Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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アレクサンドル・タロー
 フランスの個性派ピアニスト、アレクサンドル・タローには、初来日のときからたびたびインタビューを行っている。
 最初のころは、とてもシャイで気難しく、口も重く、あまりインタビューは好きではないというタイプに見えた。
 それゆえ、話を聞き出すのに、結構苦労した思い出がある。
 ところが、あるとき、心の通い合った共演者であるチェロのジャン=ギアン・ケラスと一緒にインタビューするという機会を得た。
 すると、タローの様子が一変したのである。
 まあ、よくしゃべる、笑う、はじける。ふたりの掛け合いはまるで漫才のようで、本当に仲がいいということがリアルに伝わってきた。
 ケラスは、「私たちは、お互いに鏡を見ているような感じなんだよ。すごく似ている面が多くて、笑っちゃうくらい」といい、タローも「確かにふたりで演奏しているんだけど、ひとりで演奏しているように聴こえると思う」といった。
 このとき、タローはかろやかにバレエも披露してくれたのである。もちろん、冗談でケラスと踊っていたのだが…。
 カメラマンは大喜びで、シャッター音が鳴り響いた。
 あれから何年か経ち、タローはいまやフランスきっての個性派ピアニストとしての地位を確立。ラモーからクープラン、J.S.バッハ、スカルラッティ、ラヴェル、ドビュッシー、プーランク、サティまで幅広いレパートリーを、特有の美学に基づいた選曲、解釈、表現で演奏。録音も行い、それぞれ高い評価を得ている。
 タローの新譜は、バッハの「ゴルトベルク変奏曲」(ワーナー)。これはライナーノーツも担当したため、今日のインタビューでは、あらゆる角度からこの作品に関しての質問を試みた。
 インタビューは、私のHPの「音楽を語ろうよ」に掲載する予定である。
 タローは4年間スケジュールを調整し、ようやく1年間のサバティカルを取って、「ゴルトベルク変奏曲」と向き合ったという。
「私はさまざまな土地を旅し、その土地で作品を深め、自分の感性を磨き、バッハの神髄へと近づいていったのです」
 現在のタローは、とても真摯にじっくりとことばを選びながら、かなり雄弁に話すようになった。
「ゴルトベルク変奏曲」は、終わりのない旅であり、自分自身もずっと弾いていく作品だと確信していると語った。 
 今日のインタビューで、もっとも興味深かったのは、タローのレパートリーの根幹を築くことになり、ピアニストとして大きな影響を受けたというフランスのピアニスト、マルセル・メイエ(1897〜1957)の話だ。
 彼女の録音を初めて聴いたのは20歳のときで、衝撃を受けたとのこと。以来、マルセル・メイエの録音をすべて集め、いまでもそれを糧にしているそうだ。
 この話にとても興味を惹かれた私は、あれこれ質問したのだが、タローは「じゃ、次の来日のときにまたインタビューにきてよ。そして、マルセル・メイエについて1時間ずっと話さない?」と、とてもユニークな提案をしてくれた。
 それまでに、私はマルセル・メイエに関してしっかり調べなくてはならないし、録音も探して聴き込んでおかなくては。
 インタビューでは、こういう新たな発見があるのがとてもうれしい。彼は、メイエの録音に文章を寄せているという。
 今日聞いた話は、「音楽を語ろうよ」で詳しく紹介します。お楽しみに。
 写真は、インタビュー後のタロー。彼は私が「あまり照明が強すぎて、顔に影が出ちゃってうまくいかないわ」とブツブツいっていると、「どれ、貸して」といって自撮りを始めた。
 それはちょっとピンが甘かったため、やはり私が撮影した方を掲載します。


 
 
| 終わりよければ…取材奮闘記 | 22:40 | - | -
千住真理子×仲道郁代
 長年、ソロを聴き続けてきたアーティストの室内楽を聴くと、新たな発見がいくつもある。
 昨日はヤマハホールに、千住真理子と仲道郁代のデュオを聴きにいった。ブラームスのヴァイオリン・ソナタ全曲コンサートである。
 前半にヴァイオリン・ソナタ第1番、第2番が演奏され、後半に「F.A.E.のソナタ」より第3楽章スケルツォ、ヴァイオリン・ソナタ第3番が組まれていた。
 千住真理子には、以前、愛器のストラディヴァリウス「デュランティ(1716年製)」に関して話を聞いたことがある。
 彼女は、この楽器を2002年に手に入れることになった。その経緯と、楽器のこれまでの所有者の話、さらに楽器への深い思いなどを聞き、ヴァイオリンのミステリアスな運命に感銘を受けた覚えがある。
「私はデュランティに巡り会い、自分の音楽を一から立て直そうと思ったのです」
 こう語ったことばは忘れられない。
 デュランティとパートナーを組んで14年目。その低音の美しさと深々とした響きは、ブラームスのソナタにとても合っていた。
 彼女の演奏は、あたかも声楽家のように、後半にいくにしたがって音が徐々にのびやかに自由闊達に鳴り響くようになり、まさにデュランティは生き物だと感じた。
 仲道郁代は、後半の演奏が始まる前のふたりのトークで、こう語っている。
「私たち、20代のころにこれらの作品を演奏しなくてよかったわね。長年、さまざまな経験を積んできたからこそ、いまブラームスのヴァイオリン・ソナタに向き合える。それだけすばらしい作品だから」
 これに応え、千住真理子もいう。
「昔、先生にブラームスのソナタはロールスロイスを40キロで走らせるように演奏しなさいといわれたんだけど、当時はその意味がわからなかったの。いまはそのことばをかみしめながら、1音1音に思いを込めて演奏しています」
 この「ロールスロイスを40キロで走らせる」というのは、どういう意味なのか。おそらく、人によって、さまざまな解釈ができるのではないだろうか。
 仲道郁代の演奏は、近年より自由に、より開放的に、より自然体になってきたように思う。彼女の演奏は、デビュー前のコンクール時から聴き続けているが、このブラームスも馥郁たる歌に彩られ、熟成した白ワインを思わせた。
 このコンサートレビューは、ヤマハのWEB「音楽ジャーナリスト&ライターの眼」に書く予定にしている。
 今日の写真は、終演後のふたり。彼女たちは、チェロの長谷川陽子を加えたトリオでは共演したことがあるが、デュオは今回初めてだったそうだ。


