Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

ブログ

<< クラウス・フロリアン・フォークト | main | 浜田理恵 >>
リュカ・ドゥバルグ
 ギドン・クレーメルは、国際コンクールで優勝を逃したものの、すばらしい才能を持ち合わせている新人を見つけ出すのが得意である。
 以前、ジョージア(旧グルジア)出身のピアニスト、カティア・ブニアティシヴィリにインタビューしたとき、2008年のルービンシュタイン国際ピアノ・コンクールで彼女の第3位入賞が決まった直後、クレーメルが直接電話をかけてきて、共演したいといったという話を聞いた。
 カティアは優勝したわけではなかったため、この申し出にはかなり驚いたという。クレーメルはインターネットのライヴ配信でコンクールの演奏を聴いていた。
「ギドンは優勝、入賞は関係ない。私はきみの演奏が気に入ったから、一緒に演奏したいと思ったんだといったの。本当に感激したわ」
 以後、クレーメルはカティアと何度も共演し、トリオも組み、日本でも演奏を披露し、新人である彼女が世に出ていくために力を尽くした。
 そして今度は、2015年のチャイコフスキー国際コンクールで、優勝の呼び声が高かったものの第4位という結果に終わったフランスのピアニスト、リュカ・ドゥバルグとの共演である。
 リュカは、コンクールの全部門参加者のなかで、唯一モスクワ音楽評論家賞を受賞した。演奏曲目のなかでは、第1次予選で演奏したラヴェルの「夜のガスパール」が衝撃的な演奏としてとらえられ、一気に人気が高まった。
 リュカのもとにも、クレーメルからコンクール直後に電話が入り、共演が決まったという。
 リュカのデビューアルバム「スカルラッティ・ショパン・リスト・ラヴェル」(ソニー)は、まさに新たな光に照らされているような輝かしいアルバムで、私は冒頭のスカルラッティのソナタ イ長調K208(L238)の柔軟性に富む詩的で官能的な弱音にまいってしまった。
 今日は、クレーメルとリュカのデュオ・リサイタルがサントリーホールで行われ、ラヴェルのヴァイオリン・ソナタ、同「夜のガスパール」、イザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第5番、フランクのヴァイオリン・ソナタが演奏された。
 スリムな容姿のリュカは、指もものすごく長い。そのしなやかな指から紡ぎ出される弱音は、録音で聴いた衝撃を上回るもので、演奏はかなり個性的。主題のうたわせ方、強弱のバランス、音と音との絶妙の間などが特有のこだわりに基づいている。クレーメルのヴァイオリンとの丁々発止のやりとりでも、一歩もひけをとらない。
 クレーメルは真の天才ゆえ、いずれの作品もいつもながらの完璧な奏法と表現力に根差したものだが、リュカはそこに新鮮な空気を送り込んでいく。
 よく、ステージから楽屋に戻るとき、若手演奏家は大先輩に遠慮して自分はさっとうしろに身を引くものだが、リュカはクレーメルの肩に手を置いたり、ふたりで話ながら、スタスタと前に歩いていったりする。
 まったく臆することなく、自然にふるまう様子は、すでによきパートナーとしての地位を確立しているように見えた。
 今日の写真は、新譜のジャケット。リュカは11歳という遅い年齢でピアノを始め、まったくピアノを弾いていない時期もあり、理学や文学を学んでいたそうだが、レナ・シェレシェフスカヤ教授と巡り会い、ピアニストを目指した。いまやゲルギエフをはじめとする偉大な指揮者からも共演のオファーが絶えないという。
 ぜひ、近いうちにリサイタルを聴きたい!


| アーティスト・クローズアップ | 22:49 | - | -
CALENDAR
S M T W T F S
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031    
<< October 2017 >>
CATEGORIES
ARCHIVES
LINKS
PROFILE