Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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運動不足解消
 昨日は、久しぶりにフィットネスに行き、からだをほぐした。
「本当に久しぶりですねえ。日本にいらしたんですか? どこかに出かけているんじゃないかと思っていましたよ」と、トレーナーからいわれるほど、前回から時間が空いてしまった。
「ずっといましたよ。ただ、原稿がたまっていて…」
 ムニャムニャといいわけをし、なまったからだを徐々に動かす。
 ようやくスッキリし、少しばかり仮眠をとり、夜中(ほとんど明けがただけど)に起き出してロジャー・フェデラーのウィンブルドン3回戦を見たら、キャーっ、2セットダウンしちゃったよー。
 それからは目も頭も覚醒し、必死でテレビにかじりつきながら応援。
 いやー、5セットマッチでようやく勝利したときは、疲労困憊。薄氷を踏む思いだった。
 こんなことやっているから、寝不足になるし、時間がたりなくなるし、いいことないけど、やっぱりファンというのはこういうものなんだよね。
 日曜日の深夜(月曜日の明けがたというべきか)も、サッカーのスペインを応援しなくちゃいけないし、これまた大変だワ。
 でも、赤旗日曜版のニューディスク、ヤマハの「音楽ジャーナリストの眼」の記事、「音楽の友」のCD評も仕上げたし、なんとかやることはやっているよな、と自分にいいわけ(笑)。
 そうそう、今日はおいしいオーガニックのひき肉が手に入ったので、メンチカツもたっぷり作ったし…。あーっ、あれこれドタバタしていたら、メンチカツの写真撮るのを忘れちゃった。失敗失敗、まっいいか、おいしかったから(笑)。
 
| 日々つづれ織り | 22:29 | - | -
ダン・タイ・ソン
 今日はダン・タイ・ソンのインタビューに出かけた。彼と話すのは、いつも楽しい。
 今日も近況からいま一番力を入れていること、先日のオール・ドビュッシー・プロに関して、11月に予定されているベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲演奏会まで、さまざまな話題が出た。
 ダン・タイ・ソンは2年前から「ハノイ国際ピアノ・コンクール」の名誉委員長を務め、今年も9月に第2回が開催されるという。これはベトナムをはじめ、アジアなどの若手音楽家を発掘、支援するもので、徐々に参加者が増えているそうだ。
 さらに、B.F.M.(Bridge Future Music)と題したプロジェクトに参加し、日本の人々が使用していないピアノやエレクトーンをハノイ国立音楽院の学生のために寄贈してもらうよう呼びかける、という活動も行っている。
 今日のインタビューはもちろん今秋のベートーヴェンのコンチェルトが中心だったが、彼は上記のような活動に触れ、「これ、まだ話してないよね」「いま、こんなことをしているんだよ」と、多方面の話をしてくれた。
 ダン・タイ・ソンは、今回のドビュッシー・プロにおいて、ひとりの作曲家の作品だけを取り上げるというリサイタルを行い、「ある種の自信を持つことができた」という。
 それゆえ、ベートーヴェンのコンチェルト全曲演奏も非常に前向きに考えられるようになったそうだ。
「ぼくはいつも新しいことに挑戦していたいタイプ。だから、このベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲演奏の話をいただいて、すごく心が高揚したんだ。これこそ、自分の新たな面を聴いてもらうことができると思ったから」
 もちろん、彼はこれら5曲をそれぞれ単独で何度も各地で演奏している。だが、全曲演奏は初めての挑戦。第4番が一番多いそうで、しかも第4番がもっとも難しいという。
 このインタビューは「音楽の友」の秋の号に掲載されることになっている。今日の写真は真面目な表情でインタビューに答えるダン・タイ・ソン。
 しかし、彼は私に会うと、いつもジョーク連発。ふだんはすごく寡黙で内気な人なのに、突然冗談をいい出すと止まらない。
 昔からみると、ずいぶん陽気になったよなあ、ホント、よかったよかったと、私はひとりで感慨に浸ってしまった。大変な苦労を経験してきた人だから。いまの明るさをずっと保ってほしいな、と帰路に着く間中、ずっとそのことばかり考えていた。
 ダン・タイ・ソンは、私が今秋の「浜松国際ピアノコンクール」のオブザーバーに就任したため、第3次予選と本選を聴きに行くと話したら、審査員としてコンクールに参加する彼は、またまた明るい声で、「じゃ、浜松でまた会えるねー」といった。うーん、かなり明るいワ、私のネアカが移ったかしらん(笑)。



| 親しき友との語らい | 23:02 | - | -
スペインのガラス食器
 今日は、すばらしいスペインのガラス食器を手に入れた。バレンシアのリサイクル・ガラスを原料としているもので、すべてハンドメイド。
 これは「アーティスト・レシピ」の本のお料理の撮影に使おうと思っている。
 グレーがかった渋い色で、ハンドメイドらしく、ひとつひとつ大きさや形状が微妙に異なっている。なんともいい味わいだ。
 さて、どのレシピのときに使おうか。一度に全部出してしまうと、ネタ切れするし、出し惜しみするのもちょっと…。
 とはいえ、いまはお料理をする時間がとれないのが現状。早く作りたいと気ばかり焦る。
 しばらくは、これらのお皿をながめて、ああでもないこうでもないと思案に暮れていようかな。
 実は、こういう時間がものすごく楽しいんだよね。
 私の大好きなスペインからやってきたガラス食器、うーん、最高だわー(笑)。
 今日の写真はそのお皿。ちょっとケチって、大皿は1枚しか買わなかった。本当はもう1枚ほしかったけど。はや、後悔。私って、ホント、ケチなのよね。
 


| 美味なるダイアリー | 22:09 | - | -
ダン・タイ・ソン
 今日は紀尾井ホールにダン・タイ・ソンのリサイタルを聴きに行った。
 プログラムは、「ドビュッシー生誕150年特別企画」と題されたオール・ドビュッシー・プロ。前半は「版画」からスタート。クリアで豊かな響きを持つ透徹した音色がホールいっぱいに広がっていく。
 ああ、なんと美しいドビュッシーだろう。
 次いで「2つのアラベスク」が奏され、軽快なリズムが心にストレートに飛びこんできた。
「映像 第1集」では、豊かな和声と絵画的な色彩感がピアノから生み出され、ダン・タイ・ソンの特徴である清涼な音質、深い打鍵、柔軟性を備えたタッチが存分に披露された。
 前半の最後は「喜びの島」。ダン・タイ・ソンは愛の女神ヴィーナスを華麗な音色で輝かしく表現、躍動感あふれる奏法で弾ききった。
 後半は「前奏曲集 第1巻」の12曲。ダン・タイ・ソンは各々の作品を個性的に、ときに詩を語るように、またあるときは絵を描くように、さらに彫刻のような立体感も生み出し、ドビュッシーのピアノ音楽の集大成ともいうべき作品の内奥へと迫っていった。
「すばらしいドビュッシーだったわ」
 終演後、楽屋を訪ねて素直な感想を述べると、ダン・タイ・ソンはうれしそうな表情で答えた。
「本当にドビュッシーはぼくにとって、心に近い存在なんですよ。大好きな作品ばかりで、弾いていると自由になれる感じがする。なんてすばらしい曲を書く人なんだろうね」
 ドビュッシー・イヤーに深々と心に響いてくる演奏を聴き、ドビュッシーの作品のよさを再認識した。
 いま、単行本でフランス音楽に関して書いているわけだが、大きな指針を与えられたリサイタルだった。ソンさん、ありがとう!
 今日の写真は終演後のほっとした表情のダン・タイ・ソン。
 11月7、8日にはすみだトリフォニーホールで「ロシア・ピアニズムの継承者たち」の第7回として「ベートーヴェン/ピアノ協奏曲全経演奏会」が予定されている。これは彼にとって初の試み。きっと心に響くコンサートになるに違いない。請うご期待。

