Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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山椒の花
 松本に住む友人は、いつも季節の香り豊かな山の幸を送ってくれるが、近ごろ感動したのは山椒の花をさっと煮た物だった。
 山椒の花を昆布とおしょうゆとだしで煮、瓶詰めにして届けてくれた。
 これは薄味のとても香りのいい煮物で、煮物というよりは和風ピクルスのような雰囲気を醸し出している。
 おそばやうどんに添えてもいいし、焼き魚の横に置いてもさまになる。
 山椒が大好きな私は、これにすっかりハマッテしまった。
 友人のまねをしてみようと、山椒の小さな苗木を買って、鉢植えにしてしまったほどだ。
 こういう芳香を放つ和風のハーブがあると、レシピがいろいろ浮かんでくる。
 原稿書きの合間や、資料整理に疲れたときは、レシピを考えるのが一番の特効薬。この山椒の花は、私の脳を活性化させ、癒し、元気を与えてくれた。
 小さな花なのに、なんという大きな力だろうか。
 今日の写真は、友人が丹精込めて作ってくれた山椒の花の煮物。美しいよねえ。見ているだけで、ホント気分が和らぎます。

| 美味なるダイアリー | 23:32 | - | -
フランチェスコ・トリスターノ
 ピアニストのフランチェスコ・トリスターノは、超のつく親日家である。
 初来日のときからディープな日本を体験し、すっかり日本びいきになった。驚いたのは、武蔵小山の銭湯にいったという話。
 ちょっと私の口からはいえないが、銭湯に関してとてもユニークな発言をたくさんしていた。
 彼のモットーは、演奏を楽しむこと。ただひたすら部屋にこもって練習するのではなく、外に飛び出していろんな人とコラボレーションするのが好きだという。
「ぼくがピアノを弾くのは、指が求めているから。さまざまな語学を学んでいるのは、人々とコミュニケーションしたいから。よく音と音の間(ま)が絶妙だといわれてうれしいと感じているけど、これは休符も音楽だと思っているから。ぼくは内声に深く入り込んでいく音楽が好きなんだ。表面的な演奏ではなく、味わい深い音楽が表現できるピアニストになりたい。それが聴いてくれる人たちひとりひとりの心のなかに沁み込んでいくと信じているから」
 そんなフランチェスコのアーティストレシピを考えてみた。
 今日のアップ記事、ぜひ見てくださいね。
| 情報・特急便 | 22:18 | - | -
カラヴァッジョ展
 3月1日から6月12日まで、上野の国立西洋美術館で開催されているカラヴァッジョ展。
 いこういこうと思っていたが、なかなか時間がとれず、ようやく足を運ぶことができた。
 今回は代表作が複数展示されているが、なかでも大きな話題となっているのは、「法悦のマグダラのマリア」の世界初公開。すばらしい作品で、近くで見ると、ものすごくリアリティに富んでいる。
 ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ(1571〜1610)は、イタリアを代表する画家で真の天才と称されるが、数奇な運命をたどり、殺人を犯したために各地を転々とし、38歳で非業の死を遂げた。
 そのカラヴァッジョが、死の直前まで手放さなかった作品が「法悦のマグダラのマリア」だといわれている。
 悔悛の表情を浮かべるマリアの頬には涙の粒が見られるが、その描き方のすばらしさに、呆然と見入ってしまう。
 ほかにも、「エマオの晩餐」「メドゥーサ」「バッカス」「トカゲに噛まれた少年」「ナルキッソス」「エッケ・ホモ」「女占い師」など、カラヴァッジョの天才性を示す作品が多数見られ、時間を忘れる。
 実は、私は昔からカラヴァッジョに魅せられ、多数の書物を読破し、海外でもいくつかカラヴァッジョの作品と出会っている。
 とりわけ印象深かったのは、エルミタージュ美術館の「リュートを弾く若者」。カラヴァッジョは肌の描き方に特徴があるといわれるが、この絵も特有の肌の輝きを放っていた。
 ちなみに、エルミタージュでは、レンブラントの「放蕩息子の帰還」も強い印象を受けた。
 本当は、カラヴァッジョが逃避行したマルタのヴァレッタにあるサン・ジョヴァンニ大聖堂の「洗礼者ヨハネの斬首」を見にいきたいのだが、マルタはやはり遠すぎて、いけそうもない。
 一生に一度はいってみたい、そんなあこがれの島なのだが…。
 やはり、カラヴァッジョの絵は、圧倒的な存在感と説得力と強靭なエネルギーに満ちていた。
 今日の写真は、美術館の前にあるカラヴァッジョ展の看板。もう展示も終わりに近いため非常に混雑しているが、夜8時まで開いている日を選べば、比較的ゆっくり鑑賞できる。

| 情報・特急便 | 22:13 | - | -
たどりつく力 フジコ・ヘミング
 年末年始の休暇を返上して一気に書き上げた単行本が、今日から書店に並ぶことになった。

フジコ・ヘミング
「たどりつく力」
幻冬舎
定価(本体1100円+税)

運命の扉は
重いほど中が明るい

今、あなたに伝えたいこと

音を失ったピアニスト、
喜びと幸せの種をまく

第1章 運命の重い扉を開く
第2章 自分らしいピアノ、自分らしい生き方
第3章 魂は不滅だと音楽は教えてくれた
第4章 ピアノの奥深い楽しみ、そして魔力

 こうして出来上がって書店に並ぶと、本はひとり歩きを始める。
 いまは、プロモーション用の新聞や雑誌の記事を頼まれて書いたり、その他、本に関してのさまざまな仕事がある。
 ただし、もう本は出版されたのだから、ひと区切りだ。
 ひとりでも多くの人が読んでくれ、フジコさんの音楽を聴きたいと思ってくれたら、これに勝る喜びはない。
 今日の写真は、本の表紙。バッグに入る小さなサイズなので、持ち歩きも簡単である。でも、5万字以上はあるんですよ、ビックリでしょう(笑)。


| 終わりよければ…取材奮闘記 | 13:44 | - | -
資料の整理
 CDのライナーノーツ、来日アーティストのプログラム原稿、WEBの連載記事などの締め切りをこなしていると、あっというまに一日が過ぎてしまう。
 でも、いま私の仕事部屋には、次なる単行本の資料が山と積まれていて、それをにらみながら原稿を片付けているところだ。
 さて、明日からは、資料の整理を徹底的に行わなければならない。
 ひとつずつ、そのアーティストの新聞や雑誌の掲載記事を読み、必要な物に付箋を貼り、熟読するものを選び、選択していくわけである。
 これが非常に長い時間を要する。
 ただし、これをきちんと行わないと、単行本は書けない。今回の本は約10万字である。う〜ん、考え出すと、頭が痛くなる。
 どういう章立てにするか、最初をどんな形で始めるか、何をメインに据えるか、どういうコンセプトでいくか、クライマックスをどこにもっていくか、最後はどういう形で締めくくるか。考えることは山ほどある。
 これをこの週末に集中してやっておかないと、来週の月曜日にはまた次の単行本の打ち合わせが待っている。
 いやはや、なんでこう重なるんでしょうね。4冊の単行本の依頼のうち、どうしても時間がないため、1冊は無理、とお断りした。
 それでも、今年は3冊だ。なんという年だろうか。1年でもずれてくれればいいのに…。
 こうしてブチブチいっているうちに、資料の1枚でも読めばいいのにね。なかなかパッパと切り替えられないのが現実じゃ。
 さて、締め切りはすべて終わったし、ワインでもグビリといきますか。本当は、これやっているからダメかも。
 すぐ次の仕事にとりかかればいいものを、ついつい休みたくなるんだよねえ。人間だから、仕方ないか(笑)。
 