  
| クラシックを愛す | 21:31 | - | -
辻井伸行×三浦文彰 究極の協奏曲コンサート
 実力と人気を兼ね備えた若手演奏家、辻井伸行と三浦文彰のソロとコンチェルトのコンサートが、2月16日から28日まで全国で10公演組まれている。
 題して「辻井伸行×三浦文彰 究極の協奏曲コンサート」。
 昨日は、Bunkamuraオーチャードホールに東京公演の2日目の演奏を聴きにいった。
 前半は、三浦文彰のマスネ「タイスの瞑想曲」とチャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲ニ長調」。後半は、辻井伸行のラフマニノフ・プロで、「前奏曲作品32-12」と「パガニーニの主題による狂詩曲作品43-第18変奏」とピアノ協奏曲第3番。共演はクリストファー・ウォーレン=グリーン指揮読売日本交響楽団である。
 三浦文彰は1748年製J.B.Guadagniniを情感豊かにたっぷりとうたわせ、特有の柔軟性に満ちた美音を披露した。
 彼はチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲をこれまで数えきれないほど演奏している。以前、インタビューでは、この作品についてこう語っていた。
「チャイコフスキーのこの曲は昔からもっとも好きなコンチェルトで、14歳ころから始めました。ぼくはピンカス・ズーカーマンとはすごく仲がよく、彼からいろんなことを学んでいます。公私ともども、あらゆることを相談し、もう養子になったような気分ですね(笑)。ピンカスからは、このコンチェルトをオーケストラとのアンサンブルを大切に、室内楽のように演奏するようにというアドヴァイスを受けています。チャイコフスキーは、ぼくにとって一番弾き心地がいいというコンチェルトなんですよ」
 みずみずしくのびやかな彼のヴァイオリンは、オーケストラと濃密な対話を繰り広げ、第1楽章はロシアの広大な大地を思わせる雄大さを表現。第2楽章はロシアの抒情美を紡ぎ出し、第3楽章ではロシアの民族舞踊を思わせる急速なリズムが爽快感を醸し出した。
 私は以前にも書いたが、「タイスの瞑想曲」を聴くと、マキシム・ヴェンゲーロフの本を書くためにイスラエルの彼の家に10日間ホームステイしたときのことを思い出す。撮影のためにヴェンゲーロフが弾いてくれた「タイスの瞑想曲」は、野太く情熱的で官能性にあふれていた。この曲を聴くと、瞬時にあのときのことが脳裏に蘇ってきて、感慨に浸ることになる。
 後半は、辻井伸行の独壇場。彼はラフマニノフをこよなく愛し、手の内に入れ、演奏するたびに新たな表現を加えている。
 とりわけ、ピアノ協奏曲第3番のクライマックスに突き進んでいくところが手に汗握る迫力だった。
 鳴りやまぬ拍手に応えて、アンコールにはふたりが登場。ガーシュウィンの「プレリュード第3番」が始まった。ノリがよく、リズミカルで、しかも両者の特質が明確に表れている。
 終演後、楽屋で三浦文彰がいった。
「このガーシュウィン、次第に合うようになってきたんですよ。今日は合っていましたか? ああ、よかった」
 辻井伸行も、大好きなラフマニノフを存分に演奏でき、喜びの表情をのぞかせていた。
 ぐんぐん空に向かって伸び行く才能に触れると、疲れが吹き飛び、エネルギーをチャージすることができる。
 今日の写真は、終演後のそれぞれの表情。この共演、各地ともに完売だ。また、スケジュールが合ったら、ぜひ共演してほしい。アンコールももっと聴きたいし(笑)。



| 親しき友との語らい | 21:34 | - | -
金子三勇士
 デビュー当時から応援しているピアニストの金子三勇士が、ユニバーサル移籍第1弾として、「ラ・カンバネラ〜革命のピアニズム」を3月30日にリリースすることになった。
 今日は、「CDジャーナル」のインタビューでレコード会社に出向き、久しぶりにいろんな話を聞いた。
 金子三勇士は、日本人の父親とハンガリーの母親のもとに生まれ、幼いころはハンガリーで勉強している。そのころの話はとても興味深く、いつか彼から聞いたすべてを記事で紹介したいと思っている。
 今日は新譜にまつわる話を中心に聞いたわけだが、2016年1月に軽井沢の大賀ホールで録音したため、収録時には雪が降っていたそうで、ハンガリーを思い出しながら演奏したという。
 これはリスト没後130周年記念の録音にあたり、リスト弾きとしての金子三勇士ならではの選曲となっている。リストの「ハンガリー狂詩曲第2番」「愛の夢」「ラ・カンバネラ」が選ばれた。
 他の曲は、モーツァルトの「キラキラ星変奏曲」、ショパンの「革命のエチュード」「幻想即興曲」、ベートーヴェンの「月光ソナタ」、ドビュッシーの「月の光」が収録されている。
 長年いろんな話を聞いてきたが、彼は常に真摯で率直で、好感がもてるタイプ。人に好かれるというのは、こういう性格の人を指すのだろう。だからこそ、聴衆のみならずコンサートの主催者や関係者にも好かれ、仕事が目白押しだ。
 それゆえ、現在は日本での仕事が多く、ハンガリーのリスト音楽院でのリストの研究に時間が割けないのが悩みだという。
 モーツァルトやベートーヴェンの楽譜の研究は多くの人が行っているが、リストに関しては、あまり行われていない。それをハンガリーの血を受け継ぐ彼は、ぜひライフワークにしたいようだ。この話になると、使命感を感じているようだった。
 新譜のライナーノーツも担当したため、この録音は私にとっても大切な意味合いをもつ。ぜひ、新たな門出を迎え、大きく飛翔してほしい。
 今日の写真はインタビュー後のにこやかな表情。髪が少し伸びたためか、以前とはちょっと顔つきが変って見えた。
「でも、これ以上は伸ばしませんよ」とのことだった。
 髪がふわふわして、多いよね。ゆるやかなウェーブになっているからパーマをかけなくていいし、ホント、うらやましくなっちゃう(笑)。


 
 
 
 
| 親しき友との語らい | 23:52 | - | -
旅の味覚
 旅に出ると、その土地のおいしい物を探して、舌と心を満足させるのがこの上ない楽しみとなる。
 もちろん、その土地ならではの郷土料理も堪能したいが、他の土地のお料理を捜し歩くのも、また旅の醍醐味である。
 以前、ウィーンで食べたイタリアンが、とてもおいしかった。
 仕事の間のほんの短い時間にさっと食べただけなので、レストランの名前も場所も明確には覚えていない。
 ただし、写真はしっかり撮った。
 私はこういうお料理に出会うと、まず素材が何かを確かめ、ソースや味付け、ハーブなどを念入りに調べ、ひとつずつ味わっていく。
 このときは、なにしろ急いで食事を終わらせて次の取材に飛んでいかなくてはならなかったため、コースは頼めず、パスタとお茶だけで済ませた。
 でも、そのシンプルなパスタがとても印象深い味だったのである。
 イカとルッコラとトマトとにんにくとオリーブオイル。基本の食材はこれだけだと思う。
 パスタのゆで加減、野菜とイカとの相性、そして塩加減など、すべてが絶妙なバランスで仕上げられていた。
 これはアーティスト・レシピに使えるなあと思いつつ、その味を舌に記憶させた。
 こうして、旅の記憶はまたひとつ増えたことになる。
 ウィーンでイタリアン?と思うかもしれないが、ウィーンは結構探すとおいしいお店が路地裏にあったりして、シェフこだわりのお料理が出てくる。
 今日の写真は、急いで撮った1枚。これは、なんといってもイカの鮮度と種類と火の通し方が命。自分なりに工夫し、納得のいく味になったら、アーティスト・レシピに加えたいと思っている。
 さて、だれのレシピにしようかな…。


