Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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満開の桜
 今日は「毎日が発見」の辻井伸行の撮影のため、サントリーホールの楽屋に行った。
 インタビュー記事はすでに入稿済みで、あとは写真がそろえばページは完成する。
 カメラマンがセッティングしているときに、私もどこかで写真が撮れるかなと思って自分の場所を探してウロウロ。すると、カメラマンが「伊熊さんが辻井さんと話してくれると、生き生きとした表情が撮れるので、この椅子にすわってください」といわれ、辻井さんと雑談をすることになってしまった。
 撮影が始まり、辻井さんに昨日のリサイタルに関して話しかけると、彼はショパンの「舟歌」のことやベートーヴェンのソナタのことを一生懸命話してくれるため、カメラマンは目いっぱいシャッターを切る。
 最後にピアノの横に立ってもらい、あっというまに撮影は終了。
 気がついたら、私は1枚も写真を撮ることができなかった、残念無念。
 その後、担当の編集の方とお茶をしながらいろいろ打ち合わせをし、サントリーホールから地下鉄の六本木一丁目の駅に向かうと、スペイン坂の満開の桜が迎えてくれた。
 いまは海外からこの桜を見るために観光客がたくさん来日しているそうだが、やはりこれは日本の宝であり、すばらしい光景に心がなごむ。
 辻井伸行は昨日のリサイタル後、2時間ほどプールで泳ぎ、食事をしてから熟睡したとか。今日の夜もリサイタルがあるが、「元気です!」といっていた。
 彼はいま、体力も気力も充実し、「演奏が楽しくて、楽しくて」という。「お客さんの拍手がワーッとくると、すごく喜んでもらえたとわかり、とってもうれしいんです。疲れなんかありません」と笑っていた。
 辻井さんの晴れやかな笑顔に接し、華やかな桜を見て、私も疲れが吹き飛んだ。今日の写真はその桜並木。美しいよねえ。




 帰りに、つい桜の花の乗ったプリンというか、和菓子を買ってしまった。せっかく情緒あふれる日本の美に酔っていたのに、花より団子という構図へとまっしぐら、なんでこうなるの(笑)。


 
| クラシックを愛す | 22:36 | - | -
辻井伸行
 今年は念頭から「辻井伸行」の年だと書いたが、今日は日本ツアー「熱情」の東京公演(サントリーホール)に出かけた。
 これはプログラムの曲目解説の原稿も担当している。
 プログラムは、前半がショパンのノクターン第1番、第2番、「舟歌」と、リストの「コンソレーション第3番、メフィスト・ワルツ第1番。後半がベートーヴェンのピアノ・ソナタ第8番「悲愴」と同第23番「熱情」。
 今回の日本ツアーは、2月17日に始まり、4月14日まで、全国で23回組まれている。とても大規模なツアーである。
 辻井伸行はこのプログラムをすべてのツアーで演奏するわけだが、本人は演奏するごとに内容が変化し、表現も深くなっていくと語っている。
 まさに、今日の演奏は完全に手の内に入った堂々とした、しかも落ち着いた演奏で、いつもながら本人が目いっぱい楽しんで演奏している様子が伝わってきた。
 実は、「毎日が発見」(カドカワ)の雑誌のため、明日は公演前に辻井伸行の撮影が組まれている。担当者、カメラマンとともに15時に楽屋入りする予定だ。
 今日の写真は、今回のプログラムの表紙。
 明日は、カメラマンの撮影の合間に、私も1枚ちゃっかり撮ってしまおう(笑)。


 
| 日々つづれ織り | 23:35 | - | -
エリーザベト・レオンスカヤ
 日差しが温かくなり、桜の開花情報が報じられるようになると、「東京・春・音楽祭」の季節到来だ。
 11年目を迎えたこの音楽祭は、上野のコンサートホールや美術館、博物館などを会場とし、今年は3月13日から4月12日まで開催されている。
 昨日は東京文化会館小ホールに、エリーザベト・レオンスカヤのリサイタルを聴きにいった。
 これは音楽祭の今年のテーマのひとつである「スヴャトスラフ・リヒテル生誕100年」の「リヒテルに捧ぐ」の演奏会。レオンスカヤはリヒテルとのデュオでも知られ、4月2日には同ホールでリヒテルとともに演奏したボロディン弦楽四重奏団との共演も組まれている。
 実は、昨年末、「ぶらあぼ」の記事のためにレオンスカヤにメール・インタビューを行った。10項目ほど質問を出したが、彼女はひとつひとつ非常に丁寧にことばを尽くして答えてくれ、内容の充実した原稿を書くことができた。
 今回のリサイタルは、日本ではなんと32年ぶりのソロ・リサイタル。得意とするシューベルトのピアノ・ソナタ第19番、第20番、第21番が組まれ、心に深く響く圧倒的な存在感を示すシューベルトが奏でられた。
 とりわけ印象に残ったのは、からだのどこにも力が入っていない自然体の奏法。手首がやわらかく、打鍵は強靭ながらけっして鍵盤をたたかず、楽器全体を大きく鳴らす。ペダリングも絶妙で、小さなホールゆえ、その足の動きまで細部にわたって見ることができた。
 まさに古きよきロシア・ピアニズムを体現する奏法で、レガートの美しさが際立つ。手首の位置、力の入れ方、フレーズの作り方、速いパッセージの扱い、主題のうたわせ方などを注意深く聴いていたら、晩年のリヒテルの奏法を思い出した。やはりデュオを組んでいると、似てくるのだろうか。
 シューベルトのピアノ・ソナタは長い。この日も、かなり長時間にわたる演奏となったが、彼女は即興曲を2曲もアンコールで演奏してくれた。
 その滋味豊かな調べは、ホールの隅々までしっとりとおだやかに浸透していき、私はしばし席を立てないほど深い感銘にとらわれた。
 レオンスカヤはインタビューで、こう答えている。
「ソナタ第21番は、私にとって特別な存在です。第2楽章は、ブリューノ・モンサンジョンによるリヒテルのドキュメンタリー・フィルムの最後で使用されていて、それを観るたびに特別な感情が湧いてきます。このソナタはリヒテルを象徴する大切な作品でもあります」
 さらに、こう続けている。
「第21番は、シューベルトという人間をいつわりなくありのままに表現しているソナタだと思います。私は今回の3曲のソナタに長い年月をかけて向き合ってきました。これまで積んできた経験と修練が演奏に反映されると思っています」
 このことば通り、レオンスカヤのシューベルトは、いつまでも心に残る強い印象をもたらす濃密な演奏だった。
 今日の写真は、「ぶらあぼ」のインタビューページ。ボロディン弦楽四重奏団との演奏に関しては、室内楽にも力を入れていることと、彼らとの共演も長年にわたるため、大切なパートナーとのこと。
「ボロディン弦楽四重奏団の間の取り方と表現力は、常に核心を衝いています」と述べている。4月2日はシューベルト、シューマン、ショスタコーヴィチが演奏される。