 
| 日々つづれ織り | 22:40 | - | -
モーリス・ブルグ&若尾圭介
 相手が複数の場合、インタビューは非常ににぎやかで楽しい雰囲気のものになるか、だれかがしゃべりすぎてバランスがとれなくなるか、みんなが遠慮してうまく話が進まなくなるか、複雑な人間模様が浮き彫りになるか、その内容はさまざまである。
 概して、私はそれぞれの人に話を均等に振っていくのだが、それが成功する場合は、非常に和気あいあいとした空気が生まれる。
 昨日は、オーボエ界の重鎮であるモーリス・ブルグと、彼を敬愛し、共演する録音を実現させたボストン交響楽団準首席奏者&ボストン・ポップス・オーケストラ首席奏者の若尾圭介のふたりにインタビューを行った。
 このインタビューは、次号の「intoxicate」に書く予定になっている。
 今回のアルバムは「オーボエの世界〜オーボエ室内楽曲集〜」(ワーナー)と題され、彼らふたりと音楽仲間による録音。レフラー、サン=サーンス、上林裕子、ブリテン、ミヨーの作品が組まれている。
 この録音に関して、選曲や録音時の様子、ふたりの出会いから交流、今後のことまで話が広がったが、なかでも興味深かったのは、若尾がフランスのブルグのもとに指導を受けにいくときの話。
 約3カ月間オーケストラの演奏から離れて休暇をパリで過ごし、ブルグのもとに13回通ったという。
 その住まいが、パリのドラクロワ美術館のすぐ近くだったそうだ。
 私はこのサン・ジェルマン・デ・プレ界隈、フュルスタンベール広場の近くに位置する小径にひっそりとたたずむドラクロワ最後の家が大好きで、パリに行くと何度も訪ねている。
 ドラクロワは最晩年の作、サン・シュルピス聖堂の壁画を描くために、この家に1857年から63年まで住み、ここで亡くなった。
 家も当時のままの空気をたたえているが、小さな中庭がとても風情があり、管理している人に頼むと、庭に出られる。
 なんと、若尾さんは、この近くに3カ月も暮らしたとは…。ブルグのレッスンもすばらしかっただろうが、このパリの家も忘れがたいだろうな。
 インタビューはいろんな方面に話が広がり、ブルグも含蓄のある興味深い話をしてくれた。
 このCDが出来上がったのは、ブルグいわく「まあ、自然ななりゆき。当然のこと」と、実に自然体の答え。
 こんな大家なのに、どんな質問に対しても、にこやかに温厚な表情で、ことばを尽くして話してくれる。
 若尾さんが、尊敬してやまないのがよくわかる。ふたりの共演は、オーボエを愛する人たちには願ってもないことだろうが、オーボエの音楽を初めて聴く人にも新鮮な驚きをもたらすのではないだろうか。
 ふたりは、呼吸法に関しても、とても印象に残ることを話してくれた。
 記事では、ぜひその奥義についても綴りたいと思う。
 今日の写真は、インタビュー後のふたりのにこやかな表情。時間が限られていたが、まだまだたくさん話したいことはあるよ、といった余韻を残す語り口となり、私も後ろ髪を引かれる思いだった。


 
| 終わりよければ…取材奮闘記 | 22:32 | - | -
樫本大進
 昨日はベルリン・フィルの来日公演で日本に帰国している樫本大進を囲み、ANAインターコンチネンタルホテル東京で記者懇親会が行われた。
 今回のベルリン・フィルは、5月11日から15日まで5日間サントリーホールでベートーヴェン・ツィクルスを行ったが、それを成功裡に終え、彼は次なる室内楽へと目を向けている。
 5月30日には東京オペラシティコンサートホールで、樫本大進、小菅優、クラウディオ・ボルケスのトリオの演奏が控えているからだ。
 ここでもプログラムは、ベートーヴェン。ピアノ三重奏曲第3番、第6番、第7番「大公」が組まれている。
「本当に今年はベートーヴェンを演奏する機会に恵まれ、作曲家に近づくことができます。交響曲、ピアノ三重奏曲、そして秋にはヴァイオリン協奏曲を演奏する予定になっていますから」
 大進がこう語るのは、11月27日に横浜みなとみらいホール大ホールで、パーヴォ・ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団との共演による演奏である。
「パーヴォとはベルリンで何度も会い、食事もしているのに、コンチェルトの共演は今回が初めてなんですよ」
 大進いわく、パーヴォ・ヤルヴィはとても優しい温かな性格の持ち主で、会った人をみな自然にその魅力で包み込んでしまうという。
「ですから一緒に演奏しようね、と何度も話していたのに、なぜか実現せず、このドイツ・カンマーフィルとのベートーヴェンが初共演になるわけです。今年はぼくにとってベートーヴェン・イヤーになっているため、この共演ではぜひベートーヴェンのコンチェルトを演奏したいと思ったのです」
 彼は10年前から赤穂と姫路でル・ポン国際音楽祭を開催しているが、10周年を記念して初めて東京公演を行うことになった。
 音楽祭は10月8日から始まり、17日の最終日にサントリーホールで「東京特別公演」が開かれる。
 ル・ポン音楽祭の大きな特色は、ふだんあまり演奏される機会に恵まれないが、とてもすばらしい作品だと大進が考えてプログラムに載せる作品が多く登場すること。もちろん有名な作品も組まれているが、友情出演で各地から集まってくる名演奏家たちが、そうした作品で名妓を披露する。
 その音楽家たちはノーギャラでの出演だそうだ。それゆえ、チケットは1000円程度の安価に抑えられている。
「でも、その土地ならではのおいしい食べ物が毎日供されるし、お城で演奏したり、ふだんなかなか共演できない演奏家と一緒に演奏できるため、みんな好意的に参加してくれます」
 これはひとえに大進の人柄によるのだろう。
 彼はエマニュエル・パユ、ポール・メイエ、エリック・ル・サージュが主宰している南仏のサロン・ド・プロヴァンス音楽祭に初めて参加したときに、手作りのあったかい雰囲気を備えた上質な音楽祭の雰囲気に魅せられ、自分でもこういう音楽祭ができたらいいなと憧れを抱いてきた。
 今回、東京公演の最後に演奏されるブラームスのセレナーデ第1番は、初めてその音楽祭に参加したときに演奏した思い出の作品。もちろんパユ、メイエ、ル・サージュも今回のル・ポンには参加する予定だ。ちなみに、ル・ポンとは、フランス語で架け橋を意味している。
 デビュー当時から大進を応援し続けているが、本当に年々ビッグになっていく。でも、素顔はまったく変わらず、自然体。
 今日の写真は、左が姫路市東京事務所の阪口昌弘氏、中央は樫本大進、右が公益財団法人赤穂市文化とみどり財団理事長の岡島三郎氏。