 
| 麗しき旅の記憶 | 21:51 | - | -
コンスタンチン・リフシッツ
 ホールを揺るがすような大音響から、ささやくような弱音まで、自由自在なピアニズム。これぞ「ロシア・ピアニズム」である。
 今日は、紀尾井ホールにコンスタンチン・リフシッツのリサイタルを聴きにいった。
 プログラムはオール・ラフマニノフで、「24の前奏曲」。「前奏曲」嬰ハ短調作品3-2「鐘」からスタート。
 モスクワ音楽院を卒業した翌年に作曲され、クレムリン宮殿の鐘の音からインスピレーションを受けたといわれる作品で、冒頭から深々とした鐘の音が響く。それが次第に壮大な音楽へと変容していく。若きラフマニノフのロマンと情熱があふれる音楽で、広く人々に愛されている。
 リフシッツは、最初から深い打鍵と劇的でダイナミックな演奏を聴かせ、前奏曲への扉をゆっくりと開いていく。
 ラフマニノフは敬愛するJ.S.バッハの「平均律クラヴィーア曲集」やショパンの「24の前奏曲」にならって、「24の前奏曲」を長短すべての調を使ってまとめたわけだが、3つの時期に分けて作曲が行われたため、体系的な配列にはなっていない。
 より自由に、よりさまざまなスタイルが用いられ、いずれも独創的で詩的で力強さがみなぎっている。
 次いで、前半には「10の前奏曲」作品23が演奏され、後半には「13の前奏曲」作品32が演奏された。
 リフシッツの演奏は、樫本大進とのデュオのときとは別人のよう。ヴァイオリンと合わせるときは、かなり神経をこまかく遣い、弦との融合に配慮し、音量も抑制し、あくまでもヴァイオリンとの対話に徹している。
 ところが、今日のリフシッツは、ロシア・ピアニズムの継承者たる奏法を遺憾なく発揮。ときにピアノの弦が切れるのではないかと心配してしまうような強靭なタッチとダイナミズムを聴かせ、猛烈なスピードで野原を駆け抜けたり、森のなかを疾走したかと思うと、ふと立ち止まり、ひっそりと咲く野の花に目を向ける。
 すべてがピアノと一体化した、見事なまでの構築感に貫かれた音楽で、大進がよく「コンスタンチンは本当の天才だよ」といっていることばが思い出される。
 リフシッツは、曲の終わりはペダルをずっと踏み続け、音の余韻を楽しみながら、そこに次なる音をかぶせるようにして曲を進めていく。
 ひとつの前奏曲がノクターンのようであり、トッカータやエチュードのようでもあり、それぞれのドラマが浮き彫りになって、その余韻に浸っていると、すぐに次なる世界へと運ばれる。
 作品32の第13番「グラーヴェ」では、重厚で深遠な鐘の響きがホール全体に鳴り響き、ロシアの雄大さを描き出した。
 それはまさに、フィナーレならではの大きな絵巻物を繰り広げているようで、非常に視覚的な演奏だった。
 この後に、またもやリフシッツの底力を知る曲が登場した。アンコールにそっと弾き出したショパンの「雨だれ」である。
 甘さや優雅さや流麗さや華やかさとは、まったく無縁の深い悲しみと苦悩が横たわっているような、まるで慟哭するような「雨だれ」。なんと個性的な表現だろうか。ショパンの作曲時の心情が映し出されているよう。
 ああ、リフシッツのショパンをもっと聴きたくなった。
 彼はJ.S.バッハを得意としているが、次回はぜひ、ショパンをしっくりと聴かせてほしい。
 今日の写真は、終演後の楽屋でのリフシッツのユニークな表情。
 人に呼ばれたため、ふと横を向いたときにパチリ。壮絶なる演奏とはまったく逆の、お茶目な顔。
 彼は曲の説明をするときは、比喩やさまざまな本からの引用などを挟み込むタイプで、ジョークも得意。その一面が表れているでしょ(笑)。



 
 
| クラシックを愛す | 23:56 | - | -
エマールのインタビュー
 今日、HPの「音楽を語ろうよ」のコンテンツに、ピエール=ロラン・エマールのインタビュー記事をアップした。
 エマールは、メシアンをはじめとする現代の作曲家の作品の第一人者として知られる一方、J.S.バッハの演奏にも意欲を示している。
 じっくりと作品と向き合うタイプで、そのピアノは熟成した美しさとシンプルな構築感、おだやかながら凛とした表情を備えている。
 インタビューの受け応えも実に知的で明快で、精神性の高さを感じさせる。
 そんな彼の素顔と音楽が浮かび上がればと思い、いろんな角度から行ったインタビューを簡潔にまとめてみた。
 ぜひ、読んでくださいね。
 
| 情報・特急便 | 17:59 | - | -
ルネ・マルタン&リヒテル
 よくインタビューをするアーティストが、自分が師事したり共演した偉大な音楽家の話をしてくれることがある。
 もうその巨匠たちは亡くなっているため、実際にその人と交流のあった人から聞く話はとても貴重である。
 雑誌や新聞のインタビューは文字数に限りがあり、そのときのコンサートや録音などについて書くため、巨匠たちのエピソードなどを綴るスペースはほとんどない。
 だが、私はこうした余談や取材こぼれ話が大好きなのである。
 そこで、ブログにひとつ「巨匠たちの素顔」というカテゴリーを追加し、インタビューで得た話を書くことにした。
 第1回は、昨日インタビューした「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2016」のアーティスティック・ディレクター、ルネ・マルタンの登場だ。
 彼は1995年にフランスのナントに「ラ・フォル・ジュルネ」を創設したことで知られるが、それ以前の1981年にはフランスの小村に「ラ・ロック・ダンテロン国際ピアノ音楽祭」を創設した。
 1988年にはスヴャトスラフ・リヒテルにより、フランスのトゥール近郊のメレ農場で開催された「トゥーレーヌ音楽祭」を任されるようになり、リヒテルの音楽祭「12月の夕べ」(モスクワ・プーシキン美術館)も手がけた。
 昨日のインタビューは、5月に開催される「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2016」についてテーマや内容、アーティストなどについて聞き、その記事は「日経新聞」3月と4月の最終木曜日の夕刊に2カ月にわたって書くことになっている。
 そのなかで、私がリヒテルとの交流について聞くと、マルタンは「リヒテルは私のメンターともいうべき存在です」と明言し、その話に花が咲いた。
 リヒテルのために数多くのコンサートを企画し、ともに各地でさまざまな体験をしたという。
 もっとも印象的だったのが、ふたりで画家アンリ・マティスの礼拝堂を訪ねたときの話である。
 マティスは、晩年ニースの奥に位置するヴァンスという小さな村に住み、元看護師だったシスター、ジャック・マリーからの依頼でロザリオ礼拝堂の再建に尽力する。
 彼女は、マティスがガンに苦しんでいたときに献身的に介護してくれたため、マティスは4年間かけて礼拝堂の設計から内外装、聖職者の祭服までデザインし、1954年に完成を見た。
 このロザリオ礼拝堂には、マティスが全生涯の総仕上げを意味するさまざまな壁画やステンドグラスなどがあり、空・植物・光という3つのテーマに基づく青・緑・黄色が使われている。
 リヒテルはその近くの新しい礼拝堂の方で演奏したそうだが、ロザリオ礼拝堂に出向き、ステンドグラスを通して内部に射し込んでくる太陽光の変化を1時間ほどずっと椅子にすわって眺めていたという。
「何も語らず、身動きもせず、ただじっと光のうつろうさまを眺めていました」
 マルタンはこう述懐する。
 私はこの話を聞き、ロザリオ礼拝堂の光に無性に会いにいきたくなった。リヒテルの音楽は、まさにその静謐で無垢で純粋な礼拝堂の空気に似ていると思うからである。
 もうひとつ、マルタンはこんなエピソードも紹介してくれた。
 あるとき、リヒテルを含めた4人で、ウィーンの結構大きなレストランにいったときのこと。花売りの女性が、腕に抱えきれないほどのばらをもってレストランに入ってきた。
 リヒテルはそれを見て、「ばらはそれだけなの?」と聞いた。
「いいえ、私の主人がまだ外にいて、これと同じくらいもっています」
 ほどなく、その男性もばらを抱えて入ってきた。
 リヒテルはいった。
「そのばらを全部、今夜このレストランにいる人たちに渡してくれないかなあ」
 お客さんたちは、「リヒテルからばらをもらった」と大喜びした。
 翌日、そのレストランにまた食事にいくことになった。
 リヒテルがドアを開けると、レストランの従業員たちが一斉に叫んだ。
「ああ、《ばらの騎士》がきてくれた!」
 マルタンはこの話をしながら、「さすが、ウィーンでしょう。《ばらの騎士》を出すとはねえ。リヒテルのうれしそうな顔が忘れられません」と、遠くに視線を泳がせた。
 マルタンの話は留まるところを知らない。リヒテルは、いつもシンプルで素朴で上質なお料理を好んだという。そして、けっして値段が高いところにはいかず、居心地のいい、ゆったりと食事のできる静かなところが好みだったそうだ。「そのため、私はいつもその土地のおいしいレストランを探し回ったものです」
 マルタンはこういって、「すごく大変だったけど、ほかならぬリヒテルのためですからね」と笑った。
 今日の写真は、インタビュー中のルネ・マルタン。
 彼は「リヒテルからは、本当に多くのことを教えてもらいました。ロック・ダンテロンの方には参加してもらうことができましたが、ひとつ心残りなのは《ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン》で弾いてもらうことができなかったこと」と、残念そうな表情で話す。
「自分がいまこうして音楽の仕事ができるのは、ひとえにリヒテルのおかげです。私の精神的な支えですから」と、感慨深そうに語った。 


