Yoshiko Ikuma - クラシックはおいしい -Blog

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ゆのたに 心亭
 つい先ごろ、西荻窪のエキナカにあるDilaが閉店となり、いくつか入っていたお店が閉じてしまった。
 なかでも、私がよく通っていたのが、魚沼産コシヒカリを使ったおにぎりを販売しているゆのたに 心亭。
 ここはお米や新潟産の食材などをいろいろ販売していて、22時まで開いていたため、コンサート帰りの夜食などを買うのに便利だった。
 いまDilaのあったところは新店舗開業に向けて工事中で、6月にはデイリーテーブル紀ノ国屋がオープンするようだ。
 このおにぎり屋さんは、北口に移ると聞いていたので楽しみにしていたのだが、駅の北銀座通りのすぐのところに移転した。
 新店舗は、7時30分から20時までだそうで、いまのところお休みは設けていないという。
 以前、湯沢の仕事部屋に通っていたころから、魚沼産コシヒカリにすっかりハマってしまった。Dilaがなくなってしまって、どこでお米を買えばいいのだろうかと思っていたが、ゆのたに 心亭が新装オープンしてくれて、本当に助かった。
 ここのおにぎりは、旬の食材を使った物も多く、いつもいろんな種類がある。もうひとつ、私が大好きなのが、草餅である。これはパリッと焼いてきなこをまぶしたり、おしるこに入れると、最高である。
 今日の写真は、北口の1分ほどの場所に移転した、ゆのたに 心亭。にんじんジュースとおはぎもお薦めだ。


 
 
| 西荻はおいしい | 21:25 | - | -
四月大歌舞伎
 今日は、知人からチケットをいただいたため、歌舞伎座に四月大歌舞伎を観にいった。
 昼の部は、「醍醐の花見」「伊勢音頭恋寝刃」「一谷嫩軍記」で、あらかじめ予習をしていき、内容を把握してから臨んだ。
 ほとんど満席で、みなさん慣れているためか、お弁当や飲み物を持参したり事前に購入し、幕間に食事を楽しみながら長丁場の舞台を楽しんでいた。
 実は、歌舞伎座の裏側にマガジンハウスがある。20数年前、私はフリーになったときに「Hanako」の仕事を始め、この歌舞伎座の横の通りを何度も往復したものだ。
 歌舞伎を見終わって、この通りを見たら、急になつかしさがこみあげてきた。
 当時は、フリーになりたてで、わき目も振らずに仕事に邁進していたっけ。そのひたむきな思いが胸に蘇り、なんとも表現しがたい気持ちになった。
「初心貫徹」とはよくいうが、なかなかそれを実践するのは難しい。
 いまは、仕事の面でひとつの迷いの時期に入ってしまっている。このモヤモヤした気持ちを払拭するには、いかにしたらいいのか。
 マガジンハウスの通りを歩きながら、自己の気持ちと対峙し、名状しがたい気持ちが湧き上がってきて、正直困惑した。
 きっと、じっくり自分の内面を見つめ直せ、ということなのだろう。
 歌舞伎に招待してくれた知人に、感謝しなくちゃ。
| 日々つづれ織り | 22:41 | - | -
ナタリー・デセイ
 ナタリー・デセイの演奏は聴くたびに心に深く響いてくるものだが、やはり初来日のときの演奏が強い記憶となって残っている。
 ナタリー・デセイが初来日公演を行ったのは、2004年9月のこと。彼女の名前は、1990年にウィーン国立歌劇場で開かれた国際モーツァルト・コンクールで優勝して一躍世界に知られるところとなり、欧米の名だたるオペラハウスに出演、音楽祭からも引っ張りだこの人気となり、来日が待たれていた。
 もっとも得意とするオペラの役柄はオッフェンバック「ホフマン物語」のオランピア、モーツァルト「魔笛」の夜の女王、ドニゼッティ「ランメルモールのルチア」、ドリーブ「ラクメ」のタイトルロールなど、超絶技巧を要する役やコロラトゥーラ・ソプラノの名曲として知られるアリアが含まれるものだった。
 しかし、2000年ころからヨーロッパの新聞などのインタビューで、「オランピアや夜の女王は高い音を出すだけで面白みに欠ける。私が本当にうたいたいのは内容の充実した役柄であるヴィオレッタ、トスカ、蝶々夫人、エレクトラ、サロメ、マノンなど。そのためには低音域を磨き、表現力もより幅広いものを身につけないとならない」と語っている。
 初来日公演ではマスネ「マノン」とトマ「ハムレット」のオフェリア、ベッリーニ「夢遊病の女」のアミーナの各アリアが凄みを帯びたすばらしい歌唱で、驚異的な集中力に支配された最後のルチアでは会場が息を殺したように静まり、みな「狂乱の場」に酔いしれた。
 そんなデセイは、2010年7月のトリノ王立歌劇場の日本公演で待望のヴェルディ「椿姫」のヴィオレッタを熱演。これまでのヴィオレッタ像をくつがえす新しいヒロインを生み出した。         
 デセイは子どものころにバレエを習い、やがて女優を目指したというだけあって、演技力抜群。舞台狭しとはだしで走り回ったり寝転びながらうたったりする。どんな姿勢をとろうが、完璧に磨き上げられた歌唱はゆるがない。高音はもちろんコロコロところがる真珠の粒のようであり、また大空に飛翔していくかろやかな鳥のようでもある。
 しかし、このときは幾重にも表情を変えていく中音域の表現力の多彩さが際立っていた。「椿姫」は全幕にわたってほとんどうたいっぱなしの難役。それを幕ごとにあたかも異なった人物のように表情を変化させ、その場のヴィオレッタになりきり、聴き手の心にひとりの女性のはげしい生きざまを強烈に植え付けた。
 デセイが舞台に登場すると、そこだけ空気が変わるようだ。顔の表情からからだ全体が醸し出す雰囲気まで、すべてヴィオレッタそのもの。この演技力と表現力を兼ね備えた「奇跡の声」は聴き手の心を強くゆさぶり、もっと他の役を聴きたいと切望させる。
 これまでのヴィオレッタはアルフレードとの田舎での暮らしの場面でも着飾り、死の床でも美しいままだったが、デセイは素足だったりやつれを見せるなどリアリティが伝わってきた。昔は、オペラ歌手は棒立ちでも歌だけよければいいといわれたが、いまやオペラは演技力が欠かせなくなった。デセイの存在は、オペラそのものの新しい道を拓いている。