 
 
| クラシックを愛す | 23:22 | - | -
マレック・シュパキエヴィッチ
 今夜、チェロ好きの私は、王子ホールにマレック・シュパキエヴィッチの演奏を聴きにいった。
 シュパキエヴィッチはポーランド出身で、現在はロサンゼルス在住。生地で教育を受けた後、アメリカに渡り、数々の国際コンクールで優勝、入賞を果たした。
 現在はカリフォルニアのアズサ・パシフィック大学音楽学部で教鞭をとり、室内楽のディレクターを務めている。2008年には、アメリカ政府から永住権を授与された。
 今日のプログラムは、まずドヴォルザークの「スラヴ舞曲ホ短調作品72-2」が演奏されたが、これは長年シュパキエヴッチが編曲したいと願っていた作品。今回は、スラヴ民族音楽の哀感あふれる旋律を生かしながら、チェロを豊かにうたわせるアレンジを披露した。
 2曲目はポーランド人ならではのショパンのチェロ・ソナタ ト短調作品65。ピアノのジアイ・シーとともにショパンの名技性あふれる作品をロマンあふれる響きで聴かせ、ときに両楽器がはげしい音の対話を見せながら、スリリングなフィナーレへと突入した。
 後半は、シュパキエヴィッチが作曲者の精神に深い共感を得るという、ショスタコーヴィチのチェロ・ソナタ ニ短調作品40が演奏された。これこそ、チェロが慟哭の調べを奏でる作品。ショスタコーヴィチ独自の世界へと聴き手をいざない、作曲家が置かれていた辛い状況を浮き彫りにした。
 最後は、打って変わってピアソラの「グラン・タンゴ」が登場。シュパキエヴィッチの哀愁ただよう音色は一変し、躍動感あふれるタンゴのリズムがホール全体を満たした。
 今日は、東日本大震災の被災地で生まれ育った木材で中澤宗幸氏が製作したチェロが、アンコールなどで奏された。これは世界中の1000人の演奏家が、奇跡の一本松や大切な思い出のつまった家屋の床柱や梁で製作されたヴァイオリン、ヴィオラ、チェロをリレーのように奏でていくプロジェクトの一環。「千の音色でつなぐ絆」と題されている。
 シュパキエヴィッチは、ラフマニノフの「ヴォカリーズ」などでその楽器を演奏し、絆の一翼を担った。
 今日の写真は、終演後のシュパキエヴィッチ。彼を知る全員が口をそろえて「マレックはすごくいい性格の持ち主」というが、その笑顔が性格のよさを物語っている。演奏もとても温かい音色で、その奥にえもいわれぬ哀愁の表情が潜む。



 今日はCDもいただいたが、これはショパンのチェロ・ソナタとブロッホの「ヘブライ狂詩曲《シェロモ》」が収録されているものである。


 
| アーティスト・クローズアップ | 22:19 | - | -
グリゴリー・ソコロフ
 日本はヨーロッパからもアメリカからも遠いため、飛行機嫌いのアーティストはなかなか来日がかなわない場合がある。
 長年「幻のピアニスト」と呼ばれてきたロシアのグリゴリー・ソコロフも、そのひとりだ。
 ソコロフは、いま世界中でもっともナマを聴きたいといわれるピアニストではないだろうか。もちろん来日公演はないため、海外公演を聴くしかないのだが、これはとても難しいことである。
 1950年サンクトペテルブルク生まれ。16歳のときにチャイコフスキー国際コンクールで優勝の栄冠を手にし、審査委員長を務めていた20世紀を代表するソ連のピアニスト、エミール・ギレリスに絶賛された。しかし、海外で演奏することは制限され、ようやくソ連崩壊後に西側で演奏できるようになる。それゆえ、長年「幻のピアニスト」と呼ばれていたのである。
 そんな彼の待望の新譜がリリースされた。「ザルツブルク・リサイタル2008」(ユニバーサル)と題されたCDで、スタジオ録音を嫌う彼の貴重なライヴ録音である。2枚組で、1枚目はモーツァルトのピアノ・ソナタ第2番と第12番。2枚目にはショパンの「24の前奏曲」が収録されている。さらに音楽祭のライヴゆえ、アンコールも6曲入っていて、スクリャービン、ショパン、ラモー、J.S.バッハの作品が演奏されている。
 ソコロフの演奏は、いずれもピアノが豊かにうたい、感情がほとばしり、多彩な色彩が描き出されるもの。モーツァルトのピアノ・ソナタはかろやかで自由闊達で、聴き手に至福のときを与えてくれるが、もっとも印象的なのはショパンの「24の前奏曲」。これまでこの作品は多くの録音を聴いてきたが、こんなにも表現力にあふれ、ストーリー性に富む前奏曲は聴いたことがない。各曲がみずみずしい生命力を放ち、聴き手の胸の奥深いところにストレートに語りかけてくる。
 聴き込むほどに心が高揚し、ソコロフとともに呼吸しているような感覚に陥る。まるで魔術にかかったように、何度も繰り返して聴いてしまうのである。
 とても臨場感ある録音ゆえ、あたかも自分がザルツブルク音楽祭の会場で聴いているような思いにとらわれ、目を閉じるとすぐそばでソコロフが演奏しているように感じられる。
 アンコールも特筆すべきで、特に最後のバッハ「主イエス、われ汝を呼ぶ」は心に染み入る演奏だ。深い打鍵と弱音の美しさが際立ち、つい頭を垂れて聴き入ってしまう。
 これを聴くと、なおさらナマの演奏を聴きたいと思う気持ちが募る。でも、日本にはきてくれないんだよねえ。ヨーロッパに出張するときには必ずその都市でのコンサートの有無を確認するのだが、そううまくいくわけもない。
 ショパンの「24の前奏曲」の絶妙のルバート、モーツァルトのソナタにおける自然な装飾音など、すっかり演奏にはまってしまって容易に抜け出せない(笑)。 
 今年前半の私のイチオシです!!
 今日の写真は、ソコロフのジャケット。ライナーノーツには、ストイックで論理的で誠実で完璧主義者のソコロフの素顔が綴られている。そういう人間性にも、無性に惹かれる。


