Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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トーマス・アンギャン
 世界の数あるコンサートホールのなかで、音響のよさで知られるビッグ3は、ウィーンの楽友協会(ウィーン・ムジークフェライン)、ボストンのシンフォニーホール、アムステルダム・コンセルトヘボウといわれる。
 先日のウィーンの取材で、楽友協会の芸術監督を務めるトーマス・アンギャンにインタビューをすることができた。
 しかし、彼は超多忙な人で、約束の時間になってもなかなかつかまらず、写真撮影も困難を極め、インタビューもごく短時間となった。
 そのなかで、もっとも印象的だったのが、楽友協会の音響の秘密である。
「大ホールは、床下も天井裏も大きな空間となっています。ふつうは何か部屋を作ったり、物を置いたりするものですが、このホールはまったく何もない。大きな空洞となっていて、ホール全体があたかもコントラバスのように響くのです」
 アンギャンさんは、ウィーン大学で法律を学んだが、クラシック音楽が好きで、ウィーン・コンサート協会に勤務した後、1988年にウィーン楽友協会の事務総長に就任し、やがて芸術監督のポストに就いた。
「楽友協会には大ホールのほか、室内楽用や多目的用の小さなホールもいくつか有し、全部合わせると年間840のコンサートが開かれているんですよ。約80万人のお客さまが聴きにいらしています。私はその数をもっと増やしたいと思っていますし、特に若い聴衆に向けたプロジェクトも充実させたいと考えています」
 アンギャンさんは、「ウィーン・フィルのコンサートは、ほとんど聴いています」と語り、「ウィーン・フィルを聴くと、至福のときが過ごせますから」と表情を和ませた。
 ウィーン楽友協会の大ホールは、「黄金のホール」と称される。もうすぐここで2014年の幕開けとなるウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートが開催される。きっと現在は、バレンボイムとともに集中的なリハーサルが行われているに違いない。
 アンギャンさんが説明してくれた、ホール全体がコントラバスのような形状をもち、上下の空気の振動で音がすばらしく響くという音をぜひ堪能したい。
 今日の写真はインタビュー中のアンギャンさん。バックはモンテヴェルディを描いた絵で、「オリジナルなんですよ」と誇らしげに語った。


 
| 麗しき旅の記憶 | 22:06 | - | -
珍しい寿司ネタ
 先日、レコード会社の方たちと乃木坂のお寿司屋さんにいった。
 いつも仕事でおつきあいのある人たちだが、なかなか時間が合わず、ゆっくり話をする機会がもてなかった。
 その日はお寿司をつまみながら、お酒を飲みながら、ふだん思っていることを腹を割って話し、本当に有意義な時間となった。
 自分がいま何をしたらいいのか、何をすべきなのか、ということを考えるいい機会となったからだ。
 実は、このお寿司屋さん、珍しいネタをいろいろ提供してくれ、これまであまり食べたことがないような物をいただくことができた。
 しかも、それぞれとてもおいしく、やみつきになるような味わい。特に印象的だったのが、ヒラスズキと煮牡蠣のお寿司。ヒラスズキはふつうのスズキよりも高級で、なかなか手に入らないお魚だという。歯ごたえがよく、新鮮で、少し甘めのさっぱり感のあるおいしさ。
 煮牡蠣は、ひとつだけでは足りないと思うほど、滋味豊か。いやあ、すばらしい。まいりましたなあ。
 こんなおいしいお寿司、久しぶりにいただきました。感動です。
 この夜は、3人で忌憚のない意見交換をし、お店が閉店になるまで話し込んでしまった。でも、まだまだ全員が話し足りないということで、「これは、月例会にしたほうがいいんじゃない」という案も出るほど。
 クラシック界の今後のことについて、自分たちの仕事について、人間関係について、歯に衣着せぬ話が次々に出て、本当にあっというまに時間が過ぎてしまった。
 2013年を締めくくるおしゃべり会としては、最高だった。
 今日の写真は珍しいヒラスズキ(上の写真、右のお寿司)と、煮牡蠣のお寿司。
 ああ、またここでお寿司を食べながら、思いっきり話したい。あとをひく、とはこのことね(笑)。





| 美味なるダイアリー | 22:19 | - | -
ドミニク・マイヤー
 インタビューで出会う人のなかに、「この人が上司だったらいいのになあ」と思う人が稀にいる。
 先日のウィーン・フィルの取材で会った、ウィーン国立歌劇場の総裁、ドミニク・マイヤーがその人だった。
 彼はフランス人だが、ドイツ語を学び、語学に堪能。パリ・オペラ座、ローザンヌ歌劇場、シャンゼリゼ劇場の総監督を歴任した後、2010年にウィーン国立歌劇場の総裁に就任した。
 その総裁の打診があったのは、演奏旅行でパリを訪れていたウィーン・フィルからだそうで、ちょうどそのころに人生の転機になるようなことをしたいと考えている最中だったとか。
「自分が何か新しいことをしたいと考えていたちょうどそのとき、ウィーン・フィル側からこのポストのお話をいただき、最初はあまりにもタイミングが合うことに驚きを隠せませんでした。でも、きっと神がそう仕向けてくれたのだと思い、熟慮した結果、お引き受けすることにしたのです」
 マイヤーさんは、とてもおだやかな語り口の人だが、その仕事の手腕はすばらしく、いわゆる凄腕。総裁に就任するやいなや、ウィーン・フィルをはじめ、ウィーン国立歌劇場のさまざまな分野で働く人々の給与と待遇を徹底的に洗い直し、条件を向上することに務めたという。
 いまでは、ここで仕事をする人たちの待遇は格段によくなり、みんながより熱心に仕事に取り組む姿勢を見せているという。
 加えて、定期会員の数も増やし、チケットはほぼ完売。
「それもこれも、ウィーン・フィルのおかげですよ。彼らの演奏なくしては、ウィーン国立歌劇場はありえません。どんな作品にもすばやく対応し、全員が喜びをもって演奏する。こんなすばらしいオーケストラと仕事ができ、私も日々喜びを味わっています。あのときに決断してよかったとつくづく思います。まだまだこれから改善すべきことはたくさんあります。ウィーンを訪れる世界中の人たちに、ぜひウィーン国立歌劇場に足を運んでもらいたい。そのために、委嘱作品も考え、新たな試みも考慮しています」
 柔和な表情で話すマイヤーさんだが、仕事熱心で完璧主義で、しかも理想主義者のように見えた。ああ、こんな人が私の若いころにいてくれたら、ぜひ上司になってほしかったなあと、現実離れした考えをもってしまった。フランス人特有のウイットとユーモアとエスプリも持ち合わせているし。う〜ん、理想の上司だワー。
 今日の写真は、インタビュー後のドミニク・マイヤー。相手の目をきちんと見ながら話すその姿勢も好感がもてた。うん、理想的だ(笑)。