 あれから7年、オペラの舞台から引退したデセイは、いまや歌曲の世界で新世界を切り拓き、今回は盟友のピアニスト、フィリップ・カサールとともに前半はモーツァルト、シューベルト、プフィッツナー、後半はショーソン、ビゼー、ドビュッシー、グノーなどのフランス作品で圧巻の歌唱を聴かせた。
 デセイの歌曲の唱法は、各々の詩の世界へとひたすら没入していくもので、ひとつひとつの詩の表現があたかも台詞のようで、ストーリーを描き出していく。
 今回は、来日直前に初のシューベルトの「歌曲集」をリリース(ソニー)。これは彼女が長年研究し続けてきたもので、初期の作品から晩年の作品まで幅広い選曲による。
 ここでは、美しくかろやかで抒情的な高音を得意する、完璧に磨き上げられた歌唱を披露し、聴き手を魅了しているが、リサイタルでも繊細で気品にあふれ、みずみずしい歌声が横溢した。
 この夜は、デセイのもてるすべてが発揮された感が強く、いつもながら私は終演後に席を立てないような深い感銘を受けた。
 彼女はアンコールも次々にうたい、声の限りを尽くしたという様相を呈していた。
 曲は、ドリーブの「カディスの娘たち」、R.シュトラウスの「僕の頭上に広げておくれ」、ドビュッシーの歌劇「ベレアスとメリザンド」第3幕より、ドリーブの歌劇「ラクメ」より「美しい夢をくださったあなた」の4曲。
 まだずっと演奏の余韻が残っているため、また、徐々に胸の奥から記憶が呼び覚まされていくに違いない。
 今日の写真は、シューベルト「歌曲集」のジャケット写真。


 



| クラシックを愛す | 21:04 | - | -
スペインの風を感じて
 友人のTさんがスペインに旅をし、私の大好きな食材や料理本をお土産に買ってきてくれた。
 王室御用達のオリーブオイル、サフラン、紅茶。そしてバルセロナのカレンダーとなっている料理カレンダーと料理本。
 いずれも、スペイン好きの私の心をくすぐるものばかりで、最近のストレスフルな生活にひと吹きの涼風を吹き込んでくれる。
 Tさんは、バスク地方のラヴェルの生家を訪れたそうで、うらやましい限りだ。ラヴェルは私の大好きな作曲家だから。
 スペインは、音楽家ゆかりの地や、作品の生まれる基となった場所、作曲家がさまざまなものからインスパイアされたところが多く残されている。
 こういうお土産を眺めていると、そうした場所があれこれ浮かんでくる。しばし、夢を見させてくれるのである。
 とりわけ興味をそそられるのが、料理カレンダー。12カ月、郷土料理のすばらしい写真と、レシピが掲載されている。
 う〜ん、このアイデア、いいなあ。私も料理カレンダーを作りたくなってきたゾ(笑)。
 12人のアーティストを選んで、そのレシピをあてはめ、1年間楽しむというのはいかがだろうか。
 今日の写真は、スペインの風を運んできてくれたお土産の数々。ひとつずつ紐解いていくのが、たまらなく楽しみである。