| 親しき友との語らい | 23:48 | - | -
サッカー 欧州選手権
 ポーランドとウクライナで開催されているサッカーの欧州選手権の準決勝の組み合わせが決まり、いよいよ佳境に入ってきた。
 27日にはスペインとポルトガルが、28日にはドイツとイタリアが戦う。
 私はサッカーを見るとき、キーパーに一番注目する。キーパーが大好きなのである。みんなはFWに関心を寄せるが、いやいやサッカーはキーパーでしょうと、いつも断言し、不思議な顔をされている。
 今回は各国にすばらしいキーパーがいて、その好セーブがたまらない。昨日のイタリアも、ブフォンが大活躍。最後の最後、PK戦でブフォンが止めたときは、ギャーっと叫んでしまった。
 ただし、応援しているのは、だれがなんといってもスペインだ。
 と、いっている間に、今日テニスのウィンブルドンが開幕した。これから寝不足の日々が続くなあ。
 いやあ、原稿のことを考えたらテレビ観戦は控えなくてはならないし、でも、結果は気になるし。大変な時期に突入したもんだ。
 私はサッカーの開始前の国歌を聴くのが好きで、ビデオを撮っていても、必ず試合前の選手たちが音を多少はずしながらも一生懸命歌っている姿を見る。とても人間的で、なんだかほほえましくなるからだ。
 でも、イタリアとフランスとイングランドの選手たちはみんな歌うのに、スペインの選手はだれも歌わない。これって、なぜ? いつも不思議に思う。
 さて、またいそいそと観戦を。寝不足になると困るんだけどなあ(笑)。
| 日々つづれ織り | 22:45 | - | -
庄司紗矢香
 ヴァイオリニストの庄司紗矢香には何度かインタビューをしたことがあるが、デビュー当初の初々しい笑顔と、素直な受け応えはいまも鮮烈な印象として残っている。
 インタビュー・アーカイヴ第39回は、そんな彼女の12年前のインタビュー。ときが経つのは早いものだと、この記事を見てもつくづく感じる。庄司紗矢香は声に特徴があり、とても低くてハスキー。記事を見ていると、その声がどこからか聞えてくる感じがする。

[アサヒグラフ 2000年5月19日号]

昨秋のパガニーニ・コンクールに続く栄誉
スケールの大きい、のびやかな演奏が特徴


 昨秋、イタリアのジェノヴァで行われた第46回パガニーニ国際ヴァイオリン・コンクールで優勝の栄冠に輝いた庄司紗矢香が、今度は第10回「出光音楽賞」を受賞した。
 これは主として30歳以下のクラシックの音楽家を対象とし、意欲、素質、将来性などを考慮して選考されるもので、前年の音楽活動に対して賞が贈られる。毎年、演奏や作曲、学術研究、評論などの各分野にわたり5人が選ばれているが、今回、庄司紗矢香は、パガニーニ・コンクールにおいて史上最年少の16歳で優勝したことが大きく評価された。
「こんなにすばらしい賞がいただけて光栄です。これまで、『出光音楽賞』を受賞されたかたは、すばらしいかたばかりなので、多くの先輩を見習って頑張っていきたいと思います」
 ステージでは、スケールの大きい自由でのびやかな音楽を披露する彼女だが、素顔はシャイで礼儀正しく、ひとつひとつのことばを慎重に選びながら、ゆっくりと話す。
「パガニーニ・コンクールは子どものころからの夢だったんです。いつか受けてみたいと思っていました。でも、まさか優勝できるとは思いませんでしたから、賞状をいただいてもなんだか夢を見ているみたいで、現実味はなかったですね」
 その夢から覚めたのが、審査委員長の語ったひとことだった。審査委員長を務めていた作曲家のフェラーリは、授賞式で庄司をこう紹介した。
「46年のこのコンクールの歴史のなかで、これまで日本人は何人もファイナルに残ってきた。ただし、第1位を獲得する人はいなかった。庄司紗矢香は今回、史上最年少の優勝者であるばかりではなく、日本人として初の優勝者なのです」
 庄司は1983年に東京で生まれた。4歳のときに画家である母親がイタリアへ勉強に行くのに同行、1年間をシエナで過ごす。このころからヴァイオリンに目覚め、帰国後5歳で本格的なレッスンを始めた。現在はケルンで名教授といわれるザハール・ブロンに師事している。
 小学校時代から国内の学生コンクールで優勝したり、さまざまな賞を受賞してきたが、1995年の国際モーツァルト・ジュニア・コンクールを皮切りに、メルキュール・コンクール、ヴィエニャフスキ国際コンクール(17歳までの部門)、ヴィオッティ・バルセシア国際コンクールと、たて続けに優勝。ついにパガニーニ・コンクールの覇者となる。
「イタリアのコンクールで第1位をいただけたのが一番うれしかったですね。パガニーニ・コンクールのときはシエナ時代からの友だちがみんなテレビで見ていて、応援してくれました。小中学校時代にも、よくシエナの夏期講習を受けに行っていたので、イタリアというのは第2の故郷のような感じがしているんです」
 パガニーニのヴァイオリン協奏曲を初めて演奏したのも、このシエナの夏期講習の場だった。当時、12歳。その演奏を耳にした指揮者のルドルフ・パウムガルトナーは、ルツェルン国際音楽祭に参加しないかと声をかける。14歳になった彼女は、ここでパウムガルトナー指揮ルツェルン祝祭オーケストラと共演した。
「その後、パウムガルトナーさんは、このオーケストラのドイツ、オーストリアのツアーにも招いてくださったんです。一番印象に残っているのは、ウィーンのムジークフェライン(楽友協会ホール)で演奏できたこと。いまでも、あのときの感動は深く心に残っています」
 ムジークフェラインはウィーン・フィルの本拠として知られる、音響のすばらしいホール。彼女はここでJ.S.バッハとメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を演奏した。
「このツアーでは、最初メンデルスゾーン1曲という予定だったんですが、結局2曲のコンチェルトを弾くことになり、私にとってはとても荷が重かったんです。そんな私に、パウムガルトナーさんはそっとささやいてくださった。『このホールは内部の色が金色なだけではなく、音も金色なんだよ。だから頑張っていい演奏をしよう』って。それでとても気が楽になり、肩の力を抜いて、ホールの音響を楽しみながら演奏することができました」
 こうした出会いが、若きヴァイオリニストの大きな糧となり、音楽の成長につながっている。今年もフランス、スイス、ロシアなどの音楽祭に招かれ、著名な音楽家との共演も目白押し。大きな舞台が続く。
「いま音楽大学ではソロの勉強とともに、オーケストラや室内楽の演奏にも参加しています。学科の勉強もありますし、ドイツ語も習っているので本当に時間がたりない。大好きな読書や絵を描く時間も限られてきますが、勉強しなければならないことが山ほどあるので、もう毎日必死です。もっといい演奏をしたいからです」