 
| 麗しき旅の記憶 | 22:14 | - | -
年末入稿がひと段落
 ああ、ようやく年末入稿がひと段落し、精神的にも肉体的にもホッとできる状態となった。
 毎年そうだが、この時期は本当にあわただしい。特に、今年は引っ越しがあったため、資料が散逸し、ひとつの原稿にまつわる資料を探すのに大変な時間を要する。
 これから年末年始のお休みの間に、これらを整理するのが大きな課題となっている。
 これら膨大な資料がきちんと整理整頓されたら、もっと原稿が早く書けるようになると思うし、ストレスも半減する。
 ただし、そうなるためには、大変な時間と忍耐力が必要だ。
 でも、この時期にやるっきゃない。これを逃したら、またいつもの「キャー、あの資料どこ?」「あのアーティストの音源はどこだっけ」「これは前に書いた原稿があったよなあ。あれあれ、あれを参考にしたいのに、ああ、どこじゃー」ということの繰り返しになる。
 年末年始くらいはゆっくりしたいが、あまりのんびりしていると、あとでそのツケがまわってくるから、心を鬼にして整理に励まなくっちゃ。
 まあ、今夜はひと段落したことだし、ちょっと遊んじゃおうかな。私はミステリーチャンネルと旅チャンネルとお料理番組が大好きで、ビデオがたまりまくっている。さてと、それをひとつふたつ見ましょうか。
 いいなあ、こういう時間。ひとときのぜいたくな時間だワ。ワイン片手にのんびりタイム。それも一瞬のことだけどね。原稿が終わると、この瞬間だけは、本当に開放的な気分になれるんだよね。
 
| ああ愉しき(?)、締切り地獄 | 22:38 | - | -
庄司紗矢香
 ようやく年末進行の原稿締め切りの峠が見えてきた。もう、泣いても笑っても、今週いっぱいしかない。あと2日で、みんな年末年始の休暇に入ってしまう。
 そんななか、昨日は今年最後のインタビューに出かけた。ヴァイオリンの庄司紗矢香である。
 彼女は2012年9月、サンクトペテルブルクでプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番、第2番の録音を行った。共演はユーリ・テミルカーノフ指揮サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団である(ユニバーサル、1月22日発売)。
 庄司紗矢香は、今年の東芝グランドコンサートでプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第2番を演奏しており、その話を昨年聞いたばかり。それゆえ、今回はその続きとして、第1番を中心に話を進めた。
 マエストロ・テミルカーノフは、庄司紗矢香を高く評価していて、何度も彼女と共演を重ねている。2013年12月、テミルカーノフの75歳記念ガラ・コンサートがサンクトペテルブルクで開かれたのだが、庄司紗矢香は名だたるロシアの音楽家にまじって参加、唯一のロシア系以外のアーティストとなった。
 それほどテミルカーノフに信頼され、認められている彼女だが、これまで録音で共演したことはなかった。初めての共演となるこのプロコフィエフは、さすがにオーケストラと息の合った集中力と緊迫感に満ちた演奏で、プロコフィエフをこよなく愛す庄司紗矢香の強い意気込みが全編を覆っている。
 テミルカーノフは、彼女を評して、「きみはプロコフィエフ・プレイヤーだ。作曲家の心理をとてもよく理解している」といってくれたそうだ。
「とてもうれしかったですね。マエストロはあまり口数の多い方ではないのですが、そのひとことひとことが非常に印象的であり、心に残ります」
 このインタビューは、2014年1月末の「日経新聞」に書く予定だ。
 庄司紗矢香とテミルカーノフ指揮サンクトペテルブルク・フィルは1月25日(大阪のザ・シンフォニーホール)、26日(横浜みなとみらいホール)、30日(愛知県芸術劇場)にコンサートが予定されており、庄司紗矢香とメナヘム・プレスラーとのデュオ・リサイタルは、4月1日から13日までの間に6公演行われる。
 庄司紗矢香は、ロシアの空気がとても自分に合うと感じていて、特にサンクトペテルブルクが好きだそうだ。彼女は絵画にも精通し、各地の美術館を巡ることが趣味のようだが、サンクトペテルブルクはすばらしい美術館が数多くあるから、きっとそれも好きな理由かもしれない。
 インタビューのなかでも、いつも画家の話が話題にのぼる。今回は、プロコフィエフの作品を弾くと、カンディンスキーを思い描く、という話になった。彼女もテミルカーノフ同様、そんなに口数の多い方ではないが、その絵に関しては、雄弁に語ってくれた。
 もう、すぐにコンサートが控えている。そして、CDのリリースも間近だ。テミルカーノフが太鼓判を押す演奏を楽しみにしたい。
 今日の写真はインタビュー後の1枚。いつもシンプルなワンピースを着用しているが、ゆっくり買い物をする時間がないため、「洋服などの買い物は空港で済ませるの」と笑っていた。


 
 
| アーティスト・クローズアップ | 23:14 | - | -
ヴィルフリート・ラムザイアー=ゴルバッハ
 先日のウィーン・フィルの取材で、その人間性にいたく惹かれた人がいる。ウィーン・フィルの弦楽器群の修復を一手に引き受けている、ヴィルフリート・ラムザイアー=ゴルバッハさんである。
 彼は前任者のオトマール・ラングさんの後任として、2002年に製作工房を引き継ぎ、複数の職人を抱えて仕事を行っている。
 インタビューでは、いかにも職人らしく謙虚でおだやかな語り口をもって、どんな質問にも誠意を見せて答えてくれ、ウィーン・フィルのメンバーが全幅の信頼を寄せていることがよくわかった。
 ラムザイアー=ゴルバッハさんは、「自分の存在は知ってもらわなくていいんですよ」と何度もいった。「私の修復した楽器で、いい演奏をしてもらえたら、それでいいんです」ともいった。
 仕事が山積みなのに、工房の隅々まで見せてくれ、いろんな説明をしながらあらゆる楽器の詳細までていねいに教えてくれた。
 そんなひとつひとつの態度がとても自然で、自分の仕事に誇りをもっていることがわかり、非常に頼りになる存在だということがひしひしと伝わってきた。
 工房は、ウィーンの楽友協会の一角に位置するため、ホールの奥の廊下からすぐにここにくることができる。それゆえ、ウィーン・フィルのメンバーは、何かあると、すぐに楽器を抱えて工房に飛び込んでくるそうだ。
 こうした修復の達人の存在が、あのすばらしい音楽を生み出すひとつの大きな要素になっているのだろう。でも、ご本人はあくまでも、前には出たがらない。
 彼が楽器をいかに大切に思っているのかは、ヴァイオリンなどを手に取るときの様子でわかった。慈しむように、愛でるように、大切に扱い、その楽器を見る目は、あたかも命が宿ったものに向けるような温かなまなざしだったからだ。
 私は工房を出るとき、胸のなかがとても温かくなっていることに気づいた。ラムザイアー=ゴルバッハさんは、会っただけでそんな気持ちにさせてくれる人だった。
 きっとウィーン・フィルのメンバーも、楽器の修復はもちろん、彼がいつも工房にいてくれるというだけで、安心して演奏に集中できるのではないだろうか。
 今日の写真は、インタビュー後のラムザイアー=ゴルバッハさんのちょっとはにかんだ表情。「本当は、目立ちたくないんだけど…」と、シャイな笑顔を見せている。