| 麗しき旅の記憶 | 21:18 | - | -
ナタリー・デセイ
 毎回、ナタリー・デセイのリサイタルは完璧に磨き上げられたテクニックと表現力、深く読み込んだ歌詞の発音、隅々まで神経の張り巡らされた解釈など、すべてにおいて徹底した歌唱法に貫かれている。
 しかし、今夜の東京オペラシティコンサートホールでのフィリップ・カサールとのデュオ・リサイタルは、次元が違った。
 今日はもう時間がないため、ゆっくりとリサイタルについて書くことはできないが、いずれ詳細を綴りたいと思う。
 終演後、楽屋を訪ねると、ナタリー・デセイは、「今夜の自分はすべてを出し尽くした」という表情をしていた。
 今日は彼女の誕生日。アンコールが終わってからカサールが花束を携えてステージに現れ、デセイにプレゼント。そしてピアノに向かって「ハッピー・バースデイ」を弾き始め、会場を埋め尽くした満員の聴衆により大合唱となった。
 今日の写真は、デセイとカサールのツーショット。ふたりとも、すばらしいリサイタルを終え、とてもいい表情をしている。



| クラシックを愛す | 22:46 | - | -
原稿の書き直し
 原稿の書き直しは、そうそうあることではないが、今回は3週間ほど前から大変な目に遭っている。
 ひとつの原稿が、さまざまな理由からうまくいかず、何度も書き直しをすることになっているからである。
 アーティストの考え、編集部の意向、関係者の言い分など、いずれもうまくかみ合わず、結果として私は何度も原稿を書き直しすることに。
 もう途中で、みんなの言い分を聞いているだけで、何をやっているのかわからなくなり、当然のことながら原稿はハチャメチャな状態に。
 こうなると、もう元には戻らない。
 記事に関係している全員が、それぞれの主張を通すため、原稿はどんどんおもしろくない方向に進んでいく。
 やれやれ、いったいどうしたものか。
 ストレスはたまる、体調はよくなくなる、原稿の質は低下する。こういう状態は、本当によくない結果しか生まない。
 それでも、なんとか最終稿を入稿し、もうすぐ完全に手が離れる。
 すべて終わったら、一気に気晴らしをしないと、どうにかなりそうだ。
 今回の仕事で、自分の仕事の在り方を考えさせられた。仕事仲間のHさんも、今回のことで大変な思いをした人。
 ふたりで、「終わったら、何かおいしい物を食べながら、仕事についてゆっくり話し合おうね」と、いい合っている。
 これは、ひとつのターニングポイントかもしれない。忙しいと流されてしまうため、ふだんはあまり考えないようにしているが、じっくり自分と対峙する時間をもつべきときがきたのだと思う。
 
 
| ああ愉しき(?)、締切り地獄 | 22:20 | - | -
スイスチャード
 今週の週末も、月曜日の朝一番の締め切りにより、仕事となってしまった。
 こういうときは、原稿を早く終えて、気分転換を図るに限る。早速、食材を探しに出かけた。
 いつも通っているオーガニックの八百屋さんに顔を出すと、珍しい野菜がきていた。
 スイスチャードという美しい色をした野菜で、茎が鮮やかな彩り、葉もみずみずしく青々としている。不断草(フダンソウ)とも呼ばれ、ほうれんそうと同じような食べ方ができるという。
 ビタミンもカロチンも多そうだが、長くゆでると色が褪せてしまうため、要注意だとか。
 とにかく美しい色彩をもった野菜である。