 
 
 
| 親しき友との語らい | 22:49 | - | -
シャルル・リシャール=アムラン
 2015年のショパン国際ピアノ・コンクールの第2位入賞と、ソナタ賞を受賞したカナダ出身のシャルル・リシャール=アムランは、成熟した大人の香りを放つ音楽を奏でるピアニストである。
 コンクールのガラ・コンサートで来日したときにも聴いたが、今夜聴いたリサイタルは、まさにピアノ好きをうならせる、情感豊かで味わい深い音楽が横溢していた。
 プログラムはオール・ショパン。ノクターン ロ長調op.62-1、バラード第3番、幻想ポロネーズ、序奏とロンド、4つのマズルカop.33、ピアノ・ソナタ第3番。コンクールで高い評価を受けた作品が多く選ばれていたが、とりわけ鍛え抜かれた奏法、表現、解釈が際立ったのが 序奏とロンドだった。
 この作品をこんなにもじっくりと聴かせる若手ピアニストは稀ではないだろうか。

 そこで「インタビュー・アーカイヴ」第69回は、リシャール=アムランの登場だ。

[ぶらあぼ 2016年5月号]

 2015年のショパン国際ピアノ・コンクールにおいて第2位入賞とソナタ賞(ツィメルマン賞)を受章したシャルル・リシャール=アムランは、弱音の美しい情感豊かな演奏を得意とするピアニストである。彼はカナダのモントリオール出身で、コンクール時は26歳だった。
「ショパンの作品に初めて出合ったのは13歳のときで、《幻想即興曲》でした。それから1年に1曲ずつ学び、徐々に自分のなかでショパンの全体像に近づいていったのです。私はスター性があるわけでもないし、世界中を飛び回る生活も得意ではない。第2位とソナタ賞をいただいたのは、自分としては理想的な結果です。今後はじっくり作品と対峙し、自分のペースを守りながら学びの精神を貫きたい。シンプルな生活が一番ですので…」
 コンクール時には「テディベア」の愛称で親しまれたリシャール=アムラン。無欲で真摯でどっしりとした体躯の愛すべきピアニストだが、演奏は聴き手の心を強烈に引き付ける成熟した美音が特徴。来日公演でも“大人の音楽”を披露し、ピアノ好きをうならせた。
「ショパンはルバートが生命線です。これは時間がゆるやかに巡っていくような感覚で、丸いものを感じます。けっして角ばったものではない。私はルービンシュタイン、リパッティ、ルプーの自然なルバートを感じさせる演奏が好きですね。今後は、自分の存在をこれでもかと見せつけるのではなく、あくまでも音楽の後ろに隠れ、作品時代をじっくりと聴かせるピアニストを目指したい」
 来日プログラムは、もちろんピアノ・ソナタ第3番は欠かせないと考えたが、バランスと調性、つながりを考慮して決めたという。
「コンクールの5カ月前にカナダでショパンのピアノ・ソナタ第3番と《幻想ポロネーズ》の録音をしましたが、まさかこのときはコンクールで入賞できるとは思ってもいませんでした。これまではコンチェルトの仕事も多く、共演したケント・ナガノ、ヤニック・ネゼ=セガンらの指揮者からも助言をいただいています。今後はソロ活動が増えそうで、年間110回のコンサートが入っています」
 リシャール=アムランは、ステージに登場する姿が往年の名ピアニスト、ラザール・ベルマンに似ていると思う。ゆったりと歩を進め、ピアノに向かうと美しい響きを醸し出し、聴き手の心を自然に解き放っていく。彼は大器晩成型のように見える。ピアノ好きの心をとらえる美音、ぜひナマの演奏で体験を!

 今日の写真は、その雑誌の一部。
 リシャール=アムランは、今日のリサイタルのアンコールにショパンの「英雄ポロネーズ」とエネスコの「パヴァーヌ」(組曲第2番op.10より)を演奏した。
 今回の演奏を逃した人は、ぜひ次回こそ、ナマの演奏に触れてほしいと願う。彼の演奏は、きっと30歳、40歳を過ぎてから、より味わいが増すのではないだろうか。





 
| インタビュー・アーカイヴ | 23:19 | - | -
心とからだに栄養を
 21日(土)は、ミューザ川崎シンフォニーホールで佐渡裕指揮トーンキュンストラー管弦楽団の演奏を聴いた。
 前半は、レイ・チェンをソリストに迎えたベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲。レイ・チェンは、来日のたびに演奏を聴き、インタビューも行っているが、会った人みんなが彼のおおらかな人間性に魅了されてしまうほどのナイスガイ。
 演奏は、聴くたびにぐんぐん若芽が天に伸びていくような勢いを感じさせ、今回はそこに自信がみなぎっているのを感じた。
 このプログラムにも記事を書いたが、佐渡裕は、2014年5月デンマーク放送交響楽団の演奏会でレイ・チェンと初共演し、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を演奏したそうだ。
 そのときに、レイ・チェンは作品に対して自分と同じアプローチを備えていると感じ、今回のトーンキュンストラー管弦楽団の日本ツアーのソリストに指名したのだという。
「レイとぼくは、初めて共演したときから意気投合し、その後もいろんな話をするなかで非常に親しくなった。いまや親友と呼ぶべき存在ですね」
 私のHPの「音楽を語ろうよ」のコンテンツでインタビューしたとき、佐渡裕はレイ・チェンについてこう語っていた。
 まさに今回の共演も、ベートーヴェンに対する思いが同じ方向を向いていた。
 それにしても、レイ・チェンの音楽の成熟ぶりは目を見張る。
 彼は約43分におよぶ長大なコンチェルトを一瞬たりとも弛緩することなく、オーケストラとの音の対話を楽しみながら、佐渡裕のタクトにピタリと寄り添い、ときにオーケストラをリードし、情熱的なベートーヴェンを披露した。
 後半は、R.シュトラウスの交響詩「英雄の生涯」。このコンビによるデビュー録音でレコーディングした作品ゆえ、すっかり手の内に入った演奏だったが、全員が自分たちのもてる最高の音楽をしようという熱意が舞台からほとばしり、佐渡の熱血漢ぶりと相俟って、オーケストラ全体からうねるようなはげしい演奏が伝わってきた。
 この後、アンコールを聴くことなく、私は急いで会場をあとにし、川崎から新横浜に移動し、新幹線に乗って京都へ。
 たった1日半ほどの京都だったが、今回もお気に入りのお店に顔を出し、おいしいおそばをいただき、心身をしばし休めることができた。
 長年、清水産寧坂下の松韻堂に通い、陶器を求めているが、今回も小鉢と湯呑を少し購入した。
 ここのご主人いわく、最近はこのあたりの老舗がどんどん廃業し、新しいお店が増えているそうだが、そうしたお店もすぐになくなってしまうことが多いとか。
「住んでいる私たちが驚いているほどですよ。もうウチもいつまで続けられるかわかりません」 
 なんということか。清水あたりはいつ行っても大混雑だが、本当に老舗が数少なくなってしまった。でも、松韻堂はいつまでも続いてほしいと思う。
 今日の写真は、窯元の松韻堂の外観。緑豊かなお庭を眺めながらおそばをいただくことができる、よしむら清水庵。