 
| アーティスト・クローズアップ | 21:55 | - | -
レジス・パスキエ
 ヴァイオリンは名器と呼ばれるものがいくつか存在するが、フランスのヴァイオリニスト、レジス・パスキエが使用している1734年製グァルネリ・デル・ジェス「クレモナ」もそのひとつ。
 今日はトッパンホールにそのパスキエのリサイタルを聴きにいった。
 プログラムの前半はルクレールのヴァイオリン・ソナタ ニ長調とプロコフィエフのヴァイオリン・ソナタ第1番。
 ルクレールの宮廷舞踊を用いた荘重で気品あふれるゆったりとした3拍子の旋律が、グァルネリ・デル・ジェスで奏されると、あたかも18世紀当時の宮廷にいざなわれるよう。ルクレールはオランダのオラニエ公妃に仕えており、この作品は名チェンパリストとして知られた公妃に献呈されている。
 パスキエの演奏は伝統を重視し、楽譜に忠実で、古典的な色合いが濃厚だ。ここに若いフィリップ・チュウの躍動感あふれるピアノが加わると、音楽が何層かの複雑な重なりを見せ、両楽器の音の対話が肉厚になっていく。
 次いで演奏されたプロコフィエフは、緩・急・緩・急というバロック風の4楽章で構成されている。ここでは両楽器がときに荒々しく叫び、またあるときはおおらかな歌をうたい、とりわけヴァイオリンの重音が印象に残る。
 このソナタはダヴィッド・オイストラフに捧げられ、初演は彼のヴァイオリンとレフ・オボーリンのピアノで行われた。
 この作品になると、パスキエの表現は一変。楽器をはげしく熱く深く鳴らし、その奥にノーブルな趣とパッションが秘められ、ヴァイオリンの多様性が浮き彫りになった。
 後半はラヴェルのヴァイオリン・ソナタとサン=サーンスのヴァイオリン・ソナタ第1番。こうしたフランス作品こそ、パスキエの真骨頂である。両作品とも、オペラティックであり、シンフォニックでもあり、素材は簡潔で素朴で様式もシンプルだが、内容と構成はふたりの作曲家の傑作とされるだけに、華やかで情熱的でフランス趣味が横溢している。
 パスキエの古きよきフランスの上質な響きにピタリとピアノが寄り添い、そこに自由闊達さも加わり、フィリップ・チュウの演奏はとても印象深いものだった。
 終演後、招聘元のマネージャー、Kさんに会ったら、こんなことをいっていた。
「パスキエがある国際コンクールの審査員をしていたとき、伴奏ピアニストとして参加していたチュウがとてもすばらしく、共演をすることになったんだって」
 ああ、そうなんだ。でも、今日はフィリップは風邪をひいていたようで、時折咳き込んでいた。演奏中はがまんにがまんを重ねていたらしく、終わると一気に咳が…。辛かっただろうなあ。でも、明るい笑顔の人だった。。
 本当に、心に響くヴァイオリンを聴いた一夜となった。
 レジス・パスキエは1958年わずか12歳でパリ国立高等音楽院のヴァイオリン科と室内楽科を一等賞で卒業。その2年後にニューヨークにデビューしている。以来、今日まで世界各地で活発な演奏活動を行い、パリ音楽院の教授も務め、録音も積極的に行っている。
 2012年10月にトッパンホールでリサイタルを行い、「円熟の極み」と称された演奏を披露し、今回は2度目の登場となった。
 今日の写真は、終演後のサイン会におけるパスキエとチュウ。今夜は冬に逆戻りしたような寒い気候だったが、心は温かくなった。パスキエの熟成した上質なワインのような音がからだ全体に沁み渡り、寒さを吹き飛ばしてくれたのである。



 なお、心が温まったのは、予想もしていなかったアンコールのおかげもある。クロード・ボリングの「ヴァイオリンとジャズピアノ・トリオのための組曲よりラグタイム」が奏され、それが実に味わい深く、雄々しくたくましくエネルギッシュで、遊び心に満ちあふれていたからだ。
 もう1枚の写真は、公演チラシ。パスキエは、フランコ・ベルギー楽派の伝統をいまに伝えるパスキエ一族の末裔だそうだ。ヴァイオリニストになるべくしてなったという存在なんですねえ。


| クラシックを愛す | 23:37 | - | -
新雑誌打ち合わせ
 今日は、知人のKさんが関わっている雑誌の編集長に会うため、出版社に出かけた。
 次号で初めてこの雑誌のインタビューページを担当することになったため、その打ち合わせである。
 K編集長と担当のKさんとさまざまな話をしながら、私の方からもいろんな提案をし、4ページ構成の内容を詰めていった。
 そのさい、クラシックの多岐にわたる話をしたのだが、編集長がとても興味を抱いてくれたため、話題はかなり広がり、先々の企画の話にまで及んだ。
 でも、目の前の4ページをしっかりこなすことが最優先ゆえ、担当のKさんとそれに関してさらに打ち合わせをして、ページ構成を固めていった。
 こういう新しい仕事は、最初が肝心である。読者のニーズを考慮し、読みやすく、しかも質の高い記事を書かなくてはならない。
 K編集長はとても要求の高い人で、好奇心旺盛な性格のようだ。「クラシックを読者に近づけると同時に、私をクラシックへといざなってほしい」といわれた。
 これは結構手ごわいゾ。いい原稿を書かないと、仕事が続かなくなってしまうから…。
 ここはひとつ、しっかり集中して、雑誌の読者に語りかけるような記事を書かなくちゃ。
 新しい仕事というものはいつも緊張するけど、この緊迫感がないといい仕事はできない。さて、ねじり鉢巻きで頑張りますか。
 
 
 
 
 
| 日々つづれ織り | 22:51 | - | -
チョン・キョンファ
 私は、アーティストのインタビューがもっとも好きな仕事である。
 限られた時間内で、できる限り多くの内容を聞くことをモットーとし、さまざまな媒体に書き分けることを楽しみとしている。
 通常は1回のインタビューで、ひとつの雑誌か新聞に記事を書くことが多いが、書き分けが可能な場合は、ひとりでも多くの人にそのアーティストのことを知ってほしいと願い、いろんな角度から記事を展開する。
 1月にソウルでインタビューしたチョン・キョンファの場合も、多くの原稿を書いてきた。公演が行われる各ホールの冊子とホームページ、新聞、雑誌、プログラム、そしてもっとも長く書くことができたのがヤマハのWEB「音楽ジャーナリスト&ライターの眼」の記事だ。
 私が連載しているこのWEBのサイトは多くの読者が繰り返しクリックしてくれるようで、すでに連載を初めてから5年目に入った。
 今回、チョン・キョンファの記事は、4週連続で「アーティストの本音トーク」と題して綴った。
 WEBの場合は、原稿の文字数が基本的には限られていないため、思う存分書くことができる。さらにそれがずっと残るため、いつでも過去の記事を読んでもらえるというメリットもある。
 チョン・キョンファの原稿も、インタビューで聞いたあらゆる面を綴ることができた。ぜひ、サイトに寄ってみてくださいな。
「音楽ジャーナリスト&ライターの眼」は、ウィークリーで記事が更新されていくため、毎週どんな内容にしようか非常に悩む。そして5年目に入り、長期連載となってきたため、さらなる質の向上の必要性を感じている。
「アーティストの本音トーク」を始めたのも、一度のインタビューで聞いた内容のほんの少ししか記事で紹介できないため、もったいないと思い、すべてを紹介する意味でスタートさせた。
 私はれいのごとくマシンガントーク炸裂で、短時間でたくさんのことを聞くため、いつもインタビューではかなり多くの内容が手元に残る。それを紹介できるWEBの記事は、私にとって貴重な発信源である。
 そしていまは、次なるタイトルというか、カテゴリーを考慮中だ。また何か新しいことを始めたいと思っている。今日の写真は、以前紹介しなかったチョン・キョンファのりんごの絵の前の1枚(Gana Art Center)。
 4月15日からいよいよ来日ツアーが始まる。演奏が楽しみだ。