 こういう食材をどう調理するかを考えていると、原稿の疲れがいつのまにかどこかに吹き飛んでいく。
 あまり火を通したくなかったため、フライパンに上質のごま油を入れ、にんにくの小口切りを焦げないように炒め、スイスチャードの茎、葉の順に少し間を置いて炒め、塩を少々。最後に煎りごまをバラバラとかけて、即席ナムル風の出来上がり。
 疲れたからだには、こういうしゃっきりした野菜が一番だワ〜。
 本当に、最近は珍しい野菜が多く出回っている。スイスチャードは、これからどんどん市場に登場しそうだ。なんといっても、美しいから。味も、とても食べやすくおいしい。
| 美味なるダイアリー | 22:01 | - | -
彩席ちもと
 京都には、敷居の高そうな、値の張りそうな、格式のある京料理店がたくさんある。
 おいしい和食を食べたいが、なかなかそういうところには足を向けることができないと思っている人も多いはず。
 そうした人たちに、もっと気楽に京料理を食べてもらおうと考え、1994年に創業300年の本格京料理の本店、「京料理ちもと」の斜め向かいにオープンしたのが、「彩席ちもと」である。
 四条大橋の近くにある西石垣通に位置し、祇園の喧騒から一歩入った、しっとりした風情のお店である。
 ここはランチがお薦め。なかなか予約が取れないことで有名だが、コースのなかの「雪」4000円が絶品である。
 すべてのお料理が季節の旬の素材を使用し、味付けはいわゆる京風。
 まず、席に着くと、美しい香りと色合いの梅茶が運ばれてくる。次いで八寸として、筍や赤こんにゃくの木の芽味噌和え、鯛小袖寿司、花見団子、百合根、胡瓜チーズ、厚焼玉子、一寸豆、桜煎餅、長芋サーモン巻等が登場。もうこれを観ただけで、日本料理のすばらしさにうなってしまう。



 次いで御椀は、清し仕立。黄味豆腐と白魚、菜花が入っていて、そのおだしの美味なること。やはり、年季の入った職人芸を感じる。 



 造里は、鰹と文甲烏賊とあしらい。おしのぎは、飯むし。ふっくらとした薄味のもち米のごはんの上に、桜の花と絹さやが彩りを添えている。
 もっとも驚かされたのが、玉子宝楽。一見するとムースかスフレのようだが、中身は上品な茶碗蒸しのようで、見た目も内容も味わいも、「まいりました」のひとこと。生姜とともにいただく。



 もうこのあたりでおなかはかなりいっぱいだが、次いで焚合は、鯛煮付け、竹の子土佐煮、人参、木の芽添え。ここにきて揚物が登場。エーッ、そんなに無理と思っていると、桜海老のかき揚げ(玉葱、三つ葉、ヤングコーン)を藻塩でいただくと、結構入ってしまう。
 最後のごはんは、筍ごはんかちりめん山椒ごはんを選ぶことができ、赤出しと香の物が付く。
 そしておなかをなでまわしていると、水物が供される。桜羊羹とキウイフルーツである。この桜羊羹は、これまで食べたことのない、香り高くなめらかで滋味豊かな逸品。



 ここはぜひ、京料理の好きな友人に教えてあげたいと思った。夜はもう少し高くなるが、昼のコースは絶対お得である。
 
| ゆったりまったり京都ぐらし | 22:17 | - | -
ジャン・ロンドー 
 いま、東京を訪れる海外の観光客や仕事で来日している人は、桜を観ることを楽しみにしている人が多い。
 先日、ジャン・ロンドーのインタビューの日にも、お父さんとお兄さんと一緒にインタビュー前に桜を観に出かけたとか。
「大丈夫かなあ、ちゃんとレコード会社の場所がわかるだろうか」と、みんなで心配していたのだが、時間通りにインタビュー会場に現れた。
 インタビューでは、チェンバロを始めたきっかけからその後の歩み、恩師の教え、コンクールのこと、レコーディングに関すること、趣味、現在の時間の使い方、今後のレパートリーや録音計画まで幅広く聞いたが、もっとも印象に残ったのは、彼の人生観だった。
 フランス人は、こうした精神性の高い話や哲学的な内容になると、一気に雄弁になる人が多い。ジャン・ロンドーも、長く伸ばしたあごひげを手で触りながら、ひとことひとことかみしめるように話す。
「ところで、どうして髪を伸ばしたの?」と聞いたら、「まだ、髪が薄くなっていないので、大丈夫かなと思って伸ばしている」という答え。ここで、インタビューに同席した関係者一同、大爆笑となった。
「忙しすぎて、自宅にもほとんどいられないし、床屋さんにいく暇もない」というのが本音らしい。
 このインタビューは、「日経新聞」、私のHP「音楽を語ろうよ」に書く予定である。先日のリサイタルの公演評は、「公明新聞」に書くことになっている。
 私がステージでズラタン・イブラヒモヴィッチのような髪型をしていたけど、というと、「ああ、大嫌いなんだ。サッカーはとにかく嫌い」とひとこと。あらら、そうですか、それば残念。
 彼はチェンバロのレパートリーは300年分あるから、弾きたい作品が山ほどあるといい、作品論も語ってくれた。
 自宅にある楽器はフランスのエムシュのレプリカだそうだが、先日弾いた楽器はドイツのミートケのレプリカのようだった。
 今日の写真は、インタビュー後の1枚。「リラックスしてね」といったら、「僕はいつでもリラックスしているよ」との答えが戻ってきた。