 
| 巨匠たちの素顔 | 22:06 | - | -
サンディエゴとキューバの料理本
 友人のTさんはどんどん海外に出かけ、親しくしている音楽家の演奏を聴き、現地のおいしい食事を味わい、さまざまなトラブルにもめげず、旅を楽しんでいる。
 そして、彼女が必ず見つけてきてくれるのが、その土地ならではの料理本。
 今回は、アメリカのサンディエゴにある有名なホテル、コロナドのシェフとパティシエが作っているお料理が満載の本と、キューバのこれまた有名なシェフが作っているお料理の数々が掲載された本を購入してきてくれた。
 これらは英語で書かれ、美しい写真が満載。土地の写真も数多く掲載されていて、いながらにして旅を楽しむことができる。
 もちろん、私はじっくりとそれぞれのお料理をながめ、どれか参考になるものがないか、自分がつくれるものはないかと考えながらページをめくっていくのだが、もっとも参考になるのは、食材の合わせ方と盛り付けである。
 アメリカやキューバのシェフは、ヨーロッパのシェフとはひと味もふた味も異なる食材を組み合わせる。
 しかも、その盛り付けは、ダイナミックかつ色彩感豊か。
 そうそう、もうひとつ、とても興味深いのが、スパイスやハーブ、調味料の使い方である。
 最近、日本では何でも手に入る。どんな珍しい調味料も、デパチカやインターナショナルマーケットに行けば、ずらりと並んでいる。だから調味料では苦労しない。
 こういう本を見ていると、旅心が無性に刺激され、かなり前に行ったサンディエゴを思い出してしまった。
 このときは、パヴァロッティの取材だった。ずいぶん苦労したっけなあ。
 なにしろ、パヴァロッティはインタビュー嫌いで有名だ。それを承知で、私は彼をリハーサル後に追いかけ回すはめになった。
 そのときは「hanako」の取材だった。このときのいきさつを編集長の椎根さんが、フリーになってからhanakoの本にまとめ、私もちょっとだけ出演している。
 お料理の本から次々に思い出が蘇ってきて、感慨深い。
 このパヴァロッティの取材記は、ブログのカテゴリー「終わりよければ…取材奮闘記」の2011年2月24日に綴っている。ご興味のある方は、アクセスしてみてくださいな。
 Tさん、本当にありがとう。
 ゆっくりひとつずつお料理を見て、アーティスト・レシピに生かします。
 今日の写真は、お土産にいただいた2冊の料理本。キューバの方は、活字ではなく、手書きのような文字で書かれている。

| 美味なるダイアリー | 22:47 | - | -
第18回別府アルゲリッチ音楽祭
 毎年、春の風物詩として大分で開催されている「別府アルゲリッチ音楽祭」が、第18回を迎える。
 今年は5月1日から26日の開催日程で、大分県出身の若手演奏家コンサート、アルゲリッチ ショスタコーヴィチを弾く、第1回音楽祭の秘蔵映像を公開するフィルムコンサート、ベスト・オブ・ベストシリーズ、Vol.4 アルゲリッチ&レーピン室内楽コンサート、レーピンによるヴァイオリン・マスタークラス、日本生命presents アルゲリッチ ベートーヴェンを弾く、ピアノと朗読で贈るスペシャルコンサートなどがプログラムに組まれている。
 今日は銀座で記者発表会があり、アルゲリッチ芸術振興財団副理事長で総合プロデューサーの伊藤京子、日本生命保険相互会社執行役員CSR推進部長の山内千鶴(東京公演スポンサー)、大分県企画振興部芸術文化スポーツ局長の土谷晴美の3氏が音楽祭の意義や現況、公演内容、そして大分県の魅力を語った。
 なお、全日程のなかで、5月17日のアルゲリッチがベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番を演奏するコンサートは大分ではなく、東京オペラシティコンサートホールで開催されることになっている。
 記者発表でも大分がおんせん県であることや、上質な水が特徴ゆえ、おいしい食事が供されることなどが紹介されたが、会見後には大分県の郷土料理のレストラン、「坐来大分」に場所を移し、ランチ交流会が行われた。
 海の幸、山の幸などが絶妙の味わいで美味なる郷土料理になっていて、冷麺や肉まん、スイーツまで多種多彩なお料理を味わうことができた。
 この音楽祭では、アルゲリッチは自分の家に戻ったような感覚を抱いているそうだが、温泉、美食、のどかな環境などが彼女をリラックスさせることにひと役買っているのだろう。
 加えて、2015年5月にはアルゲリッチ芸術振興財団の名誉理事、椎木正和氏から尊敬と親愛の証しとして「しいきアルゲリッチハウス」が贈られた。
 ここは杉の木で建設された上質な音響を誇るサロンで、アルゲリッチ専用のピアノ「マルティータ(彼女の幼いころの愛称)」が置かれている。
 音楽祭では、このサロンも使用される予定となっている。
 今日の写真は、ランチ交流会でトークを行う伊藤京子。それから、おいしいお料理の数々。こういう物をいただくと、すぐにでも大分に行きたくなるよね。
 温泉、お料理、そして音楽。もう、究極の癒しを感じるワ〜。ああ、時間に追われる日々から解放されて、心身に休息を与えたいなあ。






 
| 情報・特急便 | 15:43 | - | -
緑果搾り
 エキストラヴァージンオリーブオイルに目のない私は、スペイン、ギリシャ、イタリア、チュニジア、トルコなど、さまざまな土地のオリーブオイルを探し、そのとびっきりのおいしさを堪能している。
 ところが、灯台下暗し、わが国にもとてもおいしいオリーブオイルがあった。
 小豆島の井上誠耕園の「エキストラヴァージンオリーブオイル緑果搾り」である。
 この会社は初代園主がオリーブの苗木を植えてから約70年。現在は三代目が園主を務め、広大な土地にオリーブ畑とみかんなどの果実畑があり、食料品だけではなく、化粧品なども手がけている。
 今回手に入れたのは、数量・期間限定のオリーブオイル。小豆島の園地だけでは生産に限りがあると考え、スペインのコルドバ県で六代続くオリーブ農家、ルケ一家と契約して作られた緑果搾りである。
 このおいしさを何と表現したらいいのだろうか。
 野性的で新鮮で、ちょっと苦みがあり、さわやかでクセになる味わいだ。
 これを白身魚のカルパッチョに振りかけたり、野菜のマリネに使ったり、温野菜や焼き野菜にパラリとかけたりするだけで、もう極上のおいしさ。
 私はこのオリーブオイルを味わっていたら、旅心が刺激され、無性に小豆島に旅をしたくなった。
 この農園は、広大な土地を散策しながらオリーブやかんきつ類の間を歩くことができるという。カフェもあり、商品を購入することができる。
 東京からはちょっと距離があるが、もう心は小豆島に飛び、「アーティスト・レシピ」の材料を探しにいきたくてたまらなくなった。
 よ〜し、絶対に井上誠耕園に行くゾ。オリーブオイルが呼んでいるもんね(笑)。
 もちろん、「アーティスト・レシピ」は、写真からその材料の良しあしが伝わってくるわけではない。でも、私がこだわりの逸品を求めて、それを使ったお料理をすれば、絶対にその熱意は伝わるはずである。
 以前、あるお鍋を求めて、京都の生産者のところまで探しに行ったことがある。
 それは、「アーティスト・レシピ」の本の、エマニュエル・パユのページに登場しているお鍋とおたまである。
 パユにその話をすると、「エーッ、きみってそこまで凝るの。いやあ、感激だなあ、ぼくの料理にそれを使ってくれて。ところで、実際に味見させてくれない?」といって、大笑いしていた。
 というわけで、今度は小豆島である。
 いつ行かれるかわからないけど、近いうちにオリーブに会ってきま〜す。
 今日の写真は、美味なる緑果搾り。たまんないワ、これ…。


 
 