 
 
| 日々つづれ織り | 18:16 | - | -
魚庄
 西荻は昔からの小さな専門店が多く、町歩きでいいお店を見つけるとお店の人と仲良くなり、いろんな話を聞くのが楽しみだ。
 そんな大好きなお店のひとつが、北口の北銀座街をずんずんと進んだ右側にある、古い看板を掲げたお魚屋さん「魚庄」である。
 60年ほど前に始めたお店だそうで、先代から譲り受けた大将とその同級生の板前のような人のふたりで切り盛りしている。
 このおじさんふたりが妙にいい味を出していて、大将は長身でてきぱきしていてクール。この人がお魚を包んだり会計をしてくれる。
 もうひとりの板前のような、いわゆる職人風の人は、どんな面倒なことを頼んでもみっちり仕事をしてくれる。骨を取ったり、三枚に下ろしたり、たたきにしてくれたり、何でもござれだ。その手さばきの見事さにいつも見とれてしまうほど。
 この職人さんがとても話好きで、いまのイワシの状況や旬の魚情報をおしえてくれるため、聞いていてとても楽しい。そして、いつも何かしらおまけを分けてくれる。
 今日はてんぷら用に鯵とイカを購入したのだが、すぐに揚げられるよう、ものすごくきれいに処理してくれた。
 そしてお店のことをいろいろ聞いていたら、「おまけに生鮭入れといたからね。一緒にてんぷらにしてみて、うまいよ」といわれた。キャー、うれしい(笑)。
 私は鮭をてんぷらにしたことはなかったため、新しい発見をした感じ。鮭の味が濃厚で、ものすごくおいしかったからだ。
 魚庄のお魚は仕入れにこだわっているからか、種類はそんなに多くはない。でも、ひとつひとつがとても吟味されていて、新鮮且つ美味である。
 今日の写真はお店の年季の入った看板とお魚の並んだケース。残念ながら、ふたりは写真を撮られたくないということで、撮影はできなかった。
 よくドラマや映画に出てきそうな個性の異なるふたりで、お魚を買いにいくたびにレトロな雰囲気に心が和んでしまう。お店には新聞が切って吊り下げられ、竹の皮のような物で包んでくれ、計算はそろばんだ。お金はひもを引っ張ってカゴのなかに入れる。まさに、モノクロの映画を見ているよう。ずっとずっと長く続けて欲しいお店である。



 もう1枚は、揚げたばかりの生鮭のてんぷら。今日は春のいろんな野菜をてんぷらにしたが、鮭にはタラの芽とレンコンがよく合った。


 
 
| 西荻はおいしい | 22:44 | - | -
トリイソース
 親しくしている通訳のKさんが、仕事で浜松に行き、そこで見つけた完熟ソースをお土産に買ってきてくれた。
 Kさんとは、出張などで一緒になると、仕事の合間を見てすぐに食材探しに出かけるほど「食いしん坊」としての趣味が一致。その彼女が見つけてきてくれたソースだから、さぞおいしいだろうと興味津々。
「このソース、100円のコロッケが200円のコロッケに思えるほど、味が変わるんですって」
 彼女のこのことばを聞いて、うまいことをいうものだなあと感心しきり。浜松は、うなぎとお茶が名物かと思ったら、こういうソースもあったのね。
 早速、薄切り肉の重ねカツを作り、完熟ソースをかけてみた。
 すると、あらら、ホントにすばらしい味。自然でまろやかでほんのり甘味があり、クセがまったくない。
 トリイソースという銘柄で、「完熟したトマトとりんごをふんだんに使用し、野菜・くだもの本来の甘みを生かしたやさしい味わいのソースです」と書いてある。製造元の鳥居食品は、創業大正13年だそうだ。老舗ですなあ。
 私も今度、浜松に行ったら、このソースを見つけようっと。
 Kさん、ありがとう、ごちそうさま。また一緒においしい物、探しましょうね(笑)。
 今日の写真はトリイソース。ドレッシングにしてもいい、と書いてある。


| 美味なるダイアリー | 17:42 | - | -
田中彩子
 コロラトゥーラという声域は、本当に鳥がさえずっているような、およそ人間の声とは思えないような高い声である。
 10代のころから類まれなるコロラトゥーラの才能に注目され、ウィーンに留学して本格的に声楽を学んだソプラノの田中彩子は、そのコロラトゥーラの歌声でいまや欧米で大活躍。
 今日は、紀尾井ホールで「華麗なるコロラトゥーラ」と題したリサイタルが行われた。
 グローテの「ナイチンゲールの歌」から始まった演奏会は、まさに美しい鳥のさえずりのよう。デビューCD「華麗なるコロラトゥーラ」(エイベックス)に収録されているモーツァルトの「夜の女王のアリア」、マイアベーアの「影の歌〜歌劇《ディノラー》より」、ドリーブの「鐘の歌〜歌劇《ラクメ》より」など、得意なアリアが次々にうたわれていく。
 前半は多少緊張気味だった彼女だが、後半は本来ののびやかな歌声が存分に発揮された。
 本当に、この超高音が出せる歌手というのは貴重な存在だ。やわらかく繊細で、清涼感に富む。
 今日は会場に男性ファンが多く訪れていた。CDのサイン会も長蛇の列。デビュー公演の成功は、彼女にとって大きな励みになるのではないだろうか。
 今日ピアノを担当したのは、加藤昌則。実は、先日書いた長野市芸術館のNCAC音楽大学の講師のひとりである。彼の担当は7月。
 初めてお会いしたのだが、同じ講師を務めるということで、話が弾んだ。
「今度ぜひ、一緒に何かやりたいですね」
 こういわれ、私も大賛成。違う日ではなく、同じ日に一緒に何かの講座ができたら、と願っている。
 今日の写真は、終演後の田中彩子と加藤昌則。ぜひ、近いうちにまたリサイタルを計画してほしい。もっと違うレパートリーも聴きたいから。