 
 
| クラシックを愛す | 22:38 | - | -
ダニエル・バレンボイム
 10月初旬、「家庭画報」の新年号でダニエル・バレンボイムにインタビューするため、ウィーンからベルリンに移動した。
 マエストロはベルリン国立歌劇場のベルクの歌劇「ヴォツェック」の本番の日で、その前の時間にインタビューに応じてくれた。
 これはウィーン・フィルの特集号のため、2014年1月1日のニューイヤー・コンサートの指揮を担当することについて話を聞いたのだが、短時間で効率よく話を進めてくれた。
 バレンボイムは2009年に初めてウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートの指揮台に立っている。このときは「平和」をテーマに掲げ、選曲もそれに即したもので、アンコールの前には結構長いメッセージを伝えたが、今回も「世界の平和」をテーマにしたいと語った。
 とりわけ、第一次世界大戦に対して熱く話してくれた。2014年は開戦100年にあたることから、これを記念して平和にまつわる曲を入れたいと考えているという。プログラムに関しては、この時点ではまだすべて決まっているわけではなく、これからウィーン・フィルとの話し合いで詳細を詰めるといい、平和に関するもので組み立てるといっていた。
 バレンボイムは忌憚のない意見をオーケストラにぶつけることで知られ、常に率直な語りで知られる。
 それゆえ、オペラの本番前のあわただしい時間のインタビューでは、はたしてうまくいくのだろうかと心配したが、最初からインタビューはスムーズに進み、最後はジョークまで飛び出し、非常に有意義な時間を過ごすことができた。
 彼はいわゆるコワモテで、近寄りがたい雰囲気をもっている。インタビューの前にほんの短い時間を写真撮影にあてたのだが、ここでもニコリともしない。
「う〜ん、これは手ごわいなあ」
 しかし、そう感じたのも一瞬だけ。インタビューが始まるとガンガン早口で話し出した。
 実は、かなり前のことになるが、私はバレンボイムの父親に教育に関してインタビューをしたことがある。その話をすると、急にマエストロの表情がなごんだ。
「もう父が亡くなってからかなり年月が経ちますが、いまはいい思い出だけが残っています」
 こういって、一瞬遠くを見るような目をした。
 父親は、いつもバレンボイムに「音楽をよく考えなさい」といっていたという。そのことばをいまでも大切にしているそうだ。
 ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートに関する話は、「家庭画報」の記事に詳細を書いたが、その後このライヴCD(ソニー)のライナーノーツにも原稿を寄せた。
 2014年1月22日に、このCDはリリースされる予定である。
 今日の写真はインタビュー終了後のマエストロの表情。やっぱりちょっと怖い(?)。
 もっとも驚いたのは、このインタビュー後、指揮者室から出て階段を下りていったら、指揮者のマリス・ヤンソンスがバレンボイムに会うために階段を上ってきたことだ。本番前にいろんなことをこなすなんて、本当にバレンボイムはすごい。どうやってオペラの指揮に集中するのだろう。 
 1月1日のウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートのライヴはテレビ中継される。どんな内容のメッセージが音楽に託されるか、楽しみだ。

| 終わりよければ…取材奮闘記 | 21:57 | - | -
生パスタ
 家の近くに生パスタを売っているお店があり、とても繁盛している。
 今日は、それを使ってトマトソースのパスタを作った。決め手はイワシである。新鮮なイワシが手に入ったため、それを三枚に下ろし、塩、こしょうして薄く小麦粉をまぶし、オリーブオイルでソテーする。
 トマトソースは、にんにくとたまねぎをオリーブオイルで炒めてトマトの水煮缶を加えて煮込み、最近バルコニーで栽培しているローリエをプラスした。
 今日の写真は生パスタの上にトマトソースをたっぷりかけ、パルメザンチーズを振った上にイワシを乗せたところ。
 休日のランチにはピッタリで、この生パスタはいくらでも食べられるおいしさ。デュラム・セモリナ粉のみで作られているからか、もちもちっとした食感があり、みずみずしく、風味豊か。
 これはやみつきになりそうだ。
 ただし、生パスタは保存期間が限られているため、すぐに調理しなくてはならない。時間がないときは、ちょっと無理だ。
 でも、これが手に入ると、イタリアで食べた味が再現できる。次はどんな味のものにしようか。キャベツとアンチョビのパスタもいいし、サーモンのクリームソースもいいかもしれない。
 しばらくは、生パスタ屋さんに通うことになりそうだ。
 今日の写真は、できたてのサーディンのトマトソースパスタ。私は青魚が大好きで、お寿司を食べにいってもヒカリモノをよく頼むが、新鮮なイワシは本当においしい。ちょっとシチリア風になったかも、と自画自賛(笑)。


| 美味なるダイアリー | 21:49 | - | -
フランツ・ウェルザー=メスト
 先日のウィーンとベルリン出張では、いくつかオペラを観たり、コンサートに行くことができた。
 10月2日には、ウィーン国立歌劇場でプッチーニの歌劇「西部の娘」のゲネプロを観た。指揮はフランツ・ウェルザー=メスト、演奏はウィーン国立歌劇場管弦楽団&合唱団。主役のミニーはニーナ・シュテンメ、そしてジョンソンをうたったのが、ヨナス・カウフマンである。
 この指揮を見ながら、以前ウェルザー=メストにインタビューしたことが思い出された。
 インタビュー・アーカイヴの第52回はそのウェルザー=メストの登場。これは1992年のインタビューで、当時ウェルザー=メストはロンドン・フィルの音楽監督を務めていた。1990年にこのポジションに大抜擢され、一躍世界のひのき舞台に躍り出た若手指揮者として、大きな注目を集めていた時代だ。

[FMレコパル 1992年3月20日〜4月12日号]
 
期待の新鋭が聴かせる、エネルギーに満ちたブルックナー

 1990年秋、イギリスの名門オーケストラ、ロンドン・フィルの音楽監督に弱冠30歳で任命されて話題を呼んだオーストリア出身のウェルザー=メストが同オーケストラとともに初来日を果たした。
 来日記念盤としてリリースされたブルックナーの交響曲第7番は、従来のブルックナーとはガラッと解釈の異なる独特の現代的な演奏。
 ブルックナー晩年の傑作であるこの第7番は、どちらかというと他の交響曲よりは明るい作風をもっているが、敬愛するワーグナーの訃報を耳にしてその悲しみのなかで書かれた第2楽章などは、特に最後のホルンの響きに追悼の意味合いが含まれていて、聴き手は寂寥とした気持ちにさせられるのがふつうである。
 だが、ウェルザー=メストの演奏は単なる寂しさや悲しさの表現ではなく、その悲しみの淵から一歩出て新しいものを見出そうとするかのようなエネルギーに満ちている。全体に音楽が停滞せず、常にフットワーク軽く前進していく感じなのだ。
 ブルックナーを聴くときに抱くあの宗教的な雰囲気や、重々しい音の重なりなどはあまり聴こえてこない。深い祈りが日常化されて、ごく自然の行為となっているかのようにさらりと流れてくる。

より前衛的で革新的なブルックナーの音楽

 ウェルザー=メストはブルックナーと同じリンツの出身。彼は幼いころからここでブルックナーの音楽に親しんできた。
「最初にブルックナーの音楽と出会ったのは、ぼくが教会の聖歌隊でうたっていた8歳のころでした。交響曲ではなく宗教曲でしたが、なんて退屈な音楽なんだろうと思いましたよ(笑)。それが10歳になったときに学生オーケストラの演奏する交響曲第7番を初めて聴いて、その美しい響きにすっかり魅せられてしまったのです」
 以後、ブルックナーのとりことなってしまった彼は、いままで第2番を除くすべての交響曲を指揮している。初めてプロの指揮者として振ったのは第5番で、このときは24歳だった。それ以来、何度もブルックナーを振ってきたが、もっとも好きな交響曲は第6番だそうだ。
 ブルックナーの作品は初演当時からさまざまな人の手が加えられ、改訂や削除が行われている。それゆえ楽譜もいくつかの種類があり、今回ウェルザー=メストはノバーク版を使用。この楽譜は作曲者のオリジナルにもっとも忠実だと彼はいう。
 ブルックナーはとても人がよく、シャイなタイプだったため、きっとまわりの人々の意見を素直に受け入れてしまったのではないかというのがウェルザー=メストの考え。だからブルックナーの最初の手書き楽譜にさまざまな手が加えられ、いくつもの版が生まれてしまった。
 ウェルザー=メストはこうした理由により、以前からブルックナーのオリジナルの楽譜を調べている。
「ブルックナーの音楽は、一般に思われているよりはもっと前衛的で革新的なものだと思います。交響曲第4番の最初の楽譜を読むと、とても革新的な音楽がそこにあるのを感じます。それを当時の人は理解できなかったから、いろいろ批評して改訂してしまったのでしょう」
 だからウェルザー=メストの演奏は、こんなにもモダンな感覚がするのだろうか。第7番はワーグナーへの思いを別にすれば、ブルックナー特有の宗教色はより濃厚に記されている作品。最終楽章に、それはオルガン的な響きとなって現れる。ここでウェルザー=メストは、スピード感あふれるスケールの大きなフィナーレを展開。切々と訴えるというよりは、むしろ自らがブルックナーの楽譜から読みとった革新的な断面を音に託し、聴き手の耳を新たに開かせようとするような、そんな音楽作りをしている。
 革新的な音楽というものは、常にその時代には認められないものである。ブルックナーの作品は1世紀余りを経たいま、同郷の若手指揮者によって新たな生命が吹き込まれている。

