Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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ペリメニ
 ロシアの水餃子といわれるペリメニには、忘れがたい思い出がある。
 ヴェンゲーロフの本を書くために、彼のイスラエルの自宅に10日間ホームステイをしていたとき、離れに住んでいた彼の叔父さんが、得意としているペリメニを作ってくれたのである。
 ロシアでは、寒い冬にこれをたくさん作って屋外に保存しておき、食べるたびにそれを少しずつ取り出してスープのなかに入れるのだという。
 あまりにもおいしいペリメニだったため、叔父さんに作り方を聞いたのだが、ロシア語ゆえ、ほとんど理解できなかった。
 でも、あの味は舌がきちんと覚えている。
 今日は、以前住んでいた町の親しくしている美容院にいったところ、ある雑誌においしそうなペリメニが載っていた。
 オーナー店長のIさんにお願いしてコピーを取ってもらったのだが、帰りにバタバタしていてすっかりそのコピーを忘れてしまった。
 すると、Iさんはスキャンしてメールで送ってくれたのである。お店は千客万来で超多忙だったはずなのに、覚えていてくれたとは…。感謝感謝である。
 このペリメニ、作り方はさまざまで、中身もまたいろいろ工夫できるようだ。私がヴェンゲーロフの家で食べたペリメニは、皮がとてもおいしく、中身はひき肉と数種の野菜が入っていた。それを薄味のスープで煮て、サワークリームとディルを添えて食べた。
 ああ、あの味が恋しい。
 絶対にあれに似たペリメニを作ってみるゾ(笑)。成功したら、アーティスト・レシピのひとつに加えよう。やっぱりこれはロシアのアーティストに捧げるべきだろうな。
| 美味なるダイアリー | 22:19 | - | -
ミロシュ
 ギタリストのミロシュには、来日のたびに話を聞いているが、常に新たな地平を拓いていく姿勢を見せてくれる。
 これまでリリースした2枚のアルバムは、クラシック・ギタリストとしては異例の26万枚という売り上げを世界で記録。7月16日にはいよいよロドリーゴの「アランフェス協奏曲」がリリースされる(ユニバーサル)。
 今回のアルバムは、いま破竹の勢いで指揮界を上り詰めているヤニック=ネゼ・セガンと、ロンドン・フィルとの共演。
 ミロシュは、「アランフェス協奏曲」を録音することが可能になった場合、絶対に自身が希望する指揮者とオーケストラと共演したかったのだという。
「ヤニックの演奏は、メトロポリタン歌劇場のライヴビューイングの《カルメン》を見て、スペイン作品の表現にものすごく感動を覚えたんだ。それで、ぜひ共演をと望んだわけ。ロンドン・フィルは、ぼくが初めてメジャーなオーケストラと共演した記念のオケ。そのとき、ぼくはすごく緊張していたんだけど、彼らのすばらしいサポートでいい演奏をすることができた。だから、このオーケストラ以外は考えられなかった」
 新譜は、ロドリーゴとファリャの作品が選ばれ、国内盤のみボーナストラックにタレガの「アルハンブラの想い出」が収録されている。まさに、スペイン作品の粋を集めたディスクとなっている。
 実は、今回の来日は、初めて映画音楽に参加することになり、その録音が行われたため。映画は、日本が世界に誇るアニメーション会社「スタジオジブリ」の最新作「思い出のマーニー」。音楽を作曲した村松崇継氏が自身の作品に合うギタリストを探していて、ミロシュのデビュー盤の「アルハンブラの想い出」を聴いて感銘を受けたからだという。
 その収録のために急きょ来日したミロシュは、翌日インタビューに応じてくれた。
「村松氏、読売交響楽団と9曲を録音したんだけど、とても楽しかった。《アルハンブラの想い出》は、デビュー録音とは、また違った演奏になっていると思うよ。特にトレモロの部分がね」
 今年の後半は、欧米各地のメジャーなオーケストラと共演し、「アランフェス協奏曲」を演奏する予定だという。
 彼は12月に来日し、全国ツアーを行う予定。私の大好きなスペイン作品がたっぷり披露されそうだ。
 このインタビューは、「日経新聞」とヤマハのWEB「音楽ジャーナリスト&ライターの眼」に書くことにしている。
 今日の写真は、インタビュー後のリラックスした表情のミロシュ。ご本人がこの写真をとても気に入ってくれ、「いつもいい写真撮るねえ」とお世辞(?)をいってくれた。
 お世辞といえば、この日、私は黒の夏用のワンピースとジャケットを着ていったのだが、ミロシュは、私が部屋に入っていった途端、「ウワーッ、今日の洋服すごく素敵。いつもおしゃれだよねえ。すごく似合っているよ、とてもエレガントで」とこっちが照れるくらいほめてくれた。
 彼はいつも黒一色の格好をしているから、きっと黒い洋服が好きなのだろう。でも、真顔でほめてくれたから、単純な私はすぐに本気にして、今年の夏はこの洋服をずっと着ることにした(笑)。


 
| 情報・特急便 | 22:29 | - | -
メンターの助言
 今週は、火曜日にアルテミス・カルテット、今夜のミハイル・プレトニョフと、興味深いコンサートが続いている。
 こうした演奏の公演評を書く場合、いかにしたらその内容を的確なことばで伝えることができるかと、いつも悩む。
 そんな私がメンターとして敬愛しているSさんが、今日電話ですばらしい助言を与えたくれた。
 彼は、私が書いた単行本を読んでくれ、その感想を伝えてくれたのだが、そのときにこまかいことはいわず、ひとことズバリと言い放った。
 もっと文章を磨け、語彙を増やせと。音楽をことばで表現するのは、とても難しい。それを自分の生涯の仕事とする場合、常に一歩上を目指さなくてはダメだと。いまより、次はもっといい文章が書けるように努力すべきだというのである。
 そのためには何が必要か、その具体的な書物や勉強法まで教えてくれ、特に演奏に対するほめ言葉のあり方を探求すべきだといわれた。
 長年仕事をしてくると、学生時代とは異なり、もう助言を与えてくれる人などいないのが現状だ。この年になると、だれもよりよい仕事をするためのあり方や姿勢など、教えてはくれない。
 Sさんは私にとって、とても怖い存在だが、反面、懐の大きなやさしさも感じる。私はけっしてそれを口にはしないが…。
 そうか、人間は一生勉強が必要なんだ。よくアーティストが口にすることばだが、私もそうあらねば、と考えさせられた。
 目からウロコとは、こういうことをいうのだろう。
 Sさんの助言は、私が常に思い悩んでいた公演評を書くときのもやもやした気持ちを見事に払拭してくれた。文章を磨き、語彙を増やすことにより、コンサート批評が自然に、思うように書けるようになるのだろう。
 来週、早いうちにSさんの事務所を訪ね、参考になる書籍を借りることにしよう。一生勉強、勉強っと。これをいわれて、最近あれこれ悩んで堂々巡りをしていた邪念が、一気に吹き飛んだ気がした。
 