| クラシックを愛す | 23:11 | - | -
阪田知樹
 1月末、初めてのインタビューですっかり意気投合してしまった若きピアニスト、阪田知樹に、またまたインタビューする機会が巡ってきた。今度は「CDジャーナル」のインタビューである。
 彼は4月24日に「スペイン狂詩曲〜阪田知樹デビュー!」と題したアルバムをリリースする(オクタヴィア・レコード)。今回のインタビューでは、その新譜のことを中心に話を聞いた。
 プログラムは、リストの「スペイン狂詩曲」、スクリャービンの「2つの詩曲」、ドビュッシーの「映像第興検廖▲轡腑僖鵑離團▲痢Ε愁淵紳3番、ラフマニノフの「ここは素晴らしい場所〜12の歌より」(阪田知樹編)という構成である。
 以前も話に出たスクリャービンのこと、デビューCDだからこその選曲へのこだわり、ショパンのピアノ・ソナタ第3番への深い思い入れなど、さまざまなことをことばを尽くして話してくれた。
 インタビューというのは不思議なもので、最初のときから波長が合い、話が無限に広がっていく人がいる。阪田知樹も、すでに2度目でこのタイプだ。
 5月5日には浜離宮朝日ホールでリサイタルが行われる予定。新譜に収録されている作品もプログラムに組まれている。
 さらに8月27日には、大阪のザ・シンフォニーホールで「ショパンとスクリャービン」と題したリサイタルが予定されている。
 2013年のヴァン・クライバーン国際コンクールにおいて、19歳で最年少ファイナリストとなった阪田知樹は、現在22歳。留学先のドイツと日本を往復し、精力的な演奏活動を展開している。
 今日の写真はインタビュー後のワンショット。ユーモアたっぷりに「コンサートのチラシ、もっていようかな」といい、このポーズになった。

| 情報・特急便 | 22:47 | - | -
日田の名品
 仕事で地方に行くとき、大きな楽しみはその地のおいしい名品を探すことである。
 先日、日田に行ったときには、豆田町という昔ながらの古い町並みが残っている商店街に案内され、そこでさまざまな老舗を訪ね歩いた。
 ここは小京都のような風情があり、どのお店もとても趣がある。お味噌やお醤油、ごま豆腐、羊羹などの専門店があり、もうたまりません(笑)。
 観光協会のKさんが、「ここはお薦めです」というお店をいくつも紹介してくれるため、ひとつずつ試食をさせてもらいながら購入していたら、どんどん荷物が増えてしまった。
「このあたりで、ちょっと休憩しましょうか」
 こういって連れていってもらったのが、珈琲談議所「嶋屋」。このお店のオーナー石丸邦夫さんは、観光協会会長。ここで出されたのが「抹茶だんごセット」。私が会長と話していたら、みんなが「早く食べて」「すぐに食べて」とせかすので、何なのだろうと思ったら、このおだんごが温かいのである。要は、できたてなので、冷めないうちに食べてくれということだったのだ。
 おだんごは、きなこと粒あんの2種で、もうほっぺたが落ちそうなくらいおいしかった。
 会長は、日田の町が活性するよういろんなことを考えていて、実にアイディアマン。話していてとても楽しく、その前向きな姿勢に学ぶことが多かった。
 写真は豆田町の様子。古民家が多く、昔の豪商などの家も残っている。



 やわらかくて、ほんのり温かい、美味なるおだんご。



 観光協会会長の石丸氏。



 いろいろ選んで買ってきた日田の名品。

| 美味なるダイアリー | 22:36 | - | -
キット・アームストロング
 先日インタビューした若きピアニスト、キット・アームストロングからメールが届いた。
 彼は2013年2月、ベルギーに近いフランスにあるÉglise Sainte-Thérèseというほとんど使われていなかった教会を購入し、ここで演奏会を行っている。
 この教会を修復し、コンサートで使えるようにし、若いアーティストに演奏の場を提供しているのだという。
 その教会で6月26日から28日までコンサートが行われるそうで、28日のコンサートに招待したいという内容のメールだった。
 もちろん、のどから手が出るほど行きたいが、旅費の問題も時間の問題もあり、聴きに行くことは難しい。
 大変残念だけど、今回はちょっと無理という返事を送った。
 今回わかったことだが、キットはふだんまったくぜいたくをしない。すべてを教会につぎ込み、自身の協会を設立し、このコンサートの収益もその協会に回して将来の音楽イヴェントで活用したいようだ。
 この教会の話に私がとても興味を示したため、キットは聴きにきてほしいと思ったようだが、なんといってもフランスだからねえ、そうそう簡単に行くわけにはいかない。
 でも、彼はとてつもない才能の持ち主でありながら、それに甘んじることなく視野を広くもち、社会性も備えている。
 この教会の話題になったとき、私がオルガンを設置して音楽祭を開催したいのかと尋ねたら、それがのちのちの夢だと語っていた。
 今年23歳。若きキットは、ぐんぐん才能を伸ばし、夢を次々に実現していくに違いない。陰ながら応援したい。
 
 
 
| 情報・特急便 | 22:39 | - | -
人気沸騰中の西荻
 先日、「Hanako」の特集で吉祥寺と西荻窪が取り上げられ、連日わが街は押すな押すなの盛況となっている。
 雑誌を片手に、またスマホで地図を見ながら、多くの人たちがあのお店、このお店と回って歩く。
 駅にも待ち合わせの人がたくさんいて、なんだかお祭りのようだ。私も早速、雑誌を購入してどんなお店が紹介されているのか見た。
 でも、私がいつも食べにいくところやオーガニックの食材を売っているところなどは出ていない。取材を断ったところもあるのかしら。
 私が独立してから10年間ほど「Hanako」の連載を書いていたころは、吉祥寺は取り上げられていたが、西荻窪はまったく話題にはならなかった。
 それがいま、「日本一知りたい街」になっているとは…。時代が変わったのか、街が変わったのか、人の趣味が変わったのか、不思議だワ。
 今日は雑誌で紹介されている輸入セレクトショップに行き、いい物を見つけた。サボ(木靴)好きの私がすぐに目をとめたのは、スウェーデン製のサボ。
 以前、オランダを旅したとき、アムステルダムで真っ赤な皮のサボを見つけて購入し、20年以上も愛用した。皮の部分が切れ、履けなくなってしまったのだが、今日は久しぶりにいいサボに出合った。
 今度のサボは渋い茶色のスウェードで、実に履きよさそう。早速、カポカポと音をたてて西荻街歩きを楽しんでいる。
 本当に、この街はいろんな顔を見せてくれる。パンも激戦区で、個人で経営している小さなパン屋さんが、私が探しただけでも10軒以上もある。また「西荻はおいしい」で紹介しま〜す。
 今日の写真は、ひと目惚れしたスウェーデン製のサボ。いい色でしょ。
 そして、街を活性化してくれた「Hanako」の表紙。ここは大きなチェーン店があまり入ってこなくて、昔ながらの商店やオーナーこだわりの小さなお店が目白押し。ないものはないくらい種類が豊富だ。みなさん、ぜひ西荻に遊びにきてくださいな。お好みのお店、いっぱいご案内しますよ(笑)。