親しい仲間と室内楽でヴィオラを弾くのが楽しみ

 研究心旺盛なウェルザー=メストは、ロンドン・フィルをなんとかベルリン・フィルやウィーン・フィルに近づけたいと日夜努力している。音楽監督に任命されたときは、ドイツのことわざにあるように「靴を履きまちがえたんじゃないかと思った」そうだが、いまやレパートリーの拡大からオーケストラの経済問題にまで真剣に取り組んでいる。
 今回の来日公演ではクラウス・テンシュテットが倒れ、急きょその分まで指揮するという大役をこなしたが、その体力作りは大好きなマラソンで培っている。
「東京に着いた初日に、皇居のまわりを6マイル走ったんですよ」
 こう豪語する彼は、来年あたり時間がとれたらロンドン・マラソンに参加したいと力強い抱負を語ってくれた。

 今日の写真は、その雑誌の一部。先日指揮していたウェルザー=メストは、まったく体型が変わっていなかった。これもマラソンのおかげ(?)。

| インタビュー・アーカイヴ | 22:05 | - | -
ウィーンのグラーシュ
 ハンガリーの代表的なお料理グヤーシュは、いまではオーストリアやドイツでさまざまな形に変容し、日常食として食べられている。
 これは牛肉とパプリカの煮込みで、たまねぎやにんじんなどの野菜がたっぷり使われたシチューである。
 先日ウィーンに出張した折には、この地でグラーシュとしてメニューに載っているこのシチューをいろんなところで食べることができた。
 なにしろ、取材は時間との勝負で、ゆっくり食事をする時間がないことが多い。グラーシュはどのレストランでもさっと出てくるため、とても便利だ。
 こうしていくつかのグラーシュを食べくらべてみると、中身や味に相当な違いがあることに気づいた。
 まず、スープのような汁の多いものと、汁気がほとんどないものとに分けられる。野菜がゴロンと入っているものがあるかと思えば、野菜はどこにあるんだろうと、お肉をかきわけなければならないものもある。
 さらに、つけ合わせにパンが出てくるものと、ダンプリングのような小麦粉のお団子のようなものが添えられたものもある。
 もっとも大きな違いは「味」である。
 とてつもなく濃厚な、「牛肉でございます」という味のものと、パプリカの味を全面にフィーチャーしたもの、野菜もお肉も姿がわからないほど煮込んだものなど、千差万別。これだから、食べくらべはおもしろいよね。
 私がグラーシュを作るときは、牛肉はとにかくやわらかく煮込み、野菜もたっぷり入れ、味は「もっと食べたい」と思うほどの濃さにとどめる。そして、最後にサワークリームをかける。つけ合わせは、堅めのしっかりした窯焼きのパンにしたい。
 でも、このお料理はやっぱりパプリカが勝負なんだろうな。ハンガリーにいったことがないからわからないが、パプリカのおいしさで味が決まるような気がする。
 う〜ん、ブダペストにいきたくなってきたゾ。音楽大国だからすばらしい音楽が聴けるのだろうが、本場のグヤーシュを一度味わってみたいという気持ちが強いなあ(笑)。
 今日の写真はウィーンの著名なホテルのグラーシュ(上)と、広場に椅子を広げていたレストランのグラーシュ(下)。ホテルのほうは、濃厚な味わいで、上質な牛肉がたっぷり。戸外のレストランのほうは、いわゆるビーフシチューのようだった。でも、どちらも美味でしたよ。




 
| 美味なるダイアリー | 22:05 | - | -
セルゲイ・シェプキン
 ロシア出身で、現在はアメリカ在住のピアニスト、セルゲイ・シェプキンは、2007年に初来日し、バッハの「ゴルトベルク変奏曲」を演奏して日本のファンに大きな衝撃を与えた。
 彼の「ゴルトベルク変奏曲」は、これまで耳にしたことのない解釈と奏法で、私は聴き込むほどに深い海の底にもぐっていく感覚を覚えたものだ。
 当時、さまざまなところにこの演奏について綴り、「ジャック・マイヨールの素潜りを連想させた」と表現したものだ。
 その後、何度か来日し、2010年には13年ぶりの「ゴルトベルク変奏曲」の再録音をリリース、この録音は世界中で高い評価を得た。
 そして12月16日、シェプキンは再びすみだトリフォニーホールに姿を見せ、「ゴルトベルク変奏曲」を披露した。
 ずっと彼の演奏を聴き続け、今回のプログラムにも原稿を寄せたが、そのつど演奏は大きな変容を遂げている。
 この夜は、折しもベートーヴェンの誕生日にあたるため、まずベートーヴェンの「6つのバガテル」作品126で幕を開けた。これはシェプキンが「ゴルトベルク変奏曲」と合わせてぜひ弾いてみたい、と願った作品である。
 冒頭から、鍛え抜かれたテクニックに裏付けられた、クリアで凛とした響きがホールを満たしていく。6つの小宇宙のような作品を、シェプキンはときに歌謡性を前面に、またあるときは自由な発想をもって奏で、後期のベートーヴェンのピアノ組曲のような作品を色彩感豊かに表現した。
 シェプキンの「ゴルトベルク変奏曲」はこれまで何度聴いただろうか。今回は、以前よりも発想が自由になり、装飾音が自在に入れられ、あたかもチェンバロのような響きとフレーズの作り方を示し、アーティキュレーションも明確になり、細部まで神経が張り巡らされていながらも全体を俯瞰する大きな目が感じられた。
 それゆえ、以前のひたすら深く沈静していく様相は消え、天空に飛翔していくような自由闊達さが際立っていた。
 終演後、シェプキンに会うと、いつもながらのおだやかな笑顔を見せてくれた。彼は「バッハは本能に基づいて弾いています」という。それが聴き手の心にストレートに届き、深い感銘をもたらす。
 今日の写真は、笑みを浮かべるシェプキン。集中力に富んだ演奏のあとだけに、ホッとしているのだろう、安堵の表情にも思える。
 だが、まだ私の頭のなかでは、最後のアリアが鳴っていた。


 
| アーティスト・クローズアップ | 22:26 | - | -
ジュンク堂書店トークショウ&サイン会
 今日はジュンク堂書店池袋本店で、トークショウ&サイン会が行われた。
 19時半から始まり、トークと質疑応答とサイン会で約90分ほど。年末の忙しい時期なのに、たくさんの方が集まってくれた。
 みなさん、本当にありがとうございました。
 多くの方たちが楽しんでくれたようで、みなさんからいろんな感想を聞き、ホッとひと安心。
 でも、「一目ぼれした演奏家はだれですか?」という質問には、驚いた。そういうことを考えたこともなかったからだ。
 こういうトークショウでは、思いがけない質問をされることがある。
 以前、「ものすごく失敗した取材やインタビューの話を聞かせてください」といわれたときも一瞬考え込んだが、そのときは結構おもしろおかしく話をしたものだ。
 だって、失敗は山ほどあるんだもの。
 サイン会では、みなさんがじかにいろいろ感想をいってくれたり、いろんな話をしてくださり、とても有意義だった。
 ジュンク堂の担当の方も、「トークを聞き、これからクラシックを聴いてみたいと思うようになりました」といってくれた。ああ、こういうことばが一番うれしい。
 今日のイヴェントにかかわってくださったすべての方に感謝します。みなさん、本当にありがとうございました。
 ぜひ、2冊目が出せるよう、頑張ります!!
 