| アーティスト・クローズアップ | 23:04 | - | -
ナタリー・デセイ
 ナタリー・デセイのリサイタルが近づいている。私が今春、とても楽しみにしていた演奏会である。
 今日は、彼女に話を聞くために宿泊先のホテルに出向き、インタビューを行った。
 このインタビューは、「日経新聞」「intoxicate」と私のHP「音楽を語ろうよ」に書く予定にしている。
 ナタリー・デセイは4月12日(水)に東京文化会館大ホール、16日(日)に福岡シンフォニーホール、19日(水)に東京オペラシティ コンサートホールで盟友のピアニスト、フィリップ・カサールと組んでリサイタルを行う。今回はモーツァルト、シューベルト、ドビュッシー、グノーなどの作品が組まれている。
 今日は、初めてシューベルトの「歌曲集」(ソニー)を録音した新譜に関して、じっくりと話を聞いた。
 実は、東京オペラシティの冊子に記事を寄せている。ナタリー・デセイのことがよくわかると思うので、下記に貼りつけた。興味のある方は、ぜひ全部読んでくださいな。


 ナタリー・デセイが待望の初来日公演を行ったのは、2004年9月のことだった。コンサートでは、マスネ「マノン」、トマ「ハムレット」のオフェリア、ベッリーニ「夢遊病の女」のアミーナの各アリアが凄みを帯びたすばらしい歌唱でうたわれ、驚異的な集中力に支配されたドニゼッティ「ランメルモールのルチア」では、会場が息を殺したように静まり、みな「狂乱の場」に酔いしれた。
2010年のトリノ王立歌劇場の日本公演では、ヴェルディ「椿姫」のヴィオレッタを熱演。これまでのヴィオレッタ像をくつがえす新しいヒロイン像を生み出した。         
 デセイは子どものころにバレエを習い、やがて女優を目指したというだけあって、演技力抜群。舞台狭しとはだしで走り回ったり寝転びながらうたったりする。どんな姿勢をとろうが、完璧に磨き上げられた歌唱はゆるがない。高音はコロコロところがる真珠の粒のようであり、また大空に飛翔していくかろやかな鳥の羽ばたきのようでもある。
 しかし、ヴィオレッタでは、幾重にも表情を変えていく中音域の表現力の多彩さが際立っていた。これは全幕にわたってほとんどうたいっぱなしの難役。それを幕ごとにあたかも異なった人物のように表情を変化させ、その場のヴィオレッタになりきり、聴き手の心にひとりの女性のはげしい生きざまを強烈に植え付けた。彼女は2001年以降、幾度か声帯の外科手術を受け、声域や声質を考慮し、レパートリーを見直さなくてはならなくなった。
 来日公演は病が癒え、声に負担をかけぬよう表現力により磨きをかけた時期だったが、大きな試練を乗り越えた人だけがもつ、心を揺さぶるような説得力にあふれた歌声だった。
 デセイが舞台に登場すると、そこだけ空気が変わるようだ。顔の表情からからだ全体が醸し出す雰囲気まで、すべて作品の主人公そのもの。この演技力と表現力を兼ね備えた「奇跡の声」は聴き手の心を強くとらえ、もっと他の役を聴きたいと切望させる。
 日本でリサイタル・デビューが行われたのは2014年。フィリップ・カサールと組み、さまざまな作曲家の色とりどりの歌曲を選んで熱唱、各曲で圧倒的な歌声を披露した。彼女は作品の雰囲気に合わせて衣裳も変え、前半は人魚姫のようであり、後半は天女を思わせ、聴き手を別世界へといざなうような歌を聴かせた。それにはカサールのピアノが大きく影響している。声とピアノが見事に一体化し、創造的な世界を作り上げ、ふたりの音楽は完璧な形で融合していたからである。
 カサールはドビュッシーの解釈者として知られ、ピアノ曲全曲演奏を行うなど作品に精通している。デセイともドビュッシーの歌曲集を録音している。それゆえ、彼らはドビュッシーの歌曲をプログラムに登場させることを好み、今回も選曲している。このデュオは、詩的で絵画のような衣をまとった歌声をピアノが幻想的な美で包み込む。香り高きエスプリを感じさせる名演が生まれるに違いない。