 
 
| 日々つづれ織り | 21:28 | - | -
奥村愛
 先日、ヴァイオリニストの奥村愛にインタビューをするため、音楽事務所にいった。
 彼女に会うのは久しぶりで、先ずは雑談などをし、それから5月30日に紀尾井ホールで行われるリサイタルの話へと移った。
 このリサイタルは、奥村愛が綴る「一日」と名付けられ、今回のプログラムは朝から夜まで一日を俯瞰した内容だという。
 ピアノは藤井一興で、初共演だそうだ。
 このインタビューは、次号の「音楽の友」に書く予定になっている。
 奥村愛と話していると、のんびり、ゆったりペースに私もだんだん染まってくる感じ。「なんでもスローなんですよ」と笑うが、それが彼女のふんわかした温かい雰囲気を作り出す根源的な要素となっている。
 焦らず、気負わず、気取らず、常にマイペース。こういう人は、「一日」の使い方もゆったりしているんだろうな。
 いつも「私、写真を撮られるの、すごく苦手なんです」といっているが、ブログ用にさっとワンショットだけ撮らせてもらった。
 このインタビューは、リサイタルのプログラムだけではなく、チェリストの弟さんのこと、父親から譲り受けた楽器のこと、室内楽の共演者のこと、藤井一興に学生時代に室内楽のレッスンを受けたときのことなど多岐にわたった。
 今日の写真はその貴重な一枚。いつ会っても、ホント美しいよねえ。


 
| 情報・特急便 | 22:58 | - | -
キット・アームストロング
 昨日のキット・アームストロングのインタビューは、非常にスリリングだった。まず、待ち合わせ場所やその時間、移動中にどのくらいインタビューの時間がとれるのかなど、いろんな不確定要素を徐々にクリアし、ついに本人と一緒に大きめのタクシーに乗り合わせることができた。
 さて、インタビューが始まると、とても真摯に雄弁に一生懸命話してくれ、タクシーを降りて羽田空港に着いたら、「まだ続きを話したい」といわれた。
 というわけで、彼らのチェックイン終了後、カフェに直行。そこでまたいくつか質問をし、結局かなりの時間を過ごすことができた。
 とても内容のあるインタビューとなり、やれやれ、ホッとひと息。
 このインタビューは、ヤマハのWEB「音楽ジャーナリスト&ライターの眼」に2回に分けて書く予定にしている。
 ここからすぐに次のインタビューへと向かい、合間に軽くランチをし、今度はヴァイオリニストの奥村愛に話を聞いた。
 昨日は夜になって親戚の訃報が入り、それからは兄弟姉妹の間で電話が行き交い、夜遅くまで大変なことになった。
 本当にいろんなことがあった、長い一日となった。
 今日の写真は、羽田空港のカフェで撮ったキットくんの1枚。本当の天才で、その子ども時代の話は唖然とするくらい衝撃的だった。
 なんとか、その真実に迫る記事を書きたいと思う。

| 終わりよければ…取材奮闘記 | 23:05 | - | -
移動中のインタビュー
 いま、ブレンデルから「私が出会ったもっとも類まれなる才能」と評された若きピアニスト、1992年ロサンゼルス生まれのキット・アームストロングが来日している。
 3月5日には浜離宮朝日ホールでリサイタルがあり、J.S.バッハの「コラール前奏曲集」よりとバルティータ第6番、リストのメフィスト・ワルツ第1番などの間に自作も盛り込み、個性的なプログラムを披露した。
 いずれも自信あふれる堂々とした演奏で、みずみずしい音色と確固たる構成感が息づく奏法だが、ときおり大家のような風格ある響きを醸し出す。
 幼いころから作曲も手がけ、ブレンデルに師事し、現在では欧米各地で活発な演奏活動を展開している。
 新譜はキット・アームストロング「ブレイズ・J.S.バッハ+リゲティ+アームストロング」(ソニー)。




 実は、今回インタビューのスケジュールがなかなか合わず、結局、彼が帰国するその日に行われることになった。というのは、明日である。
 ただし、そのスケジュールがすさまじいことになっている。キットは先週のリサイタル後にオフとして母親と一緒に京都を訪れている。そして明日のお昼ごろ東京に戻ってきて、午後羽田から帰国する予定。その合間を縫って、タクシーで移動する最中にインタビューすることになったのである。
 以前、ヨーヨー・マのインタビューで、やはり時間がなく、東京から名古屋に向かう新幹線のなかでインタビューをし、私は折り返し名古屋から戻ってきたことがあるが、明日もそれに近い状態になりそうだ。
 そうそう、もうひとつ思い出した。指揮者のマリス・ヤンソンスのインタビューも、羽田に着いたときからホテルまでのタクシーのなかだった。
 さて、心臓がハクハクしてくる状態だが、明日はいったいどうなるだろうか。
 明日のブログでそのいきさつを紹介しま〜す。うまくいくことを願って…。
| アーティスト・クローズアップ | 22:49 | - | -
NCAC音楽大学
 来年年5月、長野市の新たな文化芸術の拠点となる長野市芸術館がオープンする。ここは英語表記でいうとNagano City Arts Centerとなり、略してNACAと呼ばれる。
 今年は開館のプレイヤーにあたり、開館記念プレイベントとしてNACA音楽大学(NACA music college)と題した講座が開講することになった。
「音楽のわかる大人になろう! 講座」というキャッチフレーズのもと、ダイジェスト版としてこの5月から2カ月ごとに11月まで4つの講座が開かれる予定だ。
 講師は4人で、5月31日「ベートーヴェン入門」〜「運命」の聴き比べをもとに〜 柴田克彦氏(音楽ライター、音楽評論家、「編集工房Beethoven」代表)、7月18日「バレエ音楽はこうして書かれる」〜舞踊音楽の歴史とともに〜 加藤昌則氏(作曲家、ピアニスト)、11月15日「クラシックとは何か」〜クラシックとポピュラーはいつから分かれたのか〜 吉成順氏(国立音楽大学教授、音楽社会史)、そして私は9月19日に「ピアニスト山本貴志とコンクールの覇者たち」〜ベテランから注目の新人まで〜と題した講座で講師を務めることになっている。
 この4つの講座に通して参加すると、4時限目が終わるころには「音楽のわかる大人」になっているに違いないというコンセプトである。
 1回券は500円、4回セット券は1800円で、会場はホクト文化ホール(長野県県民文化会館)小ホール。全席自由で、定員各回100名となっている。
 担当の方から、私が講師を務める9月には、もう長野市芸術館の外観は出来上がっているかもしれないと聞き、とても楽しみになった。
 時間は毎回14時開講で、5月、9月、11月が60分、7月は90分である。
 来年からいよいよこのNCAC音楽大学は本格的に始まり、また新たなシリーズがお目見えするようだ。
 4人の講師とも、音楽について楽しくおもしろく、また内容の濃い講座にしようと考えている。ぜひ、一度入学してみてくださいな。
 今日の写真は出来上がったばかりのパンフレット。地元のデザイナーが色彩感豊かな楽しいデザインにしてくれたそうで、とても温かく親密的な仕上がりになっている。さあ、私も頑張らなくっちゃ。