 
 
 
| 美味なるダイアリー | 20:29 | - | -
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2016
 今年も、「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」が近づいてきた。
 昨日は、東京国際フォーラムで記者会見があり、2016年のテーマと内容が発表された。
 今年のテーマは「la nature ナチュール―自然と音楽」。5月3日から5日まで、東京国際フォーラム、日比谷野音(日比谷公園大音楽堂)、大手町、丸の内、有楽町エリアで開催され、出演アーティストは2000人以上、300以上のコンサートが予定されている。東京以外では、新潟、びわ湖、金沢でも開催される。
 いつの時代も、作曲家は自然から多くのインスピレーションを得て、数々の傑作を生み出したとのコンセプトから、「四季」「自然万物」「風景」「動物」「スペシャリティ」というカテゴリーに分けられて作品がプログラミングされている。
 ヴィヴァルディの「四季」、ベートーヴェンの「田園」、スメタナの「モルダウ」、ブラームスの「雨の歌」、メシアンの「鳥のカタログ」、サン=サーンスの「白鳥」、J.シュトラウス2世の「美しく青きドナウ」、シューベルトの「野ばら」、ヘンデルの「水上の音楽」、ドビュッシーの「月の光」などの有名な作品から、マックス・リヒターのリコンポーズによるヴィヴァルディの「四季」というナントで評判の高かった作品まで、多種多彩。
 出演アーティストは、これまでおなじみとなったオーケストラや器楽奏者、歌手に加え、アンサンブル・ジャック・モデルン、レ・パラダン、ピエール=ロラン・エマール、小川典子ら実力派が参加。和太鼓の林英哲、尺八の三橋貴風、アフリカ・パーカッションのドラマーズ・オブ・ブルンジというメンバーも加わり、個性的な響きを奏でる。
 プログラムを俯瞰すると、ふだんはなかなか聴くことができない珍しい作品が多く組まれ、それらを世界各地から集結するアーティストがじっくりと聴かせるわけだが、きっと各々の会場で新たな発見が生まれるに違いない。
 記者会見では、アーティスティック・ディレクターのルネ・マルタンが、それぞれの選曲や演奏家を紹介し、2月初旬にナントで行われた音楽祭の様子が映像で流された。
 今週末には、ルネ・マルタンのインタビューが控えている。そこでは、より詳しくプログラムについて聞くつもりだ。
 今日の写真は、今年のテーマビジュアル。美術家・日本画家の四宮義俊の作である。




 


 
| 情報・特急便 | 23:36 | - | -
小山実稚恵
 小山実稚恵のインタビューは、自宅で行われることが多い。
 以前から、彼女が飼っている猫と仲良くしていたのだが、いや、仲良くしてもらっていたといった方がいいかもしれないが、その3代目に会うことができた。
 名前はララ。クララ・ハスキルやクララ・シューマンが名前の素になっているとか。
 アメリカンショートヘアの4歳の雌。目が大きく、とても人なつこくて美人である。
 私は動物の写真を撮るのが好きなのだが、猫も犬もじっとしていてくれないし、こちらが写真を撮ろうとすると、プイッと横を向いてしまうことが多い。
 ところが、ララちゃんは、最初はあちこち向いて慣れない様子だったが、私が話しかけながら撮り続け、「ハーイ、ララちゃん、目線ちょうだいね」といったら、ピッとこっちを向いてポーズをとってくれた。
 その写真を見て、小山実稚恵は「エーッ、すご〜い。しっかりカメラ目線」といって大笑いし、「この子、伊熊さんのブログに載るの?」と大騒ぎ。
 そうなんです、ララちゃんは今日のブログに出演です。
 この後、インタビューに入り、彼女が3月末から4月にかけてトヨタ・マスター・プレイヤーズ,ウィーンとの共演により、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」を演奏する話を聞いた。
 このインタビューは次号の「ぶらあぼ」に掲載されることになっている。
 話は、「皇帝」との出会い、この名手ぞろいのオーケストラのこと、ベートーヴェンにまつわる思い出、さらに近況から昔話まで広がり、時間をオーバーして話し込んでしまった。
 その間、ララちゃんは取材陣のまわりをぐるぐる散歩していて、みんなになでられていた。
 毛並みがとてもよく、人見知りはまったくせず、愛らしくておとなしい。
 昔の猫の思い出話も飛び出し、私も以前の猫ちゃんたちを思い出した。ルービンとマルコだ。
 やはり猫好き同志というのは、話が弾むのだろうか。小山実稚恵と猫の話をしていると、時間がたつのを忘れる。久しぶりにやわらかい猫の毛を触り、いつまでもなでていたくなった。
「伊熊さん、やっぱり猫好きなのね。ララが喜んでいるもの」
 こういわれ、去りがたくなったが、仕事できているんだよねと考え直し、うしろ髪を引かれる思いでララと別れた。
 今日の写真は、目線バッチリのララちゃんと、インタビュー中の小山さん。猫好きの人が、「あらあ、かわいい」と、ララちゃんを見て目を細める姿が想像できる。
 なんだか、今日はインタビューより猫話がメインになってしまった(笑)。



| 親しき友との語らい | 00:01 | - | -
佐渡裕
 2015年秋、指揮者の佐渡裕が108年の歴史と伝統を誇るウィーンのトーンキュンストラー管弦楽団の音楽監督に就任した。
 先日、その彼にインタビューする機会をもち、トーンキュンストラー管との出会い、音楽監督を引き受けた経緯、ウィーン楽友協会「黄金のホール」での演奏、さらに2016年5月の音楽監督就任記念日本ツアー、3月リリースのR.シュトラウス「英雄の生涯/ばらの騎士組曲」の録音(ナクソス)などについて、実に多くのことを聞くことができた。
 このインタビューは、HPの「音楽を語ろうよ」で紹介する予定である。
 佐渡裕には何度かインタビューを行っているが、彼は常に熱血漢。演奏と同様、音楽に関する話はエネルギッシュで前向きで、非常に雄弁である。
 とりわけ、今回は同オーケストラに就任してからそう時間が経っていない時期の初レコーディングとあって、さまざまな面で苦労があったという。
「でも、みんなで苦難を乗り越えると、達成感と結束力が生まれるんだよね」
 このCDは、3月23日に日本発売予定で、世界は4月2日リリースとなる。
 そしてその2カ月後、5月21日(ミューザ川崎シンフォニーホール)、22日(NHKホール)、23日(サントリーホール)というコンサート・スケジュールが組まれている。
 地方公演も多数あり、5月13日から29日まで、全14公演が予定されている。
 なお、今回のツアーにはふたりのソリストが参加、ヴァイオリンのレイ・チェンとピアノのアリス=紗良・オットである。
「アジアの血をもつふたりに参加してもらいます。ぼくとは、何度も共演して、とても親しいので」とのこと。
 さらにアジア人である佐渡裕がウィーンの名門オーケストラのシェフに就任したことで、今回のツアーは日本とオーストリアの架け橋的な意味合いをもっていると語る。それを考えて、ソリストを選んだと。
 このインタビューの翌日には、もうウィーンに戻るといっていた佐渡裕。超多忙な彼は、「今日はちょっとからだのことを考えて、コーヒーではなくホットミルクにしようかな」といい、熱々のミルクを飲んでいた。
 今日の写真は、インタビュー中のマエストロ。内容のいっぱい詰まったインタビュー記事、どうぞお楽しみに!