 このときは、日本音楽財団所有の1736年製のストラディヴァリウス「ムンツ」を使用していた。その後、国際的なヴァイオリニストとして世界中で演奏するようになり、日本でも高い人気を誇る。
 今日の写真はそのときの雑誌の一部。現在も、髪型や表情などあまり変わらない。変化したのは演奏のクオリティーである。

| インタビュー・アーカイヴ | 21:50 | - | -
原稿書き
 ずっとパソコンに向かって原稿を書いていると、眼精疲労になるわ、首や肩が凝るわ、まったくいいことがない。
 ときどきは紅茶を飲んだり、和菓子を食べたりして休み、また同じ姿勢に戻る。
 最近は、フィットネスもご無沙汰。
 ところが、近くにちょっと買い物に出たら、「あらっ、伊熊さん?」と呼び止められた。フィットネスで一緒のYさんがお店の前に立っているではないか。
「えーっ、ご自宅、こちらのほうでしたっけ?」
「ううん、もっと先。でも、あなたに聞いたから、パン屋さんとお魚屋さんにきたのよ」
 なんという偶然。しばし、立ち話をして近況報告をし合い、「また、クラスで会おうね」と別れた。
 彼女も風邪をひいてしまい、あまり通っていないそうだ。
 ああ、来週は少しからだをほぐすために行かなくちゃ。これから長丁場の勝負で、根を詰めて書き続けなくてはならないから、体調のコントロールが欠かせない。
 今日はおいしい長芋が手に入ったから、とろろ汁にしようか、山かけにしようか、それとも長芋サラダを作ろうか。
 まだまだ食欲は落ちていないから、大丈夫だ(笑)。
| ああ愉しき(?)、締切り地獄 | 22:33 | - | -
ししとう味噌
 ししとう(ししとうがらし)が最盛期を迎えている。初夏の風物詩といってもいい。
 ししとうはてんぷらにしたり、焼き肉のつけ合わせにしたり、煮物のトッピングにしたりと幅広い調理法があるが、今日はししとう味噌を作ってみた。
 ししとうはビタミンC、β−カロテン、ビタミンEが豊富に含まれ、血行をよくし、生活習慣病を防ぎ、がんの予防にも役立つといわれるすぐれもの。夏のからだが欲している栄養素の宝庫ともいえる。
 お店で売っているパック入りは、ひとつがだいたい10本ほど。それを5パック仕入れ、50本を用意。種まで食べられるといわれるが、歯触りが悪くなるので、私は縦半分に切って種は全部出してしまう。
 それをざくざくと適宜斜め切りし、ゴマ油大さじ1で炒める。ここに味噌40グラム(お好みで量を加減)、酒大さじ2、砂糖大さじ2分の1を加え、ざっと混ぜる。
 お皿に盛り、すりゴマひとつまみをバラリとかければ出来上がり。これは熱々の白いごはんに乗せても美味だけど、ゆでたお豆腐や焼きナスにかけてもとても合う。ヘルシーな夏ごはん、いっぱい食べられますよー。



| 美味なるダイアリー | 21:59 | - | -
ルドルフ・ブッフビンダー
 昨夜は、台風のなか、ブッフビンダーのコンチェルトを聴きにすみだトリフォニーホールに行った。
 プログラムはブラームスのピアノ協奏曲2曲だが、彼の希望で前半が第2番、後半が第1番という順番だった。
 ルディさまはインタビューでも語っていたが、各地でこの2曲をひと晩で演奏するスタイルをとっていて、必ず第2番を先に演奏するそうだ。
 それは第2番は非常にデリケートで、第1番は劇的で重厚な作品ゆえ、この順番が適しているからだそうだ。
 まさに、聴き手もこの順番で聴くのが実に自然だった。ルディさまはリサイタルのときとはまた異なった深々とした重厚な打鍵と、絶妙のペダリングを駆使し、スケールの大きなブラームスを生み出した。緩除楽章では繊細さと詩的な雰囲気と、ときにブラームスの歌曲にも通じる静謐な甘美さとでもいおうか、心に響く温かさを醸し出していた。
 しかし、どんなに弱音になっても、オーケストラの響きに決して埋没することがない。芯の強い強靭な個性に裏付けられた音質は、まったく揺るがないのである。浸透力の強い音がビシーっと響いてくる。
 彼は「私は完璧主義者でね」と語っていた。その完璧さを追求し、ブラームスの作品ならではの深遠さと雄々しさ、北国の空気を思わせるほの暗い響きがひとつひとつの磨き抜かれた音色から発せられ、かの地に運ばれていくような感覚を抱いた。
 この公演評は、次号の「モーストリー・クラシック」に書く予定である。
 コンサートが終了して会場を出た途端、猛烈な風雨に見舞われ、友人のKさんと私は傘がまったく役に立たない状況。駅まで必死で歩くうちに全身びしょぬれ。靴のなかまで雨が入り込み、Kさんはメガネまでぬれてしまった。
 深遠なブラームスのあとの暴風雨。からだはびしょびしょだったが、家にたどり着くまで、私の心のなかはブッフビンダーの伝統的な奏法による、完璧に鍛え上げられた奏法が渦巻き、微動だにしない美しい姿勢も脳裏に焼きつき、ほんわか幸せな気分だった。
 でも、さすがに帰路に着く間にもっともっとぬれて、家の玄関に入った途端、全身から水がしたたり落ちた。でも、家に着いた5分後から猛烈な風が吹き、その前になんとか無事にたどり着いただけラッキーだったかも…。いろいろな意味で、この夜のブラームスは忘れられない思い出となりそうだ。
 
