Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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クラウス・フロリアン・フォークト
 約70分、幻想的で内的エネルギーに満ちた想像性に富む歌声を全身にまとい、別世界で浮遊していた。
 なんという幸せな時間だろうか。
 こういう瞬間を「至福のとき」と表現するのだろう。
 今日は、東京文化会館小ホールに、クラウス・フロリアン・フォークトのうたうシューベルトの「美しき水車屋の娘」を聴きにいった。
 彼は新国立劇場で「ローエングリン」をうたっていたが、今日はリートである。しかも、小ホールというぜいたくな空間でのリート・リサイタル。
 すぐそばでフォークトがうたっていると、臨場感あふれ、こまやかな息遣いまで聴こえ、ともに呼吸をしているような感覚に陥る。
 いつもはオペラの舞台衣裳を身に付けているためわかりにくいが、ノーネクタイの白いシャツに光沢のある上着をはおっている服装だと、分厚い胸から繰り出す呼吸がリアルに伝わってくる。
 先日、オーボエのモーリス・ブルグと若尾圭介のインタビューにおいて、「音楽家に大切なのは呼吸法」という話で盛り上がったが、まさに歌手はこれに尽きる。
 フォークトのブレスは、からだが微動だにしない。完璧なる呼吸法がなされていて、どんなに強いパッセージや長い旋律をうたうときも、ブレスはいつ行っているのだろうと思うほど自然である。
 しかも、ひとり芝居のように歌詞の内容に合わせて抑制された演技を加え、豊かな声量を絶妙にコントロールし、詩と音楽の融合を図る。
 まさに、繊細で精確で完璧なるブレスが必要となる。
 シューベルトの美しい旋律が、フォークトの声にかかると立体感を帯び、創造力を喚起し、ホールの隅々まで水車屋の空気で満たされていく。
 以前の来日時にインタビューしたとき、とてもラフな格好でにこやかな笑みをたたえ、ごく自然な感じで現れたが、今日も終演後は人あたりのいい笑顔を見せた。
 オペラ歌手のうたうリートは、本当に印象深い。彼の高音は非常に強靭で輝かしく張りがあり、小ホールの空気を揺るがすほどだった。
 ピアノは息の合ったヨブスト・シュナイデラート。オペラのコレペティトールやバイロイトのマスタークラスのピアノを担当しているピアニストで、フォークトのオペラティックな歌唱にピタリと寄り添っていた。
 こういう魂が浄化するような歌声を聴いた日は、脳が活性化するためか、いつまでも眠くならない。
 テノールがうたう「美しき水車屋の娘」は、やはり最高である。曲の数々が、いつまでも頭から離れない…。
 今日の写真は、リサイタルのチラシ。やっぱり「白鳥の騎士」の風貌だよねえ(笑)。
 でも、世界的なスター歌手なのに、フォークトはとても気取らないフランクな性格で、終演後に楽屋の出口で長蛇の列となって待っているファンのひとりひとりにサインをしたり握手をしたり話をしたり…。サービス精神旺盛で、それもごく自然にこなしてしまう。それゆえ、またまたファンが増えてしまう。

| クラシックを愛す | 23:37 | - | -
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