  
 
| 情報・特急便 | 20:03 | - | -
日田の宿
 先日の日田の講演のときに担当の方が予約してくれたのが、すばらしい旅館だった。
「さつき」という1日限定7部屋の宿で、とりにくい宿だそうだ。折しも日田のひな祭りを見にくる人で旅館やホテルはいっぱい。ようやく確保してくれた。
 古民家を改造した宿で、玄関も廊下も部屋も温泉も、実に古風で味わい深い。



 私の部屋は川に面したところで、「光」と名付けられていた。障子を開けると、目の前に桜の大木が飛び込んできた。きっと、桜の季節には、この部屋の予約がいっぱいになるに違いない。
 久しぶりに、畳に布団を敷いて寝るのはとても新鮮で、ぐっすり眠れた。
 私がパトリア日田の講演にきていることを担当者が話したため、女将さんが興味をもってくれ、「ぜひ講演に伺いたいのですが、なにしろ旅館を空けることができないものですから」と、残念がってくれた。
 夜、入った温泉は陶器風呂で、からだの芯から温まる感じ。朝食もとてもおいしくて、すばらしいひとときを過ごすことができた。





 ひとつ印象に残ったのが、この地の名水である「ひた粋」と名付けられたミネラルウォーター。清らかでからだにスーッと入っていく。これをたくさん買った帰ろうと思ったのだが、小さなキャリーしかもっていかなかったことと、ペットボトルは機内持ち込みが不可能だ。ああ、残念。上の写真は朝食。その一番奥に置いてあるのが「ひた粋」だ。
 また機会があったら、今度はぜひ預ける荷物の方に入れたいと思う。
 なお、日田は江戸時代から続く町人文化の名残で、おひな祭りが盛んだそうだ。これは朝食の部屋に飾られていたおひなさま。これ以外にも、入口やロビーなど、いろんなところにさまざまなおひなさまが置かれていた。




 
| 麗しき旅の記憶 | 20:39 | - | -
イェフィム・ブロンフマン
 今日もブロンフマンのコンサートの話題。
 いま、エサ=ペッカ・サロネン指揮フィルハーモニア管弦楽団が日本ツアーを行っているが、今日はサントリーホールでストラヴィンスキーのバレエ音楽「火の鳥」(1910年原典版)の演奏が行われた。
 前半にはチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番が組まれ、そのソリストがイェフィム・ブロンフマンだ。
 プログラムの原稿にも綴ったが、ブロンフマンはインタビューで、「チャイコフスキーなどの作品を演奏するときには想像力と美しい音色、このふたつの要素に重点を置きます」と語っている。
 そのことば通り、チャイコフスキ―ではスケールの大きな迫力のあるピアニズムを披露すると同時に、緩徐楽章などはすこぶる幻想的で美しい響きが発揮された。
 ブロンフマンは、先日のリサイタルの記事にも書いたように、弱音の美しさが際立っている。今日もコンチェルトのあと鳴りやまない拍手に応え、プロコフィエフのピアノ・ソナタ第7番より第3楽章に続き、ショパンの「12の練習曲集」より作品10ー8を演奏した。その美しさといったらない。
 完璧な脱力ができた状態で、どこにも力が入っていない自然な打鍵を見せ、繊細かつ優美なショパンを奏でた。
 ああ、ため息が出そうだワ(笑)。
 その後、「火の鳥」が演奏され、こうした作品を得意とするサロネンは、色彩感とストーリー性と斬新な書法を浮き彫りにし、オーケストラから生気あふれる響きを導き出した。いつもサロネンの演奏を聴くと、その手腕に深い感動を覚える。
 こうしたすばらしいコンサートが続いているため、原稿がどんどんたまって困ってしまう。いろいろ遅れていて、担当者のみなさま、ごめんなさいと、ここであやまってしまおう。
 明日は、やはりフィルハーモニア管のコンサートがあり、ヒラリー・ハーンのソロでブラームスのヴァイオリン協奏曲が組まれているけど、ここはひとつぐっとがまんしてパソコンにかじりつかなくてはならない。
 土曜日と日曜日の2日間で、なんとか原稿を終わらせなくては…。
 
| クラシックを愛す | 23:56 | - | -
イェフィム・ブロンフマン
 最近は同じ日に聴きにいきたいコンサートが重なり、調整が大変だ。
 昨日は、すみだトリフォニーホールにイェフィム・ブロンフマンのリサイタルを聴きにいった。
 彼には昨年インタビューし、今回のプログラムのことを聞いている。
 今日のプログラムはプロコフィエフの「戦争ソナタ全曲」。ピアノ・ソナタ第6番、第7番が前半で、後半にピアノ・ソナタ第8番が演奏された。
 ブロンフマンはプロコフィエフを昔から愛奏し、この作曲家の作品を広めることに尽力している。
 ロシア作品は、よく腰から弾くといわれるが、まさに堂々たる体躯のブロンフマンは、力を入れなくても深く重力のある音が出る。そのエネルギッシュな奏法で作品の奥に潜む作曲家の真意に肉薄。荒々しさ、強靭さ、生命力、ロマンティシズム、不安定、清冽、静謐、抒情、情熱など、さまざまな表情を幾重にも変化しうる音色で存分に聴かせた。
 プロコフィエフの「戦争ソナタ」は、いずれも重量級の作品ゆえ、聴き手も集中して聴いていると、前半だけで疲労困憊する。だが、ブロンフマンは余裕綽々。後半の第8番は特有の弱音も聴かせ、心に染み入るピアニズムを展開した。
 こうした大作を演奏した直後に、彼はアンコールでプロコフィエフとはまったく趣を異とするスカルラッティのソナタ ハ短調 K11とショパンの「12の練習曲」より第8番ヘ長調 作品10-8を天上の音楽のような弱音を駆使して披露。ヴィルトゥオーソ・ピアニストの底力を示した。
 こんなに素早く奏法も表現も内容もさらりと変えられる、その切り替えの速さに脱帽。ブロンフマンは本当にすごい人だと、しばし席を立つことができなかった。
| クラシックを愛す | 23:31 | - | -
佐藤久成
 先月22日、個性派ヴァイオリニストの佐藤久成のリサイタルが東京文化会館小ホールで行われた。この日はちょうど日田の講演とぶつかり、演奏を聴くことができなかった。
 私はこのリサイタルのチラシに原稿を寄せている。佐藤久成は音楽評論家の宇野功芳氏が大絶賛しているヴァイオリニストで、このおふたりからチラシの原稿を依頼されたのである。もちろんマネージャーを通して。
 その文章が宇野さんの目に留まり、彼からお手紙を頂戴してしまった。「ここまで書くか、と驚くとともに感動した!」と書いてあり、熱い文章を書くことで知られる先生にそういわれて、恥ずかしいやら恐縮するやら…。その文を以下に紹介します。