 
| 情報・特急便 | 17:20 | - | -
樫本大進&コンスタンチン・リフシッツ
 昨夜は、東京オペラシティコンサートホールに樫本大進とコンスタンチン・リフシッツのデュオ・リサイタルを聴きにいった。
 ふたりは2010年12月、出会いから10数年を経て念願のベートーヴェン・チクルスを開始し、全曲録音も行っている(ワーナー)。
 そのときのベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全曲演奏は、いまだ心に焼き付いているほど両者の息がピタリと合い、しかも即興性に満ちたものだったが、今回は第7番が冒頭に置かれた。
 あのチクルスから数年が経過し、大進はベルリン・フィルのコンサートマスターとして、またソリストとして、日本での音楽祭の主催者としてさらなる進化を遂げ、コンスタンチンはロンドンの王立音楽アカデミーのフェロー(研究職)、ルツェルン音楽大学の教授を務めながらソリストとしてさらに深化している。
 私は、演奏家というのはステージに登場したときからその音楽が始まっていると思うのだが、昨日の大進はドスドスと力強い足音を立てて現れた。一方、コンスタンチンは、ほとんど足音がせず、静かに流れるように登場する。
 ところが、デュオが始まると、コンスタンチンのピアノはベートーヴェンの作品の奥深く迫りながら、エネルギッシュで、感情をリアルに表現するような存在感のあるピアノを披露。
 一方、大進のヴァイオリンは、あくまでも繊細でのびやかで歌心たっぷり。コンスタンチンの打鍵の深いがっしりしたピアノにおおらかな歌を乗せていく。
 このふたりの個性の違い、音楽のコントラストが刺激的なベートーヴェンを生み出した。
 とりわけ、終楽章のフィナーレに突っ走っていくふたつの楽器の濃密な音の対話が、両者の共演の歴史を物語っているようだった。
 次いで、ブラームスのヴァイオリン・ソナタ第2番が演奏されたが、こちらは作曲者の当時の心情を映し出すような、恋心と自然の美しさが横溢。これを聴き、次はこのふたりのブラームス・チクルスを聴きたくなった。
 後半は、大進が「コンスタンチンの狂気を表すような天才的なピアノと合わせるのが楽しみ」と語っていたプロコフィエフのヴァイオリン・ソナタ第1番が演奏された。
 まさに、ロシア・ピアニズムの神髄を表現するコンスタンチンのアグレッシブで壮大なピアノと、大進の瞑想的で幻想性にあふれた美音が和し、プロコフィエフがスターリン政権下で苦労して作り上げた名曲が朗々とホール全体に響き渡った。
 このソナタは、ダヴィド・オイストラフとレフ・オボーリンという、歴史に名を残すロシアの名手によって初演されている。初演から70年、その間にどれだけのヴァイオリニストとピアニストによって演奏されてきたのだろう。
 作品のもつ永劫の歴史に思いを馳せながら聴いた。
 終演後、楽屋でふたりに会うと、いつもながらの汗びっしょりの笑顔で迎えてくれた。
 大きな作品を演奏した後は、本当にいい表情をしている。
 私が「大進の足音がすごくて、ああ、貫禄出たなあと思ったわよ」というと、ギャハーっと笑い、「演奏も貫禄が出るといいんだけどね」といっていた。
 今日の写真は、安堵の表情を浮かべるふたり。23日には、紀尾井ホールでコンスタンチンのリサイタルが予定されている。
 ラフマニノフの「24の前奏曲(全曲)」というプログラムだ。ラフマニノフの傑作にどう対峙するか、興味は尽きない。




 
 
 
 
| 親しき友との語らい | 11:15 | - | -
だいこんの葉は栄養たっぷり
 いまの時期、だいこんがおいしい。
 よく八百屋さんでだいこんを買うと、「葉っぱは切りますか?」と聞かれる。もって帰るのに大きすぎて、捨てる人が多いのだろう。
 とんでもない話ですゾ。
 だいこんの葉は栄養たっぷりで、血行を促し、からだを温める効果がある。この時期、冷え性の人にはぜひ食べてもらいたい食材である。
 だいこんの葉は緑黄色野菜に分類され、βカロテン、ビタミンC、ビタミンK、葉酸などのビタミンと、カリウム、カルシウムなどのミネラルが豊富だ。
 私が通っている自然食料品店のだいこんは、だいこんと同じくらいの長さと大きさをもつ葉がついている。
 この葉付きだいこんを手に入れたら、まず作るのは「だいこんの葉とじゃこの炒め煮」である。
 以前、親しい友人のTさんから京都のおじゃこをいただいたときに、「セロリとじゃこの炒め煮」を紹介したが、このセロリをだいこんの葉に変えただけ。
 葉をざくざくと切ってごま油で炒め、じゃこを加えて酒としょうゆで調味するというシンプルなお惣菜。
 これが本当に“うまい”。お酒のおつまみにも、炊き立ての白いごはんにもピッタリ。
 みんなに捨てられてしまう運命のだいこんの葉。実はすぐれもので、栄養の宝庫。利用しなくっちゃ。
 一度、このおいしさを味わったら、次からは絶対に葉付きだいこんを探すと思いますよ(笑)。
 今日の写真は、出来上がったばかりの「だいこんの葉とじゃこの炒め煮」。トッピングに、炒りごまをパラリとふりかけるのをお忘れなく〜。


 
| 美味なるダイアリー | 22:15 | - | -
ニコラス・マッカーシー
 今日は、すばらしく心に残ることばを聞いた。
「Anything is possible」
 すべては可能だ、不可能はない、という意味だろうか。
 1989年ロンドン郊外に生まれた「左手のピアニスト」、ニコラス・マッカーシーのモットーとすることばである。
 マッカーシーは2015年9月、「ソロ〜左手のためのピアノ編曲集」(ワーナー)でデビューした。このアルバムは、マッカーシーが夢中になったというルドヴィコ・エウナウディの曲からスタート。有名なオペラのアリアが続き、ラフマニノフの「ヴォカリーズ」、リストの「愛の夢」、ショパンの「別れの曲」や練習曲などが収録されている。
 彼は先天的に右腕がひじの下の長さまでしかなかったが、子どものころから電子ピアノで遊び、やがて苦労の末にロンドンのギルドホール音楽演劇学校、王立音楽大学に進み、ピアニストとして活動するようになる。
 1月20日には日本盤がリリースされ、今日はブルーローズ(サントリー小ホール)でコンベンションが行われた。
 新譜のなかからショパンやリストの作品などが演奏されたが、左手による演奏はとてもエネルギッシュでパッションにあふれ、ひたむきさが感じられた。
 彼はステージ上のインタビューで、ピアノを始めたころから現在にいたるまでの話をしたが、苦労したこととか、辛かったことなどはまったく口にせず、「いま、ここで演奏できることがとてもうれしい」と語った。
 その話のなかで、上記のことばが出てきたわけだが、障害をもって生まれてきたものの両親がとても強い人間ゆえ、自分もまっすぐに前を向いて歩み、何でも可能にしてきたという。
 マッカーシーは、「ぼくがピアノを弾くのは、聴いてくれる人とコミュニケーションを取りたいから」と話した。そして、「音楽にはその力がある」と信じているようだった。
 まさに、音楽の力に触れたひとときとなった。
 子どものころ、「ニコラス、自転車には乗れないねえ」と友だちにいわれると、必死で練習して自転車に乗れるようになったとか。「コンサート・ピアニストにはなれないかも」といわれると、絶対にコンサート・ピアニストになると心に誓い、ものすごい練習を自分に課したという。
 これまで3つのうれしいことがあり、ひとつは王立音楽大学の130年の歴史のなかで、初めて左手だけでピアノ科を卒業した学生となったこと。
 ふたつ目は、2012年にロンドンで行われたパラリンピックの閉会式で、約8万人の観客の前でコールドプレイと一緒に演奏したこと。
 そして3つ目は、「今日、こうして日本のみなさんの前で初めて演奏できたこと」と語った。なんと感動的なのだろう。このことばを聞いて、またもや感極まってしまった。
 コンベンション終了後に、彼とじかに話をしたのだが、私が今日のブログに登場してもらうと話したら、人なつこい笑顔で「ウワーッ、うれしい。ありがとう」といっていた。
 今日は、いろんな音楽事務所の人たちが聴きにきていた。ぜひ、近いうちに来日公演が実現することを願う。
 今日の写真は、演奏後のニコラス。この人の顔、だれか俳優に似ているんだけど、思い出せないなあ。だれでしょう?