 


| ゆったりまったり京都ぐらし | 23:54 | - | -
京都は近いようで遠い(?)
 京都の仕事部屋にいくには、いろんなことを猛スピードで片付けないとならない。
 ようやくカーテンができあがったため、それを取りつけたり、まださまざまなことをしなくてはならないが、なかなか週末に出かけることは困難だ。
 本当は金曜日の夜に着いて、土曜日はゆっくりいろんなことをして、日曜日の夜に東京に戻ろうと考えたのだが、いまはものすごいコンサート・ラッシュ。
 特にこの週末から来週にかけては、聴きたいコンサートが目白押しだ。
 あれこれパズルのように時間と場所とコンサートを考え合わせ、ようやく結論が出た。
 今日の夜中までにこの週末の締め切りをすべて終わらせ、明日は14時からの佐渡裕指揮トーンキュンストラー管弦楽団の凱旋ツアーの初日をミューザ川崎市シンフォニーホールに聴きにいき、終演後すぐに川崎から新横浜に移動し、そこから新幹線に乗って京都までいく。
 このオーケストラの公演は、22日、23日が東京公演だが、それは無理になった。今回のソリスト、レイ・チェンとアリス=紗良・オットのことをプログラムに書いたため、両方とも聴きたかったが、明日はレイ・チェンのベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲と、R.シュトラウスの「英雄の生涯」である。
 本当は日曜日だけゆっくりして、月曜日に東京に戻ってきたかったのだが、23日は14時から樫本大進の記者懇親会があり、夜はオペラシティにシャルル・リシャール=アムランのピアノを聴きにいくことになった。
 というわけで、あちこち移動して、バタバタのスケジュールだ。まあ、アーティスト次第だから仕方ないけどね。
 からだをもたせるためには、体力をつけなくちゃならないし、原稿を仕上げるためには集中力も必要だ。
 それでも、間隙を縫って京都にいかないと、またまた東京で休みなしの週末になってしまう。
 佐渡さんいわく、トーンキュンストラー管弦楽団は、この日本ツアーをとても楽しみにしているそうだから、きっと熱のこもった演奏を展開してくれるだろう。明日は、そこから元気をもらいますか。
 今日の写真は、トーンキュンストラー管弦楽団のプログラムの一部。5月13日から29日まで、全国で14公演が組まれている。

| ああ愉しき(?)、締切り地獄 | 21:36 | - | -
エマニュエル・パユ
 先日、新譜に関する「CDジャーナル」の取材で、フルートのエマニュエル・パユにインタビューしたばかりだが、実はもうひとつ別の新譜のインタビューを行うことになった。
 というのは、前回はパユとトレヴァー・ピノック&カンマーアカデミーポツダムとの共演による録音だったが、今秋来日予定の「レ・ヴァン・フランセ」の新譜も来日前にリリースされるという。
「世界最強のスーパー軍団 管楽アンサンブル」と称される管楽器5人とピアノひとりの「レ・ヴァン・フランセ」は、日本でも非常に人気が高い。
 その新譜の情報がまだ日本に届いていないことから、レコード会社の担当者のOさんが困っていたところ、「じゃ、もう一度、彼女にインタビューしてもらえばいいんじゃない。ぼくがレ・ヴァン・フランセを代表して答えるよ」とパユがいったそうだ。
 ちなみに、彼女というのは、私のことである。
 というわけで、またまたパユに会うことになった。
 今日は王子ホールで「エマニュエル・パユwithフレンズ・オブ・ベルリン」と題されたコンサートが行われたため、そのリハーサルの合間を縫って楽屋でインタビューが行われた。
「レ・ヴァン・フランセ」の曲目は、ベートーヴェンとヒンデミットという組み合わせ。もうすでに録音は終わっているため、作品について、録音の様子、各々の作曲家のこと、曲の選び方、「レ・ヴァン・フランセ」の発足時から今日まで、多岐に渡る話を聞いた。
 パユは、本当に前向きな人である。そして、いずれの質問に関しても、ことばを尽くしてこまかく話してくれる。
 この新譜もライナーノーツを担当するため、あらゆる角度からの質問を試みたが、とても楽しそうに話してくれた。
 前回は映像録りが入っている日だったため、ちょっとおしゃれをしていたが、今日はリハーサルの合間ゆえ、汗をかいて上気していた。
 写真は、そんなパユの素顔である。ところが、私の写真を見た彼が、「う〜ん、どうしてもこういう照明だと、鼻の下に影ができるよね。鼻が高いとこうなっちゃうのかなあ」といった。
 これを聞き、その場に居合わせた全員が、「エーッ、日本人はまったくそんな心配はないよ〜」と異口同音に叫んだ。
 それを聞いたパユは、「あっ、そう。まあ、いいかっ」てな調子で、写真のOKが出た。
 その後日談。
 れいの「CDジャーナル」のパユさまの大ファンのAさんに、「また今日パユに会ったから、写真送るね」といって送ったら、こんな返事が戻ってきた。
「ありがとうございます。すばらしすぎて、電車のなかで鼻血が出そうです」
 いやあ、大笑い。なんというユーモア。ほとんどギャグだ(笑)。
 いつもみんな真面目に一生懸命仕事をしているわけだから、ときにはこういう息抜きもないとね。
 パユさま、ありがとう。みんなの心が温かくなっています。仕事のストレスも一気に吹き飛びました。
 でも、ライナーノーツは2枚ともちゃんと書きますから、安心してくださいね。仕事は仕事、笑ってばかりはいられないもん。