 
 
 
| 日々つづれ織り | 23:16 | - | -
ラファウ・ブレハッチ
 なんと心に響く演奏だろう。もっと他の曲が聴きたい、アンコールももっと演奏してほしい、ずっとずっとこの会場にすわっていたい。
 そんな思いを抱かせる演奏には、なかなか出会えるものではない。 
 14日の土曜日、東京オペラシティでラファウ・ブレハッチのリサイタルを聴いたが、その演奏のすばらしかったことといったらない。すでに今年は、11月の末までの分で「コンサート・ベストテン」の原稿は締め切られたが、もしも12月の分まで入ったら、ブレハッチは上位に食い込むことまちがいなしだ。
 プログラムは前半がモーツァルトのピアノ・ソナタ第9番、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第7番。ブレハッチはいかにも楽しそうに、躍動感とかろやかさとエレガントな表情を伴ったモーツァルトを奏で、愉悦のときを与えてくれた。
 ベートーヴェンの初期のソナタもロマンにあふれ、作曲家の心境著しい楽想が香り高く紡がれていった。
 後半はオール・ショパン。夜想曲第10番、ポロネーズ第3番「軍隊」と第4番、3つのマズルカ作品63、スケルツォ第3番という構成だ。
 ああ、なんという自然さ。あるべき音がそこにあり、シンプルで柔軟性に富み、リズムやフレージングのひとつひとつがこれ以上考えられないほどのナチュラルな表情をもって奏されていく。
 アンコールもショパンが次々に登場。私の脳裏には、ショパン・コンクールのときのブレハッチが浮かんできた。
 ブレハッチは、演奏を聴くたびに大いなる進化と深化を遂げている。しかも、努力の痕跡は微塵も見せず、快活に前向きな姿勢で、音楽を心から楽しみながら演奏していることが伝わる。
 彼はどこまで成長するのだろうか。ショパン・コンクール優勝から8年、聴くたびに新たな感動が湧き、ピアノを聴く喜びを感じる。
 今日の写真は、終演後のにこやかな表情。私はショパン・コンクールからずっと聴き続けているのに、彼がザルツブルク音楽祭にデビューしたときに聴きにいってインタビューをしたため、その印象が強いようだ。
「やあ、こんにちは。ザルツブルクに聴きにきてくれたんだよね」
 また、こういわれてしまった。まあ、いいんだけどさ。
 いずれにしても、年末にこんなすばらしい演奏に出会え、至福のときを味わうことができ、なんとも心が温かくなった。
 というわけで、あれから毎朝ショパンの「ポロネーズ集」(ユニバーサル)を聴いている。でも、私は彼のベートーヴェンのピアノ・ソナタ第2番の録音もたまらなく好き。天に駆け上がっていくようなこのベートーヴェン、これまで聴いたことがないベートーヴェンだからだ。
 以前、ブレハッチにそのことを伝えたら、すぐに旋律を口ずさみ、「いい曲だよねえ」とにんまり。この笑顔も自然で温かくて、たまんないワ(笑)。
 彼は「自分が自然体でいられること」にこだわる。けっして無理はしない。そして、ピアニストとして、ゆっくり歩んでいきたいという。いまの世の中の速い流れにまどわされたくないからと。そうそう、それが一番の強みだ。
 ブレハッチを聴くと、彼の演奏から生き方を感じ取り、それが自分のなかの時間の流れをリセットすることにつながる。せかせかしたり、いらいらしたり、自分のなかにたまりまくっている嫌な感情が、スーッと洗い流されていくのである。ブレハッチのピアノには、そんな力がある。だから、私はコントロールが効かなくなると、ブレハッチを聴く。
 ラファウ、ありがとう。あなたは、ショパン・コンクールのときから常に私に大きな喜びと癒しと元気を与えてくれる。その人生哲学、いつまでも守り続けてね。


 
 

 
 
| クラシックを愛す | 16:07 | - | -
JUNKU 連続トークセッションが近づく
 12月17日に行われる「JUNKU 連続トークセッション」がいよいよ近づいてきた。
 今日は場所の確認のため、ジュンク堂書店池袋本店に出かけたところ、入口には告知の看板が用意され、9階の書籍売り場には「クラシックはおいしい アーティスト・レシピ」の棚のところに、やはり告知のポップが貼られていた。
 ああ、こんなにも一生懸命トークショウ&サイン会のお知らせをしてくれるのかと、しばしその前で感慨にふけってしまった。
 明日は、対談相手の椎根さんと内容の打ち合わせをすることになっている。
 そして明後日は、19時30分からなので、その1時間前には現地入りし、最終的な打ち合わせをする予定である。
 これまで、「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」などでは、何度か講演を行ってきたが、いつもぶっつけ本番。もちろん、私は準備をしていったが、リハーサル的なものはまったくなかった。
 今回は、やはり対談ということと、出版社の方たちや書店の方たちが全員で動いてくれるため、私も入念な準備をしなくてはならない。
 今日の写真は、入口の看板(一番上)と本の売り場の告知ポップ。
 でも、こんなところで写真を撮っている姿を見られたら、ちょっと恥ずかしいよね。というわけで、さっと撮って、さっと立ち去りました(笑)。



| 情報・特急便 | 21:50 | - | -
ユンディ・リ インタビュー
 ユンディ・リには初来日のころからインタビューを続けているが、当初はあまり多くを語らず、話を聞き出すのに非常に苦労したことを覚えている。
 それが次第に舌がなめらかになり、最近はとても雄弁にさまざまなことを語ってくれるようになった。
 今回は、日本公演で演奏したベートーヴェンのピアノ・ソナタへの思い、2014年2月から開始される、長期間のヨーロッパツアーに関して、新録音の予定などをメインに話を聞いた。
 ユンディは、いまもっともベートーヴェンに心が向き、いろんな作品を弾きたいのだという。ピアノ・ソナタもコンチェルトも。
「ベートーヴェンの作品は、自分の人間としての成長により理解が深まり、テクニックも表現力も次第に熟成されてきたと思います。ベートーヴェンの作品を弾くことで、ぼくの成長も促されてきたのでしょうね」
 こう語るユンディは、ベートーヴェンの奥深さに魅せられ、ピアノ作品だけではなく、特に交響曲をたくさん聴いているという。
 実は、ヨーロッパツアーでは、シューマンの「幻想曲」をメインに据えたプログラムを考えているそうだが、来年11月の日本ツアーでも、「幻想曲」を弾きたいと明言した。
「この作品は非常に内省的で、シューマンの心情がリアルに映し出され、弾けば弾くほど魅せられていくのです」
 彼はドイツに留学したことにより、ドイツ作品のもつ多様な要素を肌で感じることができるようになったと、留学時代を振り返った。
 いま、自分が教える立場になったとき、その経験を生かしたいと考えている。そして、教えることにより、自分も思いがけない発見があったり、新たな方向を見出すきっかけになるそうだ。
 このインタビューは、「家庭画報」に掲載される予定である。ただし、すぐではなく、来春以降の号になりそうだ。
 今回は、ベートーヴェンへの熱い思いと、次なるレパートリーであるシューマンのことをことばを尽くして語ってくれたが、本当に彼はいつも真面目な受け応えだ。写真を撮るときも、「笑ってよ」といっても、真面目な表情を崩さない。
 今日の写真はピアノを弾いているユンディと、生真面目な表情のユンディ。次に会ったら、「どうしたら笑ってくれる?」と聞いてみようかな。いやあ、無理かもね。だって、私が撮った写真を見て、「うん、うん」と納得した表情をしていたから。やっぱり、こういう表情が気に入っているのかも。
 でも、いつか笑わせたい、特撮になるじゃない(笑)。
 そうそう、ひとつリラックスした話題を出したときに、ちょっとだけ笑った。それは、「いつもブランド物のスーツでビシッと決めているけど、そのスーツどこの?」と聞いたら、フランスのオーダーメイドなんだって。「それで靴は?」と聞いたら、ほんの少し笑顔になって、「イタリア製だよ」と。
 う〜ん、お洒落。以上でした!!