[佐藤久成のヴァイオリンは魂の叫びである]

「1音聴いたら、すぐにその人の名前が浮かぶような演奏をしたい」
 多くのアーティストがこう語る。「自分の音」を奏でたいと。声楽家はそれが可能だが、器楽奏者の場合は非常に困難である。
 しかし、ここに冒頭の音を聴いただけですぐにその人だとわかるヴァイオリニストがいる。佐藤久成である。彼の生み出す音は、胸の奥から絞り出すような、からだを震わせるような、すべての感情を音楽に託すような、まさに魂の叫びである。知られざる作品を披露するときも、名曲と称される小品と対峙するときも、その姿勢はいっさい変わらない。
 佐藤久成のヴァイオリンは、聴き手を瞬時に異次元の世界へと運び去る。日常から離脱し、天上の音楽に酔い、身も心も新たに生まれ変わるような思いにとらわれる。そこでは、喜怒哀楽の感情がほとばしり、慟哭、嗚咽、苦悩、歓喜、至福などさまざまな感情が渦巻く。自分がこんなにも豊かな感情の持ち主だったことに驚くことになる。それはすべて久成節を全身に浴びたことにほかならない。
 彼のヴァイオリンは平常心で聴くことはできない。胸がざわつき、涙腺がゆるみ、目を閉じると自分の人生のひとこまが浮かんでくる。音楽がなつかしい感情を引き起こすからだ。 
こんなにも人の感情に強く訴えるヴァイオリンは珍しい。しかもこよなく官能的で立体的。独創的なルバート、テンポ、主題のうたわせ方など、いずれも癖になる。一度演奏にはまると抜けられなくなる。罪深い音楽家だ!!

 とまあ、こんなことを書きました。
 その佐藤久成に、今日インタビューをすることになった。「intoxicate」の次号に掲載されるインタビューである。
 新譜の「HISAYA 魔界のヴァイオリン供廖淵ングインターナショナル)のこと、子ども時代の音楽とのかかわり方、留学中のこと、海外で秘曲に出合い、それを捜し歩いたこと、ヴァイオリニストとしての生き方、楽器のこと、今後の視点まで、多岐にわたる話を聞き、有意義な時間を過ごすことができた。
 彼はあんなにヴァイオリンでは雄弁に語るのに、話すのはちょっと苦手のようで、とてもシャイで朴訥で、ことばを選びながらゆったりと話す。
 よく、自分の音楽のことをことばで話すよりも演奏で伝える方が楽だという人がいるが、彼もそのタイプのようだ。
 それでも私はどんどん質問し、いろんな切り口を探し、相手の話を少しでも多く引き出していくよう努力する。時間は限られているから、さまざまなことを聞いておかないと、いい記事は書けないからである。
 新譜はエルガーの「愛のあいさつ」から始まり、名曲がずらりと登場し、ラフマニノフの「ヴォカリーズ」でフィナーレとなるが、まさに饒舌で官能的で情熱的な演奏が全開。濃密な時間が流れる。
 また次回、時間があるときにゆっくりいろんな話を聞きたい、と思わせるヴァイオリニストである。秘曲の話も興味深いし…。
 今日の写真は、インタビュー後のワンショット。「ブログ用にお写真1枚いいですか」といったら、ハンカチを出して顔をごしごし拭きだした。笑っちゃいけないけど、その仕草、いいよねえ。朴訥で率直でほほえましいです。


 
| アーティスト・クローズアップ | 23:06 | - | -
信州の野菜
 先日の日田への出張の帰り、知人から福岡空港にしか売っていないと教えられた稚加栄の辛子明太子を購入し、松本に住む親友のTちゃんに送った。
 すると、すぐに彼女が信州のさまざまな野菜を送ってくれた。なんだか、グルメ交換会のようになってきたゾ(笑)。
 この福岡の料亭の明太子は、上品で繊細でとてもおだやかな味わい。何かのお料理に使ったり、他の食材と混ぜたりせずに、炊き立てのごはんにそのまま乗せて食べると、本当のおいしさが口のなかに広がる。
 地方には、本当にその土地ならではの美味なる物がある。
 さて、信州の野菜は、安曇野の清らかな水で育ったクレソンとセリが絶品。クレソンはすぐになくなってしまうそうで、JALのファーストクラスで使われている逸品だそうだ。ナマで食べるのが一番で、私はふんわりしたオムレツを作って、このクレソンを添えてみた。う〜ん、たまりません。
 セリもほんの少しだけゆで、胡麻和えに。これも春の香りに包まれる感じ。
 ほかには、もう時期的に最後だからということで、またまたすんきがふたつ入っていた。異なる人が漬けたすんきで、ちょっとだけ味が違う。すんきはアレルギーに効くというから、アレルギー性鼻炎の私には、お宝である。
 こういう野菜は、包みを開けただけで山の空気がただよってくる。Tちゃん、ありがとう。今回も、疲れた心身にエネルギーを与えてもらいました。
 今日の写真は、届いたばかりのみずみずしい信州の食材たち。私はこうした物が送られてくると、しばらくじっとながめている。すぐに調理せずに、野菜と対話するのである。
 すると、自然に調理法が浮かんできて、いい結果が得られる。野菜たちが、もっともおいしい食べ方を伝えてくれるのだ。
 今日の写真は、安曇野や北アルプス山麓信州八坂自然村の清らかな水と空気のなかで育った野菜。かんぴょうとくらかけ豆という物も入っていた。さて、どうやってお料理しようかな。
 早く原稿を終わらせて、かんぴょうやお豆を煮たいなあ、早く早く…。

| 美味なるダイアリー | 23:11 | - | -
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