Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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レ・ヴァン・フランセ
 フランスの風を意味する木管アンサンブル、レ・ヴァン・フランセは、聴くたびに新たな発見を促すグループである。
 フルートのエマニュエル・パユ、オーボエのフランソワ・ルルー、クラリネットのポール・メイエ、ホルンのラドヴァン・ヴラトコヴィチ、バソンのジルベール・オダン、そしてピアノのエリック・ル・サージュは、いずれ劣らぬ名手ぞろい。
 今日は、東京オペラシティコンサートホールでコンサートがあり、プログラムはレ・ヴァン・フランセの委嘱によって書かれたジャン・ド・パーク(1948〜)の「復活祭の歌」からスタートした。
 これは2016年8月3日にメイエ、パユ、ル・サージュらの主宰によるサロン・ド・プロヴァンス音楽祭で初演されている。J.S.バッハのカンタータで用いられたルター作による復活祭のコラール「キリストは死の縄目につながれたり」を主題とした変奏曲形式の作品である。
 次いでベートーヴェンの「ピアノと管楽のための五重奏曲」作品16が密度濃いアンサンブルで奏され、しかも各楽器の特質が存分に披露された。とりわけ、ホルンの底力が光った。
 後半は、アルベリク・マニャールの「五重奏曲」作品8が演奏されたが、これはナマで聴く機会に恵まれない珍しい作品。自在な転調と陰影の妙が楽しめる作品で、オーボエがエキゾチックな味わいを醸し出していた。
 最後はプーランクの「六重奏曲」。全員が水を得た魚のように自然で快活で流麗な響きを聴かせ、プーランクの複雑な内面を描き出すように、内省的かつ情感豊かな音楽を聴かせた。
 アンコールは、テュイレの「六重奏曲」より「ガヴォット」。いま、木管楽器は中高生の部活で大人気。今日も楽器を演奏しているであろう若い女性ファンがたくさん会場につめかけ、CDのサイン会は長蛇の列。すごい人気だった。
 実は、レ・ヴァン・フランセの新譜、ベートーヴェンの「管楽器とピアノのための作品集」(ワーナー)と、11月にリリースされるパユのC.P.E.バッハの「フルート協奏曲集」のライナーノーツを担当したのだが、5月にパユが来日したときにこの2つの新譜についてインタビューを行った。
 そのときの様子はブログにも綴ったが、実はおかしな(?)話がある。
 パユは、私の「クラシックはおいしい アーティスト・レシピ」の本に登場しており、以前、彼にレシピを説明し、そのページにサインをもらったことがある。そのときに他のアーティストのレシピを教えてくれというので、いろいろ説明していたところ、こんなことをいい出した。
「ねえ、きみ、ぼくたちが毎夏サロン・ド・プロヴァンス音楽祭を開催しているのは知っているよね。実は、あそこでは食事に苦労していて、南仏だからってみんな期待して参加してくれるんだけど、食事には結構困っている。だから提案なんだけど、きみ、和洋中なんでも作れるんでしょ。一度、シェフとして1週間くらい来てくれないかなあ。10人から15人くらいアーティストがいるけど、朝昼晩と3食作ってほしい。もちろんギャラはちゃんと払うからさ」
「エーッ、冗談でしょう。私、プロのシェフでも料理研究家でもないから無理よ。ただ好きでお料理しているだけなんだから」
「それでいいんだよ。みんな和食の大ファンだし、きみがふだん食べている物を作ってくれれば、それでいいから」
「いやいや、そんな。大人数の3食分なんて、ひとりじゃとてもできないわよ」
「じゃ、助手を連れてくれば。食材は近くにスーパーがあるから大丈夫だよ」
「そんな簡単にはいかないわよ。ごはんを炊くだけで大変じゃない。調味料だって、かついでいかなくちゃならないし。絶対、無理」
「やっぱりダメか。いい考えだと思ったんだけどなあ」
 かなり本気の表情をしていたパユは、ようやくあきらめてくれた。
 だが、家に帰ってから、好奇心旺盛な私は、この提案は貴重なものだと思い直した。
 すべての条件がクリアすれば、すごく面白い体験となる。毎日のレシピを記録し、みんなの感想をエッセイ風に綴り、そこに音楽祭の様子を書き加え、1冊の本が書けるかもしれない。なあんて、妄想がふくらみ始めたのである。
「サロン・ド・プロヴァンス音楽祭 1週間の“迷”シェフ物語」などというタイトルまで浮かんできた(笑)。
 今日は、ステージのパユを眺めながら、また妄想の世界へと入り込んでしまった。
 今日の写真は、レ・ヴァン・フランセのメンバー(プログラムより)


 
 
 
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