 今日の写真は、インタビュー後のワンショット。彼女は最初はとっつきにくい性格だといわれるが、一度親しくなると、ずっと親密なつきあいが続くタイプとか。
 髪をシニヨンにまとめ、フランスのエスプリを感じさせた。話は知的でエレガントで率直。シューベルトの録音は、いまようやく自分が成熟した時期だから、挑戦したのだという。リサイタルが楽しみである。




| アーティスト・クローズアップ | 22:17 | - | -
ジャン・ロンドー
 2012年、弱冠21歳でブルージュ国際古楽コンクールのチェンバロ部門で優勝の栄冠に輝いたフランスの個性派チェンバリスト、ジャン・ロンドーが初来日を果たした。
 今日は、東京文化会館小ホールにリサイタルを聴きにいった。
 プログラムは、J.S.バッハ「ゴルトベルク変奏曲」。バッハの最高傑作のひとつと称されるこの作品は、アリアと30の変奏からなり、最後にまた最初のアリアが巡ってくる。
 よく、この作品を演奏するピアニストにインタビューすると、ほとんどの人が「最後のアリアは、これで終わりではなく、また最初に戻るような感覚を抱く。輪廻転生のような、新たな海原に漕ぎ出していくような感じ」と語る。
 今日のジャン・ロンドーの演奏も、最後はひそやかに締めくくられ、主題が静謐な空気をまとい、すべての音がスーッと天空に舞い上がっていくようだった。
 ジャンは、これまで見てきた写真の「いまどき」の個性的な風貌とは異なり、あごひげを長く伸ばし、髪型はお団子ヘアに変身。これはマンバンと呼ばれるヘアスタイルで、スウェーデン出身でプレミアリーグ、マンチェスターユナイテッドのセンターフォワードであるズラタン・イブラヒモビッチのトレードマークだ。
 ごくラフな白いシャツと黒のパンツでステージに登場したジャンは、チェンバロを自由自在に操り、自身のことばとなり、歌となり、心を吐露するような音楽を披露。ゆったりと始めたアリアも美しかったが、各々の変奏がチェンバロの機能を存分に使用した演奏で、実に味わい深かった。
 私は彼のチェンバロを聴くと、無性に「チェンバロを弾きたい」という気持ちが頭をもたげ、胸が痛いほどの渇望に駆られる。
 ジャンは、80分強の「ゴルトベルク」の後、F.クープランのクラヴサン曲集 第6組曲より「神秘的なバリケード」と、J-N-P.ロワイエの「スキタイ人の行進」をアンコールで演奏。まるで鍵盤と遊んでいるような自由でのびやかな響きを奏で、古楽ファンの心をとらえた。
 ジャンには、明後日にインタビューをすることになっている。おもしろそうだよねえ、どんな話が飛び出すか、興味津々である。
 今日の写真は、公演チラシのジャン・ロンドー。インタビューのときに写真を撮り、いまの彼の風貌をお見せします(笑)。



 もう1枚は、今日の使用楽器。これも彼にじっくり聞いてきますね。




 
 
| クラシックを愛す | 22:51 | - | -
渉成園
 仕事は、人間関係のストレスから逃れられないものである。先日も、原稿の件でひと悶着あり、極度のストレスに見舞われた。
 こういうときは、気持ちを切り替えるために自然のなかに身を置き、ニュートラルな心を取り戻すに限る。
 京都の仕事部屋のすぐそばに、名勝 渉成園―枳殻邸―という庭園がある。
 ここは四季折々の樹々や草花が生い茂り、小さな茶室などが残されている場所。東本願寺の別邸で、文人趣味にあふれる仏寺庭園として国の名勝に指定されている。
 広大な庭園を散策していると、自然に気持ちが落ち着き、内部に足を踏み入れただけで空気が異なるように感じる。
 いまは海外からの観光客も多く訪れ、朝からにぎわっているが、みんな手入れの行き届いた日本庭園の美しさと静けさに、ただ黙って見入っている。
 今日の写真は、渉成園の春を彩る風景。
 週末はこの癒しの場でしばし心身の休息を得、また闘いの場へと戻ってきた。さて、明日からまた戦闘開始である。







| ゆったりまったり京都ぐらし | 23:22 | - | -
日本橋散策
 昨日は、私が幹事の「きょうだい会」を日本橋で行った。
 今回のキーワードはふたつあり、「老舗」と「桜」。日本橋はいま再開発が進み、新しいお店が次々に登場しているが、そのなかで生き残っている老舗を巡ろうと考えた。
 まず、4人で日本橋三越前に集合し、コレド室町の近くにある福徳神社に詣でる。そして志賀直哉が命名したという、お寿司屋さん「蛇の市本店」へ。
 ここで平日の昼限定の「特製ばらちらし」をいただく。このお寿司は、新鮮な魚介類がこれでもか、というくらい乗ったぜいたくなちらし寿司。お店の人がいうには、寿司飯にも味がついていて、穴子やまぐろも下味が軽くついているため、あまりわさびとおしょうゆはつけない方がいいとか。
 なるほど、それぞれの具材がとても工夫されていて、コハダやエビや卵焼きも、それ自体がとても味わい深い。寿司飯は、「笑みの絆」を使用しているそうだ。
 この前に、小さな茶碗蒸しが供され、これがまたすこぶる美味。ばらちらしにはお味噌汁が付き、最後にデザートとしてごまプリンが出された。このプリンのなんというおいしさ。「もうひとつ、ください」といいたくなった(笑)。