| クラシックを愛す | 23:28 | - | -
馨しいバラのソープとバスジェル
 ブログに単行本の原稿で大変だと書いたら、ピアニストの斎藤雅広さんが心配して、素敵な差し入れを送ってくださった。
 箱を開けた途端に部屋いっぱいに馨しいバラの香りがあふれ、しばしその匂いに感動。淡いピンクのバスソープとバスジェルのセットが入っていた。ああ、なんていい香り。これを嗅いだだけで、なんだか心身が癒されそうだ。
 斎藤さん、ありがとう!! 今夜は、これを使ってゆっくりバスタイムを楽しみます。
 最近は仕事で会う人みんなに近況を聞かれ、単行本の話をしているため、そのつど「からだに気をつけてね」とか、「ちゃんと食事だけはとったほうかいいよ」とか、「睡眠時間は削らないほうがいい」とか、「忙しいときはいい顔をせずに不義理をしたほうがいい」とか、いろんなことをいわれている。
 もちろん、体調が第一なので、十分に気をつけているつもり。
 でも、単行本というのは、さっと書けるものではない。本当に時間がかかる。少し書いては資料を調べ直し、また音も聴き、資料に戻る。この繰り返しだから、遅々として進まない。
 しかし、根気強くやっていくしかない。
 斎藤さん、お心遣い、本当に感謝します。ゆったりバスでリラックスし、英気を養って頑張りまーす。
 今日の写真は、いただいたバスソープとシャワー&バスジェル。ながめているだけで、ほんわか幸せな気分。斎藤雅広さんの、人を幸せに包みこむおだやかな笑顔が浮かんできちゃいました(笑)。

| 日々つづれ織り | 23:17 | - | -
ルドルフ・ブッフビンダー 
 今日は、すみだトリフォニーホールにルドルフ・ブッフビンダーのインタビューに行った。
 これまでブッフビンダーについて書かれた記事を読むと、通常の作品論や録音について、自身の演奏についてはあまり語らないタイプだということがわかった。
 だが、演奏と同様、非常に誠実で思ったことは率直に話す性格だとそれらの記事は伝えている。
 ブッフビンダーのCDの解説を書いているドイツを代表する音楽評論家のひとり、ヨアヒム・カイザーは、彼を「わが友、ルディ」と呼んでいる。そこで私は敬意と親しみを込めて、「ルディさま」と心のなかで呼ぶことに決めた。
 さて、インタビューが始まった。ルディさまは、おだやかな笑みを浮かべながら、ひとつひとつの質問に丁寧に応えてくれる。しかし、やはり「演奏するときの感情、表現、自身の作品に対する思い」などはさらりとかわしていく。
「曲に関しては、もうあらゆるところでさまざまな記事が紹介されているでしょう。いまさら私が説明しなくても、みなさんよくご存じだから」 
 だが、それを聞くのが私の仕事である。あらゆる角度からいろいろ試してみたが、「私はピアニストだから、ピアノを弾くだけ」とあっさり。
 ここで負けていたら、文章が書けないもんね。と、ねばっていたら、楽譜の出版社がオリジナルと異なった音符や表記を平気で行っていることに対し、ずっと戦っているんだという話題になり、にわかに口がなめらかに。
 ルディさまは、私がその話題の質問を掘り下げていったら、楽屋のピアノの前に進み、「ほら、いま話したベートーヴェンのソナタのまちがいはここだよ」と演奏を始めた。
「ベートーヴェンはここの3つの音符にf、f、そして最後は何も記していない。ところが、楽譜出版社は3つともfと堂々と印刷している。なんと腹立たしいことか。大きなまちがいだ。それを私が何度も指摘しているのに、一向に直そうとしない。原典を見ていないんだよ。自分たちが正しいと勘違いしている」
 ルディさまは、それまでのやさしい表情と打って変わって怒りを露わにした。
「私はひとつの作品を演奏するときに8から10の楽譜を研究することにしている。それでも足りないくらいだ。ベートーヴェンをはじめとする作曲家に敬意を表し、作曲家の意図したことに近づくためには、こうしたまちがいを正す必要がある。これは一生、戦っていかなくてはならないことなんだ」
 このインタビューは新聞、雑誌、WEBなど、さまざまなところで紹介したいと思っている。彼は真摯で実直で偉大なピアニストだから、ぜひもっと多くの人に知ってもらいたい。欧米にくらべ日本では、まだ知名度があまりにも低いと思うので。
 短時間のインタビューで、最初はどうしたら内容のあることを聞くことができるかと内心心配したが、ピアノも弾いてくれ、ジョークをはさみながらいろんなことを話してくれた。
 明日はブラームスのピアノ協奏曲第1番と第2番を聴きにいく予定。そして来年は、ウィーン・フィルとベートーヴェンのピアノ協奏曲の弾き振りで来日するそうだ。うーん、待ち遠しい。
 今日の写真はインタビュー後のルディさま。リラックスしたいい雰囲気でしょ。最初に撮ったら、こうはいかなかった(笑)。 