| 日々つづれ織り | 23:21 | - | -
アルテミス・カルテット
 弦楽四重奏の大好きな私は、今日のインタビューをとても楽しみにしていた。
 いま、欧米で大きな話題となっているアルテミス・カルテットに話を聞くことができるからだ。
 アルテミス・カルテットは、1989年にリューベック音楽大学の学生4人によって結成され、ラサール四重奏団のワルター・レヴィン、アルバン・ベルク四重奏団に師事し、エマーソン弦楽四重奏団やジュリアード弦楽四重奏団からも大きな影響を受けている。
 1995年以来国際コンクールで好成績を上げてきたが、もっとも印象的なのは1996年に弦楽四重奏団にとって最高峰の賞であるミュンヘン国際音楽コンクールで優勝したこと。このコンクールは第1位を出さないことで知られるが、アルテミス・カルテットの場合も、1970年に東京クヮルテットが優勝して以来25年ぶりの快挙となった。
 さらに翌年にはイタリアのプレミオ・パオロ・ボルチアーニ弦楽四重奏国際コンクールで第1位を獲得している。
 以来、世界各地で活発な活動を展開していたが、2012年に第1ヴァイオリンがラトヴィア出身のヴィネタ・サレイカに変わり、さらなる飛躍のときを迎えている。
 彼らの新譜は、メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲集(ワーナー)。全編に勢いが満ちあふれ、新しいメンバーとなって初録音ゆえ、これから大海原に漕ぎ出していくような、前進するエネルギーが伝わってくる演奏だ。
 インタビューの冒頭、その感想を述べたら、4人がキャーッと喜びの声を上げ、「それ、すごくいい表現だねえ。そのとおりだよ、このメンデルスゾーンは新鮮さと活力、情熱を表現したかったんだ」と、一気になごやかな雰囲気になった。
 彼らは世界中のすばらしいヴァイオリニストのなかから6人に絞ってオーディションを行い、3人の意見が即座に一致したヴィネタに決めたそうだ。
 彼女はトリオを多く演奏していたそうだが、このカルテットは以前から大好きで、よく聴いていたため、ごく自然に溶け込めたという。ただし、いい音楽を作り上げていく彼らの姿勢はとてもきびしいもので、日々挑戦と研鑽を続けているという。
 メンバーに評してもらったら、第2ヴァイオリンのグレゴール・ジーグルはみんなのよきまとめ役で、緩和剤の役目を担っているとか。ヴィオラのフリーデマン・ヴァイグルは知性派でアイディアに富む。チェロのエッカート・ルンゲは、このカルテットになくてはならない存在で、ユーモアがあり、リーダーシップにも長けている。そこにヴィネタが加わり、個性的な4人のカルテットが再編成されたというわけだ。
 アルテミス・カルテットのコンサートは明日、紀尾井ホールで行われる。ブラームスとクルタークとベートーヴェンというプログラムだ。
 彼らはさまざまな音楽家と共演し、音楽以外の分野の人々との交流も活発に行い、視野を広めている。4人ともとても個性的で、その個性のぶつかりあいを楽しんでいるそうだ。その違いが刺激的で新鮮な音楽を生むからと。
 今日の写真は、インタビュー後の4人。左からグレゴール、エッカート、ヴィネタ、フリーデマン。終始、笑いの絶えないインタビューとなった。
 このインタビューは、次号の「intoxicate」に掲載される予定である。

| アーティスト・クローズアップ | 22:46 | - | -
ライナー、インタビュー、コンサート
 仕事が重なるときというのは、どうやっても動きがとれなくなる。
 いまは来日ラッシュで、行くべきコンサートが多く、当然インタビューも重なってくる。
 ここにライナーノーツの原稿とプログラムの原稿が加わると、土曜日も日曜日も関係なくなる。
 でも、私は睡眠時間が足りなくなると、一気に集中力がなくなるため、しっかり睡眠をとらないといけない。加えて、食事が変則になったり、抜いたりすると、これまたすぐにからだに出る。
 どうもサバイバルに適していないようだ。
 というわけで、日常の生活パターンを極力変えずに、仕事だけをヒートアップしていくにはどうしたらいいか。これを常に考えている。
 元来、あまり器用ではなく、一度にひとつのことしか考えられないため、当然のことながら、ひとつひとつ精一杯集中してクリアしていくしかない。
 というわけで、時間はどんどん過ぎていくのに、原稿は遅々として進まず、ということが多い。
 こんなときに、テニスのフレンチオープンが始まった。やれやれ、どうしたものか。ロジャー・フェデラーはつい先日のローマで初戦敗退という苦渋をなめたため、ぜひローランギャロスでは頑張ってもらわなければならない。
 という理由を勝手につけ、ロジャーの試合だけテレビでちらっと見た。幸い、体調もいいようで、難なく勝利したが、これからが問題だ。
 明日からはインタビューとコンサートが目白押し。その合間に原稿と格闘しなければならない。
 月末はこれだもんね。
 まっ、いつものことで、やるっきゃないから、しっかり寝て食べて、ひとつずつこなしていきますか。フェデラーも頑張っていることだし(笑)。
 
| ああ愉しき(?)、締切り地獄 | 23:02 | - | -
農産物生産直売
 自宅から歩いて15分ほどのところに、農産物生産直売のお店があり、旬の露地野菜、くだもの、卵などを販売している。
 このお店は、午前中2時間、午後2時間しか開いていないため、できる限り早くいくようにしているが、それでもすぐに品切れになってしまう。
 落ち葉と鶏糞などを堆肥に、農薬、化学肥料を使わず、循環型農業を実践しているところである。
 特に卵がすばらしく、鶏卵生食用(無洗卵)というものが、卵かけごはんにピッタリ。一度これを食べると、やめられないおいしさだ。
 今日は、もうほとんど品物がなくなっていたが、卵とレタスを手に入れた。
 卵も白身が硬くてプリッとした感動的なものだが、レタスもパリッとした緑の濃い葉で、ずっしりと重い。いま畑から収穫してきたばかり、という新鮮さである。もちろん、泥つき。
 週末は原稿がたまっていて、まず下調べと資料探しに明け暮れているが、その合間にいただく食材としては、最高の卵とレタス。これで元気になって、ひとふんばりしなくてはならない。
 今日の写真は、そのふたつの食材。このお店、奥が農場になっているようで、そこで収穫した卵のようだ。
 でも、こういう食材を一度食べてしまうと、舌が肥えてしまって困るんだよね。まあ、忙しいときにちょっぴりからだにぜいたくをさせた、と考えればいいか。いつも手に入るわけではなく、そんなに値の張るものではないし…。
 といいながら、またすぐに自転車を飛ばして5分ほどのところだから、とついつい足を運んでしまう。ああ、卵かけごはん、最高で〜す。
 