 
 

| 親しき友との語らい | 23:02 | - | -
ユンディ・リ
 今日は、東京芸術劇場にユンディ・リのリサイタルを聴きにいった。
 前回の来日が中止となったため、今日は会場が超満員。みんなが話しているのを聞くともなく聞いていたら、新幹線で駆け付けた人が多かった。
 今回の公演は今日と、明日12日の東京オペラシティコンサートホールだけだから、熱心なファンが地方から聴きに訪れたのだろう。終演後に、ツアーコンダクターらしき人が、旗をもって何人かのお客さまを誘導している姿も見受けられた。そうか、コンサートを聴くツアーも組まれたわけだ。
 いつもながら、ユンディ・リの人気の高さには驚かされる。
 実は、私はてっきり女性ファンでホールが埋め尽くされているのかと思ったら、結構男性も多かった。私の隣では、若い男性がふたり、ピアニストの名前を挙げながら、これも聴いた、あれも聴いたと、自慢話をしていた。
 今日のプログラムは前半がショパンのノクターン第1番、第2番、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第23番「熱情」。後半がベートーヴェンのピアノ・ソナタ第8番「悲愴」、同第14番「月光」。
 ユンディはすでに「悲愴」「月光」「熱情」のCDをリリースしているが(ユニバーサル)、最近は特にベートーヴェンに目が向いているようだ。
 実は、明後日インタビューをする予定が入っている。彼の今後のことについて聞こうと思っているのだが、やはりベートーヴェンの話題は欠かせない。さらに来年は大きなヨーロッパ・ツアーも組まれているそうだ。
 日本全国ツアーも大規模なものが組まれるようで、11月6日、10日のサントリーホールはすでに予定されており、詳細は2014年4月下旬に発表になるようだ。
 さて、久しぶりにユンディの演奏も聴いたし、これでインタビューの準備もできる。特有の美音は健在、これに力強さも加わった。
 2012年秋には四川音楽院ピアノ学部の副学部長および教授に学部最年少で就任したという。その話も聞かなくちゃ…。
 明後日、詳細を報告しま〜す。
 
 
| クラシックを愛す | 22:28 | - | -
ゴーティエ・カピュソン
 今日は、フランスのチェリスト、ゴーティエ・カピュソンのインタビューのため、銀座に出かけた。
 ゴーティエには、かなり前から取材を続け、特にヴァイオリニストの兄、ルノー・カピュソンと一緒のインタビューが印象深い。
 近いうちにその爆笑インタビューを「インタビュー・アーカイヴ」で取り上げたいと思う。
 とにかく、ルノーはおっとり慎重にひとことずつことばを選びながら話すタイプ。ゴーティエは才気煥発、ルノーへのインタビューでも自分が話し出す。すると、ルノーが「オレが聞かれているんだよ。オレが答えるんだから、お前は黙ってろよ」と怒り出す。
「ああ、そう」としばらくゴーティエは黙っているが、ルノーが夢見るような目をしながらゆったりと話していると、「アニキ、その曲に関してはぼくのほうが話せるよ」と口をはさむ。
 するとまた、ルノーが怒り出す。ゴーティエは「ハイハイ」としばらく沈黙。
 この繰り返しで、インタビューは爆笑状態。それを今日ゴーティエに話したら、「そんなことあったっけ。忘れちゃったなあ」と、ニヤニヤしながらとぼけていた。
 ゴーティエの新譜は盟友のピアニスト、フランク・ブラレイと組んだ「アルペジョーネ・ソナタ」(ワーナー)。もう1枚は、サン=サーンスの協奏曲集で、ルノーがヴァイオリン協奏曲、ゴーティエがチェロ協奏曲、ふたりがソロを務める「ミューズと詩人」の3曲。フランスのいま話題の若手指揮者、リオネル・ブリンギエールとの共演である。オーケストラはフランス放送フィル。
 これらの作品に関して、短時間で雄弁に語ってくれた。このインタビューは「CDジャーナル」に掲載されることになっている。
 ゴーティエの快進撃はすばらしく、練習熱心で常に前向きな彼は、スター街道を突っ走っている感じ。しかも、地に足の着いた性格ゆえ、ひとつひとつの活動があるべき形できちんと行われている。
 音楽はエネルギッシュで若々しい情熱がほとばしるものだが、作品に寄り添う目が常に感じられ、作曲家への敬意を前面に押し出している。
 彼はいつ会っても、活力に満ち、笑顔を絶やさず、本当のナイスガイだ。
「ぼくが音楽を楽しんでいるんだから、それを聴いてくれる人も幸せになってくれなくちゃ」という。
 作品についてかなり詳細に語ってくれたので、それを記事に書くつもり。今日の写真は、インタビュー後のワンショット。「リラックスした感じでね」といったら、最初はおどけた様子をしてみんなを笑わせていたが、すぐにこんな表情になった。ねっ、ナイスガイでしょ。演奏もいますっごく脂がのっているんだよね。 

| 親しき友との語らい | 23:25 | - | -
UTAU DAIKU
 今日は、オーストリア大使館で、「東日本大震災復興支援プログラム UTAU DAIKU Wien」の記者会見が開かれた(主催 一般社団法人世界音楽合唱チャリティー協会 03-3505-1055)。
 これは音楽交流を通して、日本とオーストリアの友好を深めることを目指した新しいプロジェクトで、第1回はウィーン少年合唱団と南相馬市の少女合唱団(MJCアンサンブル)がウィーン楽友協会で再演を果たすというものである。
 実は、ウィーン少年合唱団は昨年の来日時に、過密スケジュールの合間を縫って、復興支援の一環としてMJCアンサンブルと共演した。今度はそのお礼と感謝の気持ちを届けるために、MJCアンサンブルが初めてウィーン公演を行うことになったという次第だ。
 日時は2014年3月5日、演目はベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」。シュテファン・ヴラダー指揮ウィーンカンマーオーケストラ、コーラス・ヴィエネンシス、マーラ・マシュタリール(ソプラノ)、小山由美(メゾ・ソプラノ)、ヘルベルト・リッパート(テノール)、甲斐栄次郎(バリトン)の出演が予定されている。
 すでに、この復興支援の「第九」に賛同した合唱ファン300人が参加を希望しており、実際に楽友協会でうたうのだという。日本では、年末になると各地で「第九」をうたう人々が多く見られるが、今回はあまりにも希望が多かったため、50人増やして350人の枠を設けているそうだ。
 なお、事前に合同リハーサルも行われるという。
 このコンサートの入場料のほとんどが日本大震災遺児等支援義捐金として、東北各地の被災地に寄付される。
 今回は、ウィーン少年合唱団が「第九」をうたうということが、もっとも大きなニュースとなっている。というのは、合唱団の500年を超す歴史のなかで、初めて「第九」をうたう記念すべきコンサートになるからである。
 私も長年、ウィーン少年合唱団の取材やインタビューは行っているが、「第九」をこれまでうたったことがないとは、思いもしなかった。その意味で、これはウィーン少年合唱団にとっても、歴史の新たな1ページを刻むことにもなる。
 今日の写真は記者会見の模様と、その後のレセプションの席に並べられていたオーストリア名物の美味なるケーキの数々。もちろん、ウィーンならではのおいしいコーヒーもありましたよ(笑)。