 
| 終わりよければ…取材奮闘記 | 22:31 | - | -
ルドルフ・ブッフビンダー
 今日は、すみだトリフォニーホールにルドルフ・ブッフビンダーのリサイタルを聴きに行った。
 前半はベートーヴェンのピアノ・ソナタ第8番「悲愴」と同第23番。後半はシューマンの「交響的練習曲」。 
 冒頭から、ブッフビンダーならではの正統的で自然で、「あるベきところに音がある」という、まさに本物の音楽が披露された。
 チェコに生まれ、1歳でウィーンに移り、いまや伝統的なウィーンのスタイルを継承する実力派ピアニストとして国際的に高い評価を得ているブッフビンダー。芯が揺るがぬ圧倒的なピアニズムは、聴き込むほどに胸の奥にじわじわと感動が押し寄せてくるもの。
 2010年4月の来日公演も、洞察力の深さと説得力の強い演奏にひれ伏したい気持ちになったが、今回も演奏の記憶はずっと脳裏から消えないと思う。
 このコンサート評は次号の「モーストリー・クラシック」に書く予定になっている。もちろん、19日のコンチェルトも含めて…。
 彼は以前もベートーヴェンの「ハンマークラヴィーア」の後に場の空気を一変するような、J.シュトラウス2世の「ウィーンの夜会」をアンコールで演奏し、緊迫感をやわらげてホール全体をなごませたが、今回のアンコールも絶品だった。
 シューベルトの「即興曲」D.899第2番と、J.シュトラウス/グリュンフェルトの「こうもり」などのワルツの主題による演奏会パラフレーズを演奏。聴衆の心をウィーンの温かな雰囲気に包み込んだ。
 なんと粋で真摯でユーモアあふれる精神の持ち主なのだろう。
 月曜日にはインタビューを行う予定。実は、彼に会うのは初めてである。素顔はどんな人だろうか。きっと、その日もまだ演奏の感動が心に残っているはず。その勢いでインタビューに突っ走ろうかな(笑)。
| クラシックを愛す | 23:55 | - | -
スペインとフランス音楽の本
 スペインとフランス音楽を綴る単行本のため、今日は一日中スペイン音楽を聴き続けた。
 一応、企画としては各10人ずつ計20人の作曲家を取り上げたいと思っているため、CDや資料を探しているのだが、これがふだんの整理不足がたたってか、目指しているものがすぐには出てこない。
 ああ、どうして図書館のようにきれいに整理できないのだろうか。いつもこれが悩みの種。送られてくる資料があまりにも多く、完全に私のキャパシティを超えているのである。
 と、ブツブツいいながら、片っぱしから必要、不必要なものを分けていく。でも、すぐに部屋が散らかり、またもやその整理に追われる。
 いつになったら、この膨大なCDや資料の山のなかから本当に必要なものが目の前に現れるのだろうか。前途多難だ。
 書きたいこと、方向性はすでに頭のなかに湧いているのだが、この散らかりようを見て、気持ちが完全に下向きに…。困ったモンだ。
 さて、また資料と格闘するかな。ある程度きちんとそろえないと、文を書く状態まで進まないし。
 いったいこんなことやっていて、1冊まとまるんだろうか。膨大な資料の山を前に、出るのはため息ばかり。
 理想は、紙資料や音源がずらりと見やすく並べられていて、いつでもさっとそれが利用できる状況であること。まあ、そんなこと到底無理だから、自分のできる範囲で少しずつ整理していくしかない。
 こうやって、ブツブツ文句をいっている自分にも嫌気がさすんだよね。私が編集担当者だったら、「口を動かすより、手を動かせよー」というかも(笑)。
| 日々つづれ織り | 21:48 | - | -
ニュウニュウ
 中国のピアニスト、ニュウニュウに初めて会ったのは2年前の夏。今回は久しぶりに会い、その成長ぶりに驚かされた。
 彼は1997年福建省生まれ。3歳で才能の片鱗を見せ、幼いころから天才少年として頭角を現し、やがて上海に移住。
 2008年から海外でも演奏するようになり、2007年10歳のときにEMIクラシックスと専属契約を結んだ。
 翌年、日本でデビュー・コンサートを行い、このときに初めて会ったことになる。当初から非常に明るく素直な性格で、「論語」を読んでいると聞かされて驚いたが、ゲームに夢中になっている姿は年相応の少年だった。
 今日は2年ぶりに会ったが、すでに182センチあるという長身で、表情もすっかり大人っぽく変貌していた。彼は2年前にアメリカのニューイングランド音楽院(ウォルナットヒル芸術学校)に全額支給の奨学生として留学。ここで普通高校の授業と、ピアノの両面を学んでいる。
「もう会話は英語でも大丈夫だよ、一生懸命勉強しているから日常会話はだいたいオーケー。でも、学校の英語(国語)の授業が一番難しい。化学や物理は得意なんだけど、アメリカ人と一緒に勉強する英語はすごく大変」
 ただし、勤勉な彼のこと、習得は早い。ピアノの腕もめきめきと上がり、新譜「ラ・カンパネラ」(EMI)ではリストのトランスクリプションの数々を磨き抜かれたテクニック、躍動感あふれるリズム、みずみずしい歌心をもって演奏している。
「録音のとき、ディレクターは1度弾いただけですぐにオーケーを出してくれたんだけど、ぼくは納得いくまで何度も弾き続けた。最後はディレクターが根負けして、“もう自分でレコーディングもミキシングもしたら”と苦笑していた」
 レコーディングのスケジュールは3日間とってあったが、何度も繰り返して弾いても2日間で全部終了してしまったという。
「トランスクリプションは原曲を理解していないと弾けないし、そこにリストが何を盛り込んだかも深く知らないといい演奏にはならない。結構、こまかいところが大切なんだよね」
 ニュウニュウとは一緒に食事をして雑談をしたこともあるが、頭の回転が早く、自分が興味を覚えることにはとことんこだわり、納得いくまで追求する姿勢を崩さない。
 いまはマジックに凝っているというから、「どんなマジック?」と聞いたら、早速自慢の手品を披露してくれた。
 それはスクリューのついたネジを指の間にはさみ、何の力も加えずにそのスクリューを自然に回してみせるというもの。
「あらー、すごく不思議。どうしてそれが回るの。えーっ、なぜなぜ」
 私が驚いていると、にやにやしながら得意そうに「もっとあるけど、また次の機会にね」といって、若きマジシャンはネジを大切そうにジャケットのポケットにしまいこんだ。
 新譜のリストは、恩師のひとりであるレスリー・ハワードが原典版をもとに指導してくれたそうで、それがとても勉強になったそうだ。このインタビューは次号の「intoxicate」をはじめ、いろんなところで紹介するつもり。リスト論がおもしろかったので。
 今日の写真はインタビュー後の1枚。笑顔の写真は好きではないそうで、シリアスな表情を崩さなかった。クールな感じがいいらしい。そういうお年頃なのかしら…。本当は、笑うとすごくキュートなのに。

| 親しき友との語らい | 21:29 | - | -
アルバン・ベルク四重奏団
 すでに解散してしまったが、アルバン・ベルク四重奏団のあの研ぎ澄まされた完璧なるアンサンブルは、いまだ耳の奥に強い印象となって居座っている。
 第1ヴァイオリンを担当していたリーダーのギュンター・ピヒラーにインタビューしたときのことも、はっきり覚えている。彼はとても前向きで完璧主義者で、その姿勢から学ぶことはとても多かった。
 インタビュー・アーカイヴ第38回はそのピヒラーの登場。

 
[レコパル 1991年9月2日〜15日 No.19]

世界最高峰のアンサンブルが創り出す音の小宇宙

 モーツァルトがハイドンの作曲した弦楽四重奏曲「ロシア・セット」に触発されて弦楽四重奏曲の傑作「ハイドン・セット」の6曲を完成したのは1785年1月、29歳のことだった。
 弦楽四重奏曲というのは、どの作曲家もとてもシリアスな作品が多いが、モーツァルトの場合もしかり。演奏者は高度な技術と深い音楽性を要求される。
 現在世界最高のアンサンブルといわれるアルバン・ベルク四重奏団は、この「ハイドン・セット」を含む後期の10曲を10数年ぶりにレコーディング。これは現在のメンバーになってからの初録音である。
 ここに聴く第16、17番はまさに彼らの4つの弦がひとつに集積して、まるで音の小宇宙を形成しているようだ。アルバン・ベルク四重奏団はよく完璧な演奏をするといわれる。音楽において“完璧”なんてありうるのだろうか。あるとしたら、それはとてもつまらない演奏なんじゃないかと常々私は考えていた。
 けれども、1989年の来日の際、彼らのシュニトケの弦楽四重奏曲第4番の日本初演を聴いて、完璧でありながら、感動を呼び起こす演奏があることがよくわかった。彼らはまったく非の打ちどころのないすばらしく感動的なシュニトケを披露したのである。
 その日はモーツァルトの弦楽四重奏曲第18番でスタートした。この出だしの第1音から心がピーンと張り詰め、ふだん味わうことのできない緊張感に満ちたモーツァルトが体験できたのを思い出す。
 今回の「狩」の冒頭の角笛を連想させる音型を聴いたときに、あのときの緊張感が一瞬にして蘇ってきた。ああ、この完璧なアンサンブル、同質の4弦の響き、鍛え抜かれたテクニック、これこそウィーンの伝統の音色だと。
 ウィーンかぶれの私が彼らの音でほろ酔い気分になっているときに、第1ヴァイオリンのギュンター・ピヒラーがN響を指揮するために単独来日。さっそく、モーツァルト観を聞きに出かけた。