 
 
| アーティスト・クローズアップ | 23:24 | - | -
ダニエル・バレンボイム指揮シュターツカペレ・ベルリン
 今日はダニエル・バレンボイム指揮シュターツカペレ・ベルリンの来日公演が、サントリーホールで幕を開けた(2月9日〜20日サントリーホール、18日ミューザ川崎シンフォニーホール)。
 今回のツアーはブルックナー・チクルスが組まれ、交響曲第1番から第9番までが順番に演奏される。
 今日はまず第1番が演奏されたが、この作品はなかなかナマで聴くことはできず、貴重な機会となった。
 ブルックナーは作品の改訂を施すことが多く、版も複数存在することで知られるが、今日の第1番は若きブルックナーが生み出したリンツ稿が用いられた。
 シュターツカペレ・ベルリンはベルリン国立歌劇場付属のオーケストラで、450年近い歴史を有する伝統に根差したオーケストラ。弦楽器群がとても豊かな響きを備え、管楽器もまろやかで、しかも力強い。
 バレンボイムは1992年からベルリン国立歌劇場の音楽総監督を務め、2000年には終身首席指揮者に任命されている。
 今回のプログラムは、バレンボイムの弾き振りによるモーツァルトのピアノ協奏曲がブルックナーの前に演奏される日が多く、今夜はピアノ協奏曲第27番が組まれていた。
 バレンボイムは、最近ピアノを弾くことが多い。一昨年ベルリンでインタビューしたときにも、「いま、とてもピアノが弾きたいと思っている」と話していた。最近では、同郷のアルゲリッチとも共演しているほどだ。
 今日のピアノの弾き振りも、実に自然で嬉々とした演奏。ピアノと指揮、この両面がたっぷりと披露できる今回のプログラムは、バレンボイム自身がいまの心身の充実を存分に発揮できるものとして、心から楽しんでいるのではないだろうか。
 なお、2月23日の金沢、24日の広島、25日福岡公演は、バレンボイム、ハイティンクがその才能を認めている若き俊英、ダーヴィト・アフカムが指揮を担当することになっている。
  
| クラシックを愛す | 00:00 | - | -
浜松国際ピアノアカデミー 第20回開催記念コンサート
「世界に通用するコンサートピアニスト」の育成を目指し、中村紘子が音楽監督を務め、浜松市が1996年にスタートさせた浜松国際ピアノアカデミー。
 海外から著名な教授を招き、公開レッスンやレクチャーコンサートを行い、受講生が国際コンクールの環境を体験できるようにと、さまざまなカリキュラムが組まれている。
 そのアカデミーが節目の第20回を迎え、この3月11日から20日までアクトシティ浜松で開催される。
 今日は、「アカデミー修了生による饗演」と題したコンサートがサントリーホールで開催され、チョ・ソンジン、上原彩子、河村尚子がモーツァルト、ラフマニノフ、ショパンなどのソロと2台ピアノの演奏を行った。
 それぞれ個性を発揮した演奏だったが、会場がもっとも湧いたのが、最後に3人で演奏されたラフマニノフの「6手のためのワルツとロマンス」。1台のピアノを前に椅子が3つ用意され、一番下を上原彩子、真ん中を河村尚子、一番上をチョ・ソンジンが担当。和気あいあいとした雰囲気の演奏で、ラフマニノフの哀愁と情感にあふれた旋律を6手が見事な融合を見せながら奏でていった。
 今日は、冒頭に中村紘子の挨拶があり、病気でコンサート活動を休止している彼女が、久しぶりに元気な姿を見せた。
 来月のアカデミーには、アイナル・ステーン=ノックレベルグ、ヤン・イラーチェク・フォン・アルニン、ピオトル・パレチニが教授陣として名を連ねている。
 今日の写真はコンサートのプログラム。2月6日の浜松アクトシティで行われたコンサートには、牛田智大とチョ・ソンジンが出演した。




 

 
| クラシックを愛す | 23:39 | - | -
白腐乳
 先日、Nanaのインタビューをした後、ふと以前台湾で食べた「青菜の腐乳(フウルウ)炒め」の味を思い出した。
 台湾の旅をしてから日本で材料を探し、なんとかそのときの味を再現したいと試み、何度か失敗を重ねながらようやく自分の納得いく味を見出した。
 このお料理には、本場の腐乳が欠かせない。
 私は白腐乳を使っている。
 この調味料は、豆腐を麹に漬け、塩水のなかで発酵させたもの。中国料理ではよく用いられている。
 ただし、ふたを開けると猛烈な発酵臭がするため、最初はこれがおいしい炒め物になるとは思えないほどだ。
 しかし、慣れるとクセになる味。中国では、炒め物や煮込み料理、お粥にも入れるという。
 私がよく作るのは、チンゲンツァイと数種のきのこを入れた炒め物。
 まず、中華鍋にごま油大さじ2をひき、にんにく2片のみじん切りを焦がさないように炒めて香りを立たせ、ここに白腐乳を2個入れてさっとくずす。
 食べやすく切ったチンゲンツァイ3把の茎から入れ、しばらく炒めてから葉を加え、しいたけやえのきやまいたけなどきのこを適宜加え、ざっくりと炒める。
 火を止めてから最後にしょうゆをひとたらしして、出来上がり。
 これは、最初に食べた人は「えっ、なにこの風味は?」という顔をするが、やがて調味料を知ると、必ず「自分でも作ってみる」という。
 それほど美味なる味わいなのである。
 今日の写真は、私の愛用している白腐乳の瓶詰め。中国料理は調味料が無限にあり、輸入品の棚を探していると、時間を忘れる。
 ぜひ、挑戦してみてくださいな。でも、すごい匂いだから、ダメな人も多いかも。まず、中華料理店で食べてみてからの方がいいかもね(笑)。


 
| 美味なるダイアリー | 22:18 | - | -
Nana
 チェロ界に彗星のごとく、若きスターが登場した。
 台湾出身の15歳、Nana(欧陽娜娜)である。
 彼女は6歳でチェロを始め、10歳のときに18都市で40以上のコンサートを成功させた。そして12歳で台湾のチェロ・コンテストで第1位を獲得し、リサイタルも行っている。
 その後、13歳で全額奨学金を取得してカーティス音楽院に留学。現在は、チェリスト、女優のふたつを両立させながら活動を展開している。
 昨日は、Hakuju Hallでコンベンションが行われ、デビュー・アルバム「Nana 15」(4月6日発売 ユニバーサル)のなかから数曲が演奏された。
 本人はとても緊張していたそうで、トークでは「これから毎年1枚ずつアルバムが出せればうれしい」と語った。
 伯母にあたる欧陽菲菲(オーヤン・フィーフィー)も、デビューCDをとても喜んでくれたそうだ。
 その欧陽菲菲のヒット曲「「ラヴ・イズ・オーヴァー」を演奏したものが、日本盤ではボーナス・トラックとして収録されている。
 Nanaは、この曲を「男女の愛情についてうたわれた曲だけど、チェロの演奏では歌詞がないから難しい。私は初恋みたいな感じで弾いている」と話した。
 CDの選曲は、メンデルスゾーンの「無言歌」やエルガーの「愛の挨拶」、ラフマニノフの「ヴォカリーズ」、シューベルトの「アヴェ・マリア」などの人気曲がずらりと勢ぞろい。のびやかな弦の響きを聴かせている。
 そして今日は、彼女にインタビューをするために宿泊先のホテルに出向いた。
 15歳とは思えぬほどしっかりした考えをもち、質問に対してことばを尽くして語り、ひたむきさが感じられる。
 とても素直な性格で、キュートな顔立ちも相まって、会った人みんなを引き付けてしまう強烈な魅力を備えている。
 このインタビューは、「CDジャーナル」に書く予定になっている。いろんな話を幅広く聞くことができたので、できるだけ詳しく紹介したいと思う。
 今日の写真は、かわいい笑顔のNana。チェロを弾くときは真剣そのもののクールな表情だが(当然ですよね)、素顔はにこやかで人なつこい。
 中国のさまざまなソーシャル・メディアを合計したフォロワーは550万人に上るというのも、うなずける。