 
 
| 日々つづれ織り | 22:05 | - | -
ブルーローズ
 いま発売中の「家庭画報」6月号は、創刊700号記念だという話は先日書いた。
 実は、そのサントリーホールの特集記事を書くために、さまざまなな人に取材し、ホールの隅々まで見て回った。
 ふだんは正面玄関からホールに入り、客席に足を運ぶことが多く、時折、取材で楽屋を訪ねることもある。
 しかし、今回はホール内のアートもじっくり見てまわった。 
 大ホールのグラスから立ち上がるシャンパンの泡をイメージしたシャンデリア、ホワイエの階段手すりの大麦のデザイン、2階ドリンクコーナーの向かいにある「麦畑」というモザイク壁画、ホワイエの「響」をテーマとしたステンドグラス、カラヤン広場の金色のモニュメント、そして大ホールの葡萄に因んだワインレッドのモケットを使用した椅子等々。
 なかでも、いつも見逃していたのが、ブルーローズ(小ホール)の入口右上の壁面にある「ブルーローズ2007」と題された、彫刻家・須田悦弘氏製作の青いバラ。
 素材は朴(ほう)の木で、葉っぱ1枚1枚、花びら1枚1枚を彫りつなぎ合わせ、日本画で使用する岩絵の具等で彩色したものだそうで、サントリーの開発した青いバラを忠実に再現しているという。
 ホールに入るときは、上の壁面を見る機会は少ないため、これまでずっとこんなに精巧に作られた美しいバラがあるとは、気づかなかった。
 みなさん、サントリーホールにいらしたら、ぜひブルーローズ、見てくださいね。とても可憐で美しいオブジェですから。
 今日の写真は、その青いバラ。全体像とアップにしたもの。




 

| 終わりよければ…取材奮闘記 | 22:12 | - | -
マルタ・アルゲリッチ
 こんなに躍動感あふれ、心が高揚するようなスカルラッティのソナタは、久しぶりに聴いた感じがする。
 今日は、「日本生命presentsアルゲリッチ ベートーヴェンを弾く」のコンサートが東京オペラシティ コンサートホールで行われ、高関健指揮紀尾井シンフォニエッタ東京との共演で、アルゲリッチがベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番を演奏した。
 このコンサートは、第18回別府アルゲリッチ音楽祭の東京公演にあたる。
 前半はモーツァルトのディヴェルティメントやシンフォニーが演奏され、アルゲリッチのコンチェルトは最後に組まれていた。
 後半からは皇后陛下がご臨席になり、アルゲリッチの演奏にじっくりと耳を傾けていらっしゃった。
 ベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番は、5曲のコンチェルトのなかでもっとも演奏される機会が少ない。
 この作品はベートーヴェンの最初に書かれたピアノ協奏曲といわれ、ウィーンでの自身の演奏会用に書かれている。まだ20代半ばの若きベートーヴェンの作で、壮大さや豪華さとは一線を画し、おだやかでかろやかである。管弦楽も大編成ではなく、室内管弦楽団の規模を想定して書かれているため、紀尾井シンフォニエッタのスタイルがピッタリである。
 第1楽章は主和音と属和音の交替が特徴で、モーツァルト的な主題が登場する。アルゲリッチは管弦楽の序奏に次いで弱奏で入るところを、深い打鍵で自然にスッと入り、やがてカデンツァのあとの第2主題を豊かにうたわせた。
 第2楽章は、とても美しい変奏曲形式のアダージョ。弦の美しい旋律に、アルゲリッチは装飾的な旋律をゆったりと重ねていく。
 前の楽章からすぐに第3楽章に入り、アルゲリッチの生き生きとしたリズミカルなピアニズムが全開する。
 彼女のピアノは、常に感じることだが、その作品がいま生まれたばかりのようなみずみずしさを放つ。第3楽章のロンドも、生気あふれる音楽が疾走し、オーケストラをリードするように駆け抜けていく。
 そして鳴りやまぬ拍手に応えて登場したアンコールがスカルラッティのソナタ ニ短調 K.141=L.422である。
 もちろん、ベートーヴェンのコンチェルトは深い印象をもたらしたが、私はこのスカルラッティのソナタに、いまのアルゲリッチの心身の充実を見る思いがした。
 彼女のピアノは成熟度を増し、エネルギッシュで軽快。このエネルギーの素は何なのだろうか。インタビューに応じてくれる人ではないため、その秘訣を聞くことはできないが、底知れぬエネルギーと情熱に深い感銘を受けた。
 今日の写真は、プログラムの表紙。


 
| クラシックを愛す | 23:42 | - | -
ホタルイカ
 今日は朝からさまざまな雑事に追われ、しっかり原稿を書く時間がなかなか確保できなかった。
 電話、FAX、メールの対応に加え、資料の整理に長い時間がとられるため、こういう日は、どうしても夜に仕事が集中することになる。
 コンサートにいかない日は、夕方から夜中までじっくり原稿と対峙することができるが、これが眼精疲労を生み、運動不足になり、心身ともに疲弊する原因ともなる。
 じゃ、いったいどうしたらいいんだ? と自問するが、答えはいっこうに見つからない。
 こういうときは、深く考えても仕方がないため、大好きなお魚屋さんやお肉屋さんに顔を出し、お薦めの品を手に入れ、おしゃべりをしてくる。
 今日は、いま旬のホタルイカのお刺身を薦められた。
 これは先日、京都の老舗で購入したゆず味噌をつけて食べるとおいしい。しょうがやワサビとおしょうゆをつけてもいいが、私は断然ゆず味噌派である。
 ホタルイカはいまのシーズンだけ登場する季節限定の食材ゆえ、本当に貴重である。
 これを食べて、また原稿に向かう。すると、少しは元気になる。
 実は、ホタルイカは、旬の野菜を加えたパスタのペペロンチーノにすると、びっりくりするくらい美味。水菜や新たまねぎ、九条ねぎとの和風バスタもいいし、パプリカやアスパラガス、きのこ類との洋風パスタもいける。
 もっと時間に余裕があれば、いろいろ試せるのだが、なにしろドタバタと入稿に追われている身には、時間のかかるお料理は無理。まあ、お刺身が一番簡単ですな、何もしなくていいし(笑)。
 今日の写真は、お魚屋さんイチオシのホタルイカ。
 そういえば、以前、金沢に録音取材にいったとき、和食やさんで獲れたばかりの生きているホタルイカが供されたことがある。
「早く食べて。光っているうちに、ほらほら早く口に入れて」
 こういわれて勇気を出してパクッと食べたが、口のなかでまだ動いていて、おもわず叫びそうになった。
 でも、とろけるような甘さと新鮮さがなんともいえず、「ヒエーッ」といいながら、何匹も食べてしまったっけ。ああ、なんて残酷なんだろう…。


 
 
 
 
 
 
| 美味なるダイアリー | 22:06 | - | -
山田和樹
 指揮者の山田和樹は、いまもっとも勢いを感じさせるアーティストである。 
 今日、「アーティスト・レシピ」を更新し、山田和樹に登場してもらった。
 ぜひ、読んでくださいね。
 いまは、さんまが手に入りにくい時期だからお魚の種類を変え、あじ、いわし、さばなどの青魚で代用してもOKだ。
 山田和樹の演奏を聴いていると、いずれの作品もみずみずしく躍動感あふれる音色と表現が特徴だが、その奥に和のテイストが潜んでいるのを感じる。
 しっとりとした響き、おだやかなアンサンブル、そして不思議な静けさが音楽に宿っているのである。
 ご本人は、とても感じのいい人で、みんなに好かれるナイスガイ。ただし、リハーサルはとてもきびしい。要求が非常に高いのである。
 私は東京とナントで演奏を聴いたことがあるが、ぜひジュネーブで聴きたいと思う。モンテカルロも夢だわね。
 山田和樹には、以前「日経新聞」でインタビューを行ったのだが、「すごく楽しかったです。ぜひ、またインタビューしてください」といわれた。こんなことをいってくれる人は珍しい。
 若きマエストロには、ぜひまた近況を聞きたい。近々、チャンスが訪れるといいな。
 