「リハーサルでは納得がいくまで音楽論を戦かわす」

 素顔のピヒラーは、とても人なつこい真っ青な目をした人。彼らの演奏が完璧であるにもかかわらず、胸の奥に強く訴えてくるのが、その澄んだ目を見て理解できたような気がした。
「モーツァルトの音楽は非常に明確ですから、それぞれの楽器の音が全部きれいにクリアーに聴こえなくてはなりません。これは非常に難しいことです。古典派の音楽というものは、個人の感情をいっさいはさめなかった。それがロマン派になると、個人的感情を含めて表現するようになった。モーツァルトは古典派からロマン派への移行期の人ですが、彼の作品は後期になっても演奏のスタイルは古典派のままで、ただし表現に関しては個人的感情を表しているように思えるのです。ですから、演奏者は古典のスタイルを守りつつ、かなりエモーショナルな表現をしなくてはなりません」
 アルバン・ベルク四重奏団の4人は、リハーサルの最中にとことん納得がいくまで音楽論を戦わすという。そして、ふだんの生活はまったく干渉し合わないのが彼らの流儀だそうだ。
「最近は、特に技術的に完全であることを問われる時代になってきています。それにプラスして4人の個性、個人の音楽の解釈を大切に考えなくてはなりません。そしてそれらを常に新鮮に保っていかなくてはいけない。私も20年間、室内楽一本できましたので、表現力とかアイデアを新鮮に保つため、もっと他のものに挑戦しなくてはならない時期だと思い、指揮を始めました」 
 彼は1994年まで指揮の予約がいっぱいなんだ、といってうれしそうな表情を見せた。「いまの夢はヨーロッパの室内オーケストラから最高のものを引き出すこと」と語るピヒラー。
 弦楽四重奏団でトップを極めた彼のこと、次なる目標の達成も遠い日のことではないのでは…。

 アルバン・ベルク四重奏団とはその後も会い、あるときヨーヨー・マの取材で大阪に出張した際に、パッタリ4人に駅で会うという驚きの瞬間も。そのときにはチェロのバレンティン・エルベンが「やあ、偶然だねえ。実は、私がいま使っているのはヨーヨー・マが以前弾いていた楽器なんだよ」といって、しばし駅構内で話がはずんでしまった。
 それもいまとなってはいい思い出である。
 今日の写真はそのときの雑誌の一部。当時は次々に新譜がリリースされていた。

| インタビュー・アーカイヴ | 22:53 | - | -
アーティスト・レシピ
 昨夜は、「アーティスト・レシピ」の単行本の打ち合わせに出版社に行ってきた。
 担当のかたはとてもいい人で、クラシックも大好き、食べることも大好き、仕事も大好き(?)な話しやすいタイプ。これは非常に大切なことで、単行本の場合は短期間に集中して担当者と密接なやりとりが行われるため、その人の仕事ぶりや性格が私の仕事に大きな影響をおよぼす。
 私はこの単行本化に際し、「目指せ100レシピ」で多くのお料理を考えていたが、ひとりのアーティストに4ページという配分ゆえ、結局50人にしぼり、厳選したアーティストとレシピを掲載することになった。
 これから材料をそろえ、お料理をし、写真を撮り、文章を書くというひとり何役もの作業が待っている。
 でも、これは趣味が高じて遊びながら考えた企画ゆえ、ようやく単行本になると決まり、目いっぱいリキが入る。いまは武者震いしているような状態だ、ブルブルッ(笑)。
 今回の打ち合わせでは、具体的なレイアウトを見せていただいた。担当のかたとデザイナーがものすごく苦労してさまざまなレイアウトを検討し、ようやく仕上がったものだけにとても見やすく、アーティストとレシピが自然な形で見られるというスタイルになっていた。感謝、感謝!!
 その後、いろんな話をしているうちに、「私は結構古いジャズが好きなんです」というと、出版されたばかりのジャズの写真集を見せてくれた。
 彼が担当したそうで、そのエピソードもいろいろと聞かせてくれた。そしてその分厚いゴージャスな写真集をプレゼントしてくれたのである。
「これを見ながら、原稿書かなくちゃ、と思ってください」というユニークなプレッシャーをかけながら(笑)。
 今日の写真はその写真集の表紙。大倉舜二氏撮影による「JAZZ NOTE」(芸術新聞社)。すべてモノクロで、20世紀に活躍した存在感のあるジャズの巨人たちが、熱いオーラを発している。



 
| 美味なるダイアリー | 20:01 | - | -
第8回浜松国際ピアノコンクール
 今日はホテルオークラ東京で、11月10日から24日にかけてアクトシティ浜松で開催される、第8回浜松国際ピアノコンクールの記者発表が行われた。
 今回の応募総数は31カ国1地域から288名だったが、つい先ごろDVDによる音と映像のみの予備審査が行われ、19カ国1地域の96名が選出された。
 もっとも多いのは日本から参加する27名で、過去最多の参加となる。参加者全体の平均年齢を見てみると、22.88歳。最年少は15歳で、最年長は30歳だ。
 課題曲を見ると、第2次予選にコンクールのための新作、池辺晋一郎作曲による「ゆさぶれ、青い梢を」(ピアノのために)が含まれ、これは世界初演となる。さらに、第3次予選に初めて室内楽の課題が加わっている。モーツァルトのピアノ四重奏曲第1番、第2番をプロの弦楽器奏者と共演するという試みである。
 なお、本選のコンチェルトの指揮は、初めて井上道義が務める。
 このコンクールからはアレッシオ・バックス、アレクサンダー・ガブリリュク、上原彩子、イム・ドンヒョク、ラファウ・ブレハッチ、アレクサンダー・コブリン、アレクセイ・ゴルラッチ、チョ・ソンジンをはじめとするピアニストが巣立ち、彼らはその後大活躍をしている。
 そんな彼らに続くどんな才能が出現してくるのか、とても楽しみだ。実は、今回は海老彰子審査委員長からのオファーで、オブザーバーに就任することが決まった。それゆえ、第3次予選と本選を聴きに行く予定にしている。
 審査員には私のよく知っているダン・タイ・ソン、エヴァ・ポブウォツカが名を連ねている。コンクール後には彼らに話を聞くことができるかもしれない。
 11月なんてまだ先のことだと思っているけど、すぐにくるんだろうな。それまでにやらなくてはならないことが山積み。記者発表を聞きながら、私の頭のなかは、「本当に大丈夫だろうか。また直前に参加できなくなったらどうしよう」と、そんな心配がグルグル。3年前に一度オブザーバー就任が決まっていたが、直前にどうしても仕事の都合で参加できず、お断りした経緯があるからだ。でも、心配ばかりしていても始まらないよね。やるっきゃないんだから。
 今日の写真は記者発表時の1枚。左から運営委員長の海老澤敏氏、審査委員長の海老彰子氏、実行委員会会長の浜松市長、鈴木康友氏。