 
| 美味なるダイアリー | 23:15 | - | -
犬好き
 いまはペットを飼うことはできないが、昔、実家には複数の犬や猫がいて、彼らとは仲のいい友だちだった。
 子どものころからペットと暮らしてきたためか、犬や猫が自然になついてくれる。
 以前イタリアにいったとき、かわいい犬が近づいてきて、私に親しげに話しかけてきた。もちろん、実際に話すわけではないが、なぜか話しかけてきた感じがするのである。
 その飼い主に許可をもらって写真を撮ろうとしたら、最初は横を向いたりキョロキョロしていたのだが、一瞬こっちを向いたため、即座にパチリ。
 このワンちゃん、すごくかわいくて、名残惜しかった。
 こういう出会いは、一瞬のもの。でも、写真を撮っておくと、そのときの様子がまざまざと蘇る。
 このときは夏の音楽祭の取材だったが、ワンちゃんの顔を見ただけで、そのときに聴いた音楽までもが脳裏に浮かぶ。
 人間の記憶とは、不思議なものである。
 ワンちゃんの写真から音楽が聴こえてきて、そのときの猛暑が思い出され、おいしかったモッツァレラチーズが浮かんでくる。さらに、インタビューしたアーティストの話がなつかしく思い出される。
 今日の写真は、その一瞬のワンちゃんの表情。かわいいよねえ、連れて帰りたくなっちゃった(笑)。
 

 
| 麗しき旅の記憶 | 22:54 | - | -
牛田智大
 ああ、ときが経つのは早い。
 今日、久しぶりに牛田智大のインタビューがあり、すっかり成長した彼に会い、時間の経過をまざまざと感じさせられた。
 中学3年生になった牛田くんは、背が伸び、声変わりして別人のよう。低い声で話されると、なんだか違う人と話しているようだ。
 本人も声が低くなったことにとまどっているようで、これまでと同じ話し方をするとおかしな感じがするため、声に合わせた大人の言い方にしているという。
 7月2日には新譜「トロイメライ〜ロマンティック・ピアノ名曲集(仮)」(ユニバサール)がリリースされるため、今日はその録音を中心に話を聞いた。このインタビューは、7月20日発売の「レコード芸術」に掲載される予定だ。
 牛田くんは、いまモスクワ音楽院の先生たちに師事して勉強を続けている。それゆえ、今回の新譜では、得意とするショパンの作品に加え、ラフマニノフとプロコフィエフの作品が収録されている。
 先生の指導法、ロシア作品の魅力と難しさ、録音時の様子、ラフマニノフとプロコフィエフの演奏法、各々の作品の構成と奏法、ソチ・オリンピックでの羽生結弦の活躍、そのフィギュアにインスパイアされてボーナストラックに収録した「バリの散歩道」「ロミオとジュリエット」など、話題は多岐にわたった。
 5月29日からは、シュテファン・ヴラダー指揮ウィーン・カンマー・オーケストラのソリストとしてのツアーが始まる。曲目はショパンのピアノ協奏曲第2番である。
 私は、すでにこのプログラムの牛田智大の原稿は入稿したのだが、今回の新譜のライナーノーツも書く予定になっている。今日、彼から聞いた話も原稿に盛り込むつもりだ。
 今日の写真は、インタビュー後のショット。ホント、すっかり大人びて、驚くばかり。会うごとにぐんぐん成長するのは、見ていてたのもしい限りだけど、こっちはまったく変化なし。あっ、変化がないどころか、退化しているのかな(笑)。


 
| 親しき友との語らい | 23:48 | - | -
感性の違い
 仕事で日々多くのコンサートに耳を傾けているが、ときおりどうしても自分の感性に響かない演奏に出合うことがある。
 その演奏家の表現する世界に自然に入っていくことができず、演奏に共感できず、直感的な心の働きが鈍る。
 こういうときは、演奏を聴き続けることがとてもつらいため、前半でさっさと会場を後にすることにしている。もしかしたら、後半は演奏が大きな変化を見せ、様変わりするかもしれないが、そういうケースは稀だ。
 よく、同業者との会話のなかで、この感性の違いを感じることがある。ある人はその演奏がとても気に入り、解釈も表現力もテクニックもすばらしいと称賛する。だが、私はまったくそういう気持ちになれないという場合だ。
 もちろん、その逆のケースもある。
 人間は、ひとりひとり感受性が異なり、とりわけ音楽はその人の心に響くか響かないかが如実に現れる分野である。
 だからこそ、おもしろいのかもしれない。
 この仕事をしてきてもう何年になるだろうか。ナマの演奏も録音も、こんなにたくさん聴き続けているのに、いっこうに興味が薄れることがない。もっともっといい演奏が聴きたい、その思いが増すばかりだ。
 だからこそ、クラシックをもっと多くの人に聴いてほしいという気持ちか募り、仕事に情熱を傾けたくなる。
 先日、ある雑誌の編集者で、長年一緒に仕事をしてきた女性が退社することになり、お別れのメールが送られてきた。
 そこに「溌剌と、情熱をもってお仕事をされている伊熊さまのお姿は、私の憧れです!」と書いてあった。
 まあ、なんとすばらしい表現。何度も読み返して感動してしまった。このことばが、私の感性にいたく響いたのである。
 Hさん、ありがとう。機会があったら、また仕事でご一緒したいですね。
 よく、アーティストにインタビューすると、この感性の違いが話題となる。そして必ず彼らは、「感性を磨き続けなければならない」と口にする。「感性を磨く」とは、どういうことか。私は「感動する心を養う」ことだと思っている。最近、インタビューした人のなかで、ヴィルサラーゼがこれに関して雄弁に語った。
 彼女は「常に好奇心をもつこと」「毎回、新鮮さをもって演奏すること」が大切だといった。このことばを自分の仕事にあてはめ、Hさんがいってくれたことばも鑑み、「感性を磨く」ことの大切さを考えたいと思う。
 感動的な演奏に出合う場合はその余韻にひたすら浸り、酔っていたいという気持ちが強く、他のことはあまり考えられない。だが、自分の気持ちにまったく届かない演奏に出合うと、どうしてだろうと自問自答する。
 これが音楽の奥深さであり、不思議なところであり、尽きぬ魅力なのだろう。
 