 食後は、1688年創業の手作りはんぺん、かまぼこ、さつま揚げ、おでん種などの「日本橋神茂」へ。江戸時代の日本橋で生まれた「手取りはんぺん」は、職人さんが1枚1枚手づくりしているそうで、はんぺんの常識をくつがえす逸品だ。
 次は、創業280年のプロの料理人が通う乾物と鰹節の専門店、「八木長本店」へ。ここは私の愛するまぐろのけずりぶしと、まぐろのだしパックがあるお店。青まぜ焼のりやゆず風味いり胡麻などもおいしい。
 みんなで散策をしている間に、日本橋ならではの古雅な雰囲気の便せんや絵葉書を売っているお店に立ち寄ったり、いろんなお店をのぞいたりして、午後に予約を取ってあるクルーズ船の乗り場を確認した。
 おしゃべりをしながら歩いていくなかで、みんなが穴子が好きだとわかり、コレド室町2にある穴子専門店「日本橋玉ゐ」のお店で穴子寿司をお土産に買うことにした。この時点で、もうみんなショッピング用のバッグを出したり、荷物を振り分けたり、大変なことになっている。
 そのまま日本橋のたもとにある、江戸甘味の老舗、「榮太摟本店」へ。ここでいただくのは、やはりこの季節限定の「桜金鍔」。これとお抹茶をセットにしてもらい、自家製餡の甘すぎず、桜の薫りがするしっとりした餡のきんつばを堪能。みんながこれをお土産に購入した。
 そしていよいよ、クルーズに出かけた。今回は、屋根付き、船長のガイド付きの60分のコース。
 日本橋川から隅田川、大横川、小名木川へと回り、川から沿道の桜並木を愛でるというクルーズである。昨日はとても暖かく、時折デッキに出て風に吹かれながらお花見をし、船長の案内にも耳を傾け、とても有意義な1時間を過ごすことができた。





 その後は、マンダリン・オリエンタル東京でお茶をしようかという話になったのだが、結構混んでいたため、ゆっくり歩いて早めの夕食に向かった。 
 夕食は1869年創業のお蕎麦屋さん「室町 砂場」へ。この季節限定の「桜切りそば」やお店の名物であるかき揚げ、穴子のてんぷら、たけのことフキの御煮しめなどをいただく。
 ここでゆっくりおしゃべりを楽しみ、さて解散か、と思ったが、まだ話し足りないということで、さっきは入れなかったマンダリン・オリエンタル東京でお茶を。
 ようやく幹事は「ご苦労様」といわれ、役目は終了した。
 その後、夜中まで下の姉と新宿でおしゃべりをして、真夜中の帰宅となった。
 
| 美味なるダイアリー | 10:06 | - | -
友人との仕事話
 今日は、今春レコード会社を退職したばかりの友人Fさんが西荻にきてくれ、ふたりで食事をしながら今後の仕事の話をした。
 彼は、これからフリーとして新たな道に踏み出すわけで、その件に関していろんな方向に話が広がった。
 実は、私も今後のことについていろんなことを考えている時期ゆえ、ふたりでさまざまな選択肢を視野に入れ、じっくりと話し合った。
 Fさんとは、本当に長いお付き合いである。これまで、たくさんの仕事を一緒にこなし、海外取材なども行なっている。
 それゆえ、心おきなく何でも話せる。彼も本音で話してくれるため、話はスムーズに進む。
 いまはCDの売り上げもきびしく、雑誌や新聞などの出版物もなかなかシビアなものがある。特に、音楽専門誌などの出版部数は、頭打ちの状態だ。
 こうした時世のなかで、自分たちに何ができるか、何をすべきか。ふたりであれこれ意見を出し合った。
 さて、また近いうちに会うことにし、そのときまでにFさんは自身の方向性をある程度決めるといっていた。
 何でも話せる仕事の友人は、とても大切である。近々の再会を約束し、西荻の駅まで送り、別れた。
 