 
 
| アーティスト・クローズアップ | 22:24 | - | -
第21回宮崎国際音楽祭
 昨日は、銀座の三笠会館で第21回宮崎国際音楽祭の記者懇談会が行われた。
 今年は4月29日から5月15日までの17日間に、メインプログラム、スペシャルプログラム、教育プログラムの14公演が予定されている。他に関連コンサート・イベントも行われる。
 出演者は音楽監督の徳永二男、ピンカス・ズーカーマン、ウラディーミル・アシュケナージ、辻井伸行、三浦文彰、福井敬をはじめとする実力派が勢ぞろい。
 今年から始まるシリーズ「Oh!My!クラシック」の第1回目は、小泉純一郎氏が登場。彼の音楽談義で進めるトーク・コンサートとなっている(4月30日)。
 小泉氏はクラシックに精通し、朝起きたときから夜寝るまでずっとクラシックを聴き続けているという。
 ロンドン大学留学時代にイギリス国歌をパガニーニが編曲したヴァイオリンの無伴奏作品に触れ、大きな感動を得たそうで、今回はそれを徳永二男が演奏する。
「この曲、ものすごく難易度が高いんですよ。まだいまは完璧に弾けません。本番までになんとか弾き込みます」
 記者会見の席上、徳永二男はこういって苦笑していた。
 なんでも、小泉氏は中・高校時代にヴァイオリンを習っていて、最初に弾いた曲はJ.S.バッハの協奏曲第2番だったのだという。
 このシリーズは、今回から新たに総監督を務めることになった佐藤寿美氏のアイデアによるもの。クラシックを仕事としている人ではなく、異なった世界で活躍するクラシック好きの人が毎年自分の音楽とのつきあいを語るというもので、その話のなかに出てくる曲を音楽家たちが演奏していくというスタイルだ。
 私もこのシリーズはとても興味深い。
 以前、ヤマハ関連の新聞で、音楽家以外の人にインタビューをして、その人とクラシックとのつきあいを話してもらうというページを担当していたことがあるが、それを思い出してしまった。
 そのときは、俳優、作家、建築家、画家など、さまざまなジャンルで仕事をしている人に話を聞いたが、いまでも思い出すほど、それぞれの人の話はおもしろかった。
 この音楽祭のシリーズも、きっと人気が出るに違いない。
 それから、なんといっても演奏面では、辻井伸行が再びアシュケナージと共演し、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を演奏するのが待ち遠しい(5月7日)。
 今年もぜひ、取材に訪れたいと思う。
 今日の写真は、記者懇談会で話す徳永二男音楽監督(右)、佐藤寿美総監督(中)。




 
| 情報・特急便 | 22:40 | - | -
諏訪内晶子
「音楽家はタフでないと続けられない」ということばは、よくアーティストから聞く。
 昨日、諏訪内晶子にインタビューで会ったとき、つくづくこのことを痛感した。
 彼女は先週パリで新譜の録音を行い、土日でその編集作業をし、今週の月曜日に飛行機に乗って日本に帰国、その翌日、つまり昨日インタビューを受けたのである。
「今回もまた、いろんなことがあってね。すごく大変だったけど、出来上がった録音は、納得のいく音楽になっていたわ」
 新譜は「フランク&R.シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ他」で、共演のピアニストはエンリコ・バーチェ。
 そのバーチェとの録音の様子が非常におもしろく、あまりにも雄弁なバーチェの話を聞き続け、とても大変だったそうだ。
 彼は録音中まったく食べない、飲まない、延々と音楽の話を続け、卓越したピアノを弾き続ける。
「バーチェさんのR.シュトラウスはすばらしいの。以前、彼の演奏を聴いて、シュトラウスを録音するんだったら、絶対彼と組みたいと思ったわけ。でも、おしゃべりがすごく長くてねえ…」
 もう済んだことだから、と笑いながら話していたが、おしゃべりはかなり長かったようだ。
 だが、私たちは出来上がった演奏を聴くわけだから、その裏にどんな苦労があったか、どんなドラマがあったのかは、知る由もない 
 しかし、諏訪内晶子は、そんなハードなレコーディングを終えてすぐに帰国し、時差ボケも疲れもまったく見せず、インタビューの間中にこやかな笑顔で話し続ける。
 う〜ん、やはり音楽家はタフでないと続けられないのねえ。
 このインタビューは、「CDジャーナル」に書く予定になっている。
 こうした取材をいくつか受け、彼女は今週だけ日本にいて、すぐにまたパリへと発つ予定だ。
 この新譜は4月6日リリース予定(ユニバーサル)。4月にはエンリコ・バーチェとの日本ツアーが組まれていてこのフランクとグリーグのソナタ第3番を演奏。5月にはテミルカーノフ指揮サンクトペテルブルク交響楽団とチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を、9月にはストラディヴァリウス・コンサートに出演、11月にはブロムシュテット指揮バンベルク交響楽団との共演でベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を演奏する予定である。
 今日の写真は、インタビュー中のワンショット。本当に、まったく疲れが見られない。すごいよね。
 


| 親しき友との語らい | 23:16 | - | -
マティアス・ゲルネ
 これが「音楽の力」だろうか。
 先週から仕事上のトラブルが山積みで、心労が重なり、ストレスだらけの辛い日々だったが、今日はリサイタルを聴き、その重く暗い気分が一気に洗い流された気がした。
 バリトン好き、ドイツ・リート好き、シューマン好きの私は、紀尾井ホールで行われた今夜のマティアス・ゲルネのオール・シューマン・プログラムをとても楽しみにしていた。
 前半が歌曲集「女の愛と生涯」と「詩人の恋」。これらを休みなく、一気に聴かせた。後半は「リーダークライス」。
 彼は2009年に初めて日本で「女の愛と生涯」をプログラムに入れた。ピアノはピエール=ロラン・エマールである。
 これは大阪で行われたものだったが、今回は東京で聴くことができた。
 ゲルネのシューマンはいずれの作品も変幻自在な歌唱力、解釈、表現力に富み、完璧なる歌詞の発音がその根底に横たわり、シューマンの美しく情感あふれる旋律に自然な形で詩を乗せていく。
 ひとつひとつの歌が物語を描き出し、シャミッソーとハイネの歌詞が聴き手の心の奥にゆったりと浸透してくるように紡がれる。
 ああ、なんと幸せな時間なのだろうか。
 そして最後にアンコールとして「献呈」がうたわれた。
 これはいつも書いているように、私は最晩年のヘルマン・プライの歌を思い出し、涙がこぼれそうになる曲なのである。
 今日もプライの姿が浮かんできて、つい目を閉じて思い出に浸ってしまった。
 終演後、以前の来日時にインタビューしたときのお礼を述べようと楽屋を訪れると、「やあ、来てくれたんだねえ。ありがとう」といわれ、ガシッとハグされてしまった。いやあ、堂々たる体躯でデ、デカイッ(笑)。
 今日の写真は名コンビのピアニスト、アレクサンダー・シュマルツ(左)と。このふたり、ステージに登場するだけで、まず体格で圧倒してしまう感じ…。演奏は、実に繊細で抒情的なのにね。


 
 
| クラシックを愛す | 22:32 | - | -
新たなレシピ
 今日は、HPのアーティストレシピの更新を行った。
 イダ・ヘンデルの海鮮丼である。ぜひ、見てくださいね。
 これは、新鮮な海の幸が手に入ったら、いかやほたてやあじでもOK。季節のお魚を利用して、いくらでもバリエーションが広がる。
 でも、赤シソ酢だけは、赤シソが出回るシーズンに作っておかなくてはならない。
 この赤シソ酢は私の大好物で、一度ハマルと、毎年作りたくなる代物。栄養価も高いし、ぜひお薦めです。
 HPのリニューアル後、もっとも関心の高いのが、このアーティストレシピ。本当は他の音楽のコンテンツがメインで、アーティストレシピはお遊びのコーナーのはずだけど、みんな食べることに興味があるのね。
 これからますます充実させていきますから、ぜひ見てくださいな。そして、時間があったら作ってみて。何度か作るうちに、自分の味になっていきますから。
 
| 美味なるダイアリー | 22:48 | - | -
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