 
 
 
 
| クラシックを愛す | 22:28 | - | -
工藤セシリア
 今日は、若き才能との出会いがあった。
 国際的な活動を展開しているフルーティスト、工藤重典を父にもつピアニスト、工藤セシリアに初めて会い、インタビューをしたのである。
 彼女は祖母がピアニスト、母がフルーティストという音楽一家に生まれ、ずっとフランスで暮らしている。セシリアはクリスチャンネームで、本名は工藤セシリア祐意(ゆい)。
 4歳でピアノを始め、これまで多くのコンクールで好成績を残しているが、「もう、コンクールを受けるのはやめました」とのこと。
 現在は、パリ・エコール・ノルマル音楽院でリュドミラ・ベルリンスカヤに師事し、今年6月に学生生活は一応終了するそうだ。
 そんな彼女が、7月16日(水)にヤマハホールでリサイタルを開く。大好きだというデュティユーの「プレリュード第3番《対比の戯れ》」からスタートし、モーツァルトのピアノ・ソナタ第14番、ショパンのスケルツォ第3番が前半のプログラム。後半はドビュッシー・プログラムとなり、「子供の領分」全曲、「映像第1集」より「水の反映」「ラモーをたたえて」「運動」、「前奏曲集」より「亜麻色の髪の乙女」「霧」「花火」が組まれている。
 今回は、初レコーディングも行われ、「オマージュ・ア・ドビュッシー」と題したCDがリリースされる予定だ(ソニー・ミュージックダイレクト&ミューズエンターテインメント)。
 インタビューでは、子ども時代のこと、両親のこと、パリでの生活、ピアニストとしての今後の抱負、ドビュッシーへの思いなど、さまざまなことを話してくれた。
 このインタビューは、ヤマハのWEB「ピアニスト・ラウンジ《明日を担うピアニスト達》」「音楽ジャーナリスト&ライターの眼」の両方に書くことになっている。
 工藤セシリアは、子どものころから鉛筆で絵を描くことが好きで、いつもスケッチブックを持ち歩いていたそうだ。デッサンを見せてもらったら、とてもユニークで素敵な絵だったため、「ピアニスト・ラウンジ」で1枚紹介させてもらうことになった。
 ちなみに、CDにもこれからどんな絵がいいか考え、掲載する予定だという。
 演奏を聴かせてもらったが、とても若々しくエネルギッシュで、前向きな気持ちがあふれたピアニズムだった。
「私、バーンと派手な曲が好きなんですよ」
 こういって笑う彼女は、これからはラフマニノフなど、ロシア作品をレパートリーにしていきたいという。
 今日の写真は、惚れ込んでいるというヤマハCFXでの演奏を終えた後のワンショット。リサイタルでもこの楽器を使い、思いっきり自然に、自分のもてる最高の演奏をしたいと意気込む。


 

 
 
| 情報・特急便 | 22:20 | - | -
カーブス
 私の通っているフィットネスのカーブス西荻窪北店が、8周年を迎えたという。
 今日は、その開設記念で、コーチの3人が髪に大きなリボンをつけて出迎えてくれた。
 この教室は女性だけの30分のフィットネスで、上半身を鍛える、下半身を鍛える、スクワットをする、有酸素運動など、筋トレのための複数のマシンが設置されていて、各々30秒で終了するサーキットトレーニング方式。マシンの間にフィットネスボードがあり、そこでは各人が好きなステップを踏んだり、筋肉を伸ばしたり、ストレッチをしたりすることができる。
 そして次々にマシンでさまさまな筋トレをして、2周して終わり。
 その後、筋肉をほぐす既定のストレッチを何種類か行って、すべてが終わる。この間、約30分だ。
 以前書いたように、私は座業が多いため腰痛に悩まされ、それを改善するために通い始めた。本当は、週に2回は通いたいが、仕事のスケジュールの関係で、なかなか実現しない。でも、なんとか週1でもいいから、顔を出すようにしている。
 カーブスは全国に1,399教室もあるそうで、いまやテレビCMでもおなじみ。毎日通っている人もいるという。
 仕事に追われているときに、ここに運動に行くだけで、からだが喜ぶ感じ。そしていつも元気なコーチがにこやかな笑顔で迎えてくれ、疲れが吹き飛ぶ。
 一番いいことは、教室に行った日は、ぐっすり深く眠れることだ。そして、からだが軽くなる。
 今日の写真は、コーチの3人。右から、いつもクールなハンサムウーマン、店長のHさん。いわゆる体育会系の人特有の、爽快なオーラがある。真ん中は、いつも「よし子さ〜ん、ようこそで〜す」と明るい声で迎えてくれ、友だちになったらさぞ楽しいだろうな、と思わせてくれるMさん。適切な指導と、励ましのことばもうれしい。左は、おだやかでやさしい雰囲気が教室をなごませているAさん。入会の説明や、ふだんの指導も懇切丁寧。笑顔がチャーミングだ。
 いま、体調が悪い人、なんとなく気分がすぐれない人、運動をしたいけどはげしいのはちょっと、という人、脂肪を燃焼させたい人など、自宅のそばで教室を見つけてくださいな。きっと続けて通いたくなりますよ。
 とはいえ、私自身がもっとひんぱんに通わないと効果が出ないから、エラソーなことはいえないかな(笑)。


 
| 日々つづれ織り | 22:28 | - | -
ノルウェー・サーモン
 以前、ノルウェーを旅してから、この国の名物のひとつであるスモークサーモンにすっかりはまっている。
 ノルウェー産は、厚切りで塩味がマイルド。先日、物産展でとてもおいしそうなスモークサーモンを見つけたので、早速マリネを作ってみた。
 2007年、一緒にノルウェーに出張した大使館のDさんからいただいた、ノルウェー料理の本を参考にしながら…。
 スモークサーモンは食べやすい大きさに切り、砂糖をふりかけてもみ、しばらくしてから水でさっと洗った新たまねぎのスライスとともにあえる。
 オーガニックのレモンの小口切りと、ケッパーを加え、マリネ液(エクストラバージンオリーブオイル、粒マスタード、白ワインビネガー、塩、コショウ)に漬ける。
 今日の写真は、作ってから半日ほど冷蔵庫で寝かせたスモークサーモンのマリネ。これは、ワインの友にピッタリ。お皿に盛りつけ、私のガーデンで育てているハーブを少しとってきて、トッピング。
 下の写真は、いただいたノルウェー料理のレシピ本。英語版で、6人の料理家がいろんなレシピを紹介している楽しい本だ。まだまだこれから、さまざまなレシピに挑戦してみようと思う。ノルウェーを思い出しながら…。