 
 
 
| 情報・特急便 | 23:13 | - | -
ローエングリン
 今日は新国立劇場にワーグナーの「ローエングリン」を聴きにいった。先日インタビューしたクラウス・フロリアン・フォークトがタイトルロールを歌っているからだ。
 まず、シンプルでありながら、光を駆使した舞台装置の美しさに目を見張った。舞台後方に何十個もの四角状のオブジェが設置され、その内部に設置された照明機材が光り、シーンによって、アリアによって幾重にも色合いを変化させていく。あたかも主人公たちの内面を映し出していくように、こまやかに表情を変えていくのである。
 衣裳も非常に独創的で、近代的でありながら、オペラの内容に即したものだった。
 今回の出演者はみな歌唱力、表現力、演技力が見事で、アリアもアンサンブルも緊張感がみなぎり、一瞬たりとも弛緩するところがなく集中力をもって聴くことができたため、あっというまに時間が過ぎていった。
 ただし、40分の休憩を2回はさみ、約5時間という長丁場だった。
 もちろん、フォークトのローエングリンは圧巻。録音で聴く歌声よりも、ナマのほうがよりかろやかで柔軟性に満ちた高音が際立つ。音程の確かさと歌詞の発音の明瞭さが冒頭から強烈な印象で迫ってきた。
 さらに音の浸透力の強さが大きな武器で、どんなにオーケストラが強音で鳴っていても、重唱で他の歌手たちが一緒に歌っていても、フォークトの音だけが確固たる響きと主張をもって聴こえてくるのである。その声は決して大音量ではなく、威圧的でもなく、完璧にコントロールされた自然な美しさ。だが、いつまでも心の奥に歌声が残る、強烈な個性に裏付けられている。
 オペラ歌手には一種のオーラが必要だと思うが、フォークトが舞台に存在しているだけで、そこだけが輝かしい光を発しているように思える。もちろん照明の工夫、白っぽい衣裳も関係しているが、まさに神から遣わされたローエングリンならではの聖なるオーラが放たれていた。
 彼はインタビューで「チームプレイが好き」と語っていたが、終演後のステージ上のあいさつに出てきたとき、真っ先にプロンプターのところに走っていって握手をしていた。私の席からプロンプターの手だけが見え、にんまりと笑ってしまった。
 こんなに心が高揚するワーグナー作品を聴いたのは、実に久しぶりのことである。以前、ヘルマン・プライをはじめとする名歌手たちが総出演した、バイエルン国立歌劇場の来日公演「マイスタージンガー」以来かもしれない。
 フォークトを聴く、それは新しいワーグナー体験をすること。まだナマの歌声を聴いていない人は、ぜひこの稀有なヘルデン・テノールを聴いてほしい。きっとワーグナーの偉大さが理解でき、より多くの作品を聴きたいと願う気持ちが湧いてくると思うから。
 ちなみに、まだ「ローエングリン」は13日と16日の公演が残っている。フォークトは、「毎回、歌うたびに異なる感情が湧き、歌いかたが変わる。それがオペラの醍醐味だと思う」といっていた。あと2回、どんなローエングリンが披露されるだろうか…。
| クラシックを愛す | 23:05 | - | -
差し入れ
 仕事が詰まってきて時間の調整に苦労しているとブログに書いたら、親しい友人のKさんがすばらしい差し入れを送ってくれた。
 彼女が毎日食べているという、日本の伝統的な食材である。
 これらはひとつずつ吟味された逸品で、Kさんのこだわりを感じさせる。
 早速、お礼の電話をしたら、これから10日間ウィーンとベルリンに音楽を聴きに行くという。
 その話で盛り上がり、「ぜひ、おみやげ話を聞かせてほしい」と私がいい、彼女が「写真も撮ってくるから、見てね」といい、帰国後すぐに会うことになった。
 さて、早速「いかなご」をいただいたら、これがとても自然で昔風な味付け。ごはんが進む、進む、いくらでも食べられる(笑)。
 Kさんはとても健康的で、いつもとても元気。その元気をもらって、私も頑張って原稿を書かなくては。
 今日の写真は届いたばかりの美味なる物たち。Kさん、感謝、感謝。日本の食材のすばらしさを再確認し、ほんのり心が温かくなっています。
ウィーンに向かって「ありがとう!」


 
| 美味なるダイアリー | 22:13 | - | -
パーヴォ・ヤルヴィ指揮フランクフルト放送交響楽団
 昨夜は、サントリーホールにパーヴォ・ヤルヴィ指揮フランクフルト放送交響楽団のコンサートを聴きに行った。
 ヤルヴィは2004年からドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団の芸術監督を務め、パリ管弦楽団の音楽監督としては2期目に入り、2006年からはフランクフルト放送交響楽団の音楽監督も務めている。
 その他、客演指揮者としての活動も多く、超多忙な指揮者である。
 しかし、いつ聴いても、どんなオーケストラとの演奏でも、エネルギー全開、そのオーケストラの特質を存分に生かした響きを導き出す。
 昨夜のプログラムは、前半がピアノのアリス=紗良・オットをソリスト迎えたリストのピアノ協奏曲第1番。後半がマーラーの交響曲第5番だった。
 このマーラーがすさまじいまでの迫力で、マーラーが作品に託した新機軸をドラマティックに情感豊かにパワフルに表現、第1楽章から最終楽章まで一瞬たりとも弛緩せずに、緊迫感あふれる演奏を聴かせた。
 とりわけ金管楽器群が炸裂。ときに咆哮し、またあるときは慟哭し、嬉々とした表情も見せ、弦楽器との濃密な対話を繰り広げていく。
 しかし、有名な第4楽章の「アダージェット」では、ハープと弦楽が天上の美しさを披露し、ゆったりとしたテンポの透明感に満ちた歌謡的主題を存分に堪能させてくれた。
 フィナーレのはなやかなクライマックスはホール全体を熱くし、弦楽器群はうねりのような音楽を発し、管楽器は野性的な音色をとどろかせた。
 そして最後の音が終わるやいなや、「ブラボー」の叫び声と嵐のような喝采が起こり、拍手はいつまでもやまなかった。
 ヤルヴィはいま乗りに乗っている指揮者。2013年は、パリ管弦楽団、ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団との来日が予定されている。また新たな一面を見せてくれるに違いない。
 こういう演奏を聴くと、妙にのどの渇きを覚える。聴きながら興奮するからだろうか。いつもはあまりビールを飲まない私なのに、帰宅してからすぐに生ビールを飲んでしまった。パーヴォの熱気が乗り移ったかな(笑)。
 