 
| 情報・特急便 | 23:33 | - | -
オットー・ビーバ博士
 ウィーン・フィルの取材では、ウィーン楽友協会資料室長のオットー・ビーバ博士にお会いした。
 ビーバ博士は日本でも名の知られた著名な方で、1973年からこの資料室に勤務し、1979年に資料室長に就任した。
 この資料室は所蔵している音楽家のオリジナル楽譜や書籍、手紙、資料などの数の多さと質の高さで世界でも指折りの場所で、アルヒーフ閲覧室には歴代の著名な音楽家をはじめ、ウィーン・フィルのメンバー、ウィーンを訪れた音楽家が次々に訪れ、勉強をしていくという。
 その閲覧室は図書館か大学の研究室のようで、静謐な空気をただよわせ、音楽家たちの学びの様子をリアルに伝えていた。
 今回の取材では、自分の写真を撮るということはほとんどなかったが、この閲覧室だけは特別で、もう二度と入れることはないだろうと思ったため、部屋にすわっているところを編集の方に撮ってもらった。
 ビーバ博士は、ジュリーニやアーノンクールがここでどんな研究をしていたかを話してくれ、さまざまな作曲家のオリジナル楽譜も見せてくれた。
 さらにベートーヴェンの愛用品であった補聴器と薬を飲むときのスプーン、散歩をするときに使っていた杖も見せてもらった。こういう物を実際に間近に見ると、ベートーヴェンがすぐそこにいるような感じにとらわれる。杖はブドウの木が使われ、持ち手のところが象牙をできていた。
 補聴器やスプーンは、ながめていると、胸が痛くなるほどだった。
 ビーバ博士と一緒に仕事をしているのがイングリッド・フックス博士で、彼女はずっとブラームスの研究をメインに据えているそうだ。そして現在は、クララ・シューマンの直系の子孫から購入したシューマンの楽譜の研究にすべての時間を費やしているという。
 この楽譜は「家庭画報」にも掲載されたが、私たちが取材に訪れたちょうど1週間前に資料室の所蔵になったもので、これから世界に向けての記者会見の準備に入ると語っていた。
 このビーバ博士の部屋は、窓からカール教会が見え、部屋にはモーツァルトのオリジナルの肖像画が飾られ、棚にはさまざまな作曲家の貴重な資料が収められ、そこにいるだけでウィーンの伝統と歴史を強く感じた。
「この仕事部屋は、すばらしい環境ですね」と私がいうと、ビーバ博士は「ですから、私は毎日たくさんの作曲家に見張られているんですよ。しっかり仕事をしているかどうかをね」と笑った。
 実は、先ごろウィーン・フィルの来日公演の折り、サントリーホールの入口でビーバ博士とフックス博士にばったり出会った。
 ふたりはすぐにインタビューのお礼を口にしたため、私のほうがあわててお礼を返す形となってしまった。
 今日の写真はビーバ博士とフックス博士。それからベートーヴェンの杖と、最初は建築技師をしていたヨーゼフ・シュトラウスが建物の模型を作っていたときの物と、モーツァルトの遺品。上部にモーツァルトの髪が束ねられている。
 ビーバ博士はいろいろな物を次から次へと見せてくれ、そのつど詳細な説明をしてくれた。そのひとつひとつから音楽が聴こえてくるようだった。








 
| 麗しき旅の記憶 | 23:12 | - | -
ライナー・キュッヒルの自宅
 9月末から10月初旬にかけての「家庭画報」の取材で、ウィーン・フィルのコンサートマスター、ライナー・キュッヒルの自宅を訪れた。
 彼の仕事場であるウィーン国立歌劇場やムジークフェラインから徒歩15分から20分くらいに位置する建物で、いわゆる日本のマンション形式のお宅。ただし、非常に広く、すべての部屋のドアが開けられ、とても開放的。
 撮影や取材がすべて終わってから、キュッヒルさんの練習室を拝見したら、楽譜や書籍や資料が整然と整理され、すべての物がとても使いやすく置かれていることに気づいた。
「これ、写真に撮らせていただいていいですか」と彼に聞くと、「ええ、どうぞ。自由に何でもご覧になって、撮影してください」とのこと。
 キュッヒルさんは毎日ものすごく忙しく、一日のスケジュールを聞くと、いつ休んでいるのだろうと思うほどびっしり予定が詰まっている。
 それでも、涼しい顔で「演奏しているときは、仕事をしているという感覚はありません。好きな音楽を演奏していれば幸せですし、疲れもありませんよ。演奏することは私の喜びであり、生きる力となります。一日中でもヴァイオリンを弾いていたい」と、本音を明かしてくれた。
 だからこそ、ウィーン・フィルの音楽はあんなにすばらしいんだろうな、と納得。
 今日の写真はキュッヒル邸の3枚。リビングの壁には、キュッヒルさんとこれまで共演した偉大な指揮者たちとの写真がところせましと飾られている。いろんな人が撮ってくれ、プレゼントしてくれるのだそうだ。
 次は、音楽家のパロディー。いろんな音楽家がひとつの船に乗っている。それぞれすごく似ていて、特徴を見事にとらえている。私がつい笑ったら、「ねっ、おかしいでしょう。これ、うまいですよね」と、キュッヒルさんも一緒にニヤリ。
 最後は、仕事部屋の本棚。この反対側にも大きな楽譜の整理棚があり、ひと目で楽譜が捜し出せるように整頓されている。う〜ん、見習いたいもんだ(笑)。