 
 
| 美味なるダイアリー | 22:06 | - | -
マティアス・ゲルネ 白鳥の歌
 今夜は、マティアス・ゲルネのシューベルトの最終日。「白鳥の歌」の前にベートーヴェンの「遥かなる恋人に寄す」が置かれ、ベートーヴェンの歌曲が大好きな私は、切れ目なくうたわれる6曲にベートーヴェンの深いロマンを感じ取り、至福の時間を過ごすことができた。
 次いで、いよいよ「白鳥の歌」が登場。レルシュタープの7曲に、ゲルネはクリストフ・エッシェンバッハのピアノとの共演で2010〜2011年に録音したときと同様、第5曲「すみか」と第6曲「遠い地で」の間にレルシュタープの「秋」を加え、8曲として演奏。
 ここで休憩を入れ、後半はハイネの6曲をうたった。
 実は、この曲集の最後に置かれているザイドルの詩による「鳩の便り」は、シューベルト生誕200年の1997年、サントリーホールでヘルマン・プライが全6回のリーダーアーベントでうたったときに、途中で止まってしまった曲である。プライは一度ステージから去り、再度うたうという印象的なシーンを生み、この事実はさまざまな歌手に大きな影響を与えた。
 プライはのちにザイドルの詩がレルシュタープやハイネとあまりにも異なるため、続けてうたうことができなかったと釈明したようだが、以後、多くの歌手が「影法師」でプログラムを終え、「鳩の便り」はアンコールとしてうたうようになった。
 今日のゲルネも、「影法師」をモノオペラのように演技力たっぷりにうたい、プログラムを終えた。そして鳴りやまぬ拍手に応えて、毎日忠実にいとしい人に愛の便りを届けてくるという、愛の使者を慈しむ「鳩の便り」をやわらかな歌声でおだやかに聴かせ、全プログラムの幕を閉じた。
 本当に充実した3日間だった。
 帰宅したら、「モーストリー・クラシック」の編集長から次号のシューベルト特集の原稿依頼が入り、何か関連性を感じてしまった。
 今後は、ゲルネの原稿をじっくり仕上げなくてはならない。なんといっても、れいの彼のホームページのことがあるしね(笑)。
| クラシックを愛す | 23:33 | - | -
マティアス・ゲルネ 冬の旅
 シューベルトの「冬の旅」は、これまでさまざまな歌手のリサイタルで演奏を聴いてきた。
 しかし、今夜聴いたマティアス・ゲルネの「冬の旅」は、この作品の奥に潜む主人公の傷ついた孤独な心を痛々しいまでに浮き彫りにしていた。
 ゲルネの歌は昨日と同様、多種多様な声を変幻自在に操り、歌詞の内容を深く掘り下げていく歌唱法。ひとつひとつの曲が聴き手の心の奥深く浸透してくる。
 ゲルネはゆったりとしたテンポをとることが多く、約75分の作品を90分かけてじっくりとうたい上げた。
 ゲルネが巻ごとに信頼を寄せているピアニストと組んで録音しているシューベルト・エディション(キングインターナショナル)は、すでに第8集まで進んでいるが、「冬の旅」はまだリリースされていない。おそらく今秋には日本でも聴くことができそうだ。
 明日は、いよいよシューベルト3大歌曲連続演奏会の最終日。ベートーヴェンの「遥かなる恋人に寄す」とシューベルトの「白鳥の歌」が組まれている。これもまた、深遠なリートの世界が広がりそうだ。
 
| クラシックを愛す | 22:49 | - | -
マティアス・ゲルネ 美しき水車小屋の娘
 これほど心に響くシューベルトの「美しき水車小屋の娘」を聴いたことはなかった。
 今夜は、紀尾井ホールでマティアス・ゲルネのシューベルト3大歌曲集連続演奏会の初日が行われ、「美しき水車小屋の娘」がうたわれた。
 冒頭の「さすらい」から、すでにゲルネのやわらかく温かく朗々と響く歌声は全開。ピアノのアレクサンダー・シュマルツがピタリと寄り添い、両者が一体となってヴィルヘルム・ミュラーの詩の世界を情感豊かに描き出していく。
 ゲルネは、ひとつひとつの歌詞を大切に、じっくりとていねいに掘り下げ、シューベルトのシンプルで清涼で自然を連想させる旋律を鮮やかに表現していく。
 ときにはげしく、迫力ある低音を響かせ、大きな目で聴衆に訴えかけるような歌唱を示し、またあるときは主人公の心の内を吐露するように感情をむき出しにし、さらに複雑な感情を内省的な歌声でささやくように表す。
 20曲を一瞬たりとも弛緩せず、彼は驚異的な集中力をもってうたい切り、そのあまりのすばらしさに私は席を立てないほどの感動に浸り、いまだ夢のなかにいるようだ。
 終演後、サイン会が行われている合間を縫って、先日のインタビューのお礼をいうと、大きな目をより見開いてにこやかな笑みを見せてくれた。
 彼はインタビューでは、「美しき水車小屋」について多くを語った。3大歌曲集のなかでは、もっとも遅く学んだ作品だそうだ。
 明日も、明後日も聴きに出かける。きっと、3日間、ずっと夢の世界にいるような気分に満たされるに違いない。
 今日の写真はサイン会の様子。手前がピアノのシュマルツ、奥がゲルネ。ドイツ・リートは男性ファンが多いようで、今日も結構男性が多かった。それとも、ゲルネだからだろうか…。

| クラシックを愛す | 22:36 | - | -
ルービンシュタイン国際ピアノ・コンクール
 明日から、イスラエルでルービンシュタイン国際ピアノ・コンクールがスタートする。
 私は以前もブログに綴ったが、何度かコンクール取材にいった。
 今年はチョ・ソンジン、ニコライ・ホジャイノフら、実力派が多数エントリーしている。
 このコンクールは課題曲が多く、かなり難関だといわれる。予選はイスラエル・フィルの本拠地であるテル・アヴィヴのマン劇場で行われ、本選だけ聖地エルサレムに移る。
 私はこれまで4回イスラエルを訪れ、そのつど強烈な印象を受け、たくさんの思い出ができた。ここで出会った人たちのことも、鮮明な記憶となって脳裏に刻まれている。
 イスラエルは大好きな地で、もう一度訪れたいと願っているが、いまのところその予定はない。
 さて、今年のコンクールの結果はどうなるだろうか。配信を見続けていきたいと思う。
 今日の写真は、数年前に宿泊先のブリュッセルのホテルの壁面で見つけたルービンシュタインの直筆。このホテルに泊まったようで、朝食をとったレストランの壁にかかっているのを偶然目にし、感動した。