 
 
| 美味なるダイアリー | 23:33 | - | -
単行本の資料整理
 今日は、次なる単行本のアーティストの自宅に伺い、長年に渡る活動の資料整理を行った。
 事前に出版社の編集担当者のSさんたちが、膨大な資料の仕分けをしておいてくれたため、今日は雑誌に絞って1冊ずつ中身に目を通し、必要な物だけを持ち帰ることにした。
 次回は、新聞の記事を整理しようと思っている。
 なにしろ、長年第一線で活躍しているアーティストゆえ、取材記事は山ほどある。
 内容が重複したり、あまり単行本には必要ないものを除いていき、これだけは目を通しておきたいというものをピックアップして、キャリーバッグに詰め込んだ。
 これからしばらくこの雑誌の記事を読み込んで、インタビューの内容と構成を決めていかなくてはならない。
 こうした段階を経て、アーティストのすべての面を頭にたたき込み、足りないところにポイントを絞り、インタビューで内容を深めていくわけだ。
 今回の本はかなり文字数が多く、10万字を超える。章立てを5つにしようと思っているため、ひとつずつの章が約2万字という計算だ。
 それを鑑み、インタビューの質問を組み立てていかなくては…。
 いま持ち帰った雑誌を全部読み込み、次回は25日に再度資料整理にいくことになった。
 それまでに、現在の資料をすべて把握する必要がある。
 単行本というのは、文字数が多いこともあり、長丁場の仕事となる。体力、気力、集中力の勝負である。
 さて、次なる単行本に向かって走り出さなくては…。
  
| 日々つづれ織り | 23:40 | - | -
エマニュエル・パユ
 ベルリン・フィルの首席フルート奏者、エマニュエル・パユは、完全なるワーカホリックである。
 自他ともに認める仕事人間の彼は、今回の来日でもベルリン・フィルの演奏のみならず、室内楽、マスタークラスとさまざまな活動を日々精力的に行っている。
 以前から、インタビューのたびにその超多忙さに驚き、「いつ休んでいるの?」と質問するのだが、「中学時代から1日も休んだことはないよ」とケロリ。
 でも、今日は「ストレス解消はどうしているの?」と聞いたところ、「ストレスって何?」と聞き返された。
 もちろん笑いながらだが、人間関係のストレスは感じている暇もないほど、演奏に没頭しているとか。
 いいよねえ、天才的な才能の持ち主で、性格は陽気で人なつこくて、常に前向きで研究熱心、フルートを吹くことがたまらなく楽しいなんて…。
 こういう人に会うと、爪の垢を煎じて…ということばが脳裏に浮かぶ。
 今日は、今秋リリースされるパユとトレヴァー・ピノック&カンマーアカデミーポツダムの新譜について、さまざまな角度から話を聞いた。
 というのは、このライナーノーツを担当することになっているため、作品について、録音の様子、ピノックとの共演、カンマーアカデミーポツダムの演奏などに関してあれこれ質問を試みた。
 パユは、いつも感じることだが、どんな曲でも楽々と演奏できる才能の持ち主であるにもかかわらず、練習魔であり、作品をとことん調べる探求派である。
 もう何年も前のことになるが、初めてピノックと共演することになったときの彼の喜びようったらなかった。
「トレヴァーは、すごい人なんだよ。あんなにすばらしいチェンバロの名手であり、バッハに精通しているのに、それをすごく自然に美しく、いま生まれた作品のようなみずみずしさで演奏する。彼と一緒に演奏していると、私のなかからどんどん新たな感覚や発見、奏法の創意工夫が湧き出てきて、流れる水は止まらなくなるんだ。トレヴァーは、共演者の内部に潜むものの扉を開け、その人が気づいていなかった新たな面を引き出してくれるんだよね」
 今日も、ピノックへの敬愛のことばが止まらなかった。
 カンマーアカデミーポツダムは古楽の合奏団だが、このグループとの共演も楽しくてたまらないそうだ。
 ピッチの話にもなったが、録音ではモダンピッチ(A=442)を採用しているという。
 また、新譜情報が解禁になったら、インタビューの内容を詳しく紹介したいと思う。 
 今日のインタビューは、「CDジャーナル」に書く予定になっている。リリースは秋になるため、11月締め切りの12月号になりそうだ。
 パユは、今秋の10月のレ・ヴァン・フランセのメンバーとしての来日が決まっており、このスケジュールがまたまたびっくり。
 10月21日から29日まで各地で9回の公演があり、休みなしで全国行脚を行う。
 う〜ん、さすが仕事人間!
「でも、私にとって、演奏は仕事じゃない。自己表現であり、大いなる楽しみであり、人生になくてはならないもの。いつも、“さあ、これから何をしようかな”と、次なる計画に目が向き、新たな企画で頭がいっぱい」
 ホント、いいよねえ、ポジティブで。やっぱり爪の垢煎じかな。
 今日の写真は、インタビュー後のワンショット。実は、「CDジャーナル」の編集担当のAさんが、「ぜひ、その写真、共有させてください」というので送ったら、惚れ惚れとして、パユの顔を穴があくほど見つめているとか。
 いいよねえ、そこまで女性に愛されて(笑)。


 
| アーティスト・クローズアップ | 22:07 | - | -
ベルリン・フィル
 いま、ベルリン・フィルが来日している(5月11日〜15日、サントリーホール)。
 今日は、2日目の公演を聴きに出かけた。
 今回のプログラムはオール・ベートーヴェン。交響曲全9曲を5夜連続で演奏するという、画期的な内容である。
 今日は前半が「レオノーレ」序曲第1番と交響曲第2番、後半が交響曲第5番「運命」である。
 サイモン・ラトルは、2013年、ベルリン・フィル首席指揮者を2018年契約満了にて退任することを発表した。2017年9月からはロンドン交響楽団の音楽監督に就任する予定になっている。
 ラトル&ベルリン・フィルのベートーヴェンは、すでに交響曲全集がリリースされているが、ツィクルスも昨秋からパリ、ウィーン、ニューヨークで行われ、いよいよ東京が最終地となる。
 今夜の「運命」は、息詰まるような熱気に包まれた演奏だった。ラトルのベートーヴェンに対する敬愛の念が全編に宿り、長年に渡る楽譜の研究の成果が表れ、説得力のある斬新で前向きな「運命」となった。
 ラトルはプログラムのなかのインタビューで、ベーレンライター版を使用していること、ベートーヴェンのテンポに関して、曲による楽員数の違い、教育プログラムのこと、新イースター音楽祭の創設、新たな取り組みとして注目されているデジタル・コンサートホールに関してなど、多岐に渡る話をしている。
 2011年の11月15日の「インタビュー・アーカイヴ」に以前ラトルに行ったインタビューを掲載しているので、興味のある人は見てくださいね。
 今日の写真は、ベルリン・フィルのプログラムの一部。コンサートから戻ってたまっていた仕事をすべて片付け、メールの返事を次々に送り、原稿の校正を見ていたら、あっというまに時間が過ぎてしまった。
 明日はフルートのエマニュエル・パユにインタビューすることになっている。またその様子をお伝えしま〜す。