| クラシックを愛す | 22:30 | - | -
年末恒例の原稿
 12月に入り、毎年恒例の「今年のコンサート・ベストテン」や「今年のCD&DVDベスト5」などの原稿が相次いでいる。
 ノートの記録を見ながら、これまで書いた記事を振り返りながら、資料も探し出し、録音を聴き直し、映像も見直してさまざまなことをしながら原稿を書くため、かなりの時間を要する。
 これを書く時期になると、「ああ、今年ももう終わりだなあ」と感慨深くなる。あっというまに年末がやってきた感じだ。
 私の周囲はみんな目がまわるような忙しさで、時間に余裕のある人はだれもいない。
 というわけで、「忘年会」はいつもできず、「新年会にしようよ」ということになる。
 今日は週末の締め切りに追われたが、まだまだ全部終わらない。明日に持ち越しのものが出てきてしまった。担当編集者さん、申し訳ありません。あと、一日くださいな。
 なあんていっている場合じゃないかな。きっと、相手は頭から湯気を出している状態だろうな。すみません、でも、もう今夜は集中力がなくて限界です。明日、リセットしますから、よろしく(ペコリ)。
| ああ愉しき(?)、締切り地獄 | 23:23 | - | -
フランチェスコ・トリスターノ
 昨日は、王子ホールにフランチェスコ・トリスターノのリサイタルを聴きにいった。
 今回のプログラムは、J.S.バッハの「フランス組曲」全曲。彼のレパートリーの根幹をなすのはバッハだが、初めて聴く「フランス組曲」は、やはりテクノやジャズも演奏するトリスターノらしい、自由で斬新で型にはまらないものだった。
 そして今日は、銀座のヤマハ ピアノアーティストサービス東京に出向き、インタビューを行った。
 話は昨日の「フランス組曲」から。トリスターノは作品の順序を変え、第2番と第5番を入れ替えて演奏していたが、それは調性と舞曲の内容と全体の構成を考慮したためだという。
 そして話題は、アリス=紗良・オットとのデュオに移った。ふたりは以前から大の仲よしで、自然にデュオを組むことを決めたとか。
 すでに録音も済ませ、ストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」、ラヴェルの「ボレロ」、そしてトリスターノの新曲が収録されたそうだ。
 ここでビッグニュース。このデュオが、2014年6月24日にすみだトリフォニーホールで実現する運びとなった。コンサートでは、ラヴェルの「ボレロ」もプログラムに入るそうだ。
 今日のインタビューは「日経新聞」とヤマハのWEB「音楽ジャーナリスト&ライターの眼」に書く予定にしている。
 彼のことは、「フラくん」と呼んでいることを以前のブログにも書いた。彼のマネージャーがそう呼んでいて、この呼び名を本人が大層気に入っているから、私も使わせてもらっているのである。
 フラくんは、アリスとのデュオの話になると一気にテンションが上がり、風邪気味でゲホゲホ咳をしながらも、ことばを尽くしていろいろ話してくれた。
 ふたりは性格がまったく異なるのだが、それがピアノを一緒に弾くと、刺激的な音楽が生まれるのだそうだ。
 長身痩躯、美形、旬のふたりのデュオは、世界的に大きな話題となるに違いない。CDは来日前の2014年春のリリースになりそうだ。
 ひとつだけ、記事を書く前にインタビューの内容を明かすと、フラくんが書いた新作をアリスは「キャーッ」といって、「こんなの弾けな〜い」と叫んだそうだ。
 でも、結果としては、録音は成功したそうだから、アリスはものすごく努力をしたんだろうな。フラくんはニヤニヤ笑っていたけど。
 彼の作品はテクノの要素が入っているから、クラシックの演奏にとっては、さぞ難しかったに違いない。今度はアリスにその話を聞いてみたいな。きっと、ものすごくエネルギッシュにあれこれ話してくれるに違いない。
 今日の写真はいつもながらカッコいい、フランチェスコ。これで「ラーメンがすごく好き」なんていうんだから、不思議よねえ。なんでも、アリスはラーメンが嫌いだそうで、デュオで来日したら、彼女に絶対ラーメンを食べさせるといっていた。はて、どうなることやら…。


 
 
 
| 親しき友との語らい | 23:38 | - | -
与儀巧リサイタル
 今日は先日インタビューし、その記事がヤマハのWEB「音楽ジャーナリスト&ライターの眼」に掲載された、テノールの与儀巧のリサイタルを聴きに紀尾井ホールに出かけた。
 記事にも書いたように、前半は日本歌曲、後半はイタリア歌曲とイタリア・オペラ・アリアでプログラムが組まれている。
 沖縄の宮良長包の歌曲は、彼がインタビュー時にさまざまなことばを尽くして説明してくれたため、それを思い出しながら聴いた。
 与儀巧の声は、ナマで聴くと強靭なのどをもっていることがわかり、いずれの作品も強い説得力を備えている。
 今回は初めて聴く曲が多かったが、歌詞を大切にうたう彼の歌唱法により、各々の作品のなかに自然に入っていくことができた。
 後半は一気にテンションが上がり、歌曲とオペラ・アリアでホール全体をイタリアの空気で包み込んだ。
 やはり与儀巧の声は、イタリアの歌が似合う。自然な唱法と情熱的で前向きな思い、作品への熱い共感などが、テノール特有の張り上げを伴って聴き手の心にストレートに届けられ、爽快感を抱いた。
 歌手のリサイタルは後半になるほど声の調子が上がり、のびやかになってくることが多い。与儀巧も演奏が進むにつれ、声が沖縄の海や空のように晴れやかに、またイタリアの空気のようにカラッと澄み渡り、ひとつひとつの曲が強く熱く深くうたい込まれ、聴衆の耳を釘づけにした。
 機会があったら、次回はぜひオペラを聴いてみたい。
 終演後、楽屋にあいさつにいくと、「記事、ありがとうございました。ブログも拝見しました。そこまでいってくれるのか、頑張らなくちゃと、涙が出そうでした」といわれ、私、そんなこと書いたっけ、と一瞬とまどった。
 今日のリサイタルは、歌手のステージには欠かせないピアニスト、瀧田亮子が共演者。彼女には以前会ったことがあるため、再会を喜び合った。
 というわけで、写真はツーショット。
 与儀さん、すばらしいリサイタルでした。「NHKニューイヤー・オペラコンサート」初出演、頑張ってくださいね。期待していま〜す。


 
 
 
| 日々つづれ織り | 23:14 | - | -
ミカラ・ペトリ
 今日から12月。いよいよ残すところあと1カ月となってしまった。
 例年はこの時期になると来日公演も減って「第9」一色となり、私は各社の年末進行とにらめっことなるのだが、今年はまだまだ来日アーティストのコンサートが多く、これが年末まで続きそうだ。
 昨日はフィリアホールに、8年ぶりの来日となる、「リコーダーの女王」と称されるデンマーク出身のミカラ・ペトリの演奏を聴きにいった。
 実は、11月の2週にわたってヤマハのWEB「音楽ジャーナリスト&ライターの眼」にぺトリのインタビュー記事を掲載した。
 かなり前のインタビューだが、彼女の音楽性と人間性が伝われば、と思って書いた次第である。
 ペトリの演奏は、「リコーダーからこんな音が出るのか」と、衝撃を受けるようなすばらしさ。録音でもその超絶技巧と、自然な歌心に満ちたおだやかな音色は十分に伝わってくるが、やはりナマで聴くとからだ全体に音が沁み入り、ことばでは到底表現できないほどの感動が得られる。
 ペトリは何本も楽器を変えながら、さまざまな音色と表現力を駆使していろんな曲を次々に吹いていくのだが、それはときに鳥のさえずりに似て、またあるときは鳥の合唱のような複雑さも見せる。人工的な色合いがまったくなく、自然界の音のようにそのリコーダーは多種多様な音を紡いでいく。
 今回のプログラムは、前半がJ.S.バッハ、ヴィヴァルディ、タルティーニ。後半が各地の民謡からピアソラまで多彩。とりわけペトリ自身が書いた「デンマーク民謡《マッズ・ドス》による変奏曲」が北欧の風を伝えるようで、印象深かった。
 今回も夫君であるギタリストのラース・ハンニバルとのデュオで、ごく自然な息遣いとアイコンタクトが、素朴で親密的な空気を生み出していた。
 今日の写真は終演後、楽屋で撮った1枚。
 ふたりの雰囲気、いい味を醸し出しているでしょう。音楽もすばらしかったけど、ふたりのおっとりとした、飾らぬ感じに心が癒される思いがした。


 
| クラシックを愛す | 22:35 | - | -
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