 
 
 
| 麗しき旅の記憶 | 22:05 | - | -
マティアス・ゲルネ
 自分が行ってきたことがまちがっていなかった、と確信をもてる瞬間はそうそう巡ってくるものではない。
 先日、マティアス・ゲルネのインタビューをしたときに、その数少ない瞬間が訪れた。
 ゲルネはワイマールに生まれ、ライプツィヒで学んだドイツのバリトン。オペラとリートの両面で活躍し、いまや世界的な名声を獲得している。
 ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ、エリザベト・シュヴァルツコップという歴史に名を残すリート歌手に師事し、正統的な後継者といわれる。
 今回の来日では、シューベルトの3大歌曲連続演奏会が組まれ(5月13日〜15日、紀尾井ホール、ピアノはアレクサンダー・シュマルツ)、得意とするシューベルトの世界を披露することになっている。
 バリトンの好きな私は、以前からゲルネの歌声に魅了されてきた。ステージでの類まれなる集中力に満ちた、研ぎ澄まされた歌声は、一度聴くとやみつきになるほどだ。
 歌詞の発音、表現の見事さ、深い洞察力に富む解釈、自由闊達なうたいまわし、怖いほどの迫力にあふれた表情で聴き手に強く訴えかける歌唱法は、作品の新たな発見を促すもの。いつも演奏を聴きながら、いつかインタビューをしたいと願っていた。
 今回それが実現し、NHK交響楽団の定期公演のソリストとして、ワーグナーの楽劇のなかのオランダ人とウォータンをうたうリハーサル会場におじゃました。
 リハーサルから出てきた彼は、まさに大迫力。恰幅がよく、目力が強く、存在感があり、汗びっしょりだ。
 しかし、ステージでのコワモテとはまったく異なり、大きな目がやさしく微笑んでいる。
「ウワーッ、怖そうだけど、やさしそう」(私はいったい何をいっているのか)
 さて、いざインタビューが始まると、ひとつひとつの質問に対し、ことばがあふれんばかりに飛び出してくる。今回のドイツ語の通訳は、ゲルネのリートクラスでピアノを学び、現在は帰国してドイツ語学校でドイツ語を教えているというOさんが担当してくれ、流れるようなゲルネのことばを立て板に水のように訳してくれた。
 このインタビューは、今月末の「日経新聞」、5月から6月にかけてのヤマハのWEB「音楽ジャーナリスト&ライターの眼」、「音楽の友」(掲載時期は未定)に書く予定になっている。
 彼はシューベルトの3大歌曲について、自分が受けた教育について、子ども時代の様子、これから取り組むプロジェクトについて、実に雄弁に語ってくれた。
 それぞれの答えが、まるでオペラのワンシーンのように鮮やかなことばで表現され、からだの動きも加え、目の表情も幾重にも変化していく。
 ようやくインタビューが終わり、部屋を出ようとしたとき、通訳のOさんが「ゲルネさんが、とてもいい質問だったとおっしゃっています」と伝えてくれた。
 私がそれを聞き、お礼をいいながらバーイと手を振ると、バイバーイと茶目っ気たっぷりの表情で返してくれた。
 その夜、Oさんからメールが届いた。なんでも、ゲルネがインタビューをとても気に入ったため、自身のホームページに私の記事を掲載したいといっているというのである。
 アーティストからこんな申し出があったのは初めてのことだ。気に入ったというのは、お世辞かなとも思ったのだが、ここまでいわれるとは…。
 私は人の話を聞くのが好きなため、インタビューは天職だと思っているが、ゲルネは自分がしてきた仕事がまちがっていなかった、と思わせてくれた。感謝感謝である。
 ただし、記事はドイツ語に訳してすぐに内容を確かめるだろうから、気をひきしめて原稿を書かなくてはならない。
 でも、マティアス・ゲルネのホームページに私の記事が掲載されるなんて、光栄なことである。私は単純なので、すごくうれしくなってしまった(笑)。
 今日の写真は、インタビュー後のゲルネ。13日からの3日間のシューベルト、すっごく楽しみ。今回感じたことだが、彼は完璧主義者だ。そして大いなる自信に満ちている。そのすべてが3大歌曲に現れるに違いない。


 
 
| アーティスト・クローズアップ | 22:39 | - | -
アルゲリッチ 私こそ、音楽!
 現在最高のピアニストのひとりといわれるマルタ・アルゲリッチ。その3女で、同じくピアニストのスティーヴン・コヴァセヴィッチを父にもつステファニー・アルゲリッチが監督を務めた、音楽ドキュメンタリー映画「アルゲリッチ 私こそ、音楽!」が2014年秋、Bunkamuraル・シネマ他で公開されることになった。
 その映画の日本版の監修を務めることになった。
 すでに試写を見て、字幕をはじめとするあらゆる資料をもとに、特に音楽面でのチェックをする準備にとりかかっている。
 映画の監修という仕事は初めてゆえ、何から始めたらいいのかわからないが、ひとつひとつ時間をかけて確実にこなしていくしかない。
 先日、来日中のステファニーにインタビューし、さまざまな角度からの質問を試みた。
 とてもチャーミングな人で、いずれの質問にもことばを慎重に選び、じっくりと答えてくれた。
 このインタビューは、「フィガロ・ジャポン」の9月20日発売の号に掲載されることになっている。
 ステファニーは、映画は音楽ファンのみならず、一般の人々に見てもらいたいと思って制作したという。
 親との確執があったり、家族関係に問題を抱えている人など、幅広い人たちに向けた映画を作りたかったと。
 ステファニー自身、幼いころから有名なピアニストの子どもとして、大変な人生を送ってきた。それがいま、自分が母親になったことで、超多忙なピアニストである母を理解することができるようになったのだという。
 アルゲリッチ、コヴァセヴィッチ、そしてふたりの姉も映画に理解を示してくれ、家族としてひとつのハードルをクリアしたようだ。
 この映画は、素顔のアルゲリッチが数多く登場。娘ならではの視点で描かれ、ふだん見ることのできないアルゲリッチの日常が全編にちりばめられている。もちろん、彼女の音楽やこれまでの歩みなども盛り込まれている。
 今日の写真は、インタビュー時のステファニー。彼女はカメラをもっていて、インタビューの間ずっと私の顔を撮影していた。
 う〜ん、やめてくれともいえないし、まいったなあ。監督業だから、人を撮るのが好きなのかしら。
 彼女は映画会社の人から私が監修の仕事をすると聞いて、にっこりと笑顔を向けてくれた。そうです、その仕事をきちんとしなくちゃね。