 
| 巨匠たちの素顔 | 23:42 | - | -
ライジングスター
 いま、新譜評を書きながら、さまざまな録音に耳を傾けている。
 最近はこだわりの選曲によるCDが多く、いずれも聴きごたえ十分。しかも、アーティストたちがすこぶる個性的だ。
 まず、2015年のショパン国際ピアノ・コンクール第2位入賞のカナダ出身のシャルル=リシャール・アムランの「ショパン:ピアノ・ソナタ第3番/幻想ポロネーズ」(東京エムプラス)から。コンクールの5カ月前の録音で、ソナタ賞(ツィメルマン賞)を受賞したピアノ・ソナタ第3番がまさに“大人の演奏”。成熟したまろやかでゆったりした音色が持ち味で、ガンガン強音ですっ飛ばす演奏とは一線を画す。
 インタビューしたときにも感じたが、やわらかく自然体で素のままの音楽は本人の人間性が表れたもの。5月23日には東京オペラシティコンサートホールでデビュー・リサイタルが行われる。このプログラムの最後を飾るのも、ソナタ第3番である。
「スカルラッティ・ショパン・リスト・ラヴェル」(ソニー)と題するCDでデビューしたのは、2015年のチャイコフスキー国際コンクール第4位入賞のフランスのピアニスト、リュカ・ドゥバルグ。オープニングを飾るスカルラッティのソナタ イ長調K208は、一度耳にすると忘れられない音の記憶となって、ずっと脳裏に居座る。ラヴェルの「夜のガスパール」はコンクールでも絶賛された作品。ほとんど独学という稀有なピアニストの登場である。
 前回のチャイコフスキー・コンクールで第2位を獲得したフランスのチェリスト、エドガー・モローは「ジョヴィンチェロ〜バロック協奏曲集」(ワーナー)で、しなやかな美音とのびやかな表現によるハイドン、ヴィヴァルディ、ブラッティ、ボッケリーニ、グラツィアーニを聴かせている。
 これはガット弦とバロック弓を使用するスペシャリストの集まり、イル・ポモドーロとの共演で、モローは1711年製のテックラーのチェロを用い、ピリオド・オーケストラとの音の融合を図っている。
 2012年のブルージュ国際古楽コンクールの覇者、フランスのチェンバリスト、ジャン・ロンドーの「イマジン〜J.S.バッハ:チェンバロ作品集」(ワーナー)は、新世代のチェンバリストの到来を強く印象付けるもの。これまで聴き慣れたバッハの演奏とは趣を異とし、斬新で驚きに満ちた創意工夫が随所に顔をのぞかせる。彼は音楽院での勉強以外に、ソルボンヌでも学んでいて、ジャズにも情熱を傾けているという。
 スペインの古楽界に彗星のように現れ、「若き鬼才」と称されているのは、ヴィオラ・ダ・ガンバのファミ・アルカイ。「思いのままに〜ア・ピアチェーレ ヴィオラ・ダ・ガンバのための音楽」(東京エムプラス)は、ガスパール・サンスからジャン・フィリップ・ラモー、マラン・マレまで非常に興味深いプログラム。打楽器やヴォーカルなども加わり、自由で創意に富むアンサンブルを展開している。
 今日の写真は、5枚のライジングスターの新譜。いまどきのアーティストはディレクターをしたり、ライナーノーツを執筆したりと、多芸多才。さまざまなバリアを軽々と飛び越えていく。


 
| アーティスト・クローズアップ | 23:50 | - | -
カタクチイワシとローズマリー
 最近、仕事関係の人が大きな病気をするケースが増えている。みんな結構無理をしているからだろう。
 それゆえ、何人か集まると、すぐに健康の話題になる。本当に健康の大切さを痛感する日々だ。
 先日、ある新聞で、目からウロコの記事を読んだ。
 イタリアの南西に位置するアッチャロリという人口2000人ほどの小さな村が、いま話題となっているというニュースである。
 この村は喫煙者も多く、とても太っている人が多いそうだが、約300人は100歳以上で、そのうち2割は110歳以上なのだという。
 その長寿の秘密を明らかにするために、カリフォルニア大学の教授とサンピエンツァ・ローマ大学の研究チームが調査を行ったところ、優良な遺伝子とよい食事の組み合わせが長寿の要因だと判明した。
 その食事とは、カタクチイワシとローズマリーを毎日食べることだそうだ。
 これは認知機能障害と老化をある程度防ぐ効果があり、この村は交通網が発達していないため、毎日かなりの距離を歩くことも相まって、長寿になるという。
 そうか、イワシねえ。イワシが健康にいいということは知っていたが、ローズマリーがその一端を担っているとは新発見だ。
 早速、ルーフバルコニーに植えてあるローズマリーにせっせと水やりをし、これからはいろんなお料理にこのとんがった葉っぱを使うことにした。
 今日の写真は、だいぶほっぽらかしにしていたが、急きょ大事にされることになったローズマリー。きっと、「なんで、急に?」と思っているんだろうな(笑)。
 みなさん、長寿はともかく、健康のためにイワシとローズマリーを食べましょうね。イタリアの100歳以上の人たちに少しでもあやかるように…。


 
| 美味なるダイアリー | 23:16 | - | -
伊藤恵
 ピアニストの伊藤恵とは、先日以来「仕事抜きで食事しようね」と話していて、今夜ようやく実現することになった。
 レコード会社のMさん、音楽事務所のHさんも参加することになり、4人で吉祥寺のカフェロシアにいった。
 ここはオーナーシェフのSさんがとても親切で、しかもお料理とお酒がとびきりのおいしさ。
 3人が「おいしいねえ」「これまで食べたことのない味」「見た目は味が濃いのかなと思ったけど、すごく食べやすくていくらでも入る」と大絶賛。
 グルジア(ジョージア)ワインも好評で、話が弾む弾む。他のお客さんがみんな帰ってしまうまで話し込んでしまった。
 もう次回の食事会の話まで進み、「次はぜひ、西荻のオーガニックレストランで」という希望が出ている。
 実は、みんなでワイワイおしゃべりしながら食べまくっていたら、写真を撮るのをすっかり忘れてしまった。
 伊藤恵さんに「今日はいいんじゃない」といわれ、まあお料理もすべてたいらげたあとだったし、まあ、いいか、ということに。
 というわけで、仕事抜きといいながらしっかり仕事がらみの話に花が咲き、私の近況なども話し、駅に着いてからもまだ立ち話をし、ようやく別れた。
 さて、次はいつ会えるかな…。
 