 
| クラシックを愛す | 21:48 | - | -
クラウス・フロリアン・フォークト
 今日はクラウス・フロリアン・フォークトのインタビューに、宿泊先のホテルに行った。
 彼は6月1日から16日まで新国立劇場で全6回行われているワーグナーの「ローエングリン」でタイトルロールを歌っている。
 初日の批評は絶賛した記事が多く、彼もそれを十分に知っている様子だった。
「オペラは毎回異なった歌唱、表現、演技が現れます。まさに生きた音楽で、それが一番の魅力ではないでしょうか。私は毎日の人生、考えかたが自分のステージに影響するのだと考えています。ですから、生きかたそのものが大切になるわけです」
 フォークトは186センチの長身で、すらりとしている。甘いマスクの持ち主で、笑顔が魅力的。性格も明るく、スターぶらず、気さくですこぶる感じがいい。どんな質問にも真摯に答えてくれ、ことばを尽くす。
 今回は事前に「ヘルデン」(ソニー)と題した新譜がリリースされ、このなかでワーグナーからモーツァルト、ウェーバー、フロトウ、コルンゴルトまで多彩な作品をみずみずしく力強く、情感豊かな高音を存分に生かしながら歌っている。
「ワーグナーは特に歌詞が大切。もちろん音楽との融合に気を配りますが、10年前に《ローエングリン》を初めて歌ったときからその思いは変わりません」
 最初に「ローエングリン」を歌ってから、さまざまな指揮者、オーケストラ、演出家と組んできたため、いまではあらゆる状況に適応することができ、表現力も増したという。
 このインタビューは、「日経新聞」、「婦人公論」、ヤマハ「音楽ジャーナリスト&ライターの眼」に書き分けたいと思っている。
 フォークトは女性ファンをとろけさせてしまうようで、今回の公演も女性がたくさんホールに詰めかけている。容姿端麗、歌もすばらしく、性格も文句なしという3拍子そろった人だが、実に自然体でさりげない。
 私が「家族や親しい友人はあなたの性格をどう表現する?」と聞いたら、しばらく考え込んでいて、こう答えた。
「ずっと変わらないね、といわれる。それは私にとって、とてもうれしいこと。これからもこういわれたい」
 フォークトは最初ホルンを演奏していて、オーケストラの奏者だった。だが、奥さんのお母さんから声のよさを見出され、本格的に声楽を学び、歌手に転向したというキャリアの持ち主。1997/98年のシーズンからオペラ歌手としての活動が始まった。
「私はチームプレイが好きなので、オペラに向いているんですよ。オーケストラで演奏しているときも楽しかった。みんなで何かを作り上げていくのが大好きなんです。ふだんはサッカーもしますよ。飛行機の操縦も趣味です」
 メカが大好きだそうだが、飛行機の操縦とは…。これを聞いて「あら、白鳥に乗っているんじゃないの?」といったら、ギャハハーと大笑いしていた。
 今日の写真はインタビュー後のワンショットとCDのジャケット写真。ここでビッグニュースをひとつ。実は、来年の「東京・春・音楽祭」に出演が決まり、ワーグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」のヴァルターを歌うそうだ。2年続けて来日してくれるとは、なんてすばらしいことか!! またもやとろける人が増えるに違いない。

 

| アーティスト・クローズアップ | 23:37 | - | -
打ち合わせの食事会
 ようやく締め切りが重なっていたのがひと段落し、今日は親しいレコード会社のディレクターと渋谷で打ち合わせを兼ねた食事会をした。
 おいしい旬のお魚やお寿司をいただきながら、あれこれ話しているうちに、あっというまに時間が過ぎていった。
 先日、ニコライ・ホジャイノフの録音のことを書いたが、そのライナーノーツを書くことになった。いまは単行本の時間確保のために、極力仕事を絞っているのだが、ホジャイノフはショパン・コンクールでも聴いているし、先日の来日公演も聴いているため、それをライナーに反映させたいと思う。
 さて、明日は午前中にインタビューが入っているため、その準備をしなくてはならない。待望のヘルデン・テノール、クラウス・フロリアン・フォークトがインタビューに応じてくれることになったからである。
 まだ今回の新国立劇場の「ローエングリン」は聴いていないが、その前に話を聞くことになった。オペラは10日に聴きにいく予定だ。
 これまでの演奏批評はすこぶる評価が高い。ナマの歌声を聴くのが楽しみ、心がいまから高揚している。
 すごく人柄がいいそうだが、実際はどうだろうか。
 明日、その報告をしま〜す。
 
 
| 親しき友との語らい | 23:11 | - | -
休日返上
 毎回のことだが、月はじめは締め切りが結構重なる。昨日も今日も、休日気分はどこへやら、一日中パソコンと友だちだ。
 しかし、あまり目を酷使すると眼精疲労でショボショボしてくるので、ひとつの原稿が終わるとちょっと息抜きが必要となる。
 今日はシチリア風のパスタを作った。カジキマグロを軽く塩&コショーしてから角切りにしてオリーブオイルで炒め、ここにレーズンと松の実を加える。そしていつも作り置きしているトマトソースを入れ、冷蔵庫にあるありったけのハーブを入れたら出来上がり。
 パスタをゆで、このシチリア風のソースをかけて完成だ。
 これを食べてから、庭の植木に水やりをし、またまたパソコンの前へ。
 もう夜になったので、体力的に限界になり、あとはロジャー・フェデラーの試合観戦へと突入。
 明日もまた締め切りとの戦いが待っている。さて、ロジャーの戦いに一喜一憂しますか(笑)。
| ああ愉しき(?)、締切り地獄 | 22:20 | - | -
雑誌の特集
 今日から6月である。なんと時間の経つのは早いものか。
 ようやく月末の入稿がすべて終わったと思ったら、目の前には月の初めの締め切りが山積みとなっている。
 ああ大変だ、と深く考えず、とにかくひとつずつクリアしていかなくてはならない。1本の原稿を書くためには資料を調べ、以前自分が書いた原稿を読み直し、新たな視点をもって取りかかる。
 そうして集中している間に、時間がどんどん過ぎていってしまう。
 いつもこの繰り返しである。
 私はひとつの原稿が終わると、必ずおいしい紅茶をいただく。美味なる紅茶を飲んでフーッとひと息入れているときは、何も考えない。頭をからっぽにし、からだの力を抜き、英気を養う。
 そしてまた、次なる原稿「モーストリー・クラシック」の「ピアノ協奏曲」の特集に取りかかるというわけだ。
 さて、今日も夜中まで集中しなくちゃ。
 明日は、近くのパン屋さんが特別セールをするという。これは絶対出かけなくちゃ。そのパン屋さんは軽井沢が本店。都内にいくつか支店があり、私が行くところもいつも人でにぎわっている。自然なおいしさが人気の的である。
 さて、次はピリスの原稿と、ショパンのピアノ協奏曲の原稿を書かなくちゃ。あっ、そうだ、ローランギャロスのフェデラー、どうなったっけ。毎日しつこくてすみません(笑)。
 
| ロジャー・フェデラー | 22:33 | - | -
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