 
| 親しき友との語らい | 23:58 | - | -
金子三勇士
 ピアニストの金子三勇士には、デビュー当時から取材を行い、インタビューをし、ライナーノーツやプログラム原稿などを書いてきた。
 今日は、久しぶりに彼に会い、いろんな話を聞いた。
 これは今月末の「日経新聞」の、スタインウェイのページに関するインタビューで、スタインウェイ・ピアノとの出合い、楽器の特質、楽器の選び方、作品とのかかわり、さまざまな楽器の特徴などを聞いた。
 金子三勇士は、いずれの質問にも即座に的確な答えを戻してくれる、当意即妙なタイプ。長年いろんな話を聞いているが、今回も、その思いを強くした。
 とりわけ、スタインウェイとの出合いの話が興味深かった。さらにひとつひとつ手づくりのピアノゆえ、各々の楽器を試奏すると、人間のように性別や年齢が連想できるという話もおもしろかった。
 そうした内容のエッセンスを、記事にまとめたいと思う。
 実は、今日は天王洲アイルのスタインウェイのショールームに行ったのだが、すぐ近くでデヴィッド・ボウイの大回顧展が開かれていて、海外の人も含めてたくさんの人たちでにぎわっていた。
 先日もブログに書いたが、私はデヴィッド・ボウイの長年のファン。仕事が終わってからぜひここに立ち寄りたかったが、時間がなかったため、うしろ髪を引かれる思いで断念した。
 あ〜あ、せっかく天王洲アイルまで行ったのになあ。でも、今日は仕事だから諦めましょ、と自分にいいきかせた。
 今日の写真は、3台の異なるピアノを次々に試奏する金子三勇士。濃紺のシャツ、タイ、ジャケットという、スタイリッシュな服装だった。


 
 
 
 
| 親しき友との語らい | 23:43 | - | -
わが家の桜開花宣言
 東京の桜開花宣言は、靖国神社の桜・ソメイヨシノが5、6輪以上咲いたところで行うそうだ。
 わが家の旭山桜の盆栽も、今日5、6輪咲き、次々に咲きそうなので、まねをして開花宣言をした(笑)。
 この桜は室内で育てるもので、日当たりのよいところに置いておくと、ぐんぐん育つ。
 花が終わってからは、来年に向けてきちんと手入れをしなければならない。水やりも重要で、あまり多くてもいけないし、少なすぎてもよくない。
 花の手入れはそれぞれ異なるため、結構気を遣う。
 でも、わが家にいながらにしてお花見ができるのは、うれしいことだ。ほんの小さな桜だけど、しっかり自己を主張し、存在感を放っている。
 パソコンとにらめっこしてばかりいると目が疲れるため、しばし桜の花を愛でる。すると、少しは眼精疲労が収まる感じがする。
 私の心身の癒しになってくれているのかも。
 今日の写真は、4月の声を聞いたら、一気に咲き出した旭山桜。これからどんどん咲きそうだ。結構、かわいいねえ。


 
| 日々つづれ織り | 22:35 | - | -
きょうだい会幹事
 昨夜で月末入稿のすべての原稿を終わらせ、今日は6日のきょうだい会のロケハンに、日本橋に出かけた。
 半年に一度のきょうだい4人の会は、春と秋に行っているが、今春は私が幹事である。
 今回は、再開発著しい日本橋を探訪することにした。
 集合場所、ランチ、ショッピング、カフェ、スイーツ、夕食まで、すべて実際に歩いてみて、時間を確かめる。食事はすべて予約を入れた。
 いまはお花見の時期ゆえ、日本橋発着の桜周遊クルーズがあることがわかり、その屋根付きの方のクルージングの予約も行った。
 60分コースで、どこまでも続く大横川の見事な桜並木を鑑賞するというコースである。
 このクルーズはとても人気があるらしく、さまざまな会社の受付があり、船も屋根なしのオープン船が多かった。
 これでひとまず大枠が決まったため、きょうだいにメールでスケジュールを連絡しておいた。
 あとは、当日、お天気がいいことを願うばかりである。
 原稿の締め切りがまったくない日に、こうして日本橋をあちこち散策して歩くのは、気持ちが晴れ晴れとしてとても楽しい。
 今回のショッピングは、新しいお店ではなく、すべて長年その道ひと筋という老舗を選び、みんなを案内する予定だ。
 今日の写真は、咲き始めた桜とクルーズ船。
 私は海外でもよく水の上から町をながめることをするが、ヴェネツィア、パリ、サンクトペテルブルク、ブルージュ、ベルゲンなど、いつもの町の様子がまったく異なって見えて興味深い。
 さて、日本橋川から隅田川、大横川は、どんな風情が楽しめるだろうか。


 
| 日々つづれ織り | 23:09 | - | -
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