| 親しき友との語らい | 23:54 | - | -
ブック オブ ティー・ザ・ミュージアム
 紅茶党の私は、紅茶専門店を見つけると、スーッと引き寄せられてしまう。
 京都の寺町通りを歩いていたところ、世界のお茶専門店「LUPICIA(ルピシア)」のお店を見つけ、やはりすぐに入ってしまった。
 いろんな茶葉を試飲させてくれたり、香りをかがせてくれたりしたが、もっとも気に入ったのは、「THE BOOK OF TEA The Museum」。
 これは厳選した紅茶、緑茶、烏龍茶、ハーブティーなどの50種のお茶と世界の名画50作品がコラボレイトした贅沢な美術館。
 ティーバックのひとつひとつに名画が描かれ、さまざまなお茶が楽しめるという非常にアイディア豊かな逸品である。
 でも、これ、なんだか飲むのはもったいないような、このまま飾っておきたいようなお茶で、飲んでからもティーバックの袋は絶対に捨てられない。
 かなり大きめの箱に入っていて、絵とお茶の解説が記された小冊子が付いている。
 京都は、本当にいろんな発見のある街である。ほんの小さな路地や、小路にもこだわりのお店があり、また、意外なところに小さな神社やお寺がある。
 音楽と同じくらい絵画の好きな私は、このブック・ティーを見つけ、ひとりにんまりしてしまった(笑)。
 お店の人には、すぐに「会員になってください」といわれ、またまた通うお店が増えてしまった感じ。
 今日の写真は、立派な箱入りのブック・ティー。いいアイディアだよねえ。音楽でこれができないかなと、いま、いろいろ考えを巡らしている。




 
| - | 22:52 | - | -
家庭画報6月号
 創刊700号記念の「家庭画報」6月号が発売となった。
 先日もブログに書いたが、今回は「音楽の殿堂《サントリーホール》30年の軌跡」の特集ページの取材と記事、特別付録の「祝祭」のベスト・オブ・クラシックCDの選曲と解説を担当している。
 この雑誌はいずれのページも写真がとても美しく、サントリーホールの写真も非常にゴージャスな感じだ。
 今回の付録のCDは、ウィーンを中心に活躍したモーツァルト、クライスラー、グルック、ベートーヴェン、レハール、シューベルト、ブラームスらの作曲家の作品を選び、ひとつだけ「家庭画報」の読者アンケートで人気No.1になったというヴィヴァルディの「四季」より「春」を付け加えた。
 いまは、5月末に発売される予定の単行本の最終チェックの段階で、これが終わると、次なる単行本の資料整理にアーティストのご自宅に通うことになる。
 ここからまた、根気のいる仕事の始まりだ。
 でも、ひとつひとつこうして出来上がった雑誌や完成間近の単行本を見ていると、大変な作業だったことは忘れ、多くの人が読んでくれるといいなあ、という気持ちだけが湧いてきて感慨が新たになる。
 今日の写真は、「家庭画報」の創刊700号記念の表紙。


 
 
 
 
| 情報・特急便 | 18:19 | - | -
天龍寺、篩月
 今日からまた日常の仕事が始まり、パソコンにくぎ付けの日々が巡ってきた。
 しかし、昨日までの京都の空気はまだ心身の奥にただよっていて、仕事の合間に時折ちらっと顔をのぞかせる。
 今回は、天龍寺の美しい庭をながめに出かけ、境内に位置する篩月(しげつ)に食事にいった。
 天龍寺は世界遺産に認定されているためか、外国人観光客の数がとても多い。精進料理の篩月にも、さまざまな国の人が訪れていた。
 ここは赤い敷物の上に一列になって並んですわり、お盆の上に供された精進料理をいただく。
 日本人も正座を苦手とする人が多く、私もその代表格だが、海外の人もこれには困惑し、みんなあぐらをかいていた。
 でも、低いお盆の上に盛られた食事を食べるのには、あぐらは適していない。
 みんなそれぞれ工夫をして慣れない箸使いで食べていたが、日本の伝統的な精進料理をいただくマナーは、結構大変だと感じているようだった。
 しかし、お料理の味はいずれもすばらしく、ひとつひとつとても印象に残った。
 特に、お豆腐、ごま、だしの使い方が見事で、「これはちょっとまねできないなあ」と脱帽。足のしびれも忘れるほど、ヘルシーで素朴で美味だった。
 こういうお料理をいただいた舌の感覚と記憶は、いつまでも残るものである。
 仕事に追われていても、ふとなめらかなごま豆腐や、滋味豊かななすの田楽などの味が蘇ってくる。結局は、食いしん坊だということなんだけどね(笑)。
 今日の写真は、天龍寺の新緑に包まれたお庭、篩月の風情ある入口、お料理の数々。
 本当は、海外の人たちに精進料理の感想を聞きたかったな。ずらりと並んだ外国人が神妙な顔つきで食べている様子を撮影したかったのだが、さすがにそれだけは遠慮した。






 
| 麗しき旅の記憶 | 23:51 | - | -
京都の仕事部屋
 連休を利用して、仕事部屋の引っ越しを行った。
 いま、ようやく生活できるようになり、荷物の整理もほとんど終わり、ブログを再開できるようになった。
 段ボールの片付けなどの合間を縫って、昔から通っている嵯峨野の車折(くるまざき)神社を訪れ、以前借りた神石を奉納し、新しい神石をいただいた。
 この神社は、嵐電嵐山本線の車折神社駅に位置し、商売繁盛から芸能にかかわる人気運向上まで、さまざまなご利益があるとされる。
 以前は人影もまばらで、とても静かでゆったりとした空気が流れていたが、最近の京都の観光ブームも相まって、かなりの人が訪れていた。
 私も芸能というか、芸術にかかわる仕事ゆえ、以前から京都を訪れるたびにおまいりしていた。
 今回も無事に引っ越しが済み、京都ぐらしが始まったことを報告、これからの仕事がうまくいきますようにと祈願した。
 ここから嵐山に出たら、ものすごい人でごったがえしていた。外国人観光客も多く、いずれの神社仏閣もいろんな通りも、お店も超満員。渡月橋など、あふれんばかりの人だった。
 これから少しずつ京都のあちこちを紹介していきます。
 車折神社に行くために乗る嵐電という電車はローカル色豊かで、古い車体とゆったりしたスピードがなんとも風情がある。
 この電車にコトコト揺られ、神社に着いておまいりすると、願いがかなうような気になるから不思議だ。
 今日の写真は、車折神社の入口。何度も訪れているが、いつも神聖な気持ちになる。




 
| ゆったりまったり京都ぐらし | 14:00 | - | -
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