいもので、バッハの時代でもバッハは合唱団のレヴェルを上げることや、オーケストラに自分の作品を理解してもらうことにとても苦労したと思うんです。
 私の場合にも、同じことがいえます。合唱団とオーケストラの一体化と完璧性を常に追い求めていますから。
――「ミサ・ソレムニス」が大変な評判になりましたが、まさにその結晶ともいうべき録音だったわけですね。
ガーディナー あの作品は、私がもっとも愛してやまないものなのです。バッハの作品にとても精神性の高いものを感じますが、ベートーヴェンの作品にもバッハとはまた違った精神性の深さを感じ、精神の高揚を覚えます。
 ベートーヴェンは「ミサ・ソレムニス」という作品を通して、神の偉大な存在にくらべ、人間というのはなんと小さなものなのだろうということをいいたかったのだと思います。
 この点がバッハの作品と根本的に異なっているところです。

いつもスコアを抱えて走っている感じ


――最近はレパートリーがかなり広がってきましたよね。近代楽器のオーケストラの指揮もなさっていますし。
ガーディナー 最初はもちろん大好きなモンテヴェルディからスタートし、それからバロックと前古典派のオペラやオラトリオの復活上演などを試みました。
 それから徐々にハイドンやモーツァルトまでレパートリーを拡大していき、いまでは19世紀の作品もかなり演奏しています。
 最近はベルリオーズやフォーレも加わってきましたしね。やりたいことがたくさんありすぎて、時間がとてもたりません。いつもスコアを抱えて走っている感じです。

 多忙を極め、常に神経を緊張させているガーディナーの心のやすらぎは、家族とのだんらんから生まれる。イギリスの南西に父親と叔父さんが残してくれた大きな農場と森があり、そこで家族と過ごす時間が一番のリフレッシュ・タイムだそうだ。
 9、6、3歳の3人の子どもたちは、みな歌が好きで、次にガーディナーがヨーロッパで指揮をする「フィガロの結婚」に出演することが決まったとか。リハーサル前のごく短時間のインタビューだったため、ひとつの話題に集中してじっくり質問できなかったことを悔やんでいたら、マエストロは「次はぜひ、ヘンデル談義でもしましょう」ともうれしい提案をしてくれた。

 今日の写真は、その雑誌の一部。あれからだいぶ年月が経過してしまったが、次にガーディナーに会えるのはいつになるだろうか。ヘンデルは私がこよなく愛す作曲家。ヘンデル談義、待ち遠しいなあ。


 
| インタビュー・アーカイヴ | 21:38 | - | -
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