 
 
 
| 情報・特急便 | 21:59 | - | -
今田美奈子食卓芸術サロン
 今日は、新宿高島屋にあるサロン・ド・テ・ミュゼ イマダミナコで、今田美奈子食卓サロンの「クラシック音楽の楽しみ方」という講座があり、講師を務めた。
 デパート開店とともに現地に赴き、今田先生と打ち合わせ。私は20代のころに青山のヨックモックで開催されていた先生のお菓子教室に1年間通ったことがある。
 今田先生は、お会いした途端、「あなた、どこかでお会いしているかしら」とおっしゃった。私が「お菓子教室の生徒でした」というと、「あらあ、なつかしい。あの教室は20名限定でしたよね。だからお顔を覚えていたんだわ」と、しばしその教室の話に花が咲いた。
 こういう出会いは、何か縁があるというのだろうか。
 その後、おいしい紅茶をいただき、講座で使用する音源などの打ち合わせをし、10時30分に講師役がスタート。
 今日は13時30分から東京オペラシティコンサートホールで中村紘子のトーク&コンサートを参加者全員で聴くことになっており、その演奏曲目を中心に話した。
 だが、時間は1時間と決まっているため、次第にいつもの早口(れいのマシンガントークです)になり、さまざまな話題に飛び、CDをかけ、あっというまに講座は終わった。
 その後、ランチをいただき、今田先生といろんなお話をすることができた。そしてオペラシティに移動し、コンサートへ。
 今日の中村紘子のリサイタルは、ショパンのポロネーズとリストのワルツが中心。舞曲のリズムを用いて作曲された作品に関するトークも交え、春の午後の明るくはなやかなひとときとなった。
 終演後、楽屋を訪ねて中村さんを囲んで記念撮影。これですべてのスケジュールは終わった。
 今日の講座に参加してくれた人たちからは、「もっと時間がほしかった」「もっとお話が聞きたかった」「質疑応答の時間を設けてほしかった」「予習してから演奏を聴くと、とてもわかりやすい」などという意見が出された。
 そうなんです、もう少し時間があれば、いろんな質問に答えることができたんですけどね。まあ、長くて飽きたといわれるより、もっと聞きたいといわれる方が私はいいんですけどね(笑)。
 その後、スタッフの方たちと「次も何か計画したいですね」という話になり、みなさんがとても前向きな意見を出してくれたため、次なる講座が楽しみになった。マシンガントークに磨きをかけなくちゃ。
 今日の写真は楽屋での全員集合。実は、中村さんがもっている花束は、講座に参加した人が自宅で育てているばら。香り高く色彩感に満ち、すばらしいばらだった。そこでばらのアップもパチリ。
 実は、今日ランチのあとに今田先生特製のマロングラッセをいただいたのだが、これがいままで食べたことのないとびきりのおいしさ。なんでも、イタリアの栗を使っているそうで、何度も漬け込み、味を熟成させるという。芳醇でとろけるようなおいしさだった。
 サロンを出るときに購入したかったのだが、ホールに急がなければならず、今回は断念。近いうちにまたサロンに行こうと思っている。
 というわけで、さまざまな人たちと出会い、さまざまな美に触れた1日となった。




| 美味なるダイアリー | 20:59 | - | -
ラファエル・セヴェール
 先日の「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2014」では、若い才能が数多く登場した。
 なかでも、ラファエル・セヴェールの演奏に何度か触れ、輝かしい未来を感じることができた。
 セヴェールは1994年生まれのフランスのクラリネット奏者。2010年にフランスのヴィクトワール・ド・ラ・ミュージックに選出された注目の若手。14歳でパリ国立音楽院に入学した。これまでジェラール・コセ、アンリ・ドマルケット、エベーヌ四重奏団、チェコ・フィル、シンフォニア・ヴァルソヴィアなどと共演している。
 インタビューで会う彼は、とても雄弁で明朗で確固たる信念の持ち主。父親がクラリネットの教授を務め、母親はピアニストだそうだ。
 今回は、モディリアーニ弦楽四重奏団と共演してブラームスのクラリネット五重奏曲を演奏したが、非常に美しい音色の持ち主で、テクニックも安定し、しかも名曲をしっかりした表現力で聴かせた。
 彼は、今回の「ラ・フォル・ジュルネ」の最後に突如組まれたアルゲリッチ、クレーメルとのサン=サーンス「動物の謝肉祭」にも参加。
「こんなに偉大な音楽家たちと共演できて、まるで夢みたいだった」
 と、嬉々とした表情を見せていた。
 なんでも、父親は同じクラリネット奏者になることに反対したそうだが、どうしてもこの楽器を吹きたいという強い要望があり、反対を押し切ったそうだ。
「だって、クラリネットって、すごく人間の声に近い音が出るでしょう。ピアノも習ったし、いろんな楽器も演奏してみたけど、ぼくはやっぱりクラリネットが一番好きなんだ」
 こう語るセヴェールは、現代作品にも意欲的で、すでに委嘱もしているという。
「とにかく、幅広い作品を吹いていきたいんだ。いろんな人と共演したいしね。いまはひとつひとつのステージがとても意義深く、すばらしい経験になる」
 すでに来日は4回目。片言の日本語を連発して笑わせる、茶目っ気たっぷりなナイスガイ。
 ラファエル・セヴェール、この名をぜひ覚えてくださいな。
 今日の写真はインタビュー後のワンショット。知り合いに見せたら、「あら、イケメンじゃない」といっていた。どうですか?


 
  
| アーティスト・クローズアップ | 22:21 | - | -
ルーカス・ゲニューシャス
 ロシア出身のピアニスト、ルーカス・ゲニューシャスにインタビューするのは、2010年のショパン国際ピアノ・コンクール以来である。
 彼は1990年モスクワ生まれ。ショパン・コンクールでは第2位入賞に輝き、現在はロシアやヨーロッパ各地で演奏している。
「ショパン・コンクールは、ぼくのピアニストとしての新たな1ページを開いてくれた」
 こう語るゲニューシャスは、ショパンをレパートリーの中心に据え、枠を決めずに幅広い作品を演奏しているという。
 今回の「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」では、ショパンの12の練習曲作品10と25の全24曲を演奏。コンクール時と同様、非常にダイナミックで勢いのある演奏を聴かせ、さらに大いなる自信を感じさせた。
 ゲニューシャスのインタビューは、ヤマハのWEB「音楽ジャーナリスト&ライターの眼」に書く予定にしている。
 彼は、ショパン・コンクールのときの心境をことこまかに話してくれた。この回は、入賞者がみんな仲良くなり、それぞれ豊かな才能の持ち主ゆえ、とても意義深かったと熱く語った。
「もちろん、第2位という結果をいただいたのはうれしかったけど、その後のプレッシャーのすごさに、このコンクールの位置づけのすごさを感じた。歴代の入賞者の名前の重さや、コンクールの権威、歴史などに、おしつぶされそうになったよ。いつも第2位に見合った演奏をしなければならないんだから」
 あれから3年半が経過したが、いまでもそのプレッシャーは感じているそうだ。
 しかし、すばらしいコンサートの機会に恵まれ、それをひとつひとつじっくりとこなしていくしかないと思っているそうだ。
 この6月にはスヴャトスラフ・リヒテルが南仏ツールで開催していたことで知られる音楽祭に招かれ、ヒンデミットの作品を演奏する予定が入っている。真剣な面持で話していたゲニューシャスは、リヒテルの話になると、一気に表情が柔和になり、「このフェスティヴァルに参加できることは、ぼくにとってとても栄誉なことなんだよね」と笑みを見せた。
 ぜひ、コンサートを成功させてほしい。
 今日の写真は、インタビュー中のルーカス。「写真、見せて見せて」と、興味津々。1枚目はちょっと目を閉じてしまったため撮り直し、ようやく本人も納得の1枚が撮れた。


| アーティスト・クローズアップ | 22:18 | - | -
ミシェル・コルボ
 連日、「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2014」でさまざまな演奏を聴いている。
 今日は、絶対に聴き逃せない、ミシェル・コルボ指揮シンフォニア・ヴァルソヴィア、ローザンヌ声楽アンサンブルのモーツァルト「レクイエム」を聴きにいった。
 その前にインタビューの仕事が2本入り、18時30分開演のコンサートに駆けつけた。
 ソリストは、レティツィア・シェレール(ソプラノ)、キャサリン・ピロネル・バチェッタ(アルト)、クリストフ・アインホルン(テノール)、ピーター・ハーヴェイ(バリトン)。いずれもマエストロ・コルボが選んだ歌手ゆえ粒ぞろいで、しかも4人の声のアンサンブルが美しい融合をなしていた。
 だが、なんといっても傑出した演奏は、ローザンヌ声楽アンサンブルだった。モーツァルトの「レクイエム」は、合唱団が大切な要素を担う。このアンサンブルは、コルボとまさに一体となって力強く、鍛え抜かれた、成熟した合唱を聴かせる。
 こうした声楽作品を得意とする演奏家によるモーツァルトの「レクイエム」は、何度聴いても、いつ聴いても、深い感動が心に押し寄せる。
 今日のマエストロ・コルボは、ずっと自身もうたいながら指揮し、椅子が用意されていたが、いつもながらずっとすわっていることはなく、音楽が始まるとすぐに立ちあがって精力的な指揮を披露した。
 昨年のナント、東京と続けて演奏を聴き、インタビューも行い、それに次いで今回もすばらしい演奏を聴くことができた。
 実は、終演後、プレスルームのあるところでコルボ夫妻にばったり会い、再会を喜び合った。
 私が「レクイエム」がすばらしく心に響いたと話したら、いつものあったかい笑顔でがっしりと抱きしめてくれた。
 今日の写真は、ジャニーヌ夫人とマエストロとのツーショット。奥さまもとてもおだやかで優しく、素敵な人。おふたりに会っただけで、またまた胸の奥がほんのり温かくなった。
 来年もぜひ、元気な姿で指揮台に立ってほしい、とひたすら願う。

| 親しき友との語らい | 23:09 | - | -
風味豊かな焼菓子
 長年、連載記事を書いている雑誌の編集長とお話する機会があり、とても有意義な時間を過ごすことができた。
 雑誌のこと、編集部のこと、クラシックのこと、現在の雑誌業界のことなどから、お互いの仕事に関することまで忌憚のない意見を交換することができ、あっというまに時間が過ぎてしまった。
 最後は「アーティスト・レシピ」の話題となり、次回はぜひ、私の新しくできた事務所(仕事部屋)でお食事会を、という話になった。
 Y編集長からおみやげにスイーツをいただいたのだが、これがとってもおしゃれでエレガントで美しい焼菓子。
 こういうものをいただくときは、とっておきのティーカップを出さなくちゃ、というわけで、以前現地で手に入れたリモージュ焼のカップに紅茶を入れた。
 この紅茶は、紅茶の輸入専門店からお取り寄せしているアールグレイで、香り高く品格があり、おいしいスイーツにピッタリである。
 今日の写真は、入れたてのアールグレイ紅茶と、風味豊かな焼菓子。
 Yさん、ごちそうさまでした。お目にかかって楽しくお話でき、さらにこんなにおいしいお菓子もいただき、感謝感謝で〜す。
 また、ご一緒にクラシックの仕事ができるといいですね。

 
 
| 美味なるダイアリー | 11:23 | - | -
エフゲニー・キーシン
 昨夜は、エフゲニー・キーシンのリサイタルを聴きにサントリーホールに出かけた。
 前半はシューベルトのピアノ・ソナタ第17番、後半がスクリャービンのピアノ・ソナタ第2番「幻想ソナタ」と「12の練習曲」より7曲。
 まさに「巨匠」の風格を感じさせる演奏だった。
 非常に楽譜に忠実で、ロシア・ピアニズムの継承者であるべく楽器を豊かに鳴らし、レガートは美しく、歌心にあふれている。
 あまりにすばらしく、私は初来日のときのキーシンに思いを馳せてしまった。長年聴き続けてきて、こんなにも成熟したピアニストになったことに、しばしことばを失ったからだ。
 こういう感慨深い演奏を聴くと、それを的確なことばで表現することが非常に難しく、ことばを並べることさえ無意味に思える。 
 その余韻に浸っていたいため、しばらくことばを控えたいと思う。
 加えて、新しいパソコンとの奮闘が続いているため、長くは書けない。
 明日からは、いよいよ「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」が始まる。新たな才能との出会いも楽しみだ。
| クラシックを愛す | 23:16